日々のエッセイ

 木々の間をサラサラと渡っていく風の音、窓ガラスをリズミカルに優しく打つ雨の音、 6月は、涼やかな音で成り立っていますね。

                  
 さくらんぼ柄のカップが、6月のキッチンを彩ります。これは夫が飲んだカップのお酒の残り物。 山形の清酒が入っていました。 カップのお酒って、いつもなら使い捨て感覚ですが、こんなに可愛いと、とっておきたくなります。 さくらんぼが二つ、三つ、四つ、 それぞれ、くっつき方が違って動きがあるところが良いなぁ。 そういえば、先日、小さなブレンダーを買って、毎日のように、バナナ、苺、マンゴー、ブルーベリー、スイカ・・・と、フレッシュジュース作りに励んでいるので、次は、さくらんぼを使って、ほんのり赤いジュースを作ってみたい!

                 

  少しお天気が悪い中、 市川(千葉県)の東山魁夷記念館で『白い馬の見える風景』という展覧会をやっていると聞いたので、行ってみました。 ハタチの頃、清春白樺美術館(山梨県)で、同じ展示を見たので、今回は、時を経ての再会。

                     
  記念館の屋根には、風見鶏ならぬ、風見馬が。  それも、絵に出てくる白い馬とそっくりなフォルムです。   白い馬のシリーズは、季節が順に移り変わる構成になっていて、『緑響く』とか、『森装う』とか、絵ごとのタイトルも詩的。 絵の中に、時間や、物語が読み取れます。  古い図録を実家で探したら、すぐに見つかりました。

                 
     
   右が、清春白樺美術館の図録。 表紙の青い絵には、こんなコメントが付けられています。  「心の奥にある森は 誰も窺い知ることは出来ない」  清々しいような、どこか淋しいような、静謐な空気に共鳴します。  同じ図録には、東山魁夷作品として広く知れ渡っている『コンコルド広場の椅子』というシリーズも収められていました。

                   
 
 ハタチの頃は、こちらのほうが、わかり易くて好きでしたっけ。  椅子目線で語られる詩画集で、パリの風景がシックに描かれています。  「自分で動くことの出来ない私達は、人が動かしてくれるまでは いつまでも じっとしている。 人間は自分の力で動いていると思いこんでいるらしい。 人間もまた動かされているに過ぎないのに」    哲学的な椅子の言葉に、今ならうなずきます。 抗えない運命というのもあるだろう、と。  その流れを受け入れ、身を任すのも、時には必要なのでしょう。

  今回、訪れた記念館には、図書スペースがあり、そこで読んだ『古き町にて』(講談社)が気に入ったので、その日のうちにネットで注文しました。東山魁夷の北欧紀行で、美しいリトグラフがたくさん挿入された贅沢な作り。

        





通りをはさんで会話を楽しんでいるような、色とりどりの看板。







    




     

      

  エメラルド色の湖に、浮かぶように建つ古城。水面に映る、揺れる影が幻想を呼びます。










   『古き町にて』は、1964年に発行された本で、当時はまだ、北欧へ旅をする人も少なかったのでしょう。  半世紀前の作品とはいえ、ヨーロッパの街並みは何百年も風情が変わらないところが多いので、画伯が切り取った風景が今もそのまま、残っているかもしれません。 読んでいると、旅をしている気分。


                            
     



記念館の中のカフェで紅茶を頼んだら、 東山魁夷の『道』という絵がプリントされたカップで出てきました。   ピーコックグリーンと言うのでしょうか、初夏らしい色合いのカップで、紅茶も美味しかったです。



               
   毎年、この季節に、所属する同人誌が発行されます。  編集作業を担当して、今年は6年目。 会員も一名、増えました。

                   

 今年の表紙は赤色。 同人の児童文学への熱意を託した色です。 折り込み口絵は、河内初江さんの詩。 優しく力強く、励まされる言葉が並びます。  子どもが二人、手を取り合う後ろ姿の絵は、荒蒔悦子さんのペン画。  幻想的な物語に似合う。繊細な絵をいつも描いてくれます。  15期星同人は、文だけでなく、絵も達者な人が多いので、誌面が華やか。  長く続けていけたらいいな、と思います。


                        

 ゼラニウムのエッセンシャルオイルが最近、気に入っています。 アロマランプに、ほんの少し垂らすと、ほのかに甘いにおいが部屋に漂って、良い感じ。 眠りにはラベンダー、食欲にはベルガモットと聞きますが、体調によって香りを変えると、なるほど、いつもより元気が増すような。

                         

        朝から雨降りの6月は、なんとなく重たい気分になりがち。  でも、雨がうるおいを運んでくると思えば、レインブーツで外を歩きたくなります。  雨にかすむ街を見て歩くのも、創作意欲が湧いて、しっとりした物語が生まれそう。

                                               雨も楽しんで下さいね。
                                                    2016年 6月


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