「翠簾洞漆工集」制作の部 漆工索引 翠簾洞ホームページ入口

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孟宗竹 帯巻花活け W147

19 × 8.5φ cm


拭き漆工房 翠簾洞 素舟齋

孟宗竹の1節で花活けを作りましたが、高さの具合で筆立てにしか見えません。たまたまこの竹の下の節が円筒状のまま残っていたので継ぎ足すことにしました。その継ぎ目を隠すのに帯を巻きました。この帯に始めて若竹色漆を使ったのですが、緑色が出なくて、上等の焼き海苔のように真っ黒です。漆の色が落ち着くまでには数ヶ月かかるでしょう。

11.02.26.

孟宗竹の根元の素材があったので、上中下3個の花活けを作ることにした。
これはその真ん中の節にあたっている。

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 底になる節は綺麗だがやや傾いていて、真ん中が大きくふくらんでいる。


 外周はサンドペーパーで表皮をよく研ぎ出してある。


 重石をかねて底のふくらみを均すように、少量の川砂を円周状に入れ、溶かした膠を流し込んで練り固めた。

11.03.07.

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 外側は、瀬〆漆で地塗りの後、梨子地漆で中塗りを済ませた。


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11.03.16.

内側も瀬〆漆で筆塗りした後、歯ブラシで梨子地漆を掛けて中塗りを終わった。

11.04.17.

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 外側に梨子地漆で何回目かの上塗りを拭き漆した。


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11.04.29.

内側にも梨子地漆で上塗りした。内壁は下塗りと同じ色なので、塗ってあるかどうかの見分けが付かない。指先の感触を頼りに、慎重に筆塗りを繰り返した。

この辺で出来上がりとしてもよさそうな感じになった。

内側塗り

11.06.26.

暫く放置していたが、漆が余り滑らかに塗られていない切り口が気になり、一旦研ぎ出して、あらためて梨子地漆で拭き漆を掛けた。

11.06.29.

この節の下に続く素材で作っている孟宗竹根部の花活け(W146)は完成していたが、背が高すぎるので、先日上部1節を切り落としてあった。

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一方、

この花活けは、このままでは花活けというより筆立てという感じが強いから、ふと、その切り落とした胴を接いでこの花活けの品格を高めようと思いついた。




 上下を当ててみるとなかなかよろしい。

11.06.30.

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 接ぐべき両端は、それぞれ研ぎ出しで減耗しているからぴったりとはいかないが、外周の竹筋を合わせて略決まった。





 接ぎ柱を立てる準備に、養生テープを貼って上下の合わせマークを付けておいた。

11.07.03.

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 本体側に3個所の穴を開け、穴には木工ボンドを詰めて径2.5mmの竹串を立てた。


 竹串は3本とも1cmくらい頭を出して立てた。

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竹串の頭に木工ボンドを載せ、下に接ぐ台に合わせて、竹串の穴位置を決めた。


木工ボンドのマークははっきりと付いた。

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 ドリルで穴を開け上下を合わせた。

どうやら入ったが、固すぎるし2〜3mm円周方向に廻っている。

これを修正すべくドリル穴を円周方向に拡げた。

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 台の穴が大分大きくなったので、ウッドエポキシを詰め込んでから、万力がないので、多少きつい分は強く押し込むだけで決めた。


 ウッドエポキシのはみ出しムラも少なくて、うまく出来た。


 重石に厚い本を載せておいた。

11.07.05.

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 ウッドエポキシはあまり外にはみ出さないで固まった。



 内側も同程度しかはみ出ていない。





 しかし繋ぎ目には隙間がある。


 中に水を入れてみると浸みだしてくる。



 補修には、隙間に瀬〆漆か梨子地漆を流し込んで塞ぎ、外には布着せをするつもりだ。

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 布着せをするに当たり、上下の竹にギャップがあるのがまずい。これで円周方向の繋ぎは間違いないはずだが、それぞれ別の花器なので縁の厚みに差が出てしまったのだ。


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 そこでサンドペーパーで厚みを均した。


 内側にはサンドペーパーが入らないので研ぎ出せないから、接合部の位置まで砂膠で埋めることにした。

11.07.08.

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 砂を多めに入れた砂膠は予定通りうまく出来た。


 砂が表面に出ていて見苦しいが、ここはウッドエポキシを入れて、他の竹から取ってあった節板で覆うことにする。

11.07.12.

砂膠は完全に硬化した。

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膠が少ない分却って固くなったようだが、膠特有の臭いが強い。


 ウッドエポキシを練って丸棒で底に敷き詰め、かねて用意した節板を落とし込んで突き固めた。


 臭いも消えてなかなかよい感じになってきた。

11.07.14.

