戻るマーク
「翠簾洞漆工集」総目録 漆工索引 翠簾洞ホームページ入口

00

亀甲竹の花活けW143

2010年3月〜6月 制作

虫喰いで変型した亀甲竹の節が面白くて
小さな一輪挿しをつくりました

4.5φ × 11.4h mm

拭き漆工房 翠簾洞 素舟齋

P106250006


京都東福寺の門前町で外径5cm足らずで2節の亀甲竹を買ってきました。虫喰いがあって奇形の皺があり、水が漏るほどの穴も開いていました。桿が奇形なので内径は複雑怪奇、指も入らないので漆を満足に塗ることが出来ません。粗いサンドペーパーで削りウッドエポキシを使ってくぼみを埋めるなど、目に見えないところで苦労しました。何とか仕上げてみると福禄寿のような目出度い形が現れました。


素材 地塗り 下塗り 朱漆 節影 上塗り 仕上げ 完成

1)素材

2009.11.24.

昨年京都に紅葉狩りに出掛けた際、東福寺の門前市に竹細工を売っている店が出ていた。

晒し竹を1節ぶつ切りにして花活けにして売っていた中に、変形した亀甲竹2節を使ったものが1本だけあった。

P103140023 P103140021 P103140024 P103140022

手に取ってみると、花を生けるように細い竹の1節を皮を剥いて中に入れてあった。しかし内部は節も変形した内側も狭いので中子の竹は細すぎて全く言い訳に入れてあるだけだった。

奇態な節が布袋のようにも見えて面白かったので、店番の坊やの言うとおり500円で買ってきた。

P103190007

2010.03.15.

亀甲竹の表面が複雑なので節抜きをすることも出来ずそのまま放ってあったが、

今日木工鑢で内部を削ると案外花活けらしくなってきた。

竹の内側が汚かったので水洗いした。

すると亀甲竹の節の両側にある凹みの部分から水が漏れてきた。

2010.03.19.

P103190002 P103190003
中央部の白いところが
穴に詰めたウッドエポキシ

水漏れの穴にウッドエポキシを充填した。内側は細い筒の側面なのでよく見えなかったが、ウッドエポキシを詰め込んでいくとかなり大きな穴だった。

P103190005

まだウッドエポキシが沢山残っていたので、底側の捩じれて深く食い込んでいる竹のくぼみにも、普通の底として見られるように充填しておいた。

これで花を活けても底が抜ける心配は無くなった。

2010.03.24.

埋め込んだウッドエポキシを木工鑢で研ぎ出した。

節の内側はデコボコが複雑になっていて、尖っていたり、軒のように張り出していたりする。その突起部がうまく削れたようだ。

P103240009

P103240010

その後、張り出しの下の陰になっている部分に再度ウッドエポキシを塗り付けて、漆を塗る時に塗り残しが出ないようにした。

更に木工鑢で、指を入れて触れる深さまでは研ぎ出しておいた。

P103240005P103240006

次いで、外側の亀甲節の筋の上下にこびりついている汚れを取るようにしながら、高くなっている竹皮の落ちた跡を、切出しでこそぎ落としサンドペーパー#120で軽く磨いて、手触りが柔らかくなるようにしておいた。

2)地塗り

2010.04.10.

P104100002

P104100010

水漏れや凹みに塗り付けたウッドエポキシの上に、錆漆を作って指で塗り付けた。見えないところだけに慎重に厚く塗っておいた。

続けて、底の外側と内側全面に錆漆を塗り付けた。

P104100005

表面の縦に裂けた罅割れ部分にも錆漆を塗り込めた。はみ出した錆漆はティッシュで拭いておいた。

2010.04.17.

表面のひび割れはまだ殆ど埋まっていないので、再度錆漆を塗り込めた。前回ティッシュで拭いておいた表面の漆が少しムラになっている。ムラはテレピン油を付けて強く拭いても剥げない。

それならと梨子地漆を全面に塗り、拭き紙で十分に拭き取った。

P104270027

乾いてみると、全面が少し濃くなったようだが、

  これだけ見ても漆を塗ったがどうかは分からない。

P104270025

P104270026

3)下塗り

2010.04.25.

P104270032

この間、内側に梨子地漆を1回塗った。底だけ筆塗りし側面は歯ブラシで塗った。口が狭いので中が見えず、感じだけで塗らざるえない。

今日は内側に重ねて呂色漆を塗った。塗り方は前回の梨子地漆塗りと同様にした。

また、底にも呂色漆を塗っておいた。呂色漆の上には朱漆を塗る予定だ。

表面全体には、桿の変型で狭くなった隙き間を中心に、梨子地漆を塗り拭き紙で十分に拭き取った。

4)朱塗り

2010.04.28.

朱漆を練って、たっぷり目に歯ブラシを使って塗った。内部と外側の底のにも、さらに上下の切り口(縁)にも朱漆を塗った。

一方、外周全体をサンドペーパー#800で軽く空研ぎしておいた。

P105010007

2010.05.01.

28日に塗った朱漆が厚過ぎて、ひどい皺が出来てしまった。

切り口(縁)は一旦削り取ればよいのだが、内側はどこまで修復出来るか分からない。荒目のサンドペーパーで気長に研ぐしか方法がなかろう。

  過ぎ足るはなお及ばざるがごとしというが、過ぎた方が始末が悪い。

P105040006

P105040003

2010.05.02.

