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『七人の無頼漢』(Seven Men From Now)['56] 『テキサスの五人の仲間』(The Big Hand for the Little Lady)['65] | |||||
監督 バッド・ベティカー 監督 フィルダー・クック | |||||
奇しくも作品タイトルに示されている人数が何とも謎めいていた西部劇を続けて観た。 先に観た『七人の無頼漢』は、既に還暦も過ぎた僕がまだ生まれる前の実に西部劇らしい西部劇で、もうこういうロケーションというのは、アメリカといえど難しくなっているのではないかと思うくらい、旅する幌馬車の絵がキレイな映画だったように思う。丸腰のまま後ろから撃たれて死んだジョン・グリア(ウォルター・リード)に向けて、少々複雑な人物造形の施されていた無法者マスターズ(リー・マーヴィン)が「俺が間違っていた、半人前じゃなかったな」と声を掛ける場面に、西部劇の正統のようなものを感じて、妙に嬉しかった。そして、幌馬車が車体のかなりの部分を水没させて川を渡る場面を、妙に懐かしく観た。 物語自体は、ベン・ストライド(ランドルフ・スコット)が元保安官だと聞いて、妙にジョンが怯んでいた顛末に少々無理があるような気がしたし、あそこまでバラバラの七人組というのも、首領のペイト・ボーディーン(ジョン・ラーチ)の思惑も、少々腑に落ちない感じが残ったけれども、かなりいい感じの映画だったように思う。それには、マスターズから“極上の女”と賞されていたジョンの妻アニー(ゲイル・ラッセル)とベンが交わしていた想いの距離感の程の良さが作用していたのかもしれない。 それにしても、七人組に必然性が小指の先ほどもないのに、原題からして Seven Men になっていたのは、どうしてだったのだろう。わずか二年前の邦画『七人の侍』['54]の名が既に轟いていたりしたのだろうか。 後から観た『テキサスの五人の仲間』では、いささか古めかしいアイリス・インで幕開ける馬車の疾走を観ながら、古典的な西部劇にはやはり馬車がつきものだなどと思っていたら、およそ古典的ではなくて、いっさい銃声のしないウエスタンに、すっかりしてやられた。 だらしのないギャンブル依存症男のメレディスを実にそれらしくヘンリー・フォンダが演じていて、意外と役者の幅が広かったのだな、などと感心しつつも、年に一度の大博打に参集するのが生き甲斐の五人組にしても、妻メアリー(ジョアン・ウッドワード )の油断からメレディスが禁断のポーカーに嵌まり込む運びにしても、妙に居住まいの悪いヘンな映画だと思っていたら、呆気に取られる結末が待っていた。こういう作品なればこそ、予備知識なしで観ることができ、実に幸いだった。 ポーカー勝負のスリリングさや賭博の神髄を捉えた映画としては、同年作の『シンシナティ・キッド』や邦画の『麻雀放浪記』['84]のほうが観応えがあるように思うし、大博奕にまつわるどんでん返しという点では、『スティング』['73]のほうが周到にできていたように思うけれども、本作での騙しの神髄は、ポーカー的なブラフの裏に仕込んだ大仕掛けのトリックではなくて、独身主義者の葬儀屋トロップ(チャールズ・ビックフォード)や、結婚に冷ややかで娘の婚礼よりも博奕のほうが大事な大地主ドラモンド(ジェイソン・ロバーズ)の女性観を一変させたメアリーの存在にあったところが洒落ていた気がするとともに、演じたジョアン・ウッドワードがなかなか素敵だった。 邦題もなかなか気が利いていて、テキサスの五人の仲間だというからてっきり、アプソープ裁判所での公判最終弁論を投げ出してポーカーに馳せ参じたハバショー弁護士(ケヴィン・マッカーシー)、トロップ、ドラモンド、ウィルコックス(ロバート・ミドルトン)、非情な牛仲買人ビュフォード(ジョン・クオウルン)の五人かと思っていたら、ベニー、ルビー、ジャッキー(ジェラルド・ミチェノード)、ドク(バージェス・メレディス)、バリンジャー(ポール・フォード)の五人だった。 | |||||
by ヤマ '21. 1.11. BSプレミアム録画 '21. 1.14. BSプレミアム録画 | |||||
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