RRR・・・RRR・・・RRR・・・RRR
お店の雰囲気を壊さない程度のヴォリュームで電話が鳴った。
カウンターの中にいる初老の紳士が受話器をあげる。
その動作ひとつひとつが、このお店の雰囲気にマッチしていて
あたしは何だかとても優雅な気分になる。
プレゼント大作戦 5 〜つくし視点〜
静かで優雅な時間が流れるお店。
紳士が電話を取る、ほんの少し前にあたしの注文したコーヒーはカップへ注がれたのだろう。
【オススメのコーヒー】をトレイに乗せ
ウエイトレスの女性があたしの元へとやってきた。
う〜ん、いい香り。
ウエイトレスの女性は慣れた手つきで【オススメのコーヒー】をテーブルへ置く。
「お待たせ致しました。
当店のお勧めブルーマウンテンN0.1のコーヒーでございます。」
ニッコリ微笑んだ女性はそう言って軽く一礼すると、カウンターの方へと戻っていった。
ブルーマウンテン・・・・
道明寺がいつも邸で飲んでるのと同じ・・・・・
あたしはテーブルの横にあるメニューに手を延ばした。
ブルマン・・・・ ブルマン・・・・・・・
げっ!!!!
いっ・・・・ 一杯1800円?!
何この値段、うちの一日の夕飯代を軽く超えてるじゃない。
・・・・・・・・
でもまあ、考えてみたらそうよね。
お店のオススメなんて言ったら、それくらいのものが出てきてもおかしくないか。
それによく考えたら道明寺が指定するくらいのお店だもん。
そこいらの安いコーヒーとは訳が違うんだろうな ・・・・・ よく分かんないけど。。
よしっ!! では心していただこう!!
折角高いコーヒーなんだから、まずはそのままの味を確かめてみようじゃないの。
そう思ってカップに手を掛けようとした、次の瞬間 ――――――
「ええぇっ!!!」
カウンターの中の紳士が、店中に響き渡るような大声を発した。
店の雰囲気とは不釣合いなその声に、ビックリしたあたしの手がブレる。
そしてあたしの掴もうとしていたカップがカチャリと小さな音を立てた。
思わずカウンターの方を見ると、受話器を握り締めた紳士と目が合った。
紳士は苦笑いしながら軽く頭を下げると、そっとあたしから視線をずらしていった。
気を取り直してコーヒーに口をつけたあたし。
確かにいい香り・・・・ でもあたしにはちょっと苦い。
道明寺には 『砂糖なんか入れたら不味くなるだろ』 なんて言われそうだけど―――
しょうがないじゃない。
苦くて飲めないんだもん。
心の中で言い訳をしたあたしは、テーブルの片隅にあった
シュガーポットに手を伸ばした。
砂糖とミルクの入ったコーヒーを半分くらい飲んだ頃
カラン♪ コロン♪
あたしがこの店に入ったときと同じ音がして、お店のドアがそっと開いた。
入口を見ると、そこにはスーツ姿の道明寺。
するとカウンターの紳士は
「どっ道明寺様・・・・いらっしゃいませ。 ご無沙汰しております。」
と、丁寧に頭をさげた。
ちょっと緊張しているのか、紳士の声は少し上ずっているようにも聞こえる。
こんなところでも道明寺の顔の広さに驚かされるあたし。
当の本人、道明寺は紳士に向かって 『・・・ああ』 とだけ返事をすると
あたしの方へと歩み寄り、向かいの席へと腰を下ろした。
「おう。・・・待たせたな。」
「あぁ、うん。平気」
「・・・・ この店・・・ すぐわかったか?」
「うん。素敵なお店だよね。」
「昔よく来てたんだよ。総二郎とか、あきらとかと一緒に。
ここのブルマンは美味くってよ・・・・」
「へぇー、そうなんだ。 あたしが頼んだのもブルマンだよ」
「・・・・あぁ、わかるよ。香りでな。」
―――――――――― 何だろう?
別にいつもの道明寺と変わらないんだけど・・・・
何かしっくりこない・・・・。
機嫌でも悪いのかな。
それとも何か――――
「ご注文は何になさいましょうか?」
あたしの思考を遮るかのようにウエイトレスの女性が現れた。
道明寺は 『ブルマン』 とだけ答えると、カウンターの紳士に視線を移す。
紳士は 「かしこまりました」 とでも言うかのように軽くお辞儀をすると
慣れた手つきで作業に取り掛かった。
コポコポ・・・・
サイフォンから再び聞こえる心地のいい音。
道明寺は注文してから一言も話さずに、
どこか落ち着かない様子であちらこちらに視線を移している。
なんか・・・居心地悪い・・・
そう思ったあたしは気分を変えようと、これからの予定を提案した。
それでも道明寺はうわの空で、明確な返事は返ってこない。
やっぱり、何かおかしい・・・・
そう思っていたところへ、気品あるコーヒーの香りと共にカウンターにいた紳士が現れた。
「司様、お久しゅうございます。以前と変わらずお元気そうでなによりです」
「おぅ、まあな。 っつーか村上・・・・ おまえは歳食っておやじになったな」
へぇー、ここのマスター村上っていう名前なんだー・・・・・
―――――――――― って、ちょっと待てっ! そうじゃない。
遥かに年上にの人に対して呼び捨て?! おまえ?!
しかも 「おやじ」 呼ばわりですかっ。
はぁ・・・・・
これから企業のトップに立とうという人間がこんな対応でいいのかしら・・・。
・・・・ それにしても ・・・・ ――――――
何だか2人とも変な感じじゃない?
なんか緊張しているようにも見えるんだけど・・・・・。
「ご注文のブルーマウンテンNo.1でございます。」
そう言った紳士はカップソーサーに手を掛けテーブルへ置こうとした。
でも・・・・ ――――――――――
なんか手 ・・・・ 震えてるんですけど。
そう思っていた矢先
ガシャンッ
「きゃっ!!」
カップソーサーが紳士の手を離れ
あたしの膝の上へと落ちてきた ―――――――――。
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