厚く塗ってしまったところはなかなか乾かない。

表面が固まってきたのでカッターで厚みを削ってみた。

矢張り内部はまだ半乾きでネトネトしている。しかしそれだけにかなりよく剥けてきた。

2010.05.04.

それから2日経ち削った部分も固まったので、今度はサンドペーパー#400を切って両面テープに貼り、指に巻いて根気よく磨いていった。

2010.05.20.

先日、サンドペーパー#400で朱漆を磨いたら、まだ乾燥し切っていなかったようで、厚く塗った部分が剥げて丸い穴になってしまった。

そこで、また三日ほど経って漆が乾いてから、前回穴になった部分を中心にサンドペーパー#400で内部全体を磨いた。

竹の生地が出た部分、朱漆が剥げて黒く見える部分、サンドペーパーが届かずまだ赤い部分など、ひどいムラが出た。

止むなく木地呂漆を二度塗って生地を固め、その上から朱漆を塗った。

19日に二度目の朱漆を塗った。乾いたので内側を覗いてみたが、漆が光るのでムラがあるようにも無いようにも見える。

しかし、これで内部は終わりとし、上下の切り口を軽く板張りしたサンドペーパーで磨いた。

さらに材料を採った際の鋸で底の外周の竹の皮が剥げた小さな疵をウッドエポキシで塞いでおいた。

5)節影

2010.05.27.

P105270006

P105270009

P105270010

P105270011

表面をほとんど磨いていないので、節陰は付かないかと思っていたが、梨子地漆で軽く描いてみると薄いなりにはっきり節陰が出来た。少し濃い目なのは時間とともに落ち着くだろう。

僅かにぼかしが綺麗に出ていない面があるので再度節陰を塗る必要がある。また尻尾を1回しか塗っていないので、もう少し拭き漆をしなければならない。更に上下の切り口を塗ればもう完成でよかろう。

2010.05.31.

最上段につけた節影
P105310007

昨日3回目の節陰を塗った。

 2回目は中の節に一部ぼかしがうまく出なくて、
   漆の境界が目立つ部分があったので、修正のために3回目を塗った。

2回目では保持するために一番上には塗れなかったので、
3回目で最上段にも節陰を付けた。

2010.06.01.

P106010007P106010008

ぼかしはよく出て来たがもう一度節陰塗りをして全体のバランスを整えた方が良さそうだ。

また、底の切り口にあった鋸で切った際の竹表面の欠けに対して、先日ウッドエポキシで充填しておいたのを昨日梨子地漆で拭き漆をしておいたのがうまく出来ていた。

P106010011

そして、先日見落としていた下の節を切った時の鋸疵を、今日ウッドエポキシで埋めた。

P106010016

2010.06.04.

先日塗ったウッドエポキシをサンドペーパー#400で研ぎ、梨子地漆を塗った。しっかり拭いたつもりだが鋸疵の部分は色ムラを取ろうという気持ちが強くて、塗り足した部分が濃くなって際立ってしまった。

P106050001
濃い漆を落とした

2010.06.05.

濃くなった部分をサンドペーパー#800で研ぎ落として、梨子地漆を面相筆の先で僅かに塗り、よく拭いておいた。

2010.06.06.

P106010011

期待どおりに梨子地漆で修正が出来た。

しかし少し薄いのでもう一度塗って仕上がりとなろう。

6)上塗り

P106080007P106080009

2010.06.07.

昨日、塗りムラに梨子地漆を塗ったが、あまり拭き過ぎて効果がなかった。

そこで今朝、また梨子地漆を薄い部分にだけ塗っておいた。拭く手を少し緩めたが今度は濃くムラが出てしまった。

塗ってからまだ3時間くらいしか経っていなかったので、ティッシュにテレピン油を付けて指や爪できつく擦り、塗った分を剥がしてしまった。

すぐまた梨子地漆を指塗りしておいた。

P106090013

2010.06.08.

今度はほぼうまく出来た。

2010.06.11.

P106150018P106110008

一昨日、朱漆を使った残りがあったので、黒ずんでいる内側を塗り直した。

これで内側は完成とする。

P106150018P106150021

2010.06.15.

昨日節陰を2回塗りした。

ぼかしがうまく出るように慎重に拭いた結果、満足できる状態になったので、明日3種磨きをしてこれで完成とする。

7)仕上げ

P106160009

2010.06.17.

完成したつもりだったが、口の周囲の漆に少しムラがあり汚いので、口だけ研ぎ直して梨子地漆を掛け直すことにした。

2010.06.18.

P106180009 P106180013

底側の切り口にも1箇所だけ漆が厚くなっている部分があったので、この際上下の切り口を水研ぎして竹生地まで研ぎ出した。

P106250002 P106250003

瀬〆漆を約2倍に薄めて筆塗りしたが、直ぐに染み込んでいった。留め漆としてはこのくらい薄めた方がよいのだろう。

8)完成

2010.06.25.

留め漆の後、4回程梨子地漆を掛けた。

最上層の節陰が弱かったので、切り口の梨子地漆塗りの際、最上部だけ2回繰り返して節陰も付けた。これで漸く所期の陰が出たので、本体外側は完成とした。

P106180021 P106180020

上下の切り口も4回も塗ったので3種研ぎを掛けた。艶は出てきたが、どうも均一な表面ではなくまだ満足な状態ではない。

また切り口を研ぎ出し表面を平滑にした後、何回か切り口に拭き漆を掛け、

完成とした。

P106160005 P106160002 P106160007


-----<2013.02.19. 作成>-----