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“シリーズ緊迫パレスチナ情勢①~③”を観て ①『青い募金箱 イスラエル建国の真実』(Blue Box)['21] https://www.nhk.jp/p/wdoc/ts/88Z7X45XZY/episode/te/LW4WGZG75K/ ②『ガザに留学した医学生』(Erasmus In Gaza)['21] https://www.nhk.jp/p/wdoc/ts/88Z7X45XZY/episode/te/QMYRR6228J/ ③『狙われる少年たち -イスラエルの「抑止的」治安対策-』(Two Kids A Day)['22] https://www.nhk.jp/p/wdoc/ts/88Z7X45XZY/episode/te/9258Y71MQX/ | |||||
BS世界のドキュメンタリー | |||||
最初の『青い募金箱』は、1890年にロシアで生まれ、迫害から逃れて十八歳でパレスチナに移住し、1930年代からパレスチナでの土地買収によるユダヤ人入植に携わった曾祖父ヨセフの遺した5000頁に及ぶ日記をもとに曾孫娘であるミハル・ワイツがイスラエル建国の歴史を辿ったイスラエル制作の番組だ。昨年六月に放送されたものの再放送とのこと。 身内の一人が「移送計画の黒幕」とも言っていたシオニストのヨセフの遺している使命感と良心の呵責とに挟まれた苦悩の言葉が印象深い。唯一の解決策はアラブ人追放だとしつつ、難民となったアラブ人たちにあくまでも補償金を払うべきだとする姿勢を崩さなかったことで煙たがられ、1965年に職を追われたようだった。 続く『ガザに留学した医学生』は、ちょうど一年前に放送された番組の再放送だった。ガザ地区にある大学に留学したイタリア人学生リッカルドを追った作品を二年前にスペインが制作していることが目を惹いた。初めてのガザへの留学生が使ったのがEUの留学システムだったからだろう。 ここでも、ガザからテルアビブへのミサイル攻撃に対するイスラエル側の報復攻撃に不安を漏らすリッカルドの姿が捉えられていた。決まって十倍返しで報復してくるイスラエルに対して、攻撃の手を止めないハマスの屈することはできない立ち位置の深刻さが何ともきつい。そこへ追い込んでいるのは、むろんイスラエルであり、国際社会だと思う。 こたびのイスラエルのガザ地区への報復攻撃の端緒となった先月のハマスによるミサイル攻撃の報を受けて早々に、僕がSNSに「ハマスがゼレンスキーに、ネタニヤフがプーチンに重なって映ってくる。」と記した時点からすると、アメリカのイスラエル支持が打ち出されながらも、イスラエル非難の声が高まってきている感はあるけれども、ウクライナにしてもパレスチナにしても、戦闘自体が止まなければ、人々に大きな犠牲が出続けるのは明白だ。武力ほど救いのないものはないと改めて思う。 二年前の番組中で「イカレタ戦争だ」と若者が言っている爆撃状況とは比較にならない、ほとんど掃討作戦とも言うべき報復攻撃が展開されている今、事態はどうなっていくのだろう。番組の最後に「番組で撮影した場所のほとんどが2021年5月の激しい爆撃でガレキと化した 取材対象者たちは幸い全員無事だったが多くの人命が失われた」とのテロップが映し出されたが、この十月以降、より事態が深刻化していることが、番組の後に続いて流された「彼らはいま」でのジュマーナとカラム(リッカルドのホストファミリー)の悲痛な声と映像により示されていた。 最後の『狙われる少年たち』は、昨年のイスラエル制作番組だ。番組の紹介ページには、2015年とあるが、それなら逮捕当時14歳ないし15歳だった少年による三年後の証言は、2018年のものということになる。軍や治安当局責任者の証言は、いつの時点のものなのだろう。2022年エルサレム・フィルム・フェスティバル「最優秀取材賞」を受賞したという本番組がどういう経緯から制作されたかが非常に気になった。 警察での取調時の記録映像のみならず、カメラを切って行われた暴行証言もパレスチナ人少年が語っている一方で、取り締まる側の兵士に加えて軍の検察部門の責任者もがカメラの前で証言をしていて、それぞれ皆が己が取った行動に対する説明を悪びれず率直に語っていることに驚いた。 会見すら開こうとせず逃げ回る政府要人ばかりが目に付く我が国と雲泥の差がある。誰もが自らの取った行動はやむなきもので悪行ではないとの自負と確信があるわけだ。そして、それをカメラの前で喋ることによって、いわゆる意図的編集で歪められることはないとの信頼がメディア側に対してあることを前提に成立していることが窺えて感銘を受けた。かつては日本社会にもあった覚えがあるけれども、すっかり失われている気がする。日本社会がダメになってきていると僕が感じる最も大きな事象の一つだ。 よくぞこういう証言を双方から引き出せたものだと感心するとともに、軍や警察が提供していると思しき記録映像の生々しさに驚いた。それはともかく、今回ハマスが誘拐した人質の解放と交換で解放されているパレスチナ人収監者のうち何割が少年なのだろう。そもそも数千人と言われている収監者のうち何割が少年なのだろう。番組の原題タイトルの一日二人の逮捕で積み上げている数は相当なものに違いない。治安当局者の言い分は、彼らは犯罪者だというものだったが、抗議の投石をした少年とハマスに拉致された人質との間に、当局に対して反抗的であったという以外にそう大きな差はないような気がしてならなかった。 | |||||
by ヤマ '23.11.20~22. NHK BS1録画 | |||||
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