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キット雑感(1991-1996)

かつてPC−VAN模型倶楽部SIGへ書いた文章から
新製品の感想を中心に載せています。
内容は挨拶文や明らかな誤りを除いて作成当時のままとしていますが、
補足事項などは※注で記しています。

INDEX

内  容 メーカー/スケール 日  付
WL外国艦の思い出   (1991.06.18)
練習帆船「初代海王丸」 [今井1/150] (1991.07.21+
2006.12.24)
軽巡「名取」「鬼怒」 [田宮1/700] (1992.12.16)
戦艦ビスマルク発見(書籍) (文藝春秋社刊) (1993.07.02)
戦艦「金剛」 [長谷川1/700] (1993.07.10+07.14)
軽巡洋艦「那珂」 [フジミ1/700] (1993.07.25)
装甲艦「アドミラル・シェーア」 [フジミ1/700] (1993.07.28)
重巡洋艦「利根」 [青島1/700] (1993.09.13)
航空母艦「翔鶴」 [田宮1/700] (1993.12.29
+1994.03.04)
航空母艦「瑞鶴」+WL予測 [田宮1/700] (1994.05.30)
WL値上げ+大型艦用新パーツ   (1994.09.14)
装甲艦ドイッチェランド級3隻 [エレール1/400] (1994.09.24)
航空母艦「鳳翔」 [フジミ1/700] (1994.12.03)
駆逐艦「陽炎」+1994年私感 [ピットロード1/700] (1994.12.25)
WL小型艦用新パーツ   (1994.12.31)
駆逐艦「雪風」 [ピットロード1/700] (1995.02.04)
駆逐艦「夕雲」 [ピットロード1/700] (1995.03.11)
駆逐艦「朝霜」 [ピットロード1/700] (1995.04.13)
軽巡洋艦「エムデン」 [ドイツレベル1/350] (1995.05.10)
駆逐艦「秋月」「照月」 [青島1/700]  (1995.07.29)
駆逐艦「樅」 [長谷川1/700] (1995.08.14)
駆逐艦「冬月」「宵月」 [青島1/700] (1996.02.25)
潜水母艦「長鯨」 [ピットロード1/700] (1996.10.20)
工作艦「明石」+1996年私感 [ピットロード1/700] (1996.12.30)




WL外国艦の思ひ出。
(1991.06.18)


 ウォーターラインの外国艦はめぼしい(同型艦の多い)主力艦艇を発売する時に 大海戦の艦隊編成や艦船の歴史などをほとんど考慮しなかったために、中途半端なラインナップで止まってしまった印象があります。たとえばビスマルク追撃戦を再現したくてもプリンツオイゲンやアークロイヤルがない(フジミのアークロイヤルは戦後に完成した3代目だ ;_;)。戦艦を例に挙げても条約型戦艦はタミヤのフッドとネルソン型のみで、ひどく偏った内容になっています。
(外国艦が売れなかった理由の何割かはここにあると思うが)

 1977年の初頭に田宮からフッドが発売された当時、その次は条約型の戦艦が発売される予定だったと聞きます。その中にはテキサス・ニューヨーク・ペンシルヴァニア・アリゾナといった米国の主力戦艦やプリンツオイゲン・ヒッパーのドイツ重巡洋艦の名前が挙がっていました。ところが、その直後ウォーターラインの外国艦の開発は中断され、これらの企画も深海に沈んでしまいました(T_T)。

 その後1979年の夏、水上機母艦「千歳」「千代田」、1,2等輸送艦に軽巡「大淀」・病院船「氷川丸」と静岡4社が突然日本艦の新作を発売し、そのニュースを聞いたWLファンは狂喜したものでした。その直後、アオシマがソ連のミンスクとキエフを発売した事を覚えている方もあるかもしれません。

 静岡4社がWLの日本艦の新製品を揃って発表した18回静岡見本市では、同時に1/700現用空母シリーズの企画を発表し、時期未定としながらエンタープライズやニミッツ、ミッドウェーなどを発売する予定でした。しかし、これも当初構想通りに出たのはアオシマのミンスクとキエフのみで、他はその当時噂になっていた複数の日本艦同様、立ち消えになってしまいました。

 思い返せば1971年のシリーズ開始から20年、79年の最後の一斉発売からも早12年。確実に歳月は流れたのかもしれません。20周年記念の御挨拶が新作プレゼントではなく「値上げ」というのは冗談がきついですが。

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今井1/150初代海王丸
(1991.07.21)


 今井が1/150日本丸の部品追加で海王丸を限定生産で発売し、先日入手したので簡単に紹介します。恐らくどこの模型雑誌にも記事が載らないだろうから(;_;)
 まずはキットの概要から。
項 目 名 内      容
ジャンル 現代艦船・帆船(運輸省航海訓練所所属 練習帆船)
名  称 海王丸(初代)
メーカー 今井
スケール 1/150
マーキング 船尾の装飾、船名、喫水標
モールド ★★★★  
スタイル ★★★ (2007/01/01星2個削除) 
難 易 度 ★★★  
おすすめ度 ★★ (2003/01/01星2個削除)  
コメント 出来は非常に良いが、メタル部品の処理には工夫が必要(と思う)。

 真っ白の箱に船名と完成写真の入ったステッカーが貼ってあるだけという非常にシンプルな外装で、木製帆船と見違えるような感じです。

 キットの中身については、実は1/150日本丸にブリッジと煙突回りの部品をホワイトメタルで作りデカールを変更した内容で、説明書も日本丸のものをそのまま流用し別紙で組立の相違点を述べるだけというもの。日本丸用の部品は抜いていないから価格はメタル追加部品の分だけ3,500円も高い12,000円(T_T)。
 他の会社のキットならボロクソ言う所ですが、今井の現状を思えばより製造原価の安いホワイトメタルで何とか新作を作り上げたという事がキット全体から伝わってくる感じでちょっとコメントしにくい部分もあります。

 キット自体は元になった日本丸がモールドが素晴らしく組み立ても(プラ帆船としては)楽な好キットだったから、ある程度経験と時間のある人であれば問題となる部分はないと思います。ただ海王丸用のホワイトメタルの部品のうちブリッジや煙突はモールドがいまいちで処理に工夫が必要ですし、手すりは船体のものも含め真鍮線で自作した方が良いかもしれません。※注

 日本丸級は船体の艤装品が非常に多く船体工作にかなり手間がかかるため、初心者が手掛けるには少し辛い部分があると思います。個人的な印象を述べれば、帆船というよりも汽船に帆が付いたという感じで工作に当たった方が、バランスの取れた模型が出来るかもしれません。

 今井の限定生産はあまり当てにならない(苦笑)場合もありますが、追加部品にホワイトメタルを使っている点から見て生産数自体はそれほど多くないようですし、市場にもあまり出回っていないようです。財布との相談になりますが、ちょっと高いような印象は否めません。
※注
 その後、1/150初代海王丸のキットはホワイトメタルをプラパーツに替えた通常版として発売されましたが、今井科学の廃業に伴い2002年秋以降は青島文化教材社から発売されています(日本丸より割高である点は変わりません)。

 しかし、このキットの設定時期である1975-77年頃は既に前部船橋の基部の大きさと直後の2番倉口の大きさが海王丸と日本丸では異なり、キットは共通部品である長船尾楼甲板の、日本丸の船橋の接着位置に強引に合わせてあるため、厳密を期するのであればこのキットの前部船橋は使えません。船橋の長さを約8.5mm縮める形で自作した上で、2番倉口の長さを倍にする必要があります。また煙突前後以外の吸気口も日本丸のままで、これも大半は自作か流用する必要があります。

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軽巡「名取」「鬼怒」発売。
(1992.12.16)

 田宮の5,500屯級軽巡には評価表など要らないと思いますが、とりあえず書いておきます。
項 目 名 内      容
ジャンル 近代艦船・旧日本海軍軽巡洋艦
名  称 名取
メーカー 田宮
スケール 1/700
マーキング 艦載機の日の丸(軍艦旗と窓枠はステッカー)
モールド ★★★★ キットの年代なら舷外電路は不要。ヤードの考証も疑問
スタイル ★★★★★ 全て1/700の許容範囲内。
難 易 度 これで投げ出すようならWLは何も作れない(だろう)
おすすめ度 ★★★★★ 久々の新作、御祝儀代わりにまずは1隻。
コメント 昭和10年頃のキット化。出来は最高だが…
項 目 名 内      容
ジャンル 近代艦船・旧日本海軍軽巡洋艦
名  称 鬼怒
メーカー 田宮
スケール 1/700
マーキング 艦載機の日の丸(軍艦旗と窓枠はステッカー)
モールド ★★★★★ 特に問題となる部分は無い(と思う)
スタイル ★★★★★ 全て1/700の許容範囲内。
難 易 度 これで投げ出すようならWLは何も作れない(だろう)
おすすめ度 ★★★★★ 久々の新作、御祝儀代わりにもう1隻。
コメント 開戦時のキット化。出来は最高だが…

 キットの内容は元々WL最高傑作の評判が高かった球磨/多摩がベースになっているうえに、長良型の箱型の艦橋もそれらしく出来ていますし、艦橋の天蓋の形も部品替えで違いをきちんと再現しています。またフジミのキットでは左右逆になっていた名取の航空作業甲板の張り出しも正しい位置(左舷側)に収まっています。
 名取は昭和10年頃のキット化ということで舷外消磁電路の削除やヤードの作り替えなど少し手を入れる部分がありますが、鬼怒の方は部品を見る限り特に修正はないように思います(ただ98水偵は開戦時に載っていたのかな?)。
 評価表にもある通り、これで投げ出すよーならWLは何も作れない(笑)と書いても大げさでない良いキットですから、艦船ファンはまずは御祝儀代わりに1隻といきたいものです(^_^)。

 田宮の5,500屯軽巡のパーツ割は

船体、Aパーツ(兵装、艦載艇、ボート・ダビット、探照灯他艤装品)共通
Bパーツ(煙突、艦橋、航空機作業台、艦載機等)多摩/球磨/木曽 差替え

 となっていました。今回の発売に関しても同じようにBパーツの一部を再設計して出すのでは?と思っていたのですが、

船体 Aパーツ 全艦共通
Bパーツ(煙突、カタパルト、艦橋支柱など) 名取/鬼怒 共通
Cパーツ(艦橋、航空機作業台、艦載機など) 名取/鬼怒 差替え

 という構成になっており、Cパーツの裏にはそれぞれ WL NATORIや WL KINUの刻印がありますが、Bパーツは名取/鬼怒の共通部品にもかかわらず WL NATORIの刻印しかありませんでした。
 船体を全面的に作り直さないと出せない阿武隈や重雷装艦に回天搭載艦はもちろん、フジミが発売していた防空巡洋艦五十鈴も武装を別パーツにしないとCパーツの枠内には収まらないような気もします。はたして今度の新作(きまぐれ?)が、そこまでフォローするか疑問ですが。

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文藝春秋社刊/戦艦ビスマルク発見
(1993.07.02)


 タイタニック号の探査で有名な米国の海洋地質学者ロバート・D・バラード氏が中心となって、ちょうど4年前に行われた戦艦ビスマルクの探査記録
の訳本が出たので買ってきました。

『戦艦ビスマルク発見』
ロバート・D・バラード著/高橋健次訳/文藝春秋社刊/税抜価格5,825円

 大西洋の深海約4,800mに眠るビスマルクの姿を高性能の水中カメラで捉えた写真やイラストにビスマルク追撃戦の記録を絡めた内容で、前に出たタイタニックの本と違って探査記録のスペースはそれほど多くありません。 ビスマルクは最後に英国艦隊の集中攻撃を受けて、無数に近い命中弾を受け上部構造物をめちゃめちゃに破壊され尽くした…と戦記の本にありました。この探査記録の写真とイラストを見ると主砲が全て脱落し、司令塔より上の構造物や煙突は全く形が残っていません。ところが、艦体そのものは船尾部分が折れて無くなっている以外はほぼ原形をとどめていて、艦首の甲板もそれほど損傷がなく、また全ての副砲と一部の高射砲も形が残っています。いかに船体構造が強力に出来ていたかという事を思い知らされると共に、本の記述にもある通り「主砲を戻せば全盛期とそっくりに見える」威厳が残っていることに背筋が凍り付くような思いがしました。

