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調理実演:1/350英国客船モリタニア号を作る
その2:製作準備
2003/02/09


製作準備

 キットを眺めての印象を少し。

 基本的には優れたキットと書きましたが、さすがにモールドは現在の目で見ると甘い部分もあります。個々の装備品に関して資料的な問題はあまりないので、あとは取捨選択のさじ加減次第だろうと。

 船体の基本形状には大きな問題はないようですが、船首や船尾の形状はシャープさを欠きます。この時代の高速客船の船首は正面から見るとナイフのように鋭角に切り立っているのが特徴で、ドック入りしたモレタニア号を正面から仰いで撮影した写真では手先が切れそうなほど見事な形をしています。しかし、キットの船首は「もっさり」したもので、とても4日間平均26ノットの速力が出るようには見えません。また、船尾の表現もだるいもので、モールドを鍛え直す必要があるようです。

 古い客船のキットでは「手すり」が甲板や船室と一体化されている場合がありますが、これは船体に付くもの以外は全て別部品になっています。ただ、下部デッキにつく手すりの中には上のデッキまで支柱が伸びているものもあり、その処理は上のデッキの製作と平行して行う必要があります。それらの出来不出来は即全体の印象をも左右するため、面倒で厄介な工程になりそうです。また、ボートダビッドやクレーンなど、何層ものデッキに関係する部品に関しても注意が要るようです。

 船室の窓の形はルシタニア号とモリタニア号では違いがあり、キットの船室のモールドも悪くはありませんが少しだるい感があり、できれば船室ごと作り直したいものです。また1等プロムナード・デッキの船室の後端はオープン形式のベランダ・カフェになっていますが、キットは内部が素通しになっているだけです。ここは非常に目立つ部分なので、内装も含めて丁寧に作りたいものです。

ポイントとして考えていることは、

  • 時期はスクリューを交換してからタイタニックが沈むまでの間、
    すなわち1909〜1912年頃の状態とする。
  • モールドの取捨選択の基準及び表現は前作フッドに準じるものとする。
    • 基本は実物で35cm、模型で1mm以上のものは極力再現する。
    • 甲板は塗装せず、STウッドの細切りを貼る。
    • 船体の外板の継ぎ目は一切再現しない。
    • 張り線・手すりは極力再現する。
    • 天窓・客室窓のガラス部分は再現する。
    • 船体の丸窓のガラスは再現しない。
  • シャーラインはキットに準じる。キャンバーは無視する。
  • エッチングは市販品と自作品を併用する。
  • 各デッキの梁は、外から見える部分は極力再現する事とする。
  • 船室の窓は全て作り直す。船室はキットを用いるか自作するかは保留

 商船の場合、外板表現は軍艦よりも「らしさ」を引き立てるものですし、キットにも凸モールドで表現が成されていますが、今回の製作では全て削る事にします。これは1/350というスケールと写真の実船の見え方を比較した場合、無い方がかえって船体のラインがすっきりして速そうに見えるだろうという個人的な思い込みに過ぎません。船体のハッチ類もモールドがだるいので、エッチング等で置き換える事にします。

 船体に手を入れるといってもプラですし、前作フッドほどは時間が掛からないだろうと思うのですが、自作のエッチングがどの程度使えるかによっても変わってきそうです。

資料のことなど

 今回、製作の参考とする主要資料は3冊あります。

"OCEAN LINERS OF THE PAST No.2 LUSITANIA & MAURETANIA"
 New York Graphic Society刊(1970)
"CUNARD TURBINE DRIVEN QUADRUPLE-SCREW ATLANTIC LINER MAURETANIA"
 Mark D. Warren編/Patrick Stephens Limited刊(1987)
"Liners The Golden Age"
 Robert Fox著/Konemann刊(1999)

 "OCEAN LINERS〜"は英国の造船専門誌"The Ship Builder"からルシタニア号に関する記事と、1907年11月モリタニア号竣工記念特別号の復刻版、"CUNARD TURBINE〜"は同じく造船専門誌"Engineering"の特別号の復刻版です。いずれも竣工当時の技術資料から内装に至るまで多数の図版と写真で解説した内容で、実船を理解する上ではどちらも不可欠な資料です。図版や写真には共通する部分も多いのですが、前者は収録点数が非常に多く、後者は365*275mmの大判の本でディテールがつかみやすいのが特色です。いずれも有名な本でインターネットを用いて海外の古書店から取り寄せる事は不可能ではないようですが、かなりのプレミアが付いている事もあるようです。

 "Liners The Golden Age"はフッドの調理実演のトップページでも一度取り上げましたが、20世紀初頭〜1950年代までの北大西洋航路の豪華客船の写真集で、270*350mmの大判サイズに加え収録写真がどれも鮮明な点が特色です。これは2003年2月現在amazon等で購入がまだ可能で、客船に興味のある方なら手元に置いて損はありません。モリタニア号に関しては約100年前の写真とは思えない、つい昨日撮ってきたような素晴らしいモノクロ写真が多数掲載されています。

 他に、実船に関する本や写真集などがありますが、それらに関してはまた機会を見て書くことにします。
 


上左:OCEAN LINERS OF THE PAST
上右:CUNARD TURBINE...MAURETANIA
下:Liners The Golden Age

 以降、次の項にて。(製作はこの段階で無期中断中です)