『STAND BY ME ドラえもん』
監督 八木竜一&山崎 貴


 エンドロールに「For Fujiko F.Fujio」とクレジットされていたジュブナイル['00]があれだけ素敵だったのに、山崎貴が脚本・監督を担った本作は、映像は素晴らしいものの、根本の筋立てが僕には今一つで、がっかりした。

 のび太(声:大原めぐみ)と静香(声:かかずゆみ)が結婚するようになるのは既定とはいえ、ドラえもん(声:水田わさび)の負っている使命そのものを“のび太の未来を望ましいものに変えること”とし、具体的には、未来の結婚相手をジャイ子(声:山崎バニラ)から静香ちゃんにすることを目的とした話にしてしまうのは、いかがなものだろうか。徹頭徹尾、のび太のダメさ加減をギャグにしているばかりで、いつものドラえもんのような“のび太の真価の発揮どころ”に全然冴えがなく、その良さを静香ちゃんのパパ(声:田原アルノ)に台詞で語らせるのでは、台無しだと思った。

 結果として得られる褒美なら文句も異論もないのだが、お助けロボットの手を借りて、そのことそのものを目的にしている話というのでは、なんともセコイ気がしてならなかった。70年代風の少年期から15年経った青年期ののび太(声:妻夫木聡)が未来都市に住んでいるのは、「ドラえもん」というエンターテイメントの驚異的な長寿命からしてやむなきもので、ここに文句をつけるのはお門違いだが、のび太青年からのプロポーズになにゆえ静香がOK出しをしたのかについて“既定”以上の納得感がないのでは御粗末だ。唯一のび太がドラえもんの手を借りずに、未来ののび太自身の助けによって窮地を脱したのが、静香のOK出しの後になっているのは、作劇上、致命的だという気がする。加えて、人生最大の窮地からの脱出にドラえもんの手は借りなかったにしても、ドラえもんの道具の力で大人になっている子供のび太自身の力でピンチを切り抜けたわけではないから、どうにも冴えないのだ。

 お約束の静香ちゃんの入浴場面に抜かりなく、結婚式前日の静香ちゃんのパパの手には老人性のシミまでもがうっすらと書き込んである芸の細かさなんぞに凝るよりも、成長物語の根幹部分をしっかりとさせてほしかった。エイプリル・フールの日の最後の最後まで、瓢箪から駒の“偶々のび太”というのは、作り手ののび太イメージそのものなのだろうが、僕的には、それでは容認しがたいものが残るような気がした。




推薦テクスト:「お楽しみは映画 から」より
http://takatonbinosu.cocolog-nifty.com/blog/2014/08/post-5242.html
by ヤマ

'14. 9. 1. TOHOシネマズ8



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