 ビスマルク追撃戦の記述は早川書房の「戦艦ビスマルクの最期」と重複する部分が多いように感じました(著者のルードヴィック・ケネディ氏がこの本の序文を書いています)が、写真や図版が非常に多く、模型を作る上でも参考になると思います。フッドの撃沈やビスマルクの最期の状況を描いた絵画など、初めて見るものもありました。ただ、追撃戦全体を示す地図や航跡図がちょっと貧弱というか大まかで、文章と比較しながらだとちょっと判り辛いかな?と感じました。また最後近くで述べられているビスマルクの戦艦としての性能の評価や、沈没の状況に「艦尾の構造が弱く海面で切断されたのではないか?」という主張には興味深いものがありました。

 海底の沈没艦の調査以外にも、ビスマルクについて書かれた日本語(訳)の本の中では非常に詳しく判り易い内容に仕上がっています。残念ながら相当値が張る本なので全ての人にお薦め…という訳にはゆきませんが、興味のある人は一度本屋で手に取られてはいかがかと思います(私自身は半分洋書の写真集の感覚でしたが、ボーナス前の安月給にはかなり辛い価格でした ^_^; )。

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戦艦「金剛」発売。
(1993.07.10)


 行き付けの模型店に入荷したので買ってきました。長谷川の船の完全新作はこの10年以上無かったはずで、艦船の設計が出来る技術者やノウハウが残っているのかな?と不安に思った事も正直ありました。が、ちゃんと93年の今にかなう内容に仕上がっていたので安心しました。 まずは例によって評価表から。
項 目 名 内      容
ジャンル 近代艦船・旧日本海軍戦艦
名  称 金剛
メーカー 長谷川
スケール 1/700
マーキング 船底・ネームプレートの艦名、艦載機の各種マーキング、軍艦旗。
モールド ★★★★ 錨鎖導板、舷外電路、舷窓、レーダー、ダビット、ほか
スタイル ★★★★★ フジミで指摘された問題はほとんどクリアしているが…
難 易 度 ★★ 仮組の印象は悪くない。
おすすめ度 ★★★★★ 九拾参年度版日本戦艦壱隻(値)弐千伍百円也−
コメント 説明書の塗装説明に疑問が有る。

 キットは高角砲や機銃を増設した最終時のモデル化のようで、全体的にはWLの標準以上の内容に仕上がっていて、機銃のモールドもなかなか細かく出来ています。他に高角砲や主砲や艦載艇といった部品も以前の長谷川に比べるとモールドに進歩の跡が見られますし、普通に作るならこれでも問題はないと思います。ただ、あのピットロードのパーツセットに比べるとちょっと苦しいかな?とも感じますが。
 また、ボートダビットや主砲の防水カバーのように以前のWL戦艦で省略されていたものはあまり表現されていません。22号と13号のレーダーまで無いのはちょっと考えものですが、下に書いたパーツ割りを考えると、そのような細かいパーツやモールドの再現度よりも金剛型戦艦4隻の「特徴の作り分け」に重点を置いた設計かな?と感じました。
(個人的印象、モールドやスタイルは従来のWL戦艦より良いと思う、念の為)

 キットのパーツ割は、

・船体(船体A、船底B)
・Cパーツ(中央部のセルター甲板、高角砲、副砲、カタパルト、マストなど)×2
・Dパーツ(ネームプレート、機銃、主砲砲身、艦載艇、高射砲台座など)×2
以上/金剛・榛名・比叡・霧島 共通?
・Eパーツ(艦橋構造物、測距儀台、21号レーダーなど)
/金剛・榛名・霧島 共通?
・Fパーツ(煙突、後部艦橋、前部煙突回りの機銃探照灯台と支柱など)
/金剛・霧島 共通?
・Gパーツ(主砲塔、砲塔増設機銃台、高角砲座)×2
/金剛・比叡 共通?

 で、以前のWL戦艦よりパーツ割の単位が細かくまた部品数も多いように感じました。「共通?」と書いた部品はランナーに付いていた艦名から推測したものですし、金剛型の戦艦の相違点と合わせてみると細かい部分で共通にするのかな?と思う部品もありますが、これを見る限りは今後発売される「はず」の他3艦も大きな相違点は全て表現出来るのではないかと思います。
 ただ、共通部品(艦名のモールドが無い)C、Dパーツの割り方はちょっと意図が判りません。ネームプレートや中央部のセルター甲板など多くの部品が余る設計で、艦載機も1機余るのにフロートが無いから全く無駄になってしまいます。
 またフジミのキットと船体を比べたところ、長谷川の金剛では1,4番主砲の基部が船体中央部に少し寄っているのが気になりました。ピットロードの金剛用の36cm主砲塔を付けると構造物に引っ掛かって旋回できません。長谷川の部品は砲塔後部の幅が狭く砲身も細めですが、このへんは資料が無く何とも言えないので「気になる」とだけ書いておきます(ピットロードの15cm副砲も上下を削らないと入らないようです)。

 WLの日本艦が続々と発売された昔から指摘された問題の一つとして、説明書の塗装説明が曖昧で中には間違いで済まされないものもあった、という事があります。この金剛の塗装説明も全体図のみの曖昧なものでしかも目を疑ったのは、

 最上甲板、航空機作業台……………………ウッドブラウン
 艦尾上甲板……………………………………軍艦色
 艦底……………………………………………ワインレッド

 で、ここだけは70年代のままでした(T_T )。少なくとも木甲板の最上甲板はタンのはずですし、艦尾上甲板が軍艦色というのも何かの間違いとしか考えられません。最終時に木甲板をはがしたという新しい資料でも出てきたのでしょうか
?それに細かい部品などは組立の説明で塗装の指定も加えれば判り易いものになったのではないか、と思います。※注
 ちなみにWL全てに共通の様式だった説明書は実艦説明が日米併記、塗装説明は7ヶ国語、組み立て部分のほとんどは図と記号によるものになっています。

 細かい部分でいろいろ不満はありますが、「WLの標準以上の出来」という印象に変わりはありません。艦橋や煙突に船体形状といった基本的な部分に手がかからないので、上に書いた各種レーダーやボートダビットといった入っていない部品の追加や探照灯台のトラスや船体外舷の汚水管に甲板の細かいモールドなど、最低限の工作を考えてゆけば立派な金剛が出来ると思います。

※注
 その後発売された比叡〜霧島3隻の説明書の塗装説明は最上甲板と艦尾上甲板がタン、航空機作業甲板はウッドブラウンの指示となっています。金剛の現在出荷分の説明書が訂正されているかどうかは未確認です。
   金剛の塗装説明は現在出荷分では訂正されています。(1998.07.03訂正)

   また、金剛型4隻の最終的な部品割は以下の通り。

・船体(船体A、船底B)
・Cパーツ(中央部のセルター甲板、高角砲、副砲、カタパルト、マストなど)×2
・Dパーツ(ネームプレート、機銃、主砲砲身、艦載艇、高射砲台座など)×2
 以上/金剛・比叡・榛名・霧島 共通

・Eパーツ(艦橋構造物、測距儀台、21号レーダーなど)
 金剛・榛名・霧島 共通

・Fパーツ(煙突、後部艦橋、前部煙突回りの機銃探照灯台と支柱など)
 金剛・霧島 共通

・Gパーツ(主砲塔、主砲塔増設機銃座、高角砲座)×2
 金剛・比叡 共通

・Jパーツ(煙突、艦橋防空指揮所など)
 榛名のみ

・Kパーツ(主砲塔、主砲塔増設機銃座)×2
 榛名・霧島 共通

・Lパーツ(探照灯台<霧島用、比叡・榛名用>、増設機銃座など)
 比叡・榛名・霧島 共通

・Nパーツ(煙突、後部艦橋、測距儀台、艦橋構造物など)
 比叡のみ

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軽巡「那珂」発売。
(1993.07.25)


 フジミのシーウェーブラインの新作?です。まずは評価表から。
項 目 名 内      容
ジャンル 近代艦船・旧日本海軍軽巡洋艦
名  称 那珂
メーカー フジミ
スケール 1/700
マーキング なし(軍艦旗はステッカー)
モールド ★★ 20年前のWLスタンダード。
スタイル ★★ 神通で指摘された問題点は何一つ改善されていない。
難 易 度 ★★★ どの年代を想定しても修正する部分は多い。
おすすめ度 ★★ 将来他に選択肢が出れば星一つ。
コメント 如何せん発売が遅過ぎた。せめて大淀と同じ時期に出ていれば…


  那珂の同型艦の神通が販売された時(遠い遠い昔)にパーツ割を見て気になったこととして、当初から那珂用のパーツも設計されていたのではないか?という疑問がありました。

那珂の部品表です。 全部品
神通/那珂 共通 

 航空機作業甲板の入っているランナーの囲みの角に、プラが回らないように金型を埋めたと思われる不自然な跡があります。ここに那珂用の部品が上と同じ様な形で設計されていたのではないか?と確信していました。だから、那珂が出るという話を聞いた時にここを復活して出すのかな、今頃になって…と思ったものでした。
 ところが、実際に那珂を購入してパーツを見てみると問題の切断跡はそのまんまで、そこに近い場所に高角砲の部品が1組追加されているだけでした。確信が見事に外れた訳ですが、何とも不可解な気がします。

 ベースになっている神通はWLの中でも非常に問題の多いキットで、特に、
  1. 昭和16年以降の状態なら、前部のウェルデッキは埋められていて、かつ後部の魚雷発射管は4連装であること。
  2. 艦橋のアウトラインがあまり良くない。
 という致命的なミスがありました。今回の那珂も“箱替え同然の内容”なのでこれらの欠点はそのまま引き継がれており、しかも昭和19年の最終時にするなら更に機雷の敷設軌条を埋めて爆雷投下台を作らなければなりません。最低それだけの工作を加えないと考証に(箱絵にも!)合わなくなります。

 1993年という「いま」を思うに、このキットに関しては細部がどうとか、田宮の5,500屯軽巡と比べる以前の内容だと私は感じました。ベースキットがアオシマの香椎のように致命的な問題を抱えていないものならともかく、相当以前より指摘されていた欠点に一切目をつぶったものを新製品と言って発売するメーカーの見識を私は疑ってしまいます。それは日本艦の開発を止めた1974年には許された事かもしれませんが、今は93年です。

 ううむ、少々感情が入り過ぎたようで手厳しい内容になってしまいましたが、フジミが新しく箱とネーミングを作ってWLモデルを維持する気があっても、このような新製品を出していては他社が競合するキットを出す以前に艦船ファンから見放されてしまうのではないか?と本当に心配になります。

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アドミラル・シェーアについて。
(1993.07.28)

  まず前回で那珂をケチョンケチョンに書いて、同時発売で出来の良いアドミラル・シェーアにはほとんど触れなかったというのもバランスを欠いているかなあ?と思ったので、とりあえず評価表を書いておくことにします。
項 目 名 内      容
ジャンル 近代艦船・ドイツ海軍装甲艦
名  称 アドミラル・シェーア
メーカー フジミ
スケール 1/700
マーキング なし
モールド ★★★★ 田宮のシャルンホルスト級戦艦と比べると苦しいが…
スタイル ★★★★ 第二次大戦以前の姿ならば。ただしマストの考証に注意
難 易 度 ★★ 製作で問題になる部分はほとんどない(と思う)
おすすめ度 ★★★★ 現在最も入手が楽なキット。興味のある方はぜひ。
コメント フジミのWLキットの中では最上位の出来。

  フジミのグラフシュペーとドイッチェランドが発売されて箱を開けた時(これもえらい昔になってしまったけど ;_;)に、「ええっ、これがフジミのキット?」とびっくりした記憶があります。さすがに田宮のシャルンホルスト級戦艦にはかなわなかったものの、フジミのWLに共通していた考証の詰めや細部の出来やモールドの切れの甘さといった欠点が改善された内容で、この先は大丈夫だと喜んだものでしたが、外国艦の新規開発はこれで打ち止めになってしまいました(T_T)。

 キットはグラフシュペーの箱替えで後部マストの部品が追加された以外全く内容が同じですが、前に書いた通り『第二次大戦直前の』シェーアはグラフシュペーとほぼ同じ艦型で、那珂の時と異なりそのまま箱替えでも1/700で問題になる部分はマストを除いてないと思います。もっとも、通商破壊戦に活躍した頃の姿にするには最低でも艦首と艦橋を改造する必要がありますが(発売の話を聞いた時から今のフジミがそこまでフォローするかなぁ?と思っていました。実際その通りでしたが)。

