すすき野SS
コーディネーター・メモ (独り言
某月某日
 11:00 ○○氏の娘さんより「母親が死去した」と電話の連絡。詳細不明。
 SSが係わってから2週間。突然死をなぜ予想し得なかったのか、自問する。

 呼吸困難、発汗、発熱、顕著な腰痛、その状況は家庭介護のギリギリのところにあると判断した。それゆえ強引に病院受診を勧める。だが娘さんは病院受診になぜか乗り気ではない。本人の強い希望で病院搬送となったが、気になりあえて同行を申し入れる。
 まず間違いなく背骨の圧迫骨折と読々だのだが、Dr.はX線の結果はなんとも言えないと診断。入院できず。「痛み止めの薬を出しますから、もし痛みが引かないようならば、骨折かもしれません。でも99%大丈夫でしょう」とDr.の話し。
 翌日、痛みがあると言いながらも病院には受診せず。(娘さんよりの電話)
 以後4日ほど連絡なし。
 介護依頼を受け、ポラと共に訪問したが、意識はクリア(多少のボケはあり)。
痛みもかなり軽減の様子。「昼間、保健婦さんが来た」と本人は言い、体調はまずまずに見えた。
 4/9(ボラ派遣当日)の夕食後、孫たちと共にカセットテープを聴く。
 同夜、11:00前後、突然の心臓停止。救急車により運ばれるが不帰の人となる。
死因は娘さんによれば[心筋梗塞]。

 4/11夜、通夜。翌12日告別式に出席する。
 当初の接触時、緊急性はあったが死は予想もしえなかった。兆候を見逃したのか?
 一週間前までは元気に歩いていた、という情報が判断を狂わせたとも考えられるが、その元気とはどの程度のものか確認が出来ず、娘さんの言葉だけが情報源では、確かにきつい。死因が事実[心筋梗塞]ならば(後日、保健婦さんより死因不明と聞く)コ−ディネーターの限界と捕らえる事も出来るが、それで良いのだろうか? 娘さんが再三病院行きをためらった背景は、いまとなっては知る由もない。
[最重要協議課題]MC:メディカルコーディネーターの必要性。



某月某日
 来訪者2人あり 地域外在住(住所氏名あえて尋ねず)
 先に電話があり、数分後に話を聞いてもらいたいと父子(父親60代、息子30代)来所。88歳になる祖母の介護の件について、「SSはどのようなサービスを提供してくれるのか」と聞かれる。
 左手のシャントの跡より、父親が人口透析を受けていることが分かる。二人とも困惑の表情が顕著。ほとほと困りはてだれかにSSを聞いて来たのだろう。
 地区外であり、あえて詳細は聞かなかったが、ショートステイの方法、デイの利用の仕方、及び区社協の所在地を伝え30分程でお引き取りを願う。
 SSは会員制度を取っており、地区外での活動はできない旨を素直に納得してくれただけに、たいして力になれないことが悔やまれる。父親の体力はすでに限界である。



某月某日
 介護再依頼(ヘルパー)  ○○さん80歳
 依頼者(長男)
 すでに7回の派遣を受理。ローテーションにて派遣。
 リハビリ施設入所後、1ヶ月にて退所。
[見違えるほど元気になりました。一人でトイレにも行けます]との長男の言。前回の介護の折り、ポラが○○さんの顔にアザを発見。「息子に殴られた」と○○さんは言う。真偽の程は不明だが、ボラの言動を元に○○さんが長男に何かを話した節も見受けられる。
 ボラの何げない発言行動が大きな波紋を引き起こす。○○さんの湯飲みを漂白したい、と希望するボラに、まだそこまでのコミュニケーションが家族との間に取れていない、と行動を止める。
 在宅ボラは異文化と接触している、と捕らえるべし。当初はなにもしない、なにも出来ないのだ。



某月某日
 介護依頼 (他の地区社協管轄)
 ○○氏(66) 
 「89歳の母親の世話をしている。1〜2回/月でもいいから母親の話し相手に来てもらえないだろうか。また他にはどんなことをしてもらえるのだろうか?」と電話。

