拭き漆工房 翠簾洞 素舟齋
ステッキの第13ロットとして3本制作したうちの1本です。このロットは竹らしさを強調しようとして節を残すようにしました。また始めて黄漆を使いました。金粉を蒔くよりも明るくなると思いましたが、漆が落ち着くまでは半年以上掛かるので、どんな色になることやら、結果が楽しみです。
今回の素材
見込生産していたステッキがなくなったので、素材の竹を仕入れにホームセンターに行った。たまたま荷が入ったばかりなのか200本くらいの晒し竹があった。それを1本ずつ厳選し5本を買って帰った。
5本を揃えて並べて見ると1組の節間が全く一致しているものがあったので、これは双脚台子用とし、のこり3本をステッキ用に充てることにした。
火入れ・油抜きをした。
表皮をサンドペーパー#120で研ぎ出した。今回のロットは余り節を削らずに、竹を強調して作ろうと思っている。
しかし、真竹の2段節は間に埃が入っていて黒いので、上側は切り出しで削り、下側だけ孟宗竹のように残した。
切り出しで削って剥けた竹肌が目立たぬようによく研いだ。
昨日地塗りに瀬〆漆を拭き漆した。今までの筆塗りだけの地塗りは黒くなりすぎるので、今回は拭き漆にしたが、見たところ矢張りとても黒くなっている。
また、計画的にしたことだが節が高くてゴツゴツした感じが否めない。竹を強調したこの方がよいか、節を削ぎ落とした方がよいか、完成後の姿を見るまで判断が付かない。
桿長を76.5cmとし、石突きと桿の接ぎ口にキサゲを入れた。
赤絹糸を上下端に巻いた。
昨日塗った瀬〆漆が乾いた。厚めに塗ったので絹糸の治まり具合は上等だ。
糸巻き部の瀬〆漆の上に、梨子地漆を筆塗りした。縮緬皺にならぬようよく伸ばして筆塗りした。午後1時半頃に塗ったのだが、4時頃には表面が乾いていた。
上端
下端
昨日の絹糸巻きの上の梨子地漆はうまく塗れていた。
状態がよいので、確認後すぐサンドペーパー#400で研ぎ出した。
上端
下端
引き続き、梨子地漆で下塗りをした。
昨日は梨子地漆をたっぷり塗ったので、僅かながら縮緬皺が出てしまった。
上端
下端
糸巻き部分をサンドペーパー#1200で強めに研ぎ出した。
上端
下端
糸巻き部分の上に梨子地漆を塗った。今度は厚くならぬように梨子地漆を丁寧に伸ばした。前回の塗りで出来た縮緬皺ももう判らなくなった。
上端
下端
赤絹糸の巻き方もよかったので、石突き部の中塗りはほぼ出来上がった。
釣りの錘・茄子型3号1個を叩き潰して形を整え、石突きに入れてウッドエポキシで固めた。
次に桿に節陰を強調して中塗りをした。
桿上端の糸巻き部の漆をサンドペーパー#120で強めに研ぎ、#240で仕上げしてから、梨子地漆を薄く筆塗りした。
石突きのウッドエポキシが乾いた端も、木工鑢で平滑に磨き、サンドペーパーで仕上げてから梨子地漆を塗った。
暑さが厳しく暫く休んでいたが、先月塗った梨子地漆がうまく出来たので、9月14日にサンドペーパー#1000で軽く研ぎ出してから、柄と桿全体に梨子地漆を、縮緬皺が出ない程度に少し厚めに筆塗りしておいた。
これが殆ど塗りムラがなく綺麗に上がったので、今日はキサゲを付け赤絹糸を巻いて、瀬〆漆の地塗りまで進めた。
絹糸巻きの位置決め
キサゲ
赤絹糸巻き
巻いた赤絹糸の上に塗った瀬〆漆が乾いたので、研ぎを掛けないで梨子地漆を重ねて塗った。