 結論としてフジミのシュペー級装甲艦は興味のある方にはぜひ一作おすすめします。エレールの1/400はもちろん日模の1/500も模型店で全く姿を見なくなりましたし、日本艦で「フジミアレルギー」を起こした人には特に(^_^ )。

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重巡「利根」発売。
(1993.09.13)


アオシマの新作が模型店に入ってきました。まずは評価表から。
項 目 名 内      容
ジャンル 近代艦船・旧日本海軍重巡洋艦
名  称 利根
メーカー アオシマ
スケール 1/700
マーキング なし(軍艦旗はステッカー)
モールド ★★★★ 魚雷発射管を除き、多くの部分は再現できている。
スタイル ★★★★ 日本の巡洋艦の船体の特徴も良く捉えている。
難 易 度 ★★ 別部品の前後の上甲板を含め、部品の合いは良い。
おすすめ度 ★★★★ アオシマえらい(^_^)
コメント 相変わらずの塗装説明と1,800円の価格をどう考えるか、だが…

 WLの重巡洋艦は戦艦と並んでシリーズの早期に発売され、船体形状やモールドは今の目で見るとかなり辛い部分があるのも事実でした。今回のアオシマの利根は艦首のクリッパー型のラインや乾舷の高さに甲板のモールドなど、おおぼけが目立った高雄級重巡の悪評?を一新するに充分な内容で、メーカーの力の入れ様が判ります。
 部品割は、

・船体
・前後の上甲板、艦底の板(整形色/灰色、部品No. なし)
・主砲、高角砲、艦載艇、零式観測機、カタパルト、マストなど
  (部品No.1-28 )
 以上、利根/筑摩 共通?
利根の部品表です。
 で、部品No.29−57のグループは上のように左側がカットされた形になっています。田宮の軽巡長良/五十鈴のように共通部品の左側が筑摩用の部品として金型が設計され、必要に応じてカットして生産しているのだろうと考えます。

 キット自体は艦橋や主砲など全体的にモールドが良く、ボートダビットや13,21号電探(22号は無い)に主砲の防水カバーに単装機銃などWLの重巡で省略されていたものも表現されています。また船体形状も艦首のシアーラインがちょっと誇張気味かな?と思う以外は日本の重巡洋艦の特徴を良くつかんでいるようです。

 ただいくつか気になる部分もあります。魚雷発射管の開口部は浅いくぼみになっているだけなので、ここだけはドリルで穴を開けて発射管を追加すれば実感が出ますし、船体も比島沖海戦の状態なら舷外電路の追加と下段の全部と上段の一部の舷窓を埋める必要があるようです。また船体の肉厚が薄く甲板も別部品になっているので、組立に当たっては角材などで幅を合わせたり補強した方が良いかもしれません。またマストは電探室を表現したメーカーの苦心の跡がうかがえるものですが、これも真ちゅう線で取り替えた方が良いと思います。

 説明書は長谷川の金剛とは異なり、以前のWLキットの様式に準じた形となっています。が、PAINTINGの塗装説明の文章までそのまんまで塗装指示も曖昧なのは、アオシマの他のキット同様考えものです。せっかくキットの内容が頑張っていても、この通り塗装された日には設計者も金型屋も泣くというものです。

 コメントで書いた価格ですが、新設計だから…という事を差し引いても巡洋艦の完全新作が1,800円というのは、既発のキットとの価格差もさることながらコレクションを目的とするにはちょっと辛い数字のように思います。ただ、昔200円だった長谷川の1/72零戦の最新版が1,200円に田宮のキングタイガー戦車が3,000円で売られている御時勢ですし、
今の子供にとってはその値段は、私が子供だった頃の数百円程度の価値しかないのかもしれませんが。

  色々書きましたが、メーカーの熱意が充分に感じられる文字通りの力作で、WLファンなら1作の価値はあると思います。追って筑摩も発売されるので、飛行甲板に水偵を並べて最上や伊勢と比べてみるのも面白いと思います。

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空母「翔鶴」発売。
(1993.12.29+1994.03.04増補)


 田宮の新作が模型店に入ってきたのは少し前でしたが、体調を崩したり他のSIGの作業に追われて書くのが遅れてしまいました。
 まずは評価表から。
項 目 名 内      容
ジャンル 近代艦船・旧日本海軍航空母艦
名  称 翔鶴
メーカー 田宮
スケール 1/700
マーキング 飛行甲板のマーキング、艦載機の日の丸、軍艦旗。
モールド ★★★ フジミの考証の問題点だけはクリアしている。
スタイル ★★★ 右舷後部高角砲の兵員待機所が無い。
難 易 度 ★★★ 昔の田宮は忘れよう(T_T)。
おすすめ度 ★★★ 部品は少ないが手間はそれなりにかかる。
コメント WL全盛期の田宮のキットと比べると物足りなさが残る。
  実はこのキットを開いて仮組みした時にショックを受けて、感想を書く気力が湧かなかったのもMSGが遅れた原因の一つになるかもしれません。ハセガワの金剛やアオシマの利根が以前のWLシリーズと比較して特徴の捉え方や細部やモールドといった部分に進歩の跡が見られ93年の「いま」にふさわしい内容に仕上がっていたのに対し、この田宮の翔鶴にはそれを感じ取る事ができなかったのです。
 部品割は、

・船体
・飛行甲板
・船底の板
・Aパーツ(シールド無し高射砲の台座、艦首・艦尾・ボート甲板、艦橋、
      煙突、機銃他の張り出し甲板など)
・Bパーツ(94式射撃指揮装置、シールド付高射砲/機銃、艦載艇、
      レーダー、各種アンテナなど)×2
・艦載機(以前のWLと同じ、零戦・97艦攻・99艦爆・彗星艦爆各5機)

 で、Aパーツの右側に切断跡があります。恐らく次作の瑞鶴ではロケット砲や機銃を増設した最終時で出してくるでしょうから、その増設甲板や張り出しといった部品が右側に付いてくるのではないか?と思います(個人的推測)。

 評価表の星で示したように、全体的な完成度はWLの標準並みです。艦橋や水面観測所に飛行甲板のモールドなどフジミのキットで問題とされた部分はそれなりに表現されていますし、恐らく誰が作っても翔鶴の勇姿を再現できると思いますが、最初にも書いたように「田宮のWL」という視点で見た場合物足りなさが残ります。例えば「隼鷹」を引き合いに出して比べてみますと、飛行甲板や細部の部品はまあまあのレベルですが、外舷のモールドがおざなりで吸気口や舷窓の表現に見劣りがします。高射砲の砲座は砲弾倉庫と一体化させた手の込んだモールドになっていますが全体的に船体との合いがイマイチですし、パテやヤスリで修正が必要な部分も少なくありません。格納庫の再現といった芸当はこの不景気では無理だとしても、昔の田宮はこういった舷側の表現や部品の精度を疎かにするようなメーカーではなかったと思うのですが。

 他に気が付いた点としては、艦首の飛行甲板の支柱が5本のうち1本しかなく、また箱絵にも描かれている格納庫前端の通路の張り出しが表現されていません。ここは結構目立つ所なのでプラ板で追加したい部分です。ただ、飛行甲板の裏側の前端に支柱の取り付け穴らしきもの(もっともこれでは前に寄り過ぎですが)が2つモールドされているので、ひょっとしたら瑞鶴用の艦首増設機銃座を支柱込みで設計してそのまま忘れてしまったのかもしれませんが。

 右舷後部の高角砲の兵員待機所の張り出しが無いのは、モデルアートで御師匠様(衣島尚一氏)が指摘するまで気が付かなかったのですが、言われてみれば結構目立つ所だけに何とかしたいものです。その他にも飛行甲板の着艦制動索の数や伸縮継手など細かいモールドで?が付くので、当初の印象よりも手間がかかるなぁ…というのが現在の感想です。難易度で書いたように昔の田宮のキットの出来はきっぱり忘れて取り掛かった方が良いかもしれません。

 相当手厳しい文章になりますが、全体的な印象としては「田宮らしくない内容だ」と。フジミのキットとの比較や価格の問題よりも1993年に発表された新作が同じ会社の19年前に出たキットより見劣りがする…のが、それが5,500屯軽巡や矢矧や隼鷹といった不滅の傑作を世に送り出した田宮の最新作である事に信じられない気持ちがあります。もっとも1/350のキングジョージVから何年も新作が有りませんでしたし、金型屋の選択や設計技術者のリハビリが充分では無かったのかもしれませんが、艦船に対する熱意がハセガワやアオシマに比べて足りないんじゃないの?と言われても仕方無いような内容に留まっているのが残念です。

 普通の企業では同じ部署の同じポジションに20年以上も同じ人間が座っていることはまずあり得ません。それと同じように1970年代の中頃に優秀なキットを送り出した田宮の技術者がこの翔鶴を設計したとは思えませんし思いたくもありません。単に技術者個人のレベルの問題ならば単に運が悪かった、翔鶴級空母は大昔の日模の1/500を越えるキットは出ないんだなとため息付いて次回作に期待するのですが、過去の水準に及ばないことはともかく考証的にも問題の多いキットの内容を会社が良しと判断しその点のチェックが充分でないまま市場に出てしまったのなら、今後の田宮のWLの内容にも不安が残ります。
※注
   この直下にも関連する記事があります。

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WLに関する2,3の事柄について。
(1994.05.30)



 WLの瑞鶴が発売され模型店に入ってきましたが、キットの内容は翔鶴に艦首尾の増設機銃座やロケット砲といった最終時用の部品が追加されて後期型の艦載機が入っただけの内容で、#3016と#3141で述べた翔鶴の問題点はほとんど変わっていませんし、これ以上特に書くこともありません。田宮のWLは次に松クラスの駆逐艦がアナウンスされていますが、フジミのキットの倍以上の値段らしいので中身も倍以上のものが欲しい所です(^_^;)。※注

 値段といえば、巡洋艦以上のキットに新設計の武装パーツセットを入れて新作に近い価格まで引き上げるという話があります。ピットロードのパーツセットを買い込んだ人間をあざ笑うが如き商売で、そこまでするかと「えげつなさ」を感じています。キットを購入する人が全て部品の精度や内容を問題にする訳ではないでしょうし、新作で開発費がかかるものは仕方がないとしても、従来のキットまで(いくら細部部品が追加されているとはいえ)それに近いレベルまで引き上げるというのはちょっと納得できない部分があります。ここはピットロードのように別売にして好きな奴は気の済むまで買ってくれみたいな「投資の選択」があっても良かったんじゃないかと思います。田宮の優れた一部のキットにまで一律パーツセットを入れて価格を上げるのか、それがどれほどの内容かなどは実際キットが模型店に入ってこないと判らないので、またその時にでも感想の続きを書くことにします。

 ただ好意的な見方をすれば、発売3社のキットの武装パーツを共通化させることで、今後の新規開発が有る場合は船体と上部構造物を設計すれば良く、武装や細部パーツの分だけキットを開発する負担が軽くなるかもしれません。そこまで開発の合理性を考えているのなら考証に問題があるキットのリメイクや新規発売にも少し期待が持てる所ですが。
※注
 結局、瑞鶴の感想はテキストは書いたものの、UPしませんでした。参考のためここに載せておく事にします。

 キットは予想通り昭和19年秋の最終時のモデル化で、艦首・艦尾の増設機銃座にロケット砲の張り出しなどの部品がA部品の右端(翔鶴ではカットされている部分)に付いています。B,C部品に船体などは先に発売された同型艦の翔鶴と同じで、塗装で飛行甲板の白線を引ける自信のある方ならこの瑞鶴から翔鶴を作ることも出来ます。(旧作)戦艦大和のキットから新造時の武蔵を作れるのと同じ理屈ですが、あまり合理的なパーツ割りとは思えません。

 艦載機は従来のものとは異なり、
・流星艦攻×1、彩雲艦偵×1、零戦52型×6、天山艦攻×4、彗星艦爆×4
 これが、1つのパーツグループの中に入っています。出来はそれぞれ特徴を捉えているようですし、これは今までの例から見ても恐らく別売されると思います(個人的推測)が、彗星は従来の艦載機セットにも入っていたので代わりに紫電改を入れても良かったような気がします。

 塗装説明は最終時ということで飛行甲板と右舷側の迷彩が指定されています。説明書に「推測」とある通りこの瑞鶴の迷彩は明確な写真が有る訳ではなく、資料や作例によっても異なる場合が少なくありません。考え方の問題でどうこう決め付けられる部分ではありませんが、あまり資料の無い人が作ることも考えると軍艦色にデッキタンの日本海軍の標準塗装を指定して、脇に「捷一号作戦の時は迷彩が施されていましたが詳細は明らかではありません」と一文を載せておく程度に留めておいた方が良かったかもしれません。

