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『沖縄の自治の新たな可能性』最終報告書bU
沖縄自治研定例研究会議事録/期間:2004年10月〜2005年3月/場所:琉球大学
【前文起草案】 沖縄に関するさまざまな事項について、この沖縄に生きる私たち住民が、最終的に決定する権利を有する。沖縄の自治と自立をめざした私たち住民の営為は、沖縄のことは沖縄で決めるという、沖縄住民による自己決定権を最大の基盤とする。 私たちは、沖縄の住民の命を守ることを何よりも最優先することを宣言し、非暴力と反軍事力を基本にした平和な国際社会の構築をめざし、その方策に積極的に参画する。 平和への希求は、これまでの琉球・沖縄の歴史に深く根ざしている。信義を重んじる国際交流で築いた琉球の歴史文化を壊滅させ、多くの住民を犠牲にした沖縄戦の体験は、その後の沖縄住民に、つつましくも平和を望む小国寡民として生きる道をはぐくんだ。 しかし、人間としての基本的権利と自由を制限された戦後の米軍占領下の経験と、戦後60年を経てもいまだ占有する巨大な米軍基地の存在は、いまなお満たされない沖縄における平和的生存権の真の獲得を切実な課題としている。 その意味で、沖縄戦後史は沖縄に生きる住民の平和と生存を希求し、それを獲得しようとする営為だったのである。しかし、いま、その基盤である平和憲法さえ改悪されようとしている。私たちは、その平和憲法の改悪に反対して、沖縄自治州では平和憲法の理念をより徹底して活かす道を目指す。 そのような琉球・沖縄の歴史をふまえて、この沖縄自治州基本法では、中央政府が主導する一元的な道州制の導入ではなく、個々の島や地域の個性を大事にする琉球列島内の緩やかで多元多層的な、沖縄独自の自治・分権構想の枠組みを提示する。その沖縄独自の自治・分権構想は、特有の自然環境と生熊系に根ざし、独自の地理的特性を生かした沖縄自治州の政治的自律と経済的自立を志向する。 その際、日本の中の沖縄という視点だけでなく、東アジアの中の沖縄という視点を重要視したい。日本の中で例外であった地上戦としての沖縄戦は、アジアに座標軸を広げると地上戦であった地域の方がより一般的であり、むしろ地上戦を経験していない日本の他地域の方がアジアでは例外な地域だといえる。今後、アジアとの信頼関係を築いていくために、日本の他地域にはない、アジアの歴史認識に通底する沖縄の歴史的視点を大事にする。 米軍基地の存在は、沖縄の自立経済や経済発展を阻害しており、安全保障上の問題においても、沖縄住民に対して多くの負担を強いている。この沖縄自治州基本法では、沖縄からの米軍基地の完全撤去を目指して、沖縄の歴史的・地理的特性を生かして国際機関を誘致し、沖縄から東アジアの平和構築ためのイニシアティブを発揮する。 |
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沖縄自治州・自治基本法の前文注釈 | ||
【小国寡民】 小国寡民(しょうこくかみん)という語句は、小さい国で人民も少ないという意味であるが、もともとは老子の言葉を淵源としており、老荘思想が示す次のような理想の社会を表したものと言われている。「道家の理想的の社会は小国で人民も少く、兵器はあっても戦はせず、生命を大切にして、舟車はあっても之によって遠方に出ることなく、民は各其衣服に甘んじ、其職業を楽しんで、国と国とが隣接して隣の国の鶏や犬の声が聞えるくらい近くても一生涯往来もせぬ様な社会である」。 そのような隣国と争わず平和で命を大切にするという「小国寡民」の思想は、近代日本の思想史においても一つの系譜を形成している。たとえば、明治期から大正期にかけて、幸徳秋水の「小日本なる哉」、内村鑑三『デンマルク国の話』、三浦銕太郎「大日本主義乎、小日本主義乎」、石橋湛山「大日本主義の幻想」などの著作において言及されている。「小国寡民」の思想が、社会主義的理想から幸徳秋水によって、福音的信仰主義から内村鑑三によって、さらに政治経済的見地から三浦鉄太郎や石橋湛山によって「小国日本」が主張された。それからわかるように、近代日本思想史における小国主義の系譜の淵源は、一つではなく多様である。また戦後初期には、経済学者の河上肇が戦後日本の進むべき道として、そのものズバリ「小国寡民」という表題の論考を書いている。 そして、その近代日本思想における小国主義の系譜を前提に、日本復帰後の沖縄が目指して欲しい社会として、その「小国寡民」の思想を説いたのは、中野好夫であった。中野は「小国主義の系譜」という論考で、戦後軍事拡張の道をたどる日本とは異なって、沖縄戦の教訓を生かして命を大切にし平和を愛する復帰後の沖縄の進むべき道として「小国寡民」の思想を説いた。それは、戦争を放棄している平和憲法9条の精神につながっている。