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『CASSHERN』 『キューティハニー』 『下妻物語』 | |||||
監督 紀里谷和明 監督 庵野 秀明 監督 中島 哲也 | |||||
アニメを実写でやってしまう“ハニメーション”などという些かふざけた造語を冠した『キューティハニー』のチラシに「映像ルール、完全無視!!」と記した見出しがついていたが、このカテゴライズで括れてしまえそうな三作品を続けて観た。最も興味深く触発されたのは『下妻物語』だったが、どの作品も一様に今世紀になってこそ登場したような観慣れなさを感じさせてくれた。 『CASSHERN』は、映画の自由さをハチャメチャと履き違えているような作りながら、良くも悪くも作り手の野心と志と思い入れが前面に出てきているような作品だった。戦争の記録映画の映像も挿入しながら戦闘の虚しさを押し出した部分を好意的には受け取れずに、安っぽく見えてしまう観客も多数いるであろうことが容易に想像できるのだが、不思議と僕にはそうも思えなかった。ハチャメチャな作りの映画に、思い入れたっぷりで取り組んでいる作り手の熱意に押し負かされたのかもしれない。 それにしても、マサラムービーのミュージカルシーンかMTVビデオのように、一連の会話のなかで場所や時制や衣装が変わってしまうのは、それが歌ではないだけに珍妙極まりない感じがして、映画の自由さを履き違えているような気がしないでもなかった。それ以上にドラマとして致命的なのは、登場人物たちの雄弁な台詞の数々が往々にして各キャラクターの台詞としては聞こえてこずに、作り手の言葉の代弁として喋らされているように感じられるところだ。演技者たちはそれぞれ熱演しているのだけれど、それらを上回る作り手の思い入れの強さが前面に出てきているように感じた。映画の作り手の野心と志と思い入れは優れた作品の誕生には必要なものだと思うが、巧く結実していたようには、あまり思えない。ただ、あまりにも率直にそれが前面に出てきているために、却ってイヤな感じを与えなかったような気がする。 『キューティハニー』は、そういう点では野心と志と思い入れの表出の仕方が一皮剥けているように感じた。キャラクターの際立ちようが一枚も二枚も上回っているし、破天荒さがある種の突抜けを果たしていて、映像的にも面白く観られる。如月ハニーを演じた佐藤江梨子の数々のコスプレ・ファッションという点でも楽しめるし、チラシにも謳っている“男前な友情を貫く”ドラマも、それなりにきちんと描かれていて秋夏子(市川実日子)の脱皮を促して気持ちよく終わる。そういう点では、『下妻物語』も『キューティハニー』以上に女の子同士の“男前な友情”を描いた映画で、「映像ルール、完全無視!!」の画面展開や色あざとさが魅力的な作品だった。履き違えではない“映画の自由さ”を満喫させてくれ、鮮度の高いインパクトに満ちていた。そして、こういう男前のドラマが、もはや男の子たちを主人公にしては成立しなくなっていて、少女のほうが似合う時代になっていることを改めて思い知らされたような気がし、複雑な思いも残った。 ハニーの佐藤江梨子に負けず劣らず、ここでも竜ヶ崎桃子を演じる深田恭子のコスプレ的なロリータ・ファッションの数々に圧倒される。そして、キャラクターの際立ちからも、ドラマとしての充実度からも、三作品のなかでは一頭地抜きんでた出来映えだ。特に白百合イチゴを演じた土屋アンナともども深田恭子が実に活き活きと演じていて、両者ともにぴったりと役柄に嵌まっていた。他のキャラクターも奇妙な存在感に満ちていて実に面白い。また、展開のリズムにもナレーションのリズムにも独特の味があって、何とも魅力的だ。それだけに、こういう展開なら何故あのようなオープニングにしたのだろうと訝しく思っていたら、まんまとしてやられた。そして、チラシにもあった「桃子とイチゴの、あまくない友情!?」によって、二人がともに一つの脱皮を果たしていく姿が爽快だった。 ただ一つだけ、僕にはどうにも生理的に抵抗感が否めなかったのが、口汚くののしったり凄んだり、唾を吐き捨てたりする少女たちの姿だった。現にそういうヤンキー娘の文化というものがあるのだろうから、拒みようがないわけだが、深田恭子のハッタリ啖呵の場面がハイライトにもなっているのが、映画のシーンとしての説得力は認めつつも、妙に気にくわなかったりするところがある。亜樹美(小池栄子)の物言いあたりまでなら許容できるのだが、それを超したところまでくると妙に虫酸が走るような思いがする。でも、逆に言えば、僕にそれだけの生理的嫌悪感を催させる部分がありながらも、作品的支持を促すだけの力を備えた映画だったわけで、恐れ入る。 ところで、今回たまたまこの三作品を続けて観て思ったのは、90年代が実写劇映画とドキュメンタリー映画の相互乗り入れが際立った時代だったとすれば、00年代が実写映画とアニメーション映画の相互乗り入れの際立つ時代になるのかもということだった。実写映画に従来の映像展開にはなかったような形で漫画的なカットや編集が施され、それに相応しい映像加工のされた作品が頻出してくる一方で、『イノセンス』や『アップルシード』の3D感志向や『ポーラーエクスプレス』の予告編などを観ると、アニメーションの映像が戯画化とは異なるほうを熱っぽく志向しているような気がする。CG技術の飛躍的な進歩が両者のこの動きを支えていることを思うと、単発的なキワモノ作品に留まらない映像表現の一スタイルとしての定着を果たしそうな気がする。 *『下妻物語』 推薦テクスト:「帳場の山下さん、映画観てたら首が曲っちゃいました」より http://yamasita-tyouba.sakura.ne.jp/cinemaindex/2004sicinemaindex.html#anchor001110 推薦テクスト:「映画通信」より http://www.enpitu.ne.jp/usr1/bin/day?id=10442&pg=20040601 推薦テクスト: 「マダム・DEEPのシネマサロン」より http://madamdeep.fc2web.com/simotuma_story.htm 参照テクスト:掲示板『間借り人の部屋に、ようこそ』過去ログ編集採録 | |||||
by ヤマ '04. 5.26. 松竹ピカデリー3 '04. 5.31. 松竹ピカデリー3 '04. 6. 1. 東 宝 3 | |||||
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