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新価格WLキット、発売。
(1994.09.14)



  「健全なる精神は健全なる肉体に宿る」という言葉がありますが、
 足元を見ると下腹で足の甲が見えなくなり、
 加えて最新の音楽と映像と娯楽に興味が湧かなくなり、
 いたずらに昔を懐かしむようになったら…

 とはいえ、子供の頃は100円玉5枚で買えた戦艦空母が新作のパーツセットを入れても千円札2枚で足りない御時勢とあらば、ついついレジの主人に向かって「昔はねぇ…」と年寄り臭い愚痴の一つも垂れたくなるというものです。

 新設計の部品を入れて大幅値上げしたWLキットが少しづつ模型店に入ってきました。
 部品割は、


・Wパーツ
 96式25mm3連装機銃   シールド有×2  シールド無×12
 96式25mm連装機銃    シールド無×6
 89式12.7cm連装高角砲 煙シールド有×1 波シールド有×2
                シールド無×3
 水上偵察機 94式/95式/零式観測/零式小型 各×1
 内火ランチ(台座付) 12m/11m  各×1
 内火艇(台座付) 12m/11m/9m 各×1
 9mカッター 台座付/ダビット用    各×2
 ラジアルダビット 2組  方位探知機アンテナ ×1
 110cm探照灯 ×3  90cm探照灯 ×2
 60cm信号灯 ×2   94式射撃指揮装置 ×2
 電探 13号/22号 各×1  菊花紋章/錨 各大小2種×1
 小煙突×1  呉式2号5型カタパルト×1
 艦載機用日の丸デカール 1枚


 で、新作が出る以前に発売された巡洋艦以上のキットに2枚づつ入っているようです(模型屋に有った空母加賀には3枚入っていたが)。いずれも太平洋戦争中の中大型艦に標準的に装備されていたものばかりでモールドもそこそこ出来ていますが、だからといってピットロードの武装パーツセットが全く不必要になるとも言い切れません。25mm3連装機銃の表現は趣味の問題としても、シールド付連装高角砲/3連装機銃の形状と表現はピットロードの方が“らしい”感じがしますし、その他の武装や装備品のバリエーションも豊富に揃っています。阿賀野型軽巡や空母隼鷹のような最優秀キットにもパーツが入っていますが、20年前のキットの方が部品の表現力と精度が上という有様で、これに関してはいったい何のためのパーツだろう?と思う始末。

 いくら値上げの見返り(?)としても、空母にカタパルトや水上機は要りませんし、戦艦巡洋艦に煙シールド付の高角砲や機銃は極く一部を除いて要りません。だからパーツを3つに分けて右側に空母用のシールド付高角砲や機銃、中央に共通できる部品、左側に戦艦巡洋艦用のカタパルトや艦載機という割り方にして必要に応じて左右をカットして出荷して、個々の機銃の数をもう少し増やしたり射撃指揮装置や武装のバリエーションを増やしてくれ
た方が、使い勝手が上がったような気がします。実際には部品を替える以前に大整形手術が必要なキットもWLには決して少なくはないのですが(^_^; )。

 今度の値上げ&新部品セットで箱のデザインは一部変わりましたが、私が見た範囲では説明書自体には新部品の説明などは特に書き加えられてはいなかったようでした。新部品の方に組立が必要な部品の説明と明細の紙が入っていますが、それも塗装説明や「どんな軍艦のどこに使われているのか」といった基本的な説明がないので、初心者には使い方すら判らないんじゃないか?という気がします。多くのキットに無条件にバラまくのなら、特に初期の説明書には個々の装備の説明が無いのですから、その辺の配慮が欲しかった所です。
 なお、アオシマの曖昧な説明書は箱が替わっても相変わらずそのまんまで、エレベータを黄色で塗れという空母飛竜/葛城などのたわけた塗装説明も変わっていません。他には空母のキットは実艦が活躍した時期に合わせて前期型/後期型の艦載機を分けて入れているようです。

 単なる値上げよりはマシなのかもしれませんが、それならばもう少し新部品の内容や説明に配慮が欲しかった、というのが正直な感想です。結局こだわる人にはピットロードのパーツセットが必要かもしれませんし、そうなると1隻を思うように完成させるためにどれだけ出費が掛かるか。ハセガワの戦艦金剛のフルハルスペシャル(艦底とメタルやエッチングパーツに木の飾り台を入れたスペシャルバージョン、価格は倍近い)でも思った事ですが、手頃な値段で数を揃えて楽しむのがWLのような小型キットの特徴だと思うから、特定の軍艦だけに付加価値を付けて極端に価格を上げたり、原価償却も済んだようなキットまで新作と同じレベルまで価格を上げ続けるのはあまり好ましいこととは思えないのですが。

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Heller's 1/400 "ADMIRAL GRAF SPEE" etc. 発売。
(1994.09.24)



 キット自体は新作でなく再販だそうですが、エレール1/400のドイッチェランド級装甲艦、いわゆるポケット戦艦が行き付けの模型屋に入ってきたので、早速姉妹艦3隻まとめて買ってきました。
  まずは例によって評価表から。
項 目 名 内      容
ジャンル 近代艦船・ドイツ海軍装甲艦
名  称 アドミラル・グラフ・シュペー(アドミラル・シェーア、リュッツオー)
メーカー エレール
スケール 1/400
マーキング 軍艦旗、国旗、大将旗、艦首のワッペン、艦尾のワシのマーク。
モールド ★★★ 全体的にモールドはだるい。
スタイル ★★★★ 各艦の特徴は捉えているが、装甲板の表現には疑問有。
難 易 度 ★★★ それなりに手はかかる(と思う)。
おすすめ度 ★★★ 大型キットの価値はあるが…
コメント 作るなら1つ1つの部品まで綿密な考証と検討が必要だと思う。

  キットはシュペーが艦橋の探照灯を前面に移してレーダーを増設した最終
 時、シェーアが艦橋と艦首を改装した1940〜41年頃、リュッツオー(ドイッ
 チェランド)は艦橋や後部マストを改装した1940年頃のキット化のようです。
  それぞれの部品割は、


 1パーツ(主砲、単装砲、連装高角砲、単装機銃、測距儀、魚雷発射管など)
 2パーツ(艦載機、艦載艇、探照灯、舵、錨、スクリュー、展示台など)
 手すり
 以上/シェーア・シュペー・リュッツオー 共通

 3パーツ(後半部の甲板、セルター甲板、煙突、連装機銃など)
 以上/シェーア・シュペー 共通

 船体(右舷、左舷)
 以上/シェーア・シュペー・リュッツオー 差し替え

 4パーツ(前半部の甲板、各種マスト、艦橋、デリック、ネームプレートなど)
 以上/シェーア・シュペー 差し替え

 甲板(1枚)
 3パーツ(艦橋、セルター甲板、煙突、デリック、ネームプレートなど)
 以上/リュッツオーのみ



 で、細かい部分までは見ていませんが、艦橋や煙突といった特徴的な部分はもちろん、船体が各艦用にそれぞれ金型が起こされているので、フジミのWLでは表現できなかった煙突直後のマストの形状や艦首の違いといった部分も表現されています。ただシェーアとリュッツオーの船体はキットの状態では装甲板の高さが低いような気がしますが、この辺は手元に明確な資料が無いので次に東京に行く機会が有った時にでも捜してコメントを付けようと思ってます。

 個々の部品のモールドはそれほど良くありません。評価表に「だるい」と書いた通り田宮の1/350ビスマルクと比べるとシャープさに欠けるような気がします。他に気が付いた所としては、デカールの旗がいずれもカギ十字の部分が鉄十字に変わっています。そこだけ間違っている訳ですが、ヨーロッパの飛行機モデルはパッケージにもデカールにも意図的にカギ十字を付けないという話を以前聞いたことがあるので、あるいはその辺の配慮が有るのかもしれません。

 模型の全長は約47cm、部品総数約200個と腕をふるうには大きさ・スケールとも手頃なものです。シャープさに欠けるモールドにはかなり手こずるだろうと思いますが、資料を揃えて作ればWLに無い楽しさが得られるんじゃないかな、とそんな気がしています。

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空母「鳳翔」発売。
(1994.12.03)



 昨年軽巡「那珂」のキットが発売された時に、

>フジミが新しく箱とネーミングを作ってWLモデルを維持する気があっても、このような新製品を出していては他社が競合するキットを出す以前に艦船ファンから見放されてしまうのではないか?と本当に心配になります。

 と書いた記憶があります。那珂の場合は同型艦の考証の問題点の多くを無視した「自称」新製品でしたが、今回の鳳翔は他に同型艦がなくWLの日本艦が開発されていた当時も噂に上がった記憶がないので、あるいは静岡3社に対抗する新製品の開発に乗り出したんだな、少しは意地を見せてくれるのかなと思っていましたが、それは箱を開くまでのはかない夢でした。
 評価表。

項 目 名 内      容
ジャンル 近代艦船・旧日本海軍航空母艦
名  称 鳳翔
メーカー フジミ
スケール 1/700
マーキング 艦載機の日の丸(軍艦旗はステッカー)
モールド ★★ 20年前より退歩した気がする(;_;)。
スタイル ★★★ 竣工時の鳳翔の特徴「だけ」は捉えている。
難 易 度 ★★★★ 普通に組むなら星2つ、他と並べようと考えたら星5つ
おすすめ度 価格を忘れモールドを一から叩き直す根性があれば。
コメント このモールドと内容で売価2,800円はいくらなんでも高過ぎる。

 船体にはほとんどモールドらしきものがありません。舷窓は原寸図を見て開けてくれという有様。まあ中途半端に窓が開いていてもこだわる人なら埋めて開け直すだろうと開き直ったのかもしれませんが、そこを省略した分他のパーツに力を入れたとも思えませんし、船体のラインもあまり良い印象が持てません。本当に90年代に開発されたキットなのかさえ疑ってしまいます。

 世界初の本格的航空母艦、という価値は有ります。上記の問題点も丹念にモールドを作り直してゆけば結構見られるものになるかもしれません。しかし、これが例えば旧作並みの価格ならモールドの甘さも船体がのっぺらぼうなのも仕方ないな、ガレージキットよりは作り易いし…と思う所ですが、価格はWLの最新作と同じで中身は70年代と大差がないというのはいくらなんでもあんまりです。

 フジミに対する印象は、冒頭に掲げた文章の通りです。これがせめて90年代を感じさせる内容に仕上がっていたならば今までのキットの出来は忘れて静岡3社を脅かす傑作を作って欲しいと応援するのですが、内容がこの程度で、それで価格だけはWLの最新作並みを主張するメーカーの姿勢そのものを私は疑います。悲しい限りです。

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駆逐艦「陽炎」発売(付1994年私感)
(1994.12.25)


"Merry Christmas,
Merry Christmas Mr.Aoshima"



 ピットロードのクリスマス・プレゼントが模型店に届いたので買ってきました。陽炎型駆逐艦はWLでは青島から出ていましたが、船体形状はそれほど悪くはなかったもののモールドが無いに等しき内容で、WLの中でもリニューアルが求められていたキットの一つでした。今回初めてピットロードが日本艦でWLと競合するアイテムを出してきた訳で、重要な意味を持つキットだと考えています。
 まずは例によって評価表から。

項 目 名 内      容
ジャンル 近代艦船・日本海軍駆逐艦
名  称 陽炎
メーカー ピットロード
スケール 1/700
マーキング 駆逐隊番号、軍艦旗、艦名(同型6隻分)、駆逐隊識別帯、識別符字
モールド ★★★★ 小部品は◎。船体の舷窓の表現に難あり。
スタイル ★★★★ 艦首付近の表現と艦尾の平面形に疑問がある。
難 易 度 ★★ 手は青島よりかからない。塗装説明は一部説明不足
おすすめ度 ★★★★ 1駆逐隊(4隻)分の予算で 1/400の戦艦が買える。
コメント アオシマのWL+モールド料 1,200円。これをどう思うかだか…
  キットは竣工時〜太平洋戦争開戦前後頃の状態のようで、艦名や煙突の識
 別帯に加え煙突の識別符字(後述)までデカールに入っています。部品割は、