本前文で記述されている「小国寡民」の語句は、このような思想的系譜に基づいて使用されている。 【住民】 国民主権がどのような構造をもつのかで解釈論上の見解の対立がある。それは、《The Japanese people》を「国民」と訳すのか、「人民」として訳すのかに示されるように、主権がどのような思想的系譜に基づいているか、が問われている。日本国憲法でも、地方自治特別法について住民投票を保障する憲法95条、及び憲法改正について国民投票を保障する96条1項にあるように、「人民」の意思による政治を求める原理が基盤にある。 この基本法を貫く主権の原理においても、「人民主権」の原理に基づいている。しかし、原理は人民主権であるが、「人民」という語句には様々なイメージが付着しており、誤解を招かないためにと、本基本法では「住民」という語句を当てている。つまり、原理は「人民主権」に基づきながら、それを示す言葉として「住民」の語句を当てている。 |
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1.沖縄における自治の基本原則 【事項案】 1.憲法で謳われる地方自治の本旨とは、主権者である住民による自治の実現のことであり、この趣旨に反しない限り、憲法は地方自治体に特別な権限を付与することを認めている。 2.住民は、その地域の福祉、環境、安全および文化を保特するとともに、独自性のある地域社会を創り出し、発展させることを目的として、自治体を設立する。 3.住民は、地域の主権者として、自治体運営の企画、立案、実施及び評価のそれぞれの過程に、直接または間接に、積極的に参加し、その地域の将来について決定する権利を有し、かつ責任を負う。 4.自治体は、主権を有する住民の信託のもとに、地域住民への行政サービスを提供し、地域における事務事業を自主的かつ総合的に行う権能を有する。 5.自治体は、その運営に当たっては住民の声を最大限尊重し、民主的かつ公正・透明で効率的な運営を心がけなければならない。 6.自治体は、自らの行う事務事業に関する企画、立案、実施及び評価のそれぞれの過程において、住民と情報を共有し、かつ、住民に対して分かりやすく説明する責任を負う。 |
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【解説・補足】 1.私たち一人ひとりには、社会生活の主体として生きていく権利があり、私たちの社会はその権利を保障する義務を負います。どのような地域社会をつくっていくべきなのかという「地域づくり」の主権は住民にあります。それは、この地域をどうしていくのか、この地域がどうなっていくのか、ということが、この地域の住民の生き方に、大きく関わる問題になりうるからです。住民には、どのような地域づくりをするのか、判断し、決定し、行動する権利があるのです。 2.「地域づくり」とは、地域の建築物、土地利用などの外形(ハード面)をつくることだけを指すのではなくて、それを含めた私たちが住む共同体づくりのこと。自治のしくみや運用の改善など、住民主体の自治を作っていく過程も含みます。 3.住民には地域づくりの仕事に、白紙の段階から参加する権利があります。また、地域づくりの事業の実施中、終了した後も、地域づくりの仕事を評価し、それを次に反映させるのは、住民の権利です。 4.地域は、それ自体いろいろな機能(住居、産業、学習、医療、福祉、文化、娯楽など)を持っており、それらの担い手によって地域は成り立っています。それぞれの担い手が参加することは、地域づくりにとっても欠かせません。 5.地域づくりへの参加は、自由な意思に基づくものです。誰からも参加を強制されることではありません。人はそれぞれの関心や、事情によって、地域づくりへの参加の仕方は当然違ってきます。参加しないことで不利益を受けることがあってはなりません。 6.地域づくりをめぐって、住民、働きに来る人、学びに来る人、その他地域に関心を持つ人の間で、視点や感覚の違い、利害対立などが生ずることも考えられます。その場合にも、お互い理解を深めながら、それぞれの基本的権利を侵されないよう、充分な共通認識を持って、地域づくりを進めなければなりません。 |
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2.人権 (1) 基本的人権を守る権利 【事項案】 1.何ものも、人類普遍の原理である私たち住民の基本的人権を侵すことはできません。そのおそれがある場合、私たちには、これに対して異議を唱え、行動する権利と義務があります。 2.議会・行政は、住民の基本的人権の保障に取り組み、それが何ものかに侵害されるおそれのある場合には、議会・行政は「人権の砦」となって住民の基本的人権を守らなければなりません。 3.住民が自ら居住する地域の事柄について、法的地位を含むあらゆる決定権を持つことは、何ものも侵すことの出来ない普遍的な権利です。 |
