2007年6月29日受託 8月7日補修完了
拭き漆工房 翠簾洞 素舟齋
友人に「茶碗の金接ぎ」を頼まれました。見ると、とてもザックリとした土で焼いてある茶碗で、縁が何ヶ所も崩れたように欠けています。下地がザラザラだから錆漆が乗りやすいかと思いましたが、逆で錆漆が乾くとポコッと剥げやすくなります。錆漆の砥の粉を少なく漆を多くして何回も塗ってやっと金蒔きにまでこぎつけました。
先日友人から茶碗の金接ぎを頼まれていたので、今日彼の家に寄って預かってきた。随分と土がザックリとした茶碗だった。
新うるしの金接ぎが剥げた
一部、彼の奥さんが「新うるし」に金を練り込んで「金接ぎ」をしてみたということで、それらしい跡があった。
家に帰って「金接ぎ」部分に切り出しの刃を当てて力を入れるとポコッと剥げてしまった。「新うるし」は陶器の地肌に全く馴染んではいなかった。
どこまでが欠けなのか判らない
茶碗の縁は何箇所も欠けているが、あまりザックリした肌なので欠けたのかこれが地なのかちょっと迷う程だ。
一方、地肌が粗いだけに錆漆ならうまく接着するだろう。
錆漆を作って欠けた傷に塗った。
大きな傷は一度では塞げないので、平らになるまで錆漆を掛けて埋めていく。
錆漆は硬化するのに時間が掛かる。
一応表面が固まるのでつい手を掛けてしまうが、中はまだ柔らかくてまた錆漆をやり直すことになる。
今回も、縁の錆漆を3〜4ヶ所手直しする必要がある。
金粉の上に朱合漆を薄く塗り、拭き紙を当てて漆を吸い取りながら押さえた。
時間が経つと、金が黒くなって光が出ないが致し方ないところだ。
予想通り金の上に漆が赤黒く乗っている。
丸鑿(まるのみ)ではみ出た周囲や被っている漆を削った。
多少は金が見えるがとても金接ぎしたとは云えない出来だ。
この方法では何回やっても大同小異でうまくは出来るまい。
金色の新うるしで試してみようかとも思っている。
新うるしを使うのは気が乗らなかったので放っていたが、たまたま金接ぎは「接着部分の上に黒漆を塗って乾かし、さらに赤漆を塗り、金粉をまぶす手法」という説明を目にした。
この時、茶碗はまだ厚く付けた錆漆の乾燥中であった。
朱漆の上に蒔いた金粉はこすっても落ちないので、上から留め漆を塗る必要はなかった。
朱漆の朱顔料が、金粉が漆の中に沈み込むのを抑えて、漆の表面に金粉を保持しているのかと思う。
錆漆も固まったと思い、サンドペーパー#2000で角を削った。
滑らかになった部分もあったが、2箇所はまだ錆漆が必要だ。
朱漆を塗り金粉をまぶした
漆が乾いたので余分な金粉を拭いた
前回(18日)金接ぎをした4箇所に朱漆を塗り金粉をまぶした。
金粉をまぶした4箇所の金接ぎは満足な結果だった。
今日磨いた部分は呂色漆を塗ってから朱漆を塗る。
30日に、2箇所に錆漆を塗り、4箇所に呂色漆を塗っておいたが、
今日は呂色漆の上に朱漆を置いて金粉を蒔いた。
錆漆を塗った2箇所が乾いたので砥石で磨いたら、今回乗せた錆漆がそっくり剥げてしまった。前回の錆漆は全く下地に馴染まなかったようだ。
梨子地漆を下地にw塗った
これは砥の粉が多過ぎ漆が少なかったのかと思って、前回の錆漆の表面に梨子地漆を塗っておいた。
この上に多少砥の粉を少なめにした錆漆を塗ってみようと思う。
砥の粉を少なめにした錆漆を少量塗ったあとサンドペーパー#1500で磨き、呂色漆を塗っておいたところ、綺麗に上がっていたので、朱漆を塗り金粉をまぶした。
数時間で乾いたので金粉を拭いてみるとうまく出来ていた。
これで金接ぎは終わりとする。▲Top▲
<2012.12.07.作成・掲上>