・Aパーツ
陽炎の部品表です。船体や煙突、マスト、艦橋などがあります。
・Bパーツ
 旗竿×2、方位測定アンテナ×1、爆雷積込ダビッド×4、探照灯×1、
 3m測距儀(2種)×各1、2m測距儀×1、94式方位盤(2種?)×各1、
 爆雷装填台・爆雷投下台・爆雷投射機・パラペーン(支持台付)×各2、
 パラペーン×4、ボートダビッド(2種)×各4、カッター・内火艇×各2、
 25mm3連装機銃×10、連装機銃×5、単装機銃×14、錨×2、
 13号/22号電探×各2、リール大×4、リール小×9、
 50口径3年式12.7cmB型主砲搭×2、同C(D)型主砲搭×2、
 92式61cm4連装魚雷発射管×2、91式61cm3連装魚雷発射管×3


 で、Aパーツの右下に1グループ分切断跡が有ります。Bパーツに電探が有る事や主砲1組と前部マストが切断跡のすぐ上のグループに有ることなどから、恐らく大戦後期の状態の艦を発売する時に増設分の機銃台や電探室付きの前マストなどがそこに入ってくるのだろうと思います(個人的推測)。切断跡は金型的に処理したものではなく、出荷前に切り離しているような感じを受けます。
 Bパーツは、これは恐らく駆逐艦に共通のパーツだと思うのですが、発売がアナウンスされている夕雲型駆逐艦にも必要の無い部品が有ります。最も考えられないのは90式61cm3連装魚雷発射管で、これは初春型駆逐艦にしか必要がない部品でしかも3基要るのはその竣工時だけです。主砲搭が2種類セットされている所から見ても初春型や白露型駆逐艦の発売もあるいは考えているのかもしれませんが、初春型駆逐艦の竣工時は生半可な根性では作れない代物だから、その気があるなら有り難いことですが(個人的推測×2)。
※注

 キットはピットロード標準という感じで毎度のことながらモールドは非常に細かく出来ていますし、部品の切れもシャープです。この点アオシマのWLとは比較になりませんが、船体の表現には少し気になる部分がありました。まず、艦首のシアライン(甲板の上方へのそり返り)が錨甲板から前が直線的にはね上がった感じで、ちょっと誇張が過ぎるんじゃないか?という印象を受けます。また艦首のフレアー(舷側の、喫水線から甲板までのそり返り)のラインもやや直線的な気がします。艦尾の平面はすべり止めのモールドの有る部分から後ろが直線的に絞られていて、実艦と少し印象が異なるように感じました。舷窓は有るのがやっと判る程度のモールドで、これは埋めて開け直した方が良いでしょう。舷外電路のモールドは無いので、プラ板の細切りを伸ばしたものなどで加える必要があります。

 マーキングは評価表に有る通りで、同型6隻分(陽炎/不知火/黒潮/親潮/早潮/夏潮)のデカールと開戦当時に所属していた駆逐隊の番号や煙突に付ける識別帯が入っています。塗装説明では駆逐隊番号の説明は有りますが、煙突の識別帯の説明がありません。これは駆逐艦が所属する駆逐隊が水雷戦隊の何番隊に属するかを示すもので、キットのデカールの番号で言えば(5)〜(8)がそれぞれ1〜4番隊を意味します。だから、陽炎/不知火の第18駆逐隊と他の4隻が所属した第15駆逐隊では同じデカールを煙突に貼ることはできないはずです。また(9)の「い ろ は に」のデカールもそのような識別の一種で、大戦中に煙突中央部に文字を書き込んだ姿が写っている写真があります。この辺はちょっと手元に資料が無いので詳しくは書けませんが、これらの艦名表記や煙突の識別帯をデカールで付けたのなら塗装説明に詳しい解説が欲しかった所です。

 細かい部分で幾つか不満はありますが、それも気になる程度で致命的な問題ではありません。現時点で望むベストの内容だろうと思うのですが、価格が 1,600 円ではちょっと胸を張って薦めるには辛いものがあります。これが長谷川の朝潮型や夕雲型駆逐艦のように船体のスタイル自体に致命的な問題が有るものなら選択の余地はありませんが、アオシマの陽炎は「みてくれ」は良くないものの基本のスタイルはそれほど悪いキットではないだけに、価格差と修正の手間をはかりに掛けて考える必要が有るんじゃないかな、という気がします。少なくともピットロードのこのキットで艦隊編成を考えた日にはよほど懐が暖くない限り間違いなく財政がパンクしますし、アオシマの陽炎1隻をピットロード並みに仕上げるのはかなりの時間と腕が必要ですから、そのへんの兼ね合いだろうと。

 長いMSGですが、年の瀬にもう少し。

 今年はWLとピットロードで断続的に新作が出て、フジミの鳳翔は大ボケでしたが、他にエレールの1/400ドイツ艦再販と、艦船のキットとしては割に動きの多い年だったように思います。田宮の1/350外国艦生産休止とかWLの実質値上げなど暗い話題も多かったけれど、それでも価格改訂以外に全く動きが無かった80年代後期に比べればまだ希望の持てた年でした。

 艦船のキットは他の分野に比べて部品数が多く考証の問題や金型の精度に高いものが要求されるために、開発期間が非常に長くかかると聞いた事があります。過去を思い起こしてもWLの日本艦が出た20数年前の極く一時期を除けば、艦船は飛行機や戦車と違って1年に何種類も新作が出るような分野ではなかったように記憶しています。だからWLを例に取っても1年を通じて新作が出なかったアオシマや金剛型の残りの艦の開発だけに終わった長谷川の動きだけを見て「静岡3社は本気でWLを開発する意志はない」とは私は見ていません。開発の意志が無いなら値上げの口実云々はともかく追加パーツなど入れないでしょうし、田宮の1/35のように多くのキットが生産休止になっていてもおかしくありません。その多くが20数年前に発売された百数十種類のアイテムの生産を維持しているだけでも、メーカーのWLに対する意志を感じるような気はします。

 ピットロードは陽炎型の他に夕雲型駆逐艦が予告されていますし、上でも触れたようにキットを良く見るとそれ以外の型も出す意志があるんじゃないか?という気がします。フジミの場合と逆に競合するレベルの高いキットが出てくる訳で、明らかに基本型から誤っているキットのリニューアルの問題や旧フジミの担当分の残りのキットの発売など、WL静岡3社は95年以降も動かざるを得ないだろうと見ています(個人的推測×3)し、どんな対応を取るかで90年代後半のWLの動きが見えてくるだろうと考えています。そういう意味で来年は個人的には非常に楽しみにしていたりします。
※注
 その後初春型駆逐艦はインジェクションキットが大改装後の状態で、またレジンキットが竣工時の状態で共にピットロードから発売されています。

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小型艦用新パーツ入りWLキット、発売。
(1994.12.31)



 今年はピットロードの陽炎で艦船の新作は打ち止めだろうと感想の最後に年の暮れの挨拶を書いたのに、最後の入荷で小型艦用の新パーツが入ったWLの駆逐艦が数種類入ってきました。先に新部品が入った巡洋艦以上の大型艦と同様に、武装や装備品などの新パーツが1枚入って価格が上がっています。部品割は以下の通り。


・Xパーツ
 89式12.7cm連装高角砲・3年式12.7cm単装砲×各1、
 2年式12.7cm連装砲B型・3年式12.7cm連装砲C/D型×各3、
 2式水上戦闘機・零式小型水上偵察機・水上戦闘機強風・特殊攻撃機晴嵐×各1、
 14cm単装砲(潜水艦用)×3、10cm高角砲(潜水艦用)・8cm高角砲×各2、
 96式25mm3連装機銃・96式25mm連装機銃×各4、
 92式4連装魚雷発射管・90式3連装魚雷発射管×各2、
 12年式3連装魚雷発射管×3、
 13号レーダー(縦1基)・13号レーダー(横2基)・22号レーダー×各1、
 方位探知機アンテナ・70cm探照灯・小煙突・パラベーン(支持台付)×各2、
 94式投射器・アンカー(小)・7m内火艇・7mカッター×各2、
 10m特型運貨船×1、ラジアルダビッド×2組、クオートラントダビッド×4組
 艦載機用日の丸デカール 1枚


 これと、明細と組立てが必要な部品の組立て図が印刷された紙が1枚入っています。全体的なモールドは良好で省略もまずまず、ピットロードの表現が「うるさい」と感じる人ならこの方が好感が持てるかもしれません。駆逐艦用の連装砲は基部に砲身が2本付いた形で部品化されていて、ピットロードの砲身を1本づつ取り付ける方式より組立ては楽だと思います。

 ただ、前に大型艦用のパーツが出た時にも書きましたが、この部品の内容にも疑問があります。潜水艦用に零式小型水上偵察機と晴嵐を付けるのはまだ判りますが、2式水戦や強風はWLの「小艦艇の」モールド向上には意味を成さない部品で、パーツセットの内容として適切な選択だとは思えません。爆雷装填台や方位盤など必要と思われる部品は他にも有ったはずですし、どうしても航空機を4機セットしなければならないのなら、一部の潜水艦が搭載していた96式小型水偵の方がまだ妥当だったように思います。

 今回の小艦艇用パーツセット&価格改訂で箱のデザインは一部変わりましたが、説明書の内容や箱の大きさなどは模型店に入荷したものを見る限りでは変わっていないようでした。前にも書いたように「どんな軍艦の何に使われた部品か」の説明がないのは初心者にはかなり辛いでしょうし、駆逐艦の主砲はオリジナルのキットのモールドだけではパーツセットのどれに当たるのかさえ判らないものが多いので、最低限、魚雷発射管と主砲ぐらいは説明が欲しかった所です。それと、長谷川の朝潮型/夕雲型駆逐艦は主砲の甲板への取り付け方法が全く違うので、このパーツセットの主砲は取付け用の甲板の太い突起を削り落とさない限り使えません。今回、模型店に入ってきた中には無かったので確かめられなかったのですが、他と同じようにただ単に入れて済ましているだけならむしろ作る側が混乱するんじゃないか?と思います。これらも含めて大型艦の時と同じく「もう少し考えて欲しかったなぁ」が率直な感想です。

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駆逐艦「雪風」発売、ほか。
(1995.02.04)



 昨年末の「陽炎」に続き、ピットロードの「雪風」が行き付けの模型店に入ってきたので買ってきました。評価表は#3919で書いた陽炎と重複するので省略しますが、コメント欄だけは、

 コメント |アオシマのWL+船体モールド料 900円。これをどう思うかだか…

 となります。予想通り2番主砲を外して機銃と電探を増設した最終時のキット化で、Aパーツの右下に増設分の機銃台と電探室に前部マストが入ったグループがあって、陽炎の時に有った前部マストと2番主砲1式の入った右上のグループは切り取られていました。WLアオシマの雪風も最終時でしたが、増設分の機銃台の形状が今三つぐらいの出来でマストの表現にも物足りない所がありましたから、この点はかなり良くなっています。

 デカールは駆逐隊番号、同型艦8隻(初風/雪風/天津風/時津風/浦風/磯風/濱風/谷風)分の艦名、煙突の識別帯と識別符字に加え、雪風が戦後復員船として行動した時の船体のマーキングが一式入っています。陽炎の感想の時にデカールの説明が充分でないと書きましたが、この雪風の場合は説明書で最終時に必要のないものと復員船に使用するデカールの解説などが有りました。

 …それ以外は陽炎の時に書いた印象と変わる所はありません。優れた内容である事に違いないのですが、前にも触れた価格の問題など万人に薦めるにはちょっと辛いキットだと思っています。ピットロードの過剰気味のモールドが本当に 1/700のスケールに必要なものなのか?など他にも疑問に思う事はありますが、それは言葉で表現するべきものではないと思うので、実際にアオシマのWLと作り比べることが出来たら(できたら ^_^;;)また書くこ
とにします。

※注 
 「完成品」のページの駆逐艦吹雪/陽炎/雪風3隻は、このMSGの
延長線上で作ったものです。詳しくは製作記を 参照 して下さい。

 下記の文章はUP時には削除した部分です。駆逐艦3題の製作記に
 加えるのを忘れていたので、ここに補足しておきます。

 青島の陽炎が世に出たのは1972年、今から25年ほど前の話で、この 頃は毎月3〜4隻のペースで新作が発売されていました。現在の目で見れば艦橋はバリと部品の区別が付かないし、細部のモールドは無いに等しいし、パッケージを開いて作欲が湧くような部品構成ではありません。ただこの当時の艦船キットは田宮や日模やエレールの一部のキットを除いてはみな似たり寄ったりな内容で、何よりまず走らせて楽しむ事が日本の艦船キットの唯一かつ最大のセールスポイントだった時代に売り出されたものの一つでした(そんな時代だったのです)。さらに私の乏しい記憶では、現在のように1/700に全てのモールドを求めようとする事は当時はなかったように思います。1/500以下のキットは手間を掛けずに数を揃えるのが目的で、いかに細部を表現するかよりも如何に省略するかが工作のポイントでした。

