「おや、つくし。早いじゃないか」
「先輩・・・・お久しぶりです・・・」
あたしは半年ぶりに道明寺邸に足を踏み入れた。
――半年待ってやる。その間に答えを出してくれ――
道明寺との約束。
今その答えを出すために。
Believe
長い長い廊下。
タマ先輩が先を歩き あたしはその後ろから無言で付いて歩く。
この邸の中で 一番多くこの部屋を利用したであろう 東の角部屋へと案内される。
この部屋もまた あたしが半年ぶりに訪れるべき部屋に間違いなかった。
部屋の前まで来ると タマ先輩が振り返り微笑んだ。
「つくし・・・坊ちゃんに必要なのはお前だけだよ」
そう言うとドアを開け あたしを部屋の中へと導いた。
あたしは少し緊張しながら部屋の中を見渡す。
―――道明寺は・・・・いない。
「・・・坊ちゃんはまだだよ。あと少しで着くだろ」
あたしの心の中を見透かしたように タマ先輩が紅茶を用意しながらそう言った。
タマ先輩は紅茶を入れ終わると 『じゃ 後はよろしく』 と言って部屋から出て行った。
あたしはソファに座り 先輩が入れてくれた紅茶を一口飲む。
この部屋もこの紅茶もあの時と何ら変わりない。
あたしは半年前のことを思い出していた――――。
道明寺の家で夕飯をご馳走になった後
あたしは上機嫌で 道明寺と一緒にこの部屋へとやってきていた。
お手伝いさんは道明寺にコーヒーを
あたしには紅茶とデザートを用意して部屋をあとにする。
ソファに向かい合って座り あたしはデザートに添えられたアイスを一口頬張った。
うーん、美味しい♪ 幸せ〜〜
あたしがデザートを頬張るその向かいで
道明寺はコーヒーのカップを手にしたまま あたしをじっと見つめ
まるで当たり前のことを言うかのように突然言った。
「なぁ 俺ら結婚しねぇ?」
うーん そうねー結婚ねぇ―――。
―――――ん? けっこん?
・・・け・・・・けっ・・・・結婚ーーーーー?!
「・・・はい?」
「・・・・・・」
「いっ・・今なんて?」
「なぁ牧野・・・・俺との事をどう思ってる?」
「ど・・どうって・・・////」
「俺は・・・・お前と結婚してぇ」
何を突然!!
えっ・・えーとっ・・・・・
あたしはすっかり動揺して何の言葉も返せないでいた。
それにしたって・・・・
道明寺が4年間のNY生活を終えて 帰国してからまだ半年しか経ってないのに。
何で突然 結婚とかになるの?
それにあたし まだ大学生なんだけど・・・・。
「なっ・・・なんで今 結婚なの?
道明寺が帰ってきてまだ半年で・・・おまけにあたしはまだ大学・・・」
「俺は」
道明寺があたしの言葉を遮った。
「俺は・・・・もうお前と離れたくねぇ」
「離れたくないって・・・別に今だって」
そこまで言ってはっとした。
前にも・・・同じような事があった。
道明寺のお父さんが倒れて NYに行かなくちゃなんなくなって
そして・・・・・突然あたしに結婚してと言ったことが。
もしかして――――――
「道明寺・・・・もしかして・・」
「・・・また・・・NYに行くことになった・・・」
―――――やっぱり・・・・
道明寺が帰ってきてからも いつかまた こんな日が来るんじゃないかと
いつも心のどこかで感じていた。
その時がきたとき あたしはどうするべきなのかも・・・。
だけどこんなに早く・・・・こんなにも早くそんな日が来るなんて・・・。
あたしはまだ大学生なんだよ?
どうしたらいいの・・・・・どうしたら・・・。
あたしが返す言葉を捜していると 道明寺のほうから先に口を開いた。
「とりあえず今回は半年間 向こうに行くことになる」
「半年・・・・」
「あぁ、ただ・・・・」
「ただ?」
「これから先も こういうことがあるかも知んねー。
その度に・・・・・お前と離れるのはもう我慢できねぇ」
・・・・・・・・・・・
そんなの・・・・あたしだって我慢できないよ。
あたしだってあの4年間は すごく・・すごく苦しかったんだよ?
でもだからって そんなすぐに結婚なんて・・・。
あたしが黙っていると 道明寺はまるで真意を見抜いたかのように付け加えた。
「まぁ・・・あれだ。 お前に今ここで答えを出せっつっても無理だろうからな」
「えっ?」
「待ってやるよ。半年間―――」
「半年間?」
「そうだ。半年間待ってやる。その間に答えを出してくれ」
「・・・・・・・」
「今回のNY行きは急だったし・・・・何とか・・・我慢して行ってくる。
まぁ お前もあと半年で大学も卒業だし その後のことだったら考えやすいだろ」
「・・・・うん・・・まあ・・」
――――――って!!
それって半年後には 結婚するかしないか決めろってことじゃない!!
「ちょちょっと・・それって・・・」
あたしが確認しようと顔を上げると
道明寺は立ち上がり さっさとバスルームへと消えていった。
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