梨子地漆がすっかり乾いたので、サンドペーパー#400で研ぎ出した。糸の重なりがなかったので安心して強く研ぎ出すことが出来た。
絹糸巻き部分の上塗りはあと1回で済むだろう。
一昨日の梨子地漆塗りは随分薄く塗ったつもりだが、下段の糸巻き部に大きな縮緬皺が出ている。
縮緬皺は漆風呂の硬化時に下側になった方に出ている。漆風呂の中で桿が回転するようにしたいのだが、大仕掛けになるのでアマチュアには無理だ。
養生テープを巻いてから、サンドペーパー#400で研ぎ出した。縮緬皺が消えるようにしっかりと研いだ。
梨子地漆を漉して筆塗りした。前回は少し塗りが薄すぎたと思ったので、多少筆に多く付けた。しかしよく伸ばしたので拭き紙は使わなかった。
結果はムラなく塗れていて縮緬皺も出ていないが、漆が厚めなので全体が随分黒く出来上がった。
在庫の中から柄を選び、
桿と合わせながら、桿を喰い込ませる穴を開けた。
キサゲを付けて、
赤絹糸を巻き、
瀬〆漆を掛けた。
地糸の赤が透いて見える
昨日柄に塗った瀬〆漆は決め木の跡がムラになり赤が透いて見えるが、これから梨子地漆を掛ければ問題はない。
柄の箍巻き(赤絹糸巻き部分)の上に、厚すぎないように梨子地漆を丁寧に伸ばしながら塗った。
火入れをしたときのガス抜き穴を、ウッドエポキシで塞いだ。
箍巻きをサンドペーパーで研ぎ出しておいた。
その後も何回か梨子地漆で拭き漆を掛け、柄の上塗りまでを終えた。
柄と桿との接合の芯にする木棒を市販の丸棒から切り出し、柄と桿を合わせて、木棒に切り込みを入れた。
この工作がステッキの最も重要なポイントだが、うまく出来た。
油砥の粉で表面を十分に磨いてから養生テープを巻いた後、
赤漆・黄漆・上朱合漆を合わせて筆塗りした。
漆の量は3分の1ずつと思ったが、黄漆がやや多めに出てしまい、朱というより肌色っぽくなった。
色よりも塗りムラの方が心配だが、筆塗りとしてはよい方だと思う。むしろ縮緬皺が出ないかが心配だ。
一昨日の色漆が乾いたが、縮緬皺は出なかった。しかし、ちょうど竹の地色と同じで、まったく色塗り効果がなくて面白くない。
今回研ぎ出したついでに今度は黄漆単独で塗ることにした。
黄漆自体が濁った色でどこまで黄色になるか判らない。
箍を黄色にするので、覆輪は同じような色の金覆輪より赤漆にする方が、見栄えがよかろう。
黄漆を塗って1日後の柄(上)と桿
昨日塗った黄漆の表面が乾いたが、前回の赤漆と混ぜたときより心持ち黄色いかという程度で、桿の色と紛らわしい。
まだ塗りムラも見えるので、もう一度黄漆を掛けなければならない。
表面には漆ゴミが目立っているので、黄漆を漉し紙で漉す必要もある。
黄漆の上をサンドペーパー#800で研いだ。
引き続き黄漆を筆塗りした。今回は木地呂漆1に対し黄漆3くらいの感じで漉し紙に落として漉した。前回よりかなり黄色が強い。
ムラが出ないようにやや厚めに塗った。
これは縮緬皺が出来そうな厚さであるが、どんな結果になることか。
黄漆は縮緬皺が出ることなく綺麗に上がったので、糸の上塗りは終わりとし、覆輪を描くことにした。
覆輪は赤漆とする。
覆輪用の赤漆は、上朱合漆1:赤漆3くらいの割合でガラス板の上に取り、サラダ油とテレピン油を各1滴落として、竹串で混ぜた。
覆輪筆の糸は長めにしたが、漆の粘度がちょうどよかったのか、全くやり直しも無く、桿と柄の覆輪全10箇所が綺麗に描けた。