 もちろん今は21世紀が目前です。ランナーと部品と湯口の区別さえ付かなかったレベルや、袋の中で部品が半分壊れていたエアフィックスのキット云々といった年寄り臭い昔話を持ち出して青島のキットの時代背景を書いても意味がありませんし、より精密で作り易いキットに置き替わってゆくのは自然なことです。ただ、「いま」の世代がモールドの善し悪しだけを見て青島のキットたちを切り捨てて欲しくはありません。モールドの内容は艦船キットを作る上で重要な事であっても 絶対的な問題ではないのです。

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駆逐艦「夕雲」発売。
(1995.03.11)


 年末年始の陽炎型に続き、発売がアナウンスされていたピットロードの新作が模型店に入ってきたので買ってきました。前振り省略でまずは評価表から。

項 目 名 内      容
ジャンル 近代艦船・日本海軍駆逐艦
名  称 夕雲
メーカー ピットロード
スケール 1/700
マーキング 艦名(同型11隻分)、駆逐隊識別帯、軍艦旗、識別符号
モールド ★★★★ 小部品は◎。船体の舷窓の表現に難あり、舷外電路なし
スタイル ★★★★ 陽炎同様、艦首のフレアーと艦尾のラインに多少疑問有
難 易 度 ★★ 作るだけなら手はかからない(と思う)
おすすめ度 ★★★ 高価だが、他に選択の余地はない。
コメント 本級は資料があまり多くないので、作るなら考証に充分注意を。

 部品割は#3919に書いた陽炎と同一で、というよりA部品が同じ金型の中で艦橋の設計を差し替えて(今回の夕雲では使用しない)機銃台を追加した内容になっています。※注

 夕雲型駆逐艦はWLでは長谷川から出ていましたが、準同型艦の陽炎型と並べても違う船型にしか見えない、船体の基本設計そのものに問題があったキットでした。艦橋から艦首に至る部分の甲板の平面型が細く、またリノリウム押えの凸モールドが太すぎたり、船体と砲搭をつなぐ方法が他の駆逐艦のキットとは逆で甲板の大きな凸突起へ砲搭の底の凹穴を押し込む(しかも寸法が合わない!!)所など、作った時に手を焼いた方は決して少なくないだろうと思います。陽炎の船体に夕雲の艦橋と煙突を付けた方がまだ手軽に仕上がったほどで(^_^;)。
 ピットロードの陽炎の時は「WLとの価格差と内容をはかりに掛けて…」と書きました。この夕雲も決して妥当な価格とは思えませんが、競合するWLの内容がディテール以前のものである以上、他に選択の余地はありません。

 大半の部品が陽炎型と共通なので、キットの内容に関する印象は陽炎と変わる所はありません。舷窓の表現や舷外電路など手を入れる部分は有ります。マーキングは同型11隻分の艦名や煙突の識別帯などが付いていますが、実際は大半が大戦中に竣工しているため舷側に艦名を表記した艦はほとんど無かったと考えられます。煙突の識別符号(▲)は昭和18年に舞鶴工廠で撮影された巻波の中央部の写真から判るものですが、これも当時他の艦がどのような記号を用いていたのか明確な資料が有る訳ではありません。夕雲型はディテールの判る鮮明な写真があまり無いので断言することはできませんが、これらのマーキングを無理して入れる必要が有ったのかは疑問に思う所です。

 考証の問題ですが、夕雲型駆逐艦は前述のように大半が大戦中の竣工でしかも同型19隻全てが戦没したために細部が明瞭に判る写真はほとんどありません。電探や機銃の増備状況やそれに伴う改造など、文章や図面として伝えられていることがらはありますが、それを明確に裏付ける写真資料は皆無に近いのが現状です。

 これらは別に夕雲型駆逐艦に限ったことではありませんが、1/700というスケールを考えた場合出来上がるキットのレベルが一定に揃えられていれば、極端に細部までこだわって作る必要はないと思います。ただ、各艦毎の電探や機銃の増備状況−特に後部2番主砲の有無は判断が難しいことがらの一つですし、もし資料的に裏付けが取れない場合はそのリスクも覚悟しなければならないと思います。

※注
 この他に船体艦首の1番砲搭の砲座の位置が陽炎型より1.5mmほど下がっています。下記「朝霜」の感想も参照して下さい。

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駆逐艦「朝霜」発売。
(1995.04.13)


 夕雲に続き、ピットロードの新作が模型店に入ってきたので買ってきました。夕雲型後期型製作可能と箱にありましたが、内容には少し疑問が有ります。
 まずは評価表から。

項 目 名 内      容
ジャンル 近代艦船・日本海軍駆逐艦
名  称 朝霜
メーカー ピットロード
スケール 1/700
マーキング 艦名(同型8隻分)、駆逐隊識別帯、軍艦旗、識別符号
モールド ★★★★ 小部品は◎。船体の舷窓の表現に難あり、舷外電路なし
スタイル ★★★ 艦首・艦尾形状に加え、艦橋の相違点が再現されてない
難 易 度 ★★ 作るだけなら手はかからない(と思う)
おすすめ度 ★★★ 高価だが、他に選択の余地はない。
コメント 夕雲型後期型は特に資料が無いので、作るならある程度覚悟の上で。


 夕雲型の後期型と呼ばれる艦は竣工時より電探と機銃を増備し、電探室の設置に伴って艦橋の容積が増え、外観上は前期艦では傾斜していた艦橋の背面と側面が垂直になっていた、と資料に有ります。艦橋背面の容積が増えていることは完成後の朝霜や清霜の写真と昭和18年に舞鶴で撮影された巻波の中央部の写真を比べると判りますが、キットの艦橋は夕雲のままでその違いが再現されていません。ピットロードらしくないミスですが、それに加えて不可解なのはAパーツの右端で、

朝霜の夕雲と異なる部分の部品表です。 電探の無い初期型の前部マストと2番砲搭のグループに加え、夕雲ではカットされた2番砲搭撤去後の増設機銃座や電探用前部マストのグループが一緒に入っています。電探用のマストや艦橋前と2番砲塔撤去上の増設機銃座を使うためですが、陽炎型から金型を一部別設計した(後述)割にはあまり合理的なやり方と思えませんし、雪風で使った電探室のパーツもそのまま入っています(使用指示なし)。

 夕雲の感想を書いた時に「陽炎型と同じ金型の中で艦橋の部品を入れ替えて機銃台を追加した」内容と書きましたが、その後で良く見てみると船体艦首の1番砲搭の砲座の位置が陽炎型より1.5mmほど下がっています。これも陽炎型と夕雲型の相違点の一つで金型の設計が変更されている訳ですが、そこまで手を付けておきながらなぜ艦橋の相違を無視したのか疑問が残ります。

 夕雲型は資料があまり残っていないことは#4081で書いた通りですが、前期型の艦が電探を装備した際に後期型にならって艦橋の改造を行ったか否か、また大戦末期に陽炎型のように2番主砲を取り払って機銃を増設したのかという事すら判らないというのが実情です。雪風で用いた電探室や2番主砲撤去後の増設機銃座がキットにそのまま残っているのも、あるいはこの辺の考証に自信が持てなかったのかもしれません。もちろん採算上削ったり別の−例えば艦橋などの−部品と差し替える余裕が無かったのかもしれませんが。

 夕雲型は作るつもりはありませんでしたが、青島とピットロードの陽炎型の完成のメドが立ったので、以上の点を踏まえた上で鮮明な写真が残っている清霜(後期型最終艦)として作ろうと思っています。これはまた作った時点で気が付いた事があれば画像データと共に書くことにします。

注:この製作は実現していません(_O_)。

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軽巡洋艦「エムデン」発売。
(1995.05.10)


 GWに東京に行ってきました。模型屋に寄ったら第一次大戦の通商破壊作戦に活躍したドイツ軽巡エムデンのキットが出ていたので買ってきました。
 まずは評価表から。

項 目 名 内      容
ジャンル 近代艦船・ドイツ海軍軽巡洋艦
名  称 エムデン(I)
メーカー ドイツレベル
スケール 1/350
マーキング ネームプレート、艦橋の窓、ワッペン、艦名、軍艦旗(信号旗等は紙)
モールド ★★★★ 全体的には良好。ただしシールド付主砲の出来は今一歩
スタイル ★★★★ エディプレートの形状が今一つ。
難 易 度 ★★★ 仮組みの印象は良い。足りない部分は金属材料で。
おすすめ度 ★★★★ 人と違った軍艦の模型が1隻欲しいと言うのなら。
コメント 田宮の1/350とは多少次元の異なるキットです。念の為。


 模型雑誌に広告が載った時「2代目のキット化」と書いてあったので?と思っていましたが、通商破壊作戦で活躍した軽巡洋艦としては初代のキット化です。
 部品割は以下の通り。


・船体(右舷、左舷)
・甲板、マスト、探照灯台、マストのはしご、ボートダビットなど
・艦載艇、10.5cm主砲、コンパス、探照灯、係船桁、ファイフレール、ほか
・中央船室側壁、艦橋、煙突のキャップ、展示台、舵、錨、舷梯、ビルジキールなど
・艦尾底部(右舷、左舷)、煙突、スクリュー、プロペラシャフト、波切り板など

                          総部品数 143個


 このキットにはパーツ毎のグループNo.は付いていませんが、艦尾底部とスクリューと煙突の有るグループのみ「EMDEN」の彫刻があります。艦尾底部と煙突がそっくり別部品というのがなかなか意味深長で、ひょっとしたら同型艦のドレスデンを出す気があるのかもしれません(エムデンのスクリュー2軸に対しドレスデンは4軸艦で主機関も異なります)。※注

 船体は外板の継ぎ目がきれいな凹モールドで好感が持てますが、上記の通り艦尾の底が別部品になっているので接着後に裏側から補強する必要がありそうです。それに船体のプラの肉厚もスケールの割に薄いので、甲板を接着する前に角材などで補強した方が良いかもしれません。
 船体ではエディプレート(プロペラシャフトの船体への差し込み口)の形状が金型の都合で実艦と異なっているので船体に付く部分と底の面を削る必要があります。また資料によればエムデンのシャフトブラケット(軸受け)は2組有ったようなので、キットのシャフトブラケット(部品No.86 )とエディプレートの中間付近にプラ板やプラ材などでもう1組作る必要があります。

 キットのモールドは全体的には良好で、多少誇張気味?な感じも受けますがそれなりの表現が成されています。船体中央部の船室の側壁は別部品になっていてハッチや窓もそれらしく再現されていますが、船室上面が甲板と一体化してモールドされているので組んで整形し塗装するには多少手を焼くかもしれません。強度上からもここはできれば船室上面を甲板から切り離し、甲板の穴をプラ板で埋めて裏側を補強した上で、切り離した船室上面と側面のパーツを組んで甲板に接着した方がうまくいくかもしれません。

 艦橋のパーツには左右の見張り所を除いて角窓のモールドが有りますが、何故か黒のデカールを貼るよう指示されています。ここも黒のエナメルを流し込み、左右の見張り所はプラ板で作り直した方が良いかもしれません。艦橋下部の司令搭?のスリットはモールドが無くデカールを貼る表現になっていますが、工具があれば細いみぞを掘って黒エナメルを流し込む方が良い感じになるかもしれません。また、艦橋の側面は一直線になっていますが、手元の実艦写真を見る限りその後部は多少内側に入り込んでいるようです。それと、艦橋と張り出しのブルワーク状のものは実艦では手すりにキャンパスを貼っているように写真から見えるので、もしその通りならキットのモールドは何とかしたい所です。

 10.5cm主砲は甲板上のシールド付きのものの他に船体側面の張り出しに4基有りますが、シャッター?が閉じた状態になっている艦尾側張り出し両舷に付く砲身の部品が無いので伸ばしランナーか金属線で砲身を付ける必要があります。シールド付き主砲はムクのシールドと砲身が一体化された表現で、シールドの内側と照準穴等を黒で塗装するよう指示されています。これは結構目立つのでシールドの内側を削るか完全に自作し、砲自体も船体側面に付くもの(部品No.5)を参考に自作した方が良いだろうと。甲板に付くシールドの無い砲(部品No.52 )は5.5cm砲ですが全体的に大ぶりで10.5cm砲とバランスが取れないので、これも作り直した方が良いと思います。

