拭き漆工房 翠簾洞 素舟齋
ステッキの変わり種として仕込みを作ることにした。桿に少し曲がりがあるので火で矯正しなければならない。
この根の部分にひび割れと鋸キズがあったが、既にウッドエポキシで埋め込んである。
此のように細長い素材は他に手持ちがないので、この仕込み杖を自分用に仕上げる気になった。
杖にするには桿が割れずに鉄芯を叩き込めるかどうかが鍵だ。今迄桿の節抜きに使っていた鉄芯を叩き込んで活用することにした。
割れ防止の水糸を巻くのを忘れたが、結果はうまく鉄芯が入って桿も割れずに済んだ。
こんなに細い石突きは手持ちがないので別途購入する。
下げ緒は移動式でよいがこんな細い桿に合う既製品は無いので手造りしよう。
石突きゴムは東急ハンズに径が合う物があったがちょっと接地部分が大きすぎる。しかし無くてはならぬので我慢しておく。
下げ緒も手持ちの中に黒いゴム紐で造ったものがあるので一応これで間に合わせておく。
髭根部分の握ったとき手に当たって痛い尖りをサンドペーパー#100で削った。凹凸自体はうまく握るために残しておく。
尖りを削る前 | 丸くした後 | |
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呂色漆を髭根部分と根元の3節に塗った。
漆風呂に入れて2日経っているのでサンドペーパー#600で研ぎ出した。球状の髭根部分は問題ないが地上に出て”竹”になった部分(竹幹)は漆が剥げてしまう。
剥げるのは竹の皮を剥いでいないためなので、杖全体の竹の表皮を削ってから漆を塗ることにした。
先日塗った瀬〆漆をサンドペーパー#400ですっかり剥がして、桿全体を研ぎ出した。
桿の表皮研ぎはサンドペーパー#400は細目過ぎるので#320に替えた。表皮には脂分があり、#320でも目が潰れてしまう程だ。研ぎ出した後でも黒竹の桿模様がはっきり残っているので、うまく塗り上がったら良い杖になるだろう。
表面の研ぎ出しが完了した。
梨子地漆を少し薄めて全面に塗り、サンドペーパーを使わずにこの上に直に梨子地漆を塗り重ねるつもりで拭き紙でかなり強く拭いておいた。
27日の結果は全面に綺麗に漆が乗っていた。しかし漆風呂に埃があり杖の下部2〜3節がザラついている。#800で研ぎ出せば問題ない範囲だろう。
28日に塗った梨子地漆をまたザラついている。手許半分はほぼ綺麗なのだが下に行くほど汚れが強く指にはっきりと当たる。これは拭き紙の所為かもしれないが、新しい拭き紙を使って軽く拭いただけでこれほどゴミが付くことはない。サンドペーパーで研ぎ出して、次回は拭き紙に注意して結果を見よう。
今日は手許から3節目と4節目に、飾りと同時に強度を増すように絹糸を巻くことにして、
キサギを入れ、
続けて赤絹糸を巻き、
更に絹糸にテレピン油を染み込ませた後、瀬〆漆を薄めて絹糸の上に塗った。絹糸に染み込ませるために間を置きながら何回も塗った。
瀬〆漆はうまく乗った。この上に梨子地漆を掛けてから研ぎ出しをする。
桿の下半分のゴミをサンドペーパー#600で落とした。
石突き近くの2節は竹の枝の凹みが深くてゴミが取れない。凹みの底の表皮の剥がし自体が不十分なので、上に塗った瀬〆漆がぽっこり剥げたりする。
そこでこの2節には和竿の手法で錆漆を入れて凹みを埋めることにした。
カッターで凹み部分にギザを付け、
錆漆を作ってへらで塗り付けた。
錆漆は大体乾いたようだ。はみ出た錆漆がうまく取り除けるかどうか気になる。
もう2、3日硬化を待って削ってみよう。うまく取れなければ、この2節に呂色漆を塗れば足許が締まって良い景色にもなる。
柄の方の絹糸の漆もうまく塗れたので梨子地漆で2番塗りをする。
待ち切れずに錆漆をカッター小で削るようにして取った。凹みの両側は突き出ているので竹の部分も削った。