ただ、漆量が多めなので縮緬皺が心配だ。
桿に出た縮緬皺・下は柄
赤漆が乾いた。
太めの覆輪を描こうとしたので、たっぷり赤漆を使った桿には、悪い予感が当たってはっきりと縮緬皺が出てしまった。(柄には出なかった。)
このままではちょっとみっともない。どうすれば修正できるか、十分に乾いてからサンドペーパーで研ぎ出し再度覆輪を描く以外に工法を思いつかない。
覆輪の縮緬皺が完全に乾くまで1週間は掛かるだろうから、幸い縮緬皺が出なかった柄のすげ込みを先にやってしまうことにした。
まずウッドエポキシを練って柄に詰め込んだ。
桿には芯棒を固定するようにウッドエポキシを落とし込み、芯棒を所定の位置まで押し込んだ。
昨日のウッドエポキシが乾いたので、はみ出たウッドエポキシを掻き落とした。
続けて提げ緒を停める金具を作り、桿にそれを埋め込む溝を掘って、
万能瞬間接着剤で固定した。
昨夜明るい電灯の下で赤絹糸を巻いた。
手許が明るかったので今朝見ると綺麗に巻けていた。
5日に赤絹糸の上に塗っておいた生漆が乾いたので、梨子地漆を筆で重ね塗りした。
柄の接続部のウッドエポキシにも塗っておいた。
研ぎ出し前
研ぎ出し後
柄の閉じ口のウッドエポキシも完全に硬化しているので、盛り上がっている部分を研ぎ出しておいた。
7日に塗った梨子地漆が乾いたので、サンドペーパー#120で軽く研いだ。
#120はちょっと目が粗すぎたようで、赤糸が浮かび出てしまった。
研ぎ出しておいた柄の閉じ口に、昨日梨子地漆を塗り、軽く拭いておいた。
綺麗に上がっている。あと2回も塗ればよいだろう。
桿の覆輪には縮緬皺が出ているので、カッターで桿の表面から削り取るようにして剥ぎ取った。
カッターの刃跡が不均一に残ったが、桿に水糸を2回巻いて強く扱くと削り残っていた赤漆が綺麗に落ちて、殆ど覆輪を付ける前の状態に戻った。
これは簡単で好結果が得られる良い手法だった。
しかしカッターの刃傷が付いているので、梨子地漆で仕上げ塗りをやり直さなければならない。
赤漆で覆輪を描き直した。
赤漆約半滴に、串の先に付けただけの上朱合漆と、サラダ油半滴を混ぜ串先で練り合わせた。漆の粘度はこのくらいが一番覆輪を描きやすいようだ。
覆輪は装飾のため太めに描いたが、前回に懲りて漆が厚くならぬように気をつけた。
昨日糸巻きの上をサンドペーパー#400で研ぎ、
塗っておいた梨子地漆が乾いた。
昨日塗った梨子地漆が乾いたので、
サンドペーパー#120で軽く研ぎ、
また梨子地漆を塗った。
前回梨子地漆を塗った糸巻き部分を
サンドペーパー#400で研ぎ、
また梨子地漆を塗った。
サンドペーパー#400で漆を研ぎ出した。
糸の上は殆ど平滑になった。
その後、直ぐにまた梨子地漆を塗っておいた。
昨日塗った漆で糸巻き部の「段差」は消えたが、
まだ筋状の「線」が残っている。
もう1回塗れば完成となるだろう。
昨日掛けた拭き漆が乾いた。
しかし漆が柄の方まで塗られていなかったので、
糸巻き部の上で塗り残しが出てしまった。
すぐ梨子地漆で拭き漆をやり直しておいた。
柄との接続部にはその後も2回拭き漆を掛けた。
満足な状態になったので、3種磨きを掛け、しっかり磨き上げた。
提げ緒と石突きゴムを付けた。
艶もよいので、これで完成とする。
<2011.12.06.作成>