 細部や張り線に塗装の問題など他にも気になる部分はありますが、細部を丹念に検討し必要に応じて金属材料に取り替えて作り込んでゆけばかなりの出来になりそうな感じがします。第一次大戦の軍艦はキットがほとんど無く、大型キットでは私の知る限りエレール1/400のポチョムキンとオーロラが有った位でしたから、その意味でも価値はありそうです。

※注
 ドレスデンは後に発売され、艦底底部と煙突一式は別部品でした。
 最終的な部品割は以下の通り。

・船体(右舷、左舷)
・甲板、マスト、探照灯台、マストのはしご、ボートダビットなど
・艦載艇、10.5cm主砲、コンパス、探照灯、係船桁、ファイフレール、ほか
・中央船室側壁、艦橋、煙突のキャップ、展示台、舵、錨、舷梯、ビルジキールなど
 以上/エムデン、ドレスデン 共通

・艦尾底部(右舷、左舷)、煙突、スクリュー、プロペラシャフト、波切り板など
 以上/エムデン、ドレスデン 差し替え

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駆逐艦「秋月」「照月」発売。
(1995.07.29)



 青島のWLの新作が模型店に入ってきたので早速買ってきました。秋月型駆逐艦はフジミから出ていますが、プロポーションが比較的良好だった反面各艦毎の特徴が入り交じった内容で、考証にかなり注意が必要なキットでした。そこを踏まえて95年の青島がどう差別化するか、に興味が有りました
が…。
 まずは例によって評価表から。

項 目 名 内      容
ジャンル 近代艦船・日本海軍駆逐艦
名  称 秋月(照月)
メーカー 青島
スケール 1/700
マーキング なし(軍艦旗はステッカー)
モールド ★★★★ 甲板のリノリウムと舷側のモールドが無い。
スタイル ★★★ 艦首の平面が若干細い。艦尾形状も疑問。
難 易 度 ★★★ モールド追加に手がかかる。塗装説明は不十分。
おすすめ度 ★★★ 対価格差を考えると、竣工時ならフジミとは一長一短。
コメント モールド、考証など少し手のかかるキットだと思います。

 キットは竣工時の状態のようで、秋月/霜月共に箱替えで内容はほぼ同一です。部品割は以下の通り。

・船体 (No.1)
・艦底板(No.2)
秋月の部品表です。
・Xパーツ(小型艦用ディテールアップパーツに同じ。詳細は#3930参照)


 機銃や艦載艇に魚雷発射管などは付属のディテールアップパーツの中から
使うよう指示されています。このへんの小物の出来は青島が最も苦手として
いたことの一つでしたから、大分印象は良くなっています。

 キットで気になった事として、まず艦首の平面形が若干細い感じです。図面と突き合わせても錨鎖口の付近がやや細く、全体としてスリムな印象を受けます。この部分の修正はかなり困難ですが、気になる場合はフレアーの形状も含めて何とかしたい所です。また艦尾は実艦では上から見て喫水線に向かって台形に広がっていますが金型の関係で逆にすぼまった形になっているので、ここも修正したい部分です。

 船体は鉄甲板と魚雷運搬軌条のモールドが有る以外、兵員室の側面や舷側のモールドは何も有りません。舷窓や舷外電路を追加するのは他のWL駆逐艦と同じですが、甲板のリノリウムのモールドが無くパッケージ裏の塗装説明にも甲板を全て軍艦色で塗るよう指示されているのはちょっと考えものです。少なくとも秋月/照月の竣工時には艦首楼甲板と船体後部にリノリウムが敷かれていましたから、鉄甲板のモールドの無い部分にリノリウム押えのモールドを必要に応じて追加し塗装する必要があります。また、秋月/照月の竣工時には艦尾の両端に陽炎/夕雲型と同様な爆雷投下台が6基(3基×2組)装備されていましたが、モールドが有りません。ここも結構目立つのでピットロードのキットを参考に追加した方が良いと思います。

 部品割の表で示したように、装備品のうち10cm連装高射砲と94式射撃指揮装置が新設計となっています。連装高射砲は砲身が太い以外はまずまずの表現で、ピットロードのパーツセットよりイメージを捉えているように感じますが、94式射撃指揮装置の出来は今一つで余裕があれば他から調達したい所です。

 パーツ割から見る限りでは、機銃や電探を増備した大戦末期の艦が後に出てくると思いますが、興味深かったのはそれら部品の差替えの可能性でした。秋月型駆逐艦は全部で12隻竣工しましたが、個々の艦毎、あるいは時期によって細部や兵装が違います。フジミのキットは上部構造物のレイアウトは秋月〜霜月までの初期型で、工作を簡易化した冬月以降の戦時計画艦にするにはかなりの改造が必要でした。この青島の部品割を見る限りでは、それら戦時計画艦との大きな相違点である煙突後部の吸気口や兵員室の前半分が
別部品になっているので、恐らく後に出てくるキットでそれらの部分は再現されるだろうと思います。ただ秋月型駆逐艦の場合は以前書いた夕雲型と同様に電探の増備により艦橋後部に電探室を増設したため、艦橋後部の形は艦によって多少相違があります。キットを見る限りでは艦橋の下側は前後に分割しているのでその違いを別パーツで再現することは不可能ではありませんが、そこまでフォローするかな…という気がします。

 艦橋や細部など良い部分は多いのですが、キットの設定である秋月/照月の「竣工時に限っては」フジミのキットと比べても一長一短という印象で優劣は簡単に判断できません。艦首を除いてもモールドを修正しなければならない部分はどちらも同じくらい有りますし、塗装説明が曖昧なのも変わりません。考証にかなり注意しなければならない点も同様ですが、むしろ青島のキットは相違点の多い冬月以降の戦時計画艦が上記の推定通りに出てきた時に初めて意味が出てくるのかもしれません。その辺は、また実際にキットが出た時に詳しく書くことにします。

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駆逐艦「樅」発売。
(1995.08.14)



 青島の秋月/照月と前後して長谷川の新作が模型店に入ってきましたが、多忙なこともあって感想が少し遅くなりました。樅(もみ)型は大正年間に量産された艦隊護衛用の二等駆逐艦で大正〜昭和に掛けて水雷戦隊の中核を成した艦でしたが、1930年代には老齢のため多くの艦が除籍され、太平洋戦争では一部の艦を除いて駆逐艦として活動する事はありませんでした。樅は機関の不調のため1932年4月に現役を退いています。峯風/神風型と並んで戦前を代表する駆逐艦の一つですが、先の大戦で最前線で活動した特型以降の駆逐艦と比べて今ひとつなじみがなく、今回長谷川が「二等駆逐艦の」新作として選んだのは多少意外な感がありました。
 能書きが長くなりました。例によって評価表から。

項 目 名 内      容
ジャンル 近代艦船・日本海軍駆逐艦
名  称
メーカー 長谷川
スケール 1/700
マーキング 舷側・艦尾の艦名、軍艦旗、艦底板の艦名
モールド ★★★★ 舷窓の枠はだるい凸モールド。それ以外は◎。
スタイル ★★★★★ マストを除き、特に問題となる部分はない(と思う)。
難 易 度 ★★ そのまま作るなら手はかからない。大戦中は考証要。
おすすめ度 ★★★★ 特に峯風/神風型駆逐艦を作られた人ならぜひ。
コメント 第一号型哨戒特務艇がオマケで付く。最近のWL新作では屈指の出来

 キットは大正〜昭和初期の状態のようです。部品割は、

・Aパーツ(船体、艦底板、艦橋航海甲板、2,3番主砲砲座、後部煙突、マスト等)
・Bパーツ(ボートダビッド、魚雷発射管、12cm単装砲、カッター、錨など)×2
・Cパーツ(主砲盾、機銃、前部煙突、艦橋基部/天蓋/側面、カッターなど)
                            総部品数47個

・Zパーツ(第一号型哨戒特務艇一式、船体/船橋/煙突/機銃/マスト等
                              部品11個

 で、艦首楼甲板まで一体で抜かれた独特なスプーン型艦首は良く再現していますし、部品のモールドも良好で田宮の小艦艇セットの19号型哨戒艇で はムクになっていた12cm主砲も砲と盾が別モールドになっていますし、細かい所では艦載カッターと内火艇、通船の違いがそれらしくモールドされていて、ピットロードの峯風/神風型駆逐艦と並べてもそん色がありません。舷窓だけはモールドを削ってピンパイスで穴を開けた方がより良い感じになりますが、最近のWL新作の中では内容的に最上位のものだろうと思います。
 ただ唯一気になった点として、樅型駆逐艦は写真を見る限り前部マストの取り付け位置が艦によって多少違うようです。樅の場合はキットの指定位置で良いようですが、他の艦として作る場合は注意が必要です。

 先の大戦では樅型21隻中9隻が哨戒艇に改造され、実質的には高速輸送艦&護衛艦的な用途で各戦線に投入されました。開戦当初のウェーキ島攻略作戦で海岸に乗り上げて強行上陸を成功に導いた第32/33号哨戒艇(旧葵/萩)など輸送や護衛に活動したと資料に有ります。最初の能書きで「二等駆逐艦の新作として」出るのは意外だと書きましたが、それは個人的には樅型がWLの一環として出るなら戦歴の多い哨戒艇としてではないか?と考えていたためで、大戦末期に量産された第一号型哨戒特務艇がオマケで付いていることが単なる偶然でないなら、企画設計の段階で樅型駆逐艦の半数近くが大戦直前に哨戒艇に改造されたことが頭に有ったのかもしれません。それならば、という仮定で書きますが、オマケの哨戒特務艇自体は有難いものですが、むしろそれだけの余裕が有ったのなら艦尾を別パーツ化して大発を入れたり増設機銃など大戦中の哨戒艇としても容易に作れるような配慮が有った方が、作ったりコレクションをする上でもっとバリエーションが広が
ったかもしれません。キットの出来が申し分ないだけに、余計にそう思います。

 オマケの哨戒特務艇自体はモールドはやや劣りますが、木造の漁船型の艦型は良く捉えています。艦首の機銃座と艦尾の爆雷台のモールドを削り落として型取りし船橋を修正して漁船として量産するのも面白いかもしれません。

 樅型のうち3隻(栗/梅/蓮)だけが先の大戦で駆逐艦として活動しました。資料が手元に無いので大戦中の詳しい状況は良く判りませんが、1番煙突の頂部に雨水除け装置が付いて高さが若干高くなったこと、1番魚雷発射管を撤去して艦尾に爆雷投下台を装備したこと、その他電探や機銃を増備したと言われています。よって大戦中の状態にするには多少注意が必要だろうと思います。

 長谷川からは、次にほぼ同型の若竹型二等駆逐艦の発売がアナウンスされています。船体の裏側で1番魚雷発射管の穴が開いていない事や艦尾にも指定以外に2つ貫通していない穴が有ることから、あるいは大戦中の状態で出るのかな?とも考えたのですが、パーツ割を見る限り1番煙突や兵装が別部品化されていないのでその可能性は低いだろうと考えます(恐らく不要部品になっている1.5m?測距儀を艦橋トップの上に探照灯の代わりに取り付け、2番煙突の後ろの台に単照灯を付けデカールを替える程度でお茶をにごすんじゃないかと思いますが…)※注

 色々書きましたが、地味な艦ながら前作の金剛型戦艦と同様にメーカーの熱意が伝わってくるなかなかの力作です。大正時代の駆逐艦、特にピットロードの神風/峯風型駆逐艦を作った方なら作り比べてみると興味深いだろうと思います。

※注  
 若竹の内容は樅と全く同一、単装機銃を外して2番煙突の後部の台に探照灯を付け、箱と説明書とデカールが替わっているだけで、樅にあっった第一号型哨戒特務艇も同様に付いています。大戦中の状態への改造方法などは特に説明書にはありませんでした。

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駆逐艦「冬月」「宵月」発売。
(1996.02.25)



 青島のWL駆逐艦「冬月」「宵月」(よいづき)が予定通り発売されたので買ってきました。どちらも以前に書いた秋月/照月の一部部品替えで、全体的な印象はその時とあまり変わりありません。とりあえず評価表から。