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【解説・補足】 1.私たち住民ひとりひとりは、自らの生命・自由・財産を確保する生まれながらの権利(基本的人権)を持っています。私たちは皆、自由かつ平等であり、誰からもこの基本的人権を犯されることはありませんし、誰もこれを犯すことは出来ません。私たち住民は、相互の基本的人権を守るために皆の意思で国や自治体を形成しています。 2.住民の基本的人権が何ものかに侵害されるおそれがある場合、自治体の議会と行政は、住民の声としてこれに異議を唱え、住民の基本的人権を守る防波堤として行動しなければなりません。また、議会と行政の一方が住民の基本的人権を侵害しようとする場合も相互にこれを抑止しなければなりません。 3.沖縄自治州基本法は、日本国憲法の3つの原理を、沖縄において具現化する為に、制定するものです。憲法を選択する権利、自分達のために新たな憲法を作り出す権利をも、沖縄の住民は有しています。 |
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(2)平和的生存権 【事項案】 1.すべての住民は、恐怖、暴力、欠乏、貧困、抑圧、環境破壊にさらされることなく、平和のうちに生活し、居住する個別的具体的権利をもっています。これは、人類普遍の権利であり、いかなる理由においてもそれを侵害してはなりません。 2.自治体は、すべての住民が平和のうちに生活し、居住する権利を個別的具体的に保障する義務を負っています。地域づくりの施策全ての中に、平和を希求する精神が息づかなければなりません。 |
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【解説・補足】 1.沖縄の歴史から学ぶべき重要な教訓の一つは、戦争がなくても、住民がさまざまな暴貧困、抑圧、環境破壊にさらされ、人権や生命の安全を脅かされているのなら、それは「平和」な状態とは言えないということです。平和のうちに生活し、居住する権利は、憲法で保障された権利であると同時に、人類がいかなる理由においても守らなければならない普遍的な権利です。自治体と住民は普遍的な諸権利を暮らしの中に定着、発展させるために、協力しなければなりません。 憲法で定められた「平和的生存権」をわたしたちの暮らしの中に定着させ、実りあるものにするには、あらゆる場面で「平和」や「持続可能な環境」を追い求め、まちを守り、地域を守り、環境を守り、かつ発展させるための具体的な施策の展開が欠かせません。 2.日本国憲法の前文は、「平和的生存権」を「恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利」と定めています。憲法の定めに基づいて、国が国民に対して「恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに存在する権利」を保障する責任と義務を負うのと同様に、自治体には憲法の三原則をはじめ日本国憲法の精神に基づいて、住民の「平和的生存権」を守る責任と義務があります。 自治体は、あらゆる行政施策、サービスにおいて、住民の平穏なくらしと安全、および基本的人権が脅かされることがないよう、十分配慮しなければなりません。自治体はまた、独自のまちづくり施策および住民・諸団体との協働によるまちづくり施策において、住民の歴史的体験や日常の生活実感から導き出される「平和への思い」を最大限尊重しなければなりません。 「平和的生存権」は、本来「公共の福祉のために」との理由で制約を加えられる場合もありえる「財産権」とは同列に論じられない、崇高かつ根源的な権利として認識されなければなりません。 |
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(3) 環境権 【事項案】 1.沖縄の自然は人類共通の地球の財産であり、わたしたちはわたしたちをとりまく環境すべてに対して、それを享受する権利とともに次世代へ保存し、保全継承する責任があります。 2.住民、事業者、議会・行政は、相互に協力して、わたしたちの生活と生産から生ずるごみの減量と資源化に努め、環境への負荷を最小限に抑える最大の努力を行う義務があります。 3.自治体は、住民、事業者と相互に協働して、ごみの処理と自然環境の保存・保全を行う仕組みを整えなければなりません。 |
