されどお通し

2009年8月20日

前に住んでいたアパートの近くに「季節料理」と書かれた店がありました。スーパーの向かいにあり、よく目に留まるのでずっと気になっていたのです。アパートに住みだして2、3年経った頃に友人と飲んでいてその店のことが話題になりました。友人が言うのには、その店はなかなか美味しいとのことで、その店の名前を付けた「○○巻き」が特にお薦めだとのことでした。

気になってはいたものの、今一つ決め手が無くて行きかねていたので、それならと思って暖簾をくぐりました。一番いい時間帯だったのですが、客は誰もいません。メニューを眺めて2、3品と「○○巻き」を頼みました。

ビールと一緒にお通しの枝豆が出されたので、まずは乾杯をして、それから枝豆を口に運びました。枝豆が冷たいのです。よく冷えていると言えばそうなのですが、豆に元気がないのです。おまけに香りが良くないのです。香りというより臭いですね、冷蔵庫の臭いが移っていたのしょう。「これは前の日に茹でたものだろう、だから冷蔵庫の臭いが移ったのだろう」と思ってしまいました。

そこでまず、「ここは本当に美味しいのだろうか」と疑いを抱きました。他の品も大したことはありません。それでも「○○巻き」だけはと期待したのですが、これもさっぱりでした。当然、その店はそれっきりになりました。

高知市の中心、はりまや橋の近くに「くもん屋」という居酒屋があります。はりまや町商店街の木製アーケードから北に30mほどの場所にあり、少し気になっていました。二次会で様子を見に行ってとても良いと感じました。それで次は予約をして飲み仲間5名ほどで行ったのです。

まず、お通しが何種類か出てきました。お通しと言っても、カウンターに並べられた鉢の料理で、しっかりと1品注文したようなものです。山芋のとろろがあったのを覚えていますが、どれも美味しいのです。刺身やカマの塩焼きなども頼みましたが、これも美味しくて皆すぐに気に入ってしまいました。

その次はおばさんと2人で行きました。カウンターに座りましたが、前と同じように、種類の違うお通しが出てきました。しばらくするともう一品お通しだと言って枝豆が出てきました。先の「○○巻き」の店のこともあり、お通しに枝豆が出てくると損をしたような気がして、少しがっかりしたのですが、口に運ぶと考えが変わりました。

それから少し経って、隣に座っていた年輩の女性が、メニューを見ながら「枝豆は冷凍ですか」と大将に問いかけました。枝豆が出始める頃だったと思います。「とんでもない」と言って、大将が生の枝豆を差し出しました。それを聞いて、女性が枝豆を注文したのですが、何と、それから枝豆を茹で始めたのです。

枝豆は一度に茹でてしまい、出す時はそれを器に盛るだけ、おじさん達に出された枝豆が茹でたてだったのは、ちょうど茹でるタイミングだったから、と思ったのは間違いだったのです。

お通しの枝豆までその度に茹でる、その心遣いに驚きました。今度、四国の役員が高知で会をしてから飲むのですが、迷わず「くもん屋」を予約しました。

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