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“世界サブカルチャー史 欲望の系譜 シーズン2” | |||||
NHK特別番組 | |||||
「今を知る為にこそ過去へ飛べ。周縁から見えてくる時代の気分、深層…、逆説の異色戦後史。」との惹句の添えられたNHKの特番シリーズは、サブカルチャーと謳いながらも、前シリーズが余りにアメリカ偏重、映画偏重だったことに少々興を削がれていたのだが、ヨーロッパ篇として「逆説の60-90s」と題されたものは、アメリカ篇ほどには偏重しておらず、何より僕自身が同時代を過ごして来ていることと、先ごろBS世界のドキュメンタリー「カラーでよみがえるアメリカ」で'20年代から'60年代を5回続けて観たばかり、ということもあって、とても面白く、興味深く観た。 第1回となる'60年代は、背徳、幻影、緊張、侵略、反乱、空虚を時代のキーワードとして、“怒れる若者たち”の登場から“政治の季節”とも謳われた'68年の五月革命などを映し出していた。17本の映画作品が取り上げられていて、第1章「背徳」において挙がっていたのが、甘い生活['60]、勝手にしやがれ['60]、大人は判ってくれない['59]、土曜の夜と日曜の朝['60]、007/ドクター・ノオ['62]。 第2章「幻影」が、太陽がいっぱい['60]、世界残酷物語['62]。 第3章「緊張」が、博士の異常な愛情['64]、アメリカ上陸作戦['66]、私は20歳['62]。 第4章「侵略」が、アルフィー['66]。 第5章「虚無」が、卒業['67]、仮面/ペルソナ['66]。 第6章「反乱」が、Ifもしも...['68]。 第7章「空虚」が、ざくろの色['69]、ウッドストック/愛と平和と音楽の3日間['70]、ジャニス['74]だった。 僕が未見なのは『土曜の夜と日曜の朝』『世界残酷物語』『アメリカ上陸作戦』『私は20歳』『仮面/ペルソナ』『Ifもしも...』『ジャニス』の7作。 このうち、かねてより宿題の『私は20歳』『仮面/ペルソナ』『Ifもしも...』は、是非とも観てみたいものだと改めて思った。 第2回の'70年代は、第1回目よりも音楽を取り上げていたことが目を惹いた。序章でクイーンの♪ボヘミアン・ラプソディ♪が流れ、本編では♪レット・イット・ビー♪と共に時代のキーワードは、閉塞、憂鬱、分裂、諧謔、真実、空虚、決別を時代のキーワードとして、17本の映画作品が取り上げられていた。 第1章「閉塞」に挙がっていた映画は、ひまわり['70]、惑星ソラリス['72]、ホーリー・マウンテン['73]。 第2章「憂鬱」が、暗殺の森['70]、1900年['76]、アメリカン・グラフィティ['73]、グリース['78]、エマニエル夫人['74]。 第3章「分裂」が、家族の肖像['74]、ザ・チャイルド['76]、エクソシスト['73]、サスペリア['77]。 第4章「諧謔」が、モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル['75]、酔拳['78]、夕陽のギャングたち['71]、イレイザー・ヘッド['77]、ロッキー・ホラー・ショー['75]。 第5章「真実」が、大理石の男['77]。 第6章「空虚」が、サタデー・ナイト・フィーバー['78]。 第7章「決別」が、ブリキの太鼓['79]だった。 僕が未見なのは『グリース』『エマニエル夫人』『ザ・チャイルド』『エクソシスト』『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』『ロッキー・ホラー・ショー』『大理石の男』『サタデー・ナイト・フィーバー』の8作。このうち『ザ・チャイルド』『ロッキー・ホラー・ショー』は、観てみたい。 