赤い花が咲いていた

 

そよぐ風に揺れながら
自由に伸びやかに空を目指す花を
いつも大切に見守っていた

 

花は常に鮮やかだった
匂い立つ華やかさと
優美な気高さに満ち溢れ
その姿を目にするもので
跪かぬものはいなかった

 

生命の輝きを唄う姿を
自由を高らかに叫ぶ姿を
いつしか独り占めしたくなった
己の掌の中でこそ
艶やかに咲き誇って欲しくなった

 

だが

 

手折られた花はやがて生気を失い
無残に萎れてゆくばかり────

 

だから与えた
光を失う花弁に愛を
己を絞り尽くして溢れる蜜を

 

それでも朽ちゆく花を握り締め
血塗れたくちづけを注ぎつつ
真紅の夢に包まれる

 

それは紛うことなき永遠の
閉じた世界に広がる夢────