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『御前珠理 レゾンデートル』 | |||||
監督 大股戒次郎
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名古屋在住のフリーランスのストリッパーで、SMパフォーマーでもあり、AV女優でもあるとの御前珠理(みさきあかり)のレゾンデートルとストリップショーの現在を問うといった主題のドキュメンタリー作品だったように思う。 上映前の待ち時間には客席後方に設えられた装置を使って、御前珠理が自縛というよりも自吊のパフォーマンスを披露していて、その、ポールダンスにも通じるロープダンスとも言うべき妙味の技に観惚れた。手足の動きが実に美しく、宙吊りにした身体のフォルムを支える筋力に感心しつつ、強く柔らかでしなやかな肉体の動きと目を閉じた表情の艶に魅せられた。 映像作品の画像は、イベントチラシに「少しぼやけた、舞台幻想…。」と記されていたとおり、あまり芳しいものではなかったが、当世のストリップ事情も伝えていてなかなか興味深かった。今年70周年を迎えるとの日本のストリップが誕生したのは戦後まもなくであることは知っていたし、めっきりストリップ小屋が減ってきていることも知っていたが、現存数の余りの少なさには驚いた。 御前珠理が現在、ホームグランドのように親しんでいるらしいニュー道後ミュージックのほかは、あわら温泉にしか温泉街のストリップ小屋というのはなくなっているそうだ。苦境を打開しようとニュー道後ミュージックでは、従前からのストリップとは異なる趣向の創造性の高いアダルト・エンターテイメント公演に取り組んでいるらしい。そういった背景を負って撮られた本作は、100周年となる2047年に向けた記録でもあるようだ。なんだか先日観た『ブレードランナー2049』みたいだなと妙に可笑しかった。作中に出てきた『心が叫びたがってるんだ。』に材を得ていたらしいステージは、是非ライブで全編を観てみたいものだと思った。 僕が初めて生のストリップショーを観たのは、大学に入学した春に、たまたま東京出張で出てきた叔父に連れられて行った日劇ミュージックホールだから洗練されたステージだったのだが、ちょうど '70~'80年代だったので、その後それぞれ一度ずつ訪れたことのある渋谷の道頓堀劇場でも九条のOS劇場でも、まさに御前珠理の記している「SEXショーや性サービスが過去にあったのは事実」というような見世物だった覚えがある。だが、それは70年に及ぶストリップ興行の歴史のなかで、その時期の十年余だけのことなのだそうだ。それ以来、足を運ばないまま過ごしていたので、そうとは知らずに来ていた。 | |||||
by ヤマ '17.11. 3. 蛸蔵 | |||||
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