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 落とした節板を始め、内側に梨子地漆を筆塗りした。


 深くて筆先の感触が判らず、節板の上にかなりの塗りムラが残っていて、綺麗な生地が出ていない。割れている節板の繋ぎ目を隠そうとして少し厚めに塗ったのがいけなかった。


 しかしここは研ぎ出せる場所ではないので、処置無しだ。今後更に塗り重ねていって差を縮めるしかない。

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 外側の繋ぎ目の凹凸に錆漆を塗った。


 砥の粉と木粉を等量混ぜて瀬〆漆で溶いて指塗りした。


 木粉を加えたので錆漆がべたつかず、思う通りに塗れた。

11.07.15.

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 昨日の錆漆が乾いたのでサンドペーパー#120で水研ぎした。

ところが焦りすぎてまだ硬化が不十分だった。

サンドペーパーの目が潰れ、手指に漆が付いた上に、塗った錆漆が剥げて肝腎の繋ぎ目がむき出てしまった。

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 やむなく、また木粉入りの錆漆を作って塗り直した。

11.07.16.

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 木粉錆漆の塗り直しはかなり厚くなっているので、当分触らない方が良さそうだ。

11.07.22.

15日に錆漆を塗ってから1週間が過ぎ、十分固まったようだ。サンドペーパー#120で研ぎ出した。

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完全に硬化しているので研ぎ出すと茶色い粉末になった。


 しかし下の方はまだ硬化が不十分らしく、サンドペーパーの目を潰すようなところもある。そんな部分はあまり力を入れずに研ぎ終えた。

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11.07.25.

錆漆を終わったが、予想していたほど凹凸が均されなかった。しかしこの辺で妥協して布着せをすることにした。

木工糊をごく少量入れて、木粉と木屎粉(こくそ)を等量に合わせ、瀬〆漆で緩めに練った。

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 包帯と練った糊漆             糊漆を塗った包帯


 布は包帯を使ったので目が粗くほつれやすい。予想はしていたが矢張り次々にほつれが出て来て仕事がやりにくい。

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 包帯が長すぎて合わせが大きい。従って重ね合わせでは重なりが厚くなってしまう。

包帯はバイアスで伸びるし糊漆はべたつくしで、寸法を合わせて切ることも出来ない。仕方なく拝み合わせにした。


 少し木粉と木屎粉が多すぎたようで、包帯の格子目が見えない。かなり斜めに貼ってしまったが、貼り直しが難しいので、そのまま何とか収めた。

11.07.26.

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 布着せの拝み合わせは存外にうまく出来た。



 カッターによる切り取りも、殆ど切断箇所が判らぬくらいにうまく切れた。


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 着せた布の上下のほつれをカッターで刮ぎ落とした。

ところが、カッターの刃のあとが深い縞模様になってしまった。


 こうなったら、完全に乾いてからサンドペーパーで研ぎ出すしか方法はない。


 まだ糊漆が半乾きなので、指先が漆で真っ黒くなった。


 この度の反省として、包帯のほつれは早い方が切りやすいだろうと思ったのだが、結果から考えると糊漆が完全に硬化してから切った方が、刃跡の傷は浅かっただろう。

11.07.28.

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 布着せの上下端周辺に残って固まっている錆漆を、カッターで丹念に刮ぎ落とした。





 そのあとサンドペーパー#120で、生地が出るくらいまで強めに研ぎ出した。


 更に花器全体をサンドペーパー#240で軽く磨き、梨子地漆で拭き漆した。


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 ウッドエポキシと節板で固めた底側が汚い。これは地塗りの時錆漆の残りを使ったので錆漆が黒く斑に固まったためだ。


 しかし底が深いので磨くことが出来ない。そのまま梨子地漆を筆塗りした。


 また上下の切り口も拭き漆した。

11.08.01.

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 全体に梨子地漆で拭き漆をした。布着せ部分も薄いながらも全面に塗るようにした。




11.08.17.

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布着せ帯に若竹色漆と木地呂漆を半々に混ぜて筆塗りした。


 左の写真は若竹漆塗の約24時間後で、色は黒としか言いようがない。緑色に見えるようになるには数ヶ月かかるだろう。

11.09.10.

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筆塗り直後は確かに緑色だった

前回の若竹塗りは木地呂漆と半々に合わせて結果は真っ黒だったので、今回は上朱合漆1に若竹色漆2にして合わせてみた。


 塗ってすぐは鮮やかな緑色だったが、数分もすると矢張り真っ黒になってしまった。

11.09.17.

前回よりは多少緑色が判るが、緑色と思って見ても精々焼き海苔程度の緑色だ。


 塗りはこれで終わりとし、あとは3種磨きを掛けて完成としよう。


11.09.19.

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緑色らしくなるには半年くらいも掛かるだろうが、PCサークル箱根一泊旅行のビンゴ景品に提供することにした。

11.10.05.

本日で完成とする。

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(外形寸法 19 × 8.5φ cm)


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<2011.10.05.作成>