今、あたしは空の上にいる。

上空はすっきりと晴れわたっていて、雲ひとつない。

下を見下ろせば、まるでミニチュアのように小さいビルや家や車たち。

天気の良いこの空の真ん中は

本当だったらきっと静かなのだろうと思う。

その静かで青々とした中を

バリバリと音をたてる羽の音が耳につく。


前の席には、相変らず女遊びの激しい次期家元と

これまた相変らずマダムキラーな御曹司。

そして――

あたしの隣りには

静かな寝息をたてて眠る王子様。


 「こんな騒音の中で、よく眠れるわね・・・」


溜息をひとつ。

あたしは・・・

昨日は殆ど寝ていない・・・


目を瞑っても、寝返りを打っても

気分転換に体操してみても眠れなかった。

ドキドキしているのが

自分でも嫌になるくらいよくわかる。

だって今日――


4年ぶりにあいつが帰ってくるっ!!







   4年越しの想い







 「ねぇ・・何もヘリコプターで迎えに行くことないんじゃない?」


あたしは前に座る二人に話しかけた。

振り返った二人の表情は

嬉しそうにしながらもどこか緊張している――

そんな感じ。

そして返ってきたのは同じ言葉。


 「何言ってんだ牧野。車なんかで行って、少しでも遅れてみろ」




 「 「 何されるかわからねぇ 」 」



・・・・・ごもっとも。



バカでわがままで俺様なあいつ。

帰国日をわざわざ知らせてきて

4人で迎えに来いとは・・・。


はぁ〜


あいつは本当に成長しているんだろうか。

あたしは軽い溜息をつきながら

窓の外に目を向けた。









あいつがNYに行ってしまってから

4年の月日が流れた。


約束の4年――――


あいつは宣言どおり帰ってくる。

あたしを迎えに。

この4年間、連絡はあったりしたものの

月に1度がいいところ。

結局、会うことは一度もなかった。

っと言っても、あたしは時折テレビに映る道明寺を目で追った。



ちょっと痩せたな・・・


少し大人っぽくなった・・・?


あいつの4年間を

あたしはあたしなりに見てきたつもり。


だけど・・・


あいつはこの4年間

あたしを全くと言っていいほど見ていない。


伸びた髪も

少し化粧をするようになった顔も知らない。

ヒールだって履くようになった。


大丈夫だろうか・・・。


あたしはあいつの知る

あいつの想う

『 牧野つくし 』でいられているだろうか。


そんな不安が頭をよぎる。







 「おい。もうすぐ着くぞ。類起こしてよ。」


美作さんが花沢類を指差しながら

あたしの思考を遮った。


 「何そんな浮かない顔してんだよ。嬉しくないのか?司に逢うの。」


西門さんがウィンクしてくる。


 「べっ・・・別に。//////

  大体なんでわざわざ空港まで行かなきゃなんないのよ。

  家にでーっかい滑走路があって、自家用ジェットだってあるのに。」



あたしが大振りのジェスチャーでジェットの形を作ると

その手が花沢類の頭にコツンと当たった。


眠りの王子様が目を覚ます。


 「・・・んー・・・牧野おはよ。顔赤いよ?どうしたの?」


 「あああっ赤くなんかないよ!!」


 「ぶぶ、面白い顔。」


 「・・・・」


 「・・・大丈夫だよ、司は牧野ならどんな牧野だって平気なんだから。」


 「えっ?・・」


相変らず不思議な人。

何であたしの考えてたことがわかるの?

っていうか、あんた今まで寝てたんじゃないの?!







でもほんと、何で今回に限って

民間航空機を使うのか不思議だった。

絶対、自家用ジェットで帰ってくると思っていたのに。

あたしが道明寺邸に迎えに行ったんじゃ

ダメだったのかしら?


不安と疑問が入り混じる。


だめだ・・

ひとつ考えだすとキリがない。

まるで津波に飲み込まれるかのように

後から後から不安が襲ってくる。

よっぽど自信なさげな顔をしながら

考えこんでいたのかも知れない。

気がつくとヘリコプターの羽の音は止まっていて

『 大丈夫だよ 』 と、ご丁寧に3人から励まされた。





そして降り立ったところは特別滑走路。



知らなかった・・・。

空港内にこんなところがあるなんて。

全く・・・お坊ちゃん方のすることは

いまだに慣れることが出来ない。


キョロキョロしているあたしの背中を

花沢類が 『 ほら 』 と促してくれた。

先に行く2人の後を追うあたし。

歩いているんだけど、全然歩いている感じがしない。

何となくフワフワと浮いている感じがする。

――緊張?

――それとも高揚?

わからない――


何だか現実のことじゃないような気がして

まるで夢の中の出来事のよう。

地に足が着いてない・・・って

まさにこういう事を言うんだろうな――

そんな事を考えながら歩いていた。





 「牧野・・・大丈夫?」


花沢類の手がポンッと肩にのる。


 「えっ? あぁ、まあなんとか・・」


必死で笑顔を取り繕ってみたけど

その顔はどうやら物凄い顔だったみたい。

花沢類がお腹を抱えて笑い出した。


 「ぶっ・・・牧野やばい・・・その顔、面白すぎる。

  それに手と足・・・一緒になってるよ・・・。くっくっ・・」


 「えっ?/////」


ほんとだ・・。

全然気がつかなかった。


これじゃあまるでロボットじゃないっ!!

どうしちゃったのよ、あたしっ。


 「牧野、さっきも言ったけど司なら大丈夫だよ。

  牧野は牧野のまんまだからさ。いつもの調子でいなよ。」


 「・・・・・」


 「オドオド ビクビクしてる牧野なんて、牧野らしくないよ?」


 「・・・うん、そうだね。ありがとう花沢類!!

  あたしはあたしらしく、『 雑草のつくし 』 らしく!! だねっ。」


 「そうそう。さぁ行くよ。」


花沢類に軽く背中を叩かれて

あたしは走り出した。



今度はしっかりと

地に足をつけて―――。



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すんません・・・
大した話じゃないんですが、2つか3つに分けます。
しかも、司・・・なかなか出てこないし。 ( ̄∇ ̄*)ゞエヘヘ