項 目 名 内      容
ジャンル 近代艦船・日本海軍駆逐艦
名  称 冬月(宵月)
メーカー 青島
スケール 1/700
マーキング なし(軍艦旗はステッカー)
モールド ★★★★ 舷側のモールドが無い。前部マストは×。
スタイル ★★★ 艦首の平面が若干細い。艦尾や艦橋の形状も疑問。
難 易 度 ★★★ モールド追加に手がかかる。塗装説明は不十分。
おすすめ度 ★★★★ 秋月型後期艦の特徴は押えています。
コメント マストの自作、モールド、考証など少し手のかかるキットだと思います


 秋月型駆逐艦の冬月以降に完成した艦は後期型と呼ばれ、戦時下の量産を目的に工作の簡易化が図られ外観上秋月とは一部異なる部分がありました。フジミのキットは秋月〜霜月までの初期型がベースになっていたため後期型の艦を作るにはかなり手を入れる必要がありましたが、この青島のキットでは主な相違点が別部品化されていて容易に作ることができます。

冬月の秋月と異なる部分の部品表。前部マストや電探など 部品割は以前に示した秋月/照月から、No.20-26を左の部品と差し替えています。増設分の機銃台は予備肴雷格納箱の上の2基分と3番主砲直後の1基分が付いていて、単装機銃が無いことを除けば冬月の竣工時はこれで良いと思うのですが、宵月の竣工時や冬月の沖縄特攻の際はさらに艦橋の両側に機銃台が増設されていたので、その通り作るなら機銃台を他から調達or自作する必要があります。
 機銃の他に気になったのは前部マストの形状で、これは電探を付けるために大変複雑な形状になっていてこのスケールで部品化するのは非常に難しいと思うのですが、それを差し引いてもちょっと省略され過ぎです。完全に再現するには腕が要りますが、できれば資料を元に木型を起こして真ちゅう線で自作したい所です。
 また艦橋の形状は秋月/照月と同じで、電探室の増設による艦橋基部背面の違いは再現されていません。ここも結構目立つのでできれば前部マストの自作と合わせて何とかしたい所です。

 大戦末期の日本艦は防火上の問題から甲板のリノリウムを剥がしたものが多かったと言われ、この冬月/宵月に関しては直接資料が有る訳ではありませんが、キットの指定通り甲板を軍艦色で塗っても正しいとも間違っているとも断定できません。つまりこの話も伝聞に基づく「一般的な傾向」であって、全ての艦がそうであったという確証はどこにもありません。沖縄特攻の涼月や島風の沈没直前の航空写真を見ると甲板の色調が明らかに変わっているのが判りますし、そもそもそれは艦内の防火対策として行ったことでリノリウム剥がしは露天甲板まで及ぶものでは無かったなど証言も食い違っている部分があるので、初期型の艦と同じようにリノリウムの部分を区切って塗装しても大きな間違いにはならないだろうと思います。大戦末期の日本艦の状況を示す資料はほとんど無いので、この辺は非常に難しい所ですが。

 他にも艦首楼甲板のナックルや艦載艇に甲板上のレイアウトなど気になる部分はありますが全体的には秋月型後期艦の特徴は押えているように思いますし、フジミのキットを改造するよりもずっと楽に仕上がるはずです。青島のWLキットの問題点のうち細部の表現力不足はディテールアップパーツの導入で大分良くなってきましたから、あとは考証の詰めの甘さを改善できればと思います。

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潜水母艦「長鯨」発売。
(1996.10.20)


 ピットロードの新作、旧日本海軍関係のインジェクションキットでは初の大型艦艇が模型店に入ってきたので早速買ってきました。迅鯨型潜水母艦はWLには無く(20年以上前の見本市で青島から木型が参考出品されていた事はありましたが結局流れてしまった)、かなり高価なキットですが他に選択の余地はありません。ただ、潜水母艦のキット化としてバリエーションの多い剣崎型ではなく迅鯨型を選んだ選択には疑問があります。
 まずは例によって評価表から。

項 目 名 内      容
ジャンル 近代艦船・日本海軍潜水母艦
名  称 長鯨
メーカー ピットロード
スケール 1/700
マーキング 軍艦旗、艦載機の日の丸、他(ちくご型護衛艦用のデカールを流用)
モールド ★★★★ 長船尾楼甲板上の船室側面のモールドが無い。他は○。
スタイル ★★★★ 中央部甲板の支柱が無いのはやむなし、か。
難 易 度 ★★ 船体の事後変形と補強に注意が必要。
おすすめ度 ★★★★ かなり高価だが、選択の余地はない。
コメント コレクションには最適だが…

 キットは友鶴事件後の性能改善工事が完了した1934年頃の姿のようです。部品割は以下の通り。
長鯨の部品表です。
 部品数は比較的抑えられています。部品割で興味深いのはAB部品共に一部ランナーを人為的に切り取った跡があることで、恐らく同型艦で以降発売予定の迅鯨用の艦橋の部品が有るものと考えられます。また迅鯨が大戦中の武装強化状態で出るとすれば、それらの部品やマストなどは別パーツで追加されるものと思います(個人的推測)。
船体と甲板の接着方法  船体は一体整形ではなく、艦底の中央で分割された両舷側と甲板が別々の部品になっています。舷側のモールドが細かく表現できる反面、事後変形が有る場合甲板がうまく接着できなかったり喫水線の部分にすき間が出たり最悪船体そのものが経年変化で歪んでしまう可能性もあります。このキットの場合は船体の肉厚があまり無く接着面も少ないため、組立の際は接着面に液体接着剤を流込む一方、艦底の接着面に裏側からポリパテを詰めたり金属板を付けて補強する必要があると思います。
  他に気になった点としては、船首楼甲板と中央部甲板の間の船室側面が金型の都合でモールドが全く無く、中央部甲板のステイもありません。ここは結構目立つので舷窓やハッチなどを追加した上でプラ板の薄切りでステイを追加したい所です。また艦載機は翼を折り畳んだ状態にしても面白いかもしれません。

 以上、キットに関してはあまり書く事がありません。
 ただ一つの問題点、を除けば。

 このキットの唯一かつ最大の問題点は「存在価値」だ、と言ったら怒る人もあるかもしれませんが、発売のアナウンスを聞いて以来ずっと思っていた率直な印象でした。潜水母艦のインジェクション・キットは今まで商船流用の特設を含めて無かったのでその意味では貴重なアイテムですが、なぜ、いま、バリエーションに乏しい迅鯨型を選んで出す必要があるのかが今一つ理解できないのです。

 軍艦に詳しくない方のために少し書きますと、潜水艦への物資の補給や整備、乗員の休息を目的として建造されたのが潜水母艦と呼ばれる艦種で、専用に建造された艦は3タイプ、計5隻ありました。迅鯨型はその最初に建造された艦で、今回キット化された長鯨は同型艦になります。戦前戦中を通じて当初の目的通り活動した艦でしたが、その任務上基地に居る事が多く、戦歴もあまりありません。その次に建造されたのが大鯨、最後に建造されたのが当初給油艦として計画された剣崎型で、いずれも大戦前に航空母艦に改造されました。

 なぜ?と書いたのは、潜水母艦を選ぶなら剣崎型の方がバリエーションが多く模型化する上でより需要が見込めるんじゃないかと思うからです。確かに潜水母艦としての活動はほとんどなく同型艦の高崎は潜水母艦としては完成しなかったので、戦前戦中を通して活動した迅鯨型をその代表として選んだ理由は判らなくもありません。しかし、剣崎型潜水母艦を改造してできた祥鳳型空母は先の大戦で最も活躍した艦の一つで艦隊編成には不可欠ですし、部品割を工夫して潜水母艦にも航空母艦にも作れるようになっていれば作る側にとってより魅力的だったと思うのです。

 ピットロードは年末に工作艦「明石」の発売がアナウンスされています。これも最高のコレクターズ・アイテムである事に変わりはないのですが、いま、他の軍艦を差し置いてまで発売しなければならない「必然性」は感じません。同型艦も無くバリエーションもスクラッチの元にすらなりません。前に挙げた祥鳳型空母や軽巡洋艦阿武隅など先の大戦で活躍しながらキットが無い艦はまだ残っていますし、WLの中にも致命的な問題点を抱え修正困難なキットは少なくないのですから、豊富な?資金と労力を使って出すのならメーカーはその辺を埋める事をもっと考えて欲しいものです。

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工作艦「明石」発売、ほか。
(1996.12.30)



 最近のサンタクロースは「大きくなり過ぎたヲ友達」には宅配ナシだそうで、ピットロードのクリスマス・プレゼントが模型店に届いたので受け取ってきました。日本海軍が唯一専用に建造した工作艦でインジェクション・キットは他にはありません。以前書いたようにコレクション・アイテムとしては最高のプレゼントに違いありませんが、発売の「必然性」には疑問が残ります。
 まずは例によって評価表から。

項 目 名 内      容
ジャンル 近代艦船・日本海軍工作艦
名  称 明石
メーカー ピットロード
スケール 1/700
マーキング 艦名・軍艦旗・日章旗、ほか
モールド ★★★★ 舷側のモールドは無い。クレーン回りも気になる。
スタイル ★★★★ 取り立てて大きなミスは無い(と、思う)。
難 易 度 ★★★ ピットロードスタンダード。不可もなく可もなし。
おすすめ度 ★★★ スクラッチに挫折した人なら星5つ。
コメント 実艦を知っている人、戦艦や空母に飽きた人には最適かも。他は?。

 他に同型艦は無いので部品割は省略しますが、船体と艦底板で1グループ、上部構造物と艦載艇で1グループ、他に日本海軍装備セットVの部品がそのまま入っていて、高角砲や機銃などの小物はそこから使用するように指示されています。

 工作艦とは名前の通り前進基地での損傷艦の修理や本土での工場の補助に当たることを目的とする艦で、明石の場合17の工場と114の工作機械を装備していたといいます。先の大戦では最前線で損傷した軍艦の修理に活躍しました。それぞれの工場の床面積を広く取るために乾舷(船体の高さ)が高くまた上甲板が艦首から艦尾まで続いているのが大きな特徴で、キットはそれを良く再現しています。

 前回発売された迅鯨/長鯨では船体パーツが舷側の左右と甲板に割れていました(→#6117)が、今回は艦首錨甲板を除いて甲板と船体が一体整形になっています。そのため舷則のモールドはほとんど無く、舷窓などは開ける必要があります。他にクレーンの表現も気になる点の一つで、滑車が付いているのはオーバー気味ですし、一部を除いてトラス(骨組)も抜けていません。割とメリハリに乏しい船で5基の大型クレーンは非常に目立つので、できれば木型を作って真ちゅう線などで自作したい所です。

 以上、今回も他に書くことはありません。誰が作っても容易に再現できると思うのですが…

  年の暮れに当たって、もう少し。

 上のMSGの続きにもなりますが、「…いったい誰が作るんだろう?」、これが今年の艦船キットを見ての率直な印象でした。田宮が唐突にフレッチャーを出しましたが、今の所外国艦の復活やシリーズ化の動きはなく、発売の意図すら良くわかりません。ピットロードは今年も多数のキットを出しましたが、日本海軍の関係は朝潮型駆逐艦を除けば知名度の低い艦ばかりで、マニアは喜ぶのでしょうがはたして商売としてやってゆけるのかなぁ?と心配になります。今回の明石の場合でも、同型艦が無いしスクラッチの元にもならないので一人1隻しか売上げが見込めないし、そのためか価格は非常に高く設定(3,500円)されていますが、たぶんこの駄文を読むほとんどの人は名前すら知らないだろうと。

 ピットロードは来年は補助艦艇に力を入れるとアナウンスされていて、実際、明石に入っているデカールにもキット化されていない補助艦艇の名前がずらずらと並んでいますが、仮に全部発売されたとしても単純に喜ぶ気にはなれません。「誰でも知っている」WLの主力艦の大半の中身は70年代のまま取り残されている現状を思うと、ピットロードには他にやるべきことが一杯あるように思うのです。模型全体の中での艦船模型の位置付けや将来の展望が見通せないまま、目の前の一部のマニアの欲求に答えようとする商品開発なら、いずれ続かなくなってしまうような気がしてなりません。これはWLの側にも言えることですけど。

 とはいえ、キットの中身が70年代だろうと90年代だろうと完成しなければ合成樹脂の入った箱に過ぎない訳で一緒ですから(^_^;)、来年はここの参加者に習って一つでも多く完成品を出したいものです。

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