そこで『if…もしも』&『いまを生きる』、『ロッキーホラーショー』&『ショック・トリートメント』もしくは『ロッキーホラーショー』&『ジーザス・クライスト・スーパースター』、『エマニエル夫人』&『O嬢の物語』、『グリース』&『サタデーナイトフィーバー』とか、どうだろうと定例の合評会の主宰者に提案し、もしあるなら『仮面/ペルソナ』&『処女の泉』も検討するよう頼んだ。 第3回の'80年代は、1958年生まれの僕の二十代とほぼ重なる。本編で示されていたように、ジョン・レノンが殺害された年から始まり、天安門事件が起きた年までの十年間だ。音楽への言及はさらに増えていて、ブロンディの歌う♪コール・オン・ミー♪から、アーハによる♪テイク・オン・ミー♪、僕と同い年のマドンナを取り上げ、'85年のライヴ・エイドから♪ウィ・アー・ザ・ワールド♪なども流していたことが目を惹いた。対抗、融解、買収、緊迫、虚飾、加速、解放を時代のキーワードとして、10本の映画作品が取り上げられていた。 第1章「対抗」に挙がっていた映画は、炎のランナー['81]。 第2章「融解」が、ラ・ブーム['80]、ディーバ['81]。 第3章「買収」が、ローカル・ヒーロー 夢に生きた男['83]。 第4章「緊迫」が、ノスタルジア['83]。 第5章「虚飾」が、パリ、テキサス['84]。 第6章「加速」が、未来世紀ブラジル['85]、ウォール街['87]、ラスト・エンペラー['87]。 第7章「解放」が、コックと泥棒、その妻と愛人['89]だった。 僕は“シネマ・デュ・ルック”という術語に馴染みがなかったが、『サブウェイ』や『汚れた血』『ベティ・ブルー』とともに語られた映画スタイルそれ自体が、自分の嗜好性とはあまりフィットしてこなかったものであることを思い出した。このうち未見なのは『ラ・ブーム』『ローカル・ヒーロー』『ベティ・ブルー』の3作。宿題映画のままになっている『ベティ・ブルー』と、僕の住む地域では公開がされなかった気のする『ローカル・ヒーロー』を是非とも観てみたいものだと思った。 第4回の'90年代は、グローバリズムの名のもとアメリカナイズが世界規模で展開した時期だという記憶が僕のなかにもある。ディズニフィケーションという言葉に馴染みはなかったが、経済以上にカルチャー面でのアメリカンスタイルの席巻とナショナリズムの激化という矛盾の混在というものが特徴的だった時代という感じが僕のなかにはある。また、ジェンダーフリー、ガールパワーが時代のトレンドとして顕著に感じられた覚えもある。 浸食、消失、引用、抵抗、発散、逃避を時代のキーワードとして、11本の映画作品が取り上げられていた。 第1章「浸食」に挙がっていた映画は、ニキータ['90]、ツイン・ピークス['90-91]。ゴッドファーザー及びバック・トゥ・ザ・フューチャーの第三部が撮られ、シリーズを終えたのが'90年との言及もあった。 第2章「消失」は、ベルリン・天使の詩['87]の続編となる、時の翼にのって/ファラウェイ・ソー・クロース!['93]。 第3章「引用」が、憎しみ['95]、ジュース['92]。 第4章「抵抗」が、ピアノ・レッスン['93]。 第5章「発散」が、トレインスポッティング['96]。 第6章「逃避」が、ユー・ガット・メール['98]、マルコヴィッチの穴['99]、ノッティングヒルの恋人['99]だった。 やはりこの時代においてとりわけ大きな意味を持つのは、ソビエト連邦崩壊とインターネットの普及だろう。 取り上げられた映画作品に、未見作が『時の翼にのって』と『ジュース』の二本しかない一方で、映画日誌を残しているものが殆どないことに驚いた。いずれも、それなりにインパクトのある作品だっただけに、なぜ残していないのか少々不思議な気がしている。 | |||||
by ヤマ '23. 2.12.~3. 4. BSプレミアム録画 | |||||
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