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竹のナイフ楊枝 w161
2012.09.10.着手・2012.12.02.完成

拭き漆工房 翠簾洞 素舟齋

節を活かして竹らしいデザインで、和菓子に添えるナイフとフォーク兼用の楊枝を作ろうと考えました。 ところが、頭で考えた形で竹を削ってみたのですが、持ちやすくしようと思った分だけごつくなってしまい、到底和菓子に似合うものではありません。また暫く放置していましたが、ある日の頂き物にプラスチック製のナイフ楊枝が付いていました。これを見本にして竹に移して作ってみたのがこのナイフ楊枝です。柏葉の菓子皿(W98)に合わせて3本を作りましたが、その形状を揃えるのに苦労しました。


  1. 試作品の放棄

  2. 試作2号

  3. 3本セット制作

  4. 完成

【試作品の放棄】

完成が近づいた柏葉菓子皿(W98)に添えの楊枝を竹で作ろうと予てより企画しているのだが、これはというデザインを思いつかない。


力強さがない

大分前に、わらび餅か何かに付いていた既製の竹の楊枝があったので漆を塗ってみたが、どうも力感がなくて採用する気にはなれなかった。


2012.09.10.

今日節を使った竹らしいデザインで、和菓子に添えるナイフとフォーク兼用の楊枝を作ろうと考えついた。どんなものが出来るか見当が付かないのでまず1本だけ試作してみることにする。

平割り竹の節を活かし艶がよい外皮を利用して作ることとし、マスコット鉈で割り、長さを決めて精密鋸で切った。

あらかたの形を作るのに使う刃物に迷ったが、意外にもマスコット鉈が竹に対しては切り出しよりもよく切れる。

原型は他の刃物を一切使わずマスコット鉈だけで削り出し、サンドペーパー#100で水研ぎして短時間で綺麗に仕上がった。但し、出来たものはかなりゴツくて和菓子に添えるには余りに無骨な感じがする。


2012.09.12.

刃が厚い方が出刃包丁のようによく切れるかと思ったが、これではどうにも厚すぎて却って切れないので、常識程度まで刃先を薄く削った。切り出しで削ったが、刃跡が残るので、仕上げは#100で水研ぎした。

瀬〆漆を筆塗りした。表皮側にも一様に塗りティッシュで拭き取っておいた。


2012.09.14.


サンドペーパーの疵で醜くなった保持部

保持部の表皮に1回だけサンドペーパー#100が当たって擦ってしまったのが禍して疵が入り、狙った竹の表皮の滑面がなく醜い。瀬〆漆を塗るまでは全く気付かない疵だが漆を塗るとはっきりと現れる。

全体がズングリムックリしていて芋虫のようだ。和菓子に添える楊枝としてはゴツイばかりで外観に曲がない。(127w×14d×7t mm)

保持部に指が当たる凹みを入れた。切り出しで粗削りし、サンドペーパー#100で水研ぎしたあと#320で空研ぎした。


昨日まで仕掛かっていた試作品は太いし長いし、どう見てもゴツくて柏葉の菓子皿には似合わない。そこでこれは失敗試作品として放棄する。TOP

【試作2号】

2012.09.15.

大きさはとにかく形状が決まらないので、手許にあった既製品のプラスチックの菓子楊枝をモデルにして、同様のスタイルを竹で作ることにした。

前回と同じ、建仁寺垣用の平割り竹を使用して、マスコット鉈で粗削りし、サンドペーパー#100で水研ぎして粗方の形状を作った。

同じ素材から2個取ったがこの水研ぎの際に、1個は刃と背を誤って表皮を研ぎ出してしまい、廃棄とした。


2012.09.17.

試作2号はプラ菓子楊枝を模して成功した。竹の節も全体を引き締めてよくできた。

サンドペーパー#100で形を決め、#320で磨きだした。

フォーク兼用にして二股するかどうかまだ決めかねている。漆を塗ってからまた考えよう。


2012.09.18.

昨日梨子地漆で下地を塗った。なるべく仕上がりが黒くならないようにするために瀬〆漆ではなく梨子地漆を使い、また表皮に付いた漆が簡単に取れるように表皮にサラダ油を塗ってから梨子地漆を筆塗りした。

今日見ると期待通り瀬〆漆を塗った時より黒色が薄く茶色というところだ。また一部表皮に付いた漆もテレピン油をつけてティッシュで拭くと綺麗に落ちた。あとサンドペーパー#1000で丁寧に磨いておいた。

形がよいので、これにフォーク爪の切り込みを入れない方がよさそうだ。TOP

【3本セット制作】

2012.09.23.

それから3回ほど梨子地漆を塗った。

柏菓子皿に添えてみると形もこれでよいので、柏菓子皿に合わせて更に2本を同型で作ることにして、建仁寺垣用の平割り竹をマスコット鉈で割り素型を取り出した。

続いて板貼りサンドペーパー#100で水研ぎして厚みの修正と平滑を出し、更に切り出し刀で指の当たりを粗削りした。


2012.09.24.

先端や指の当たる部分の丸み、刃の厚み等々、僅か3本だが形状を揃えるのはなかなか難しい。

プラスチック成形品のようには出来ないが、サンドペーパー#100で水研ぎして外形は終了とする。TOP

【完成】

2012.12.02.

九月以降、何回も何回もサンドペーパー#1000で研ぎ出しては拭き漆を塗り重ねた。

片面を残して片面を全面塗るので保持するところがない。そこで刃の部分と持ち手の部分と2回に分けて塗らなければならない。小さい物は却って手間が掛かるものだ。

竹の表皮を残した側に多少付いた漆は、翌朝くらいの半乾きのうちにテレピン油を付けたティッシュで強く擦ると落ちる。梨子地漆を塗った面はかなり濃く漆が乗って落ち着いた調子が出て来た。表側も薄く漆が残っているのか少しくすんだようで、時代が付いていたようでなかなかよい。

これをもって完成とする。これは柏葉菓子皿(W98)との組み物とする。TOP

---2012.12.31.作成---