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調理実演過去ログ:ホワイトエンサイン1/350巡洋戦艦フッドを作る
その1:キットについて
1997/07/21

実艦について

 大多数の日本人にとっての軍艦の象徴といえば「戦艦大和」になる所ですが、それと同じように英国人の「巡洋戦艦フッド」とは海軍の象徴であると共に国の象徴でもありました。大和の場合は国民の目に触れないまま戦没し戦後にその伝説が形作られていったのですが、フッドは両大戦の間、ドイツのビスマルクが完成するまで世界最大最強の戦艦として英国国民はもちろん世界中に親しまれた軍艦でした。1920年3月5日に竣工したフッドは排水量41,200屯、全長262.13m、主砲38.1cm×8門(連装砲塔×4基)、速力31ノットは当時世界最大の軍艦で、戦闘力は戦艦並み、かつ速力はそれをはるかに上回るものでした。

 巡洋戦艦とは、戦艦の砲撃力に巡洋艦の速力を持たせることを目的に作られた軍艦で、速力を得るために同じ砲を持つ戦艦に対して防御が薄いのが最大の弱点でした。第一次大戦で英独の大艦隊が激突したジュッドランド沖海戦で、すでに3隻のイギリスの巡洋戦艦が直撃弾により火薬庫の誘爆を引き起こして轟沈していました。この教訓から各国共に戦艦の高速化をはかると共に、すでにある巡洋戦艦に対してもその防御を強化する工事を行いましたが、フッドだけは条約明けの諸外国の新鋭主力艦の攻撃に耐えうる防御、特に甲板の水平防御を強化する機会がないまま第二次大戦に突入しました。外観はたいへん立派でしたが、結局それが悲劇を導くことになってしまいました。

 1941年5月24日、ビスマルクと交戦したフッドは直撃弾が火薬庫の誘爆を
引き起こして瞬時轟沈し乗員のほとんどが運命を共にする凄惨な最期を遂げました。そのニュースを聞いた世界中の国民も兵士も、首相の暗殺やバッキンガム宮殿が倒壊したに等しいショックを受けたといいます。

 世界の主要海軍国が覇を競った戦艦は、第二次大戦ではその大半が敵主力艦の撃滅という「本来与えられた任務」を遂行することなく果てました。それを思うと、凄惨で悲劇的な最期になってしまいましたが、フッドはその「与えられた任務」に立ち向かい倒れた、数少ない“戦艦”(いくさぶね)でした。


外箱の仕様

キットについて

 フッドは就役していた20年間に渡り世界的に有名な戦艦だった上にその悲劇的な最期が加えるインパクトが強いのか、同型艦が無いにもかかわらず昔から各社から組立キットが発売されていました。英国のホワイトエンサインモデルズ社は96年頃より英国海軍の艦艇のレジンキットを1/700と1/350で精力的に発売しているメーカーで、抜きの凄さと細部の表現力に特徴があると聞きます。

 巡洋戦艦フッドは私の最も好きな軍艦の一つです。現在出回っているキットはみな1/600以下の小スケールのものばかりで、存分に腕が振るえる大スケールキットの発売をず〜っと待っていました(エレールの1/400が出回っていた頃は貧乏学生で手が出なかった)(※注1)。そして、


とうとうやってきましたホワイトエンサイン、
縮尺は1/350だ!!

4万8千屯(最終時)の戦艦のレジンキットという事で価格もナナオの17インチディスプレイが1台買えるほど(※注2)だったのですが、冷静さを全く欠いた頭と身体は新発売の報を聞いたその耳で模型店に飛び込みオーダーを出していました。

 長く雨が続いた梅雨がやっと明けた頃、海の彼方から大きな箱がやってきました。内容を一言で表すと、

すげー。


 箱を開いて久々に血が沸騰しました。全長が262mの艦なので1/350でも75cm近い大きさになりますが、それだけの大きさのものを正確に抜いている上に、甲板の装備品の多くも同時に一体モールドで抜いています。ホワイトエンサインのレジンキットの「抜き」の凄さには定評があるのですが、全くもって驚きです。
 キットの内容は以下の通りでした。

[本体一式]
  • 船体
  • シェルターデッキ
  • 艦橋関係部品一式
  • 主砲塔、主砲砲身
  • 煙突、前部煙突基部
  • 艦載艇各種、ライフボート
  • フェアリード、リール、錨、ウインチ類、パラベーン
  • ポンポン砲一式、U.P(対空ロケット砲)
  • 探照灯、探照灯架台
  • マスト類
  • 各種測距儀
  • 後部艦橋、後部連装高角砲台座
  • 連装高角砲一式
  • その他
  • エッチングパーツ4種類各1枚
    1. 手すりと舷梯(RAILING & LADDERS)
      (手すり、舷外電路、舷梯)
    2. 一般装備(GENERAL FITTINGS)
      (ハッチ、ドア、リギング、錨鎖、煙突頂部の囲い、後部船室側面、ほか)
    3. 艦載艇及び武装関係(BOATS & WEAPONS FITTING)
      (艦載艇備品、艦載艇架台、ボートダビット、機銃/ポンポン砲関係)
    4. 35フィート内火艇備品及び架台
  • 1/192?図面(右舷側面図、上面図)×1枚
  • 組立説明書(20p+カラー塗装説明1p+部品請求申込書1枚)
  • アップグレードキット申込書
[艦底](購入時選択)
  • 艦底
  • エディプレート+シャフト+シャフトプラケット(一体モールド)
  • スクリューブレード


キットの内容


※注1
 1997年当時。トランペッターのキットが発売されるのはこの9年後のことです。
※注2
 1997年当時のブラウン管CRT。だいたいこの排水量の2倍×0.9でした。