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『獄友』 | |||||
監督 金聖雄
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前作『袴田巖 夢の間の世の中』を観たときに、狭山事件の石川氏や足利事件の菅家氏、布川事件の桜井氏が揃って袴田氏を訪ねてきていたことが目を惹いたのだが、単に冤罪事件に見舞われた者同士に留まらず、同じ千葉刑務所で受刑していた“獄友”だったのかと納得感を強めつつ、実に不思議なえにしで結ばれた獄友たちの姿を観ながら感慨深いものが湧いてきた。 冗談口で「刑務所に入ってよかった」と語る桜井氏の言葉の半分は本音でもあることが窺える今現在の幸福は、確かに冤罪事件と戦うなかで得た学びと人との出会いによるものであろうことが、ひしひしと伝わってきた。菅家氏もまた、過去の自分にはない肯定感を現在の自分に感じているようだった。 それとともに、これは編集意図にも込められたものに違いないのだが、確定無罪を得ている三人の“肩の荷の下りている明るさ”と、そうではない石川氏と袴田氏の対照ぶりが痛ましかった。かつて支援を受けていた側から支援をする側に回っている二人の今の様子が何よりも雄弁に、石川氏と袴田氏に必要なものが何であるかを物語っていたように思う。 袴田氏の拘禁症による心身の傷み方は前作でも目視していたものではあるが、まもなく袴田氏と同じく八十代になろうかとしている石川氏が歌に詠んだ“凛とする”生き方を貫く苦しさを窺わせていた部分は、僕が初めて目にしたものだ。袴田氏の拘禁症による患いを観るのとはまた違う意味で、とても心が痛んだ。 金監督が“獄友”たちを撮り始めたのは2010年で、それから7年になるようだが、獄中生活が最も短く、後から入ってきて先に無罪になったと揶揄されていた菅家氏が過ごした17年6ヶ月の入獄の半分にも満たないわけだ。しかも、その間に68歳で杉山氏が死去していることを今回初めて知って、なおさらに感慨深いものを覚えた。 それにしても、袴田事件の再審決定を取り消した六月の東京高裁決定に加え、八月に最高検が出した再収監を求める意見書というのは、いったい何事なのだろう。本作を撮った時点では、おそらく作り手さえ誰も想像だにしていなかったのではないだろうか。余りと言えば、余りのことのように思う。 | |||||
by ヤマ '18. 10. 6. 自由民権記念館・民権ホール | |||||
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