「翠簾洞漆工集」制作の部 漆工索引 翠簾洞ホームページ入口

完成した結界

結界      
「和 而 不 同」
W134

 

拭き漆工房  翠簾洞 素舟齋 

結界は京畳半畳分が標準の幅と思いますが、もっと小さな結界をとの希望がありました。変則の結界を作るのならば小型にするだけでは面白みがないので、非対称で安定性が高いものをと企画しました。実は左右対称の組み物を作るよりも1点ずつバラバラに作る方が易しいのです。孟宗竹に細い黒竹を配した3点正立にして、しかも全体としての調和を求めました。そこで銘を「和して同ぜず」としました。私の好きな言葉です。


§ 工作 § 塗り・組立 § 仕上げ

 
§ 工作

2009.07.08.

結界の幅が短いものとの希望があったが、一般的な鳥居形では面白みがないので、脚は片側を柱だけの3脚にし、対称性を破壊する意匠を構想した。

2009.07.10.

P097100005

1本立ちの柱には黒竹の根元竹を使うことにした。床に付く部分が根で拡がっているので細くても力強さが出る。その他は雄竹雌竹の太いの細いのを取り混ぜた。
材料が決まると早速作りたくなり、今日は截断と節取りまで一気にやってしまった。並べてみると大凡構想が生きている。

2009.07.12.

P097130003

木地のままでは作業中にいろいろと汚れが付くので、始めに生漆を塗って木地留めをしておくことにした。

2009.07.13.

黒竹の柱を横竹に通し、孟宗竹の柱の脚を差し込むところまで仕事が進んだが、横竹の左右を間違えて、根元の方に大きな穴を開けてしまった。気楽に、このまま成り行きで進める。

2009.07.19.

P097160006

13日の工作でどうやら2本の脚は真っ直ぐに立つようになった。真ん中の横木もどうにか収まった。
全体の形が見られるようになったのだが、どうも少し間が抜けた感じが否めない。

P097190011

そこで細い横木として黒竹柱よりも更に細くて節が多くしかも節の凹みが無い黒竹を上下の桿の間に入れてみたが、まだ物足りない。
 更にその横木の上に竹串を5本立てることにした。

P097200002

次いでこの竹串の色を考えた。梨子地漆、呂色漆、朱漆のいずれも単色では気に入らないので、絹赤糸を巻いて朱と黒の研ぎ出しにしてみることとした。

2009.07.23.

P097200003

串に巻いた絹赤糸の上に生漆で地塗りした後、朱漆を厚めに塗った。

P097230008

この5本の串を刺す穴を開けた。40mmの等間隔に1mm穴を開けて位置を確認したら、全体が6mmほどずれていた。

P097230001

朱漆を塗った串が乾いたので全体を組み立ててみた。接続部は全部まだ差し込んだだけなのにしっかりと立っていて少々揺れても倒れない。

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§ 塗り・組立

2009.07.30.

P097300010

これで一通り工作が終わったので、不用意な汚れを防ぐための木地留めの漆をすべてサンドペーパーで研ぎ出した。
 下の横木も程良く地文様が出ている。

2009.08.07.

P098070010

5日に塗った最初の節影は綺麗に塗られている。

P098090004

上の横木に誤って空けた.1ミリの穴には竹串を削って差し込み塞いでおいた。

梨子地漆で2度目の節影塗りをした。

2009.08.09.

P098090020

最後の、下の横木に黒竹の脚を刳り込むことで工作をすべて完了した。ここは上下が真っ直ぐに揃うか、高さがうまく決まるかなど心配が多かったが、電動ドリルの刃を手で廻して慎重に穴を開け、半丸金鑢で上下を通して研ぎ出したりした結果、一度でピッタリと決まった。

2009.08.16.

P098160022

串に漆を塗って金泥をまぶした。
 乾いたところで組み立ててみると、金の串もそんなに目立つほどでもない。さて、呂色漆を上塗りするかどうか迷ってしまった。

2009.08.18.

P098180007

昨日串の金漆の上に呂色漆を薄めに塗っておいた。これを研ぎ出すと、ちょっと面白い景色となった。

2009.08.30.

P098220005

個々の接合部分の寸法や形状を、錆漆の盛り付けや細かいコマを作って、接着強度が増すように微調整した。
 全体を組み立てて安定性を確認してから、サンドペーパー#1500で軽く磨き、梨子地漆を漉して仕上げ塗りをした。

2009.09.03.

P099030001

串と黒竹の横木は、きっちりと周囲の竹にはまっている。

一方太い柱の脚がどうも土台の竹に真っ直ぐに入っていないようなのが気になり、中に詰めたウッドエポキシを削って修正した。

2009.09.06.

P099060003

昨日横木に塗った芽書きが乾いたので、梨子地漆を漉して全体に拭き漆をした。
 今度うまく塗れていればいよいよ組立をする。

2009.09.08.

P099080007

これからの組立に当たり、ウッドエポキシで汚れないように各部品に養生テープを巻いておいた。

P099080008

全体を1度に接着したいが、まず脚の支えになる横木だけを着けたおいた。

2009.09.13.

P099130008

太い方の柱を固定してもその他の部品は組み立てられることを確認してから、ウッドエポキシで接着した。存外にウッドエポキシを使ったが接着は周囲からのはみ出し具合も平均していて、うまく出来た。これでまた組立具合が一段とガッチリしてきた。

2009.09.15.

P099150001

どこにウッドエポキシを付けどこは木工ボンドにするか、またどこから始めて手順はどうするかなど、十分考えて最終的な接着に掛かった。
 組み終わってから少し歪みがあるようなので、枕などを工夫して乾燥を待った。

2009.09.16.

P099160007

組み立て成功!
 心配した歪みもなくきっちりと決まった。
 はみ出したウッドエポキシと木工ボンドを小カッターで削り取った。

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§ 仕上げ

2009.09.20.

P099200004

接合部の凹凸などの微調整は木屎漆を作って均した。
 木屎漆は艶がないので、その上に梨子地漆を面相筆で塗った。当然漆もマダラになったので塗り重ねが必要だ。

2009.09.29.

マダラになった部分を2回拭き漆を掛けたらほとんど綺麗になったが、横棒の継ぎ口だけにまだ色ムラが残っている。今日この部分にだけ梨子地漆で拭き漆した。

2009.10.13.

2〜3回梨子地漆を塗り重ねたので、接続部の色調合わせは綺麗になった。

P09A130013

油砥の粉・呂色漆磨き粉・角粉の3種磨きの結果、漆のムラも取れてよい艶が出た。

これで完成とする。

40w×30h×14t cm

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