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『真実』(La Verite) | |||||
監督 是枝裕和
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日本映画とも外国映画とも知れない本作は、ベルイマンによる凄まじいまでの確執が強烈だった『秋のソナタ』['78]からすれば、ファビエンヌ(カトリーヌ・ドヌーヴ)とリュミール(ジュリエット・ビノシュ)の母娘の確執は、ややシニカルながらも何ともマイルドな趣きだった。この感じは、硬質なバーグマンには決して出せない味で、歳を重ねて愛嬌を身につけているドヌーヴなればこそだと思う。 若い頃、その美貌と存在感で日本でも人気のあったドヌーヴが演技力で評価された記憶が僕には殆どないのだが、本作に「俳優の値打ちは演技力じゃなくて、どれだけ長く第一線で活躍できるかよ」というようなファビエンヌの台詞があった。ドヌーヴこそは、そういう意味での第一級の女優だという気がする。また、そういう意味でのドヌーヴのDNAを継承している仏女優こそがジュリエット・ビノシュであるような気がして、絶妙のキャスティングだと思った。僕が観た彼女の出演作で最も強く印象に残っているのは、『トリコロール/青の愛』['93]なのだが、映画日誌のなかにも彼女の演技に言及している部分はない。 微妙に冴えないようで効いている男たちの存在が微笑ましく、気に入った。ハンク(イーサン・ホーク)の囚われのない大らかな受容力が妻のリュミールを支えていることがさりげなく丁寧に描かれていたように思う。リュミールにとってのハンクの存在の重要性を看破していたファビエンヌは、ただタフで我の強い身勝手な女優ではないデリカシーを本当は内に秘めているわけだけれども、年季は積んでも、長年世話になっているマネージャーのリュック(アラン・リボル)に対しても、甲斐甲斐しくマッサージや料理に勤しんでくれる現在のパートナーであるジャック(クリスチャン・クラエ)に対しても、彼女の自伝出版を機に久しぶりに訪ねて来た元夫ピエール(ロジェ・ヴァン・オール)に対しても、娘が夫に対して見せていたあしらいとほぼ同じ有様だったりする。 そんな“人という存在”のヴェリテは何処にあって、人生の真実とは何かを描き出すのが、ドキュメンタリー映画から出発して脚本・監督を担う劇映画を撮り続けている是枝監督にとってのシネマ・ヴェリテだというようなことを感じさせてくれる小品だったように思う。 | |||||
by ヤマ '19.10.21. TOHOシネマズ1 | |||||
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