「 よっ。 早かったじゃん 」




美作さんのリビングで そう言って手を上げあたしを出迎えた西門さん




「 おかえり。 牧野 」




同じく美作さんのリビングで 天使の笑顔であたしに微笑みかけた類




彼らが座るソファの前には湯気の立ち上る暖かそうな紅茶があって 




部屋に飾られたバラとその紅茶の香りが混ざり合っているのか




爽やかだけど優しい香りがあたしの鼻腔を心地よく擽った




その紅茶を持ち上げ 普段抹茶の香りを十分に堪能しているであろう西門さんが言う




「 やっぱ、あきらんの紅茶は他とは違うな 」




この部屋と バラと紅茶と御曹司の男達が醸しだす雰囲気はある意味特別で




まるで おとぎの国に迷い込んだかのような錯覚があたしを襲う ・・・・




――――― ってそうじゃなくて!




家の主を使いに出させておいて 自分達は優雅にティータイムって ・・・・




あんたら 人んで寛ぎすぎなんだっつーの!









あかい糸
act.48















先にこの家であたしを待っていた2人と同じく




目の前にセットされた香り高い紅茶のカップ




ただ ・・・・ そのカップから立ち上るはずの湯気はすでに消えており




時間とともに その香りがあたしの鼻腔を擽ることもなくなっていた




美作さんの家に着いてから1時間 ―――――――――




その間に美作さんや西門さんが丁寧に話してくれた向こうでの出来事




あたしがN.Yで道明寺と別れてから僅かな時間のその間に




まさかそんなことがあったなんて ・・・・・・




天王寺さんが妊娠を語ったときの あの本当に嬉しそうだった表情に納得がいった反面




どんな思いでそれを道明寺との子だと説明していたのか ・・・・




そして彼女が実の父親に抱いた憎しみを考えると ――――――――――




とてもこれまでの彼女の行動を責める気にはなれなかった




「 天王寺さん ・・・・ こんな事になっちゃって、赤ちゃんどうするんだろ。
  まさか、堕したりしないよね? だって本当に好きな人の子供なんでしょ?
  そんなの ・・・・・ そんなの悲しすぎるよ 」




自分で不吉なことを口走っておきながら その内容に思わずゾッとする




「 まあ、それはあの女が決めることだからな。俺らがあーだこーだ考えても仕方ない 」




「 ・・・・・・ そんな ・・・・ 」




西門さんが言っていることが もっともだというのは解ってる




でもやっぱり ・・・・ やっぱりあたしには理解できないよ




家を継ぐためとか 会社のためとか 家柄が釣り合わないとか




そんなことの為に好きな人の子供を諦めるなんて そんなこと ・・・・・




ここに居る全員が それぞれの想いを巡らせながら口を噤んでしまった




何か ・・・ 何かあたしに出来ることはないのだろうか




「 牧野 」




そんな事を想い巡らせている中 長い沈黙を破って類が口を開いた




「 今回のことは、司も牧野も単に巻き込まれたに過ぎないんじゃないの? 」




「 ・・・・ え? 」




「 確かにあの女は可哀想な境遇なのかも知れない。
  でもそれはあの人自身の弱さのせいでもあるでしょ? 俺たちとは無関係だよ。
  だから ・・・・・ これから先のことはあの人自身の問題なんだと思う 」




「 だな。 もともとは天王寺個人の問題だもんな。
  あいつの歪んだ思考が今回の事態を招いたのは間違いない。
  司はただ単に利用されただけなんだから ・・・・・ 牧野が気に病む必要ないんじゃねーの? 」




そう言って 類と美作さんはあたしを見ながら優しく微笑んだ




その笑顔に釣られてあたしの口元も微かに緩みかけた その時 ―――――




「 いや! でもやっぱ牧野にも多少の責任はあるっ! 」




いつもより少し大きめな声でそう言ったのは西門さんだった




「 はっ? 何言ってんだよ、総二郎 」




美作さんが慌てた様子で制止する




類は目を丸くして西門さんを見上げていた




って言うかあたしの目も ・・・・・ 丸くなっている自覚があった




――――― ・・・ エッ? アタシノ?  アタシノセイデモアル ・・・・? 




「 牧野、おまえ司のこと好きか? 」




「 ・・・・ へ?///// なっ何を突然! 」




「 あいつは、おまえのことが好きで好きでしょうがねぇんだよ。
  オマケに、まともに女を好きになったのはおまえが初めてで、
  ついでに言うなら、あいつはああいう性格だから、ごく普通の一般的なアプローチが出来ない 」




「 ・・・・・・ はぁ 」




熱く語り出した西門さんを見て 何のことを言っているんだろうと思いながらも




昔 道明寺あいつと出会ったばかりのことを思い出す




―――――― まあ ・・・ 確かにそうだ




道明寺あいつは普通じゃ考えられないようなことばかりしてきたっけ




「 なあ、牧野。 今回なんでここまで話がややこしくなったか解るか? 」




「 え? は? いや ・・・・・ なんで? 」




西門さんの言っていることが全く理解できないあたしは




美作さんと類と西門さんの顔を順番に見回した




すると美作さんは 『 あぁっ! 』 と 何か思い出したような顔をしていて




類は下らないといった表情で軽く溜息を吐いていた




そして西門さんは ・・・・・ ――――――― ってか何! その顔! 




「 え? ・・・・ えっ? ・・・ 」




なっ なによ ・・・・ なんなのよ!




「 それはだな ―――――― 」




西門さんの整った顔が グイッと近くに寄った




全身に緊張が走る




「 それは司が女を知らないからだ 」




・・・・・・・・・・・ へ?///////




「 つまり、あいつが童貞だったから、ここまで話がややこしくなったんだよ 」




お手上げのポーズで美作さんが付け加えた




「 は?/// なっ//// そっ、そんなわけ ///・・・・ 」




     アイツガ ドウテイダカラ? ―――――――――//////////




彼らの言葉を心の中で繰り返しながら




あたしの顔は一気に茹で上がっていった









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