 精神的に疲労が蓄積している。また老人介護のノウハウがなく、どうしたらよいかの把握ができていない。保健婦の訪問はあるようで、SSも彼女から聞いて知る。

[地域外であること、緊急性がないこと、現実に手一杯であること]等を伝え近在のボラを担当の民生委員に捜してもらうように勧める。民生委員を知らないと言うので調ベて連絡する。電話の最中に涙声となり泣き出す。心細い○○氏の心情がヒシヒシと伝わる。しかし、どこまで応援してよいものだろうか。

 広域のSSネットワークが、どうしても必要と思われる。


           
某月某日

電話が鳴る。
「あの、生ゴミの搬出をしてもらいたいんですが・・・」
きたっ、事前にケアマネジャーから依頼があり、一度正式に断わった件だが、今度は本人直々だ。

二人暮らしの高齢の夫婦者で、今回以前にも二度他のことで依頼を受けている。
一度は、歯医者に通いたいので送迎を頼みたい。
もう一度は、川崎の病院まで週に1回送迎して欲しい。
どちらもコーディネーターが出向き細かい打ち合わせの後、送迎チームを組み、地図を作り、さらに現地まで実地に赴き確認した。
それで、明日が最初の稼働日という前日、念のために電話を入れると、
「あ、その件ならもういりません。他が見つかったので」
と、あっさりと断られた。
これが二度目のドタキャンだった。

電話の向こうでは、そんな過去のことは意にも介せず、記憶すらしていない様子。
淡々と自分の都合だけを述べる。
「週に3回ね・・・、それから」
なぜ二人暮らしで週に三回ものゴミが出るんだ・・・と思いながらも黙って話を聞くが、あまりにも自身の都合だけを並べるのでついにこちらも堪忍袋が切れた。

「過去に、こういうことをして下さいましたよね。こういうこともありましたね。覚えてらっしゃいますか。前触れもなくキャンセルされるのはこちらとしてはもっとも困るのです」
『あっ、あの、今度はそういうことはないと思います』
「前にも、一度そう仰られたんですよ」
数秒の沈黙があった。
『・・・・・じゃ、そういうことで』
「はい、そういうことです」
と意味不明の言葉で受話器を置いた。

もちろん、多少の後悔めいたものはあるが、コーディネーターだって人間なのだ。



某月某日

『あの、これまで毎週の水・金に来て貰っていたのですが、隔週の水・金にしてもらえませんか』と電話。
多少の痴呆のある伯母の保護監督者である姪御さんからだ。
「隔週の水・金ですと、いつも同じ人が行くとも限りませんがそれでもよろしいですか?」
それは、伯母の精神面を考えると困るという。さらには、派遣ボランティアに対しての大きな誤解までほのめかす。
「1〜2時間で済むものを、なにゆえに5時間も6時間もいるのでしょうか? そんなに長時間いてもらう必要はないのです」
姪御さんご本人は、週一回、月曜日に来るだけだ。しかも、昨年ご主人が亡くなり、病気の伯母が残されるまで、何年も訪れてはいない。
一方、SSは7年越しのつきあいだ。どちらが当事者のことをより理解しているのかは明白。
それにもともとが姪御さんではなく、本人の依頼で動いていたものを途中から姪御さんが割り込んだのだ。当然、その背景には亡くなったご主人の遺産が絡んでいる。子供のいない夫婦だったので、姪御さんが直系の相続対象なのだ。
今回だけではない、以前からもSSは【泥棒猫】のように思われてきた経緯がある。SSはご本人のメンタル部分を重視して動くために、長時間の活動にもなる。食事や掃除だけで帰るわけでない。その辺りが途中から入り込んだ姪御さんには理解できない。

ご本人には気の毒だが、これは縁を切らなければならないケースだと判断した。
「ならば、いっそのこと介護保険の上出しでヘルパー派遣して貰った方がよろしいでしょう。SSはあくまでも緊急時に対応しますから、また緊急時に申し出て下さい」と強引にSSからの派遣はなしとした。
もちろん介護保険の上出しは、SSの活動費用の数倍は掛かるが、そんなことまではもちろん説明しない。

とはいえ、SSが手を引いたあとの処置については、担当ケアマネジャーとの打ち合わせが緊急に必要だ。
高齢者との対応に、遺産がらみ財産がらみは避けては通れないが、SSが手を出せるのはせいぜいこの程度までなのだ。