あとサンドペーパー#400と#320で研ぎ出した。錆漆の盛りつけが十分に竹の丸みにならず、研ぎ過ぎてやや平らになってしまった。
桿の上は割に綺麗になったが、凹みに盛った錆漆はかなり凹凸が出て荒れた感じだ。何回か梨子地漆で拭き漆を掛けて平滑にしていこう。
錆漆の跡を指で触るととても凹凸が感じられる。拡大写真で見ると随分大きな穴がある。
今日また錆漆を作って十分に練ってから前回の上に塗り付けた。
両端に養生テープを巻いて絹糸巻きの上をサンドペーパー#240で研ぎ出した。
たまたま錆漆が残っているので、梨子地漆の代わりに錆漆を塗りつけた。
硬化するのを待って錆漆の上をサンドペーパー#240で研ぎ出した。
錆漆を研ぎ出した上に昨日梨子地漆を塗って軽く拭いておいた。今日見ると錆漆にはまだ凹みなどがあり、綺麗な表面とは云えない。
サンドペーパー#400で研ぎ出した。絹糸巻きの部分は殆ど滑らかになって来た。
絹糸巻き部分と、その節を除いて下の桿に梨子地漆を殆ど薄めないで塗った。絹糸巻き以外の桿は軽く拭いておいた。
巻いた絹糸の上に縮緬皺が出てしまった。
しかも桿のたわみでいつも漆が垂れる側がきまっている。もう一日硬化させてからしっかり研ぎ出そう。
絹糸巻きの上をサンドペーパー#120で研ぎ出した。
縮緬皺を取るために少し強めのサンドペーパーを使ったが桿の円周に対して直角に研ぐことになって筋状の研ぎ出し痕になってしまった。
養生テープを取って接写して見ると、2節目にはまだ縮緬皺が見えるが、この位は今後の拭き塗りで十分に消えるだろう。
これからは桿全体の拭き塗りに掛かる。
昨日梨子地漆を薄めないで絹糸の上に塗った。
十分に伸ばして薄く塗ったつもりだがやはり真っ黒になるほど濃い。
しかも僅かながら軽い縮緬皺が見える。
サンドペーパー#600で研ぎ出した。絹糸の上の研ぎ出しはこの辺で良かろう。
あとは全体と一環した通常の拭き漆でよいと思う。
16日にサンドペーパー#800で研ぎ出し、中央の4節と絹糸巻きの上をを拭き漆した。
真ん中の一節だけは上下を塗る際の保持のため塗っていなかったので、今回この節だけを塗った。
しかし筆を使うには無駄になる漆が多すぎるので指塗りをした。指先にゴミが当たり梨子地漆でも随分ゴミが多いことが判った。
その後3回ほど梨子地漆を筆塗りし拭いた。
一昨日は梨子地漆を僅かずつ筆に付け塗りの回数を多くして薄く塗った。その結果ゴミが乗ったようなザラつきは減った。
今日は梨子地漆を漉し紙で漉して筆塗りの塗り立てをしたが、硬化後、ゴミのザラつきは全く指にさわらない。やはり漆は漉して使うべき材料なのだ。
その後梨子地漆を漉して3回塗り立てで筆塗りした。いずれも全くゴミが乗ったような感触がなく艶も十分に出たので、この杖の完成とした。
体重を掛けるとかなり撓うが反発力があり実用性がある。 自家用にする。
一応完成としておいたが、全体のアクセントが無くただ黒いだけなので覆輪を入れることにした。
地色を赤か黄か迷ったが、黄漆にプラ金粉を入れて覆輪を描いた。しかし厚塗りになったので金粉が沈んでしまった。
上から金泥を蒔いて置いた。
金蒔きはうまく出来たが、厚塗りにしたので縮緬皺どころかひどい褶曲が出てしまった。しかしこれを予想して2時間くらいの間隔で漆風呂の中の杖を廻していたので、覆輪全体に均等に凹凸が出来て、何か別な技法のようになって却って面白そうだ。
完全に硬化するまで気長に待って金泥を拭き取るときが楽しみだ。
金泥を洗い流したら見事に凹凸がついた金覆輪が出来ていた。漆風呂の中で杖を廻しながら硬化させたのが成功だった。
これで完成とする。
鉄芯が程よい重量になって、ちょっとした武器にもなりそうな使いやすい杖になった。
<2014.08.xx.作成>