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【解説・補足】 1.環境とは、わたしたちを取り囲む周囲のものすべてを指します。そのため、人間と動植物をはじめとする自然界のものすべては、互いに影響を与え合います。その中で、わたしたちは、命の尊厳を学び、他者(動植物含む)への思いやりを身につけ、心身ともに成長していきます。つまり、この環境を壊すとは、わたしたちの人間性を壊し、命の連鎖を分断するということであり、環境を守るということは、わたしたちの人間性と命の連鎖を守ることです。 一度失われた自然は戻ってはきません。沖縄の自然は、今沖縄に住んでいる地元の人間だけの所有物ではありません。人類共通の普遍的な地球の財産です。この認識に立ち、今のわたしたちの都合だけで自然を食いつぶしてはなりません。 2.美しい島を守るため、ごみを出しているのは、わたしたち1人ひとりであるという認識に立ち、この条文は「わたしたちは主体的にごみを出さない努力をします」という宣言です。つまり、わたしたちにはごみの分別収集をはじめとして、生活全般に関して考え、見直し、行動し、協働してごみの減量と資源化に勤める義務があります。 3.自治体は、すべての環境問題に関して、住民に粘り強い働きかけや徹底した情報の共有を行い、住民との間に信頼関係を構築する義務があります。そのうえで、相互に協働する仕組みを整えなければなりません。 |
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(4)文化権 【事項案】 1.沖縄州住民には、沖縄・琉球固有の文化を継承し、共有し、創造し、発展させる権利があります。 2.自治体は、住民の自主性を十分に尊重しつつ、住民が文化的活動の機会を広げられる施策に務めなければなりません。 |
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【解説・補足】 1.個々人の自由な価値観にもとづき、文化を継承し、共有し、創造し、発展させることは、住民の権利です。この権利がすべての住民に等しく保障された社会でこそ、人々の創造性が育まれ、その感性や表現力が高められると信じます。沖縄自治州では、多様な住民が自由に交流し影響しあうことを支援することによって、多元的な沖縄の豊な文化を創り出すことを目指します 2.自治体は、住民が、文化を継承し、共有し、創造し、発展させることが充分にできるような環境の整備を図らなければなりません。自治体が行う施策によって、住民の文化の権利を侵害することがあってはなりません。 |
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(5)教育と学習に関する自治の権利 【事項案】 1.住民には、地域文化を学び、創造する権利があり、自由な学習の権利があります。 2.自治体は、住民主体のまちづくりと自治を実現するため、すべての世代の人に学習の権利と機会を保障しなければなりません。 |
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【解説・補足】 1.住民自身が強制ではなく、自分たち自身で学習し、自己変革していく権利のことです。教育と学習の権利は住民の権利です。 2.自治体は、住民に十分な情報を提供し、住民が学ぶ場や機会を保証しなければなりません。また、議会・行政は、そうした地域の教育自治をより豊かなものにするために、教育の内容を独自に判断・決定し、住民もその判断・決定に参加する権利をもちます。それは、教育の場における自治の上に築かれるものです。 |
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(6)知る権利(議会・行政の情報の住民による共有) 【事項案】 1.情報の共有は、住民が自治体の主権者として、地域づくりに責任を持つために、欠くことができません。住民の自主的な判断と行財政の適切な運営のため、住民の情報は、その質と量において、議会・行政に劣らない水準を確保することが必要です。 2.情報の共有は、自治体の主権者である住民と自治体が信頼関係を築く基盤であり、住民は、議会・行政がもっている情報を知る権利があり、議会・行政は、これを保障しなければなりません。 3.議会・行政の情報は原則として公開であり、住民にとって必要な情報を可能な限り分かりやすく提供する責務があります。 4.自治体は、住民の生活に影響を及ぼす事柄に関し、自国及び他国に対して、軍事情報を含めた全ての情報の公開を求めなければなりません。また、その情報は、全てが住民と共有されなければなりません。 |
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【解説・補足】 1.住民と議会・行政が連携して地域づくりを進めるためには、お互いの理解を深めることが重要です。そのためにはお互いが情報を共有することが必要です。「情報の共有」とは議会・行政情報の提供だけではなく、住民へ積極的に、そして可能な限りわかりやすく説明することを意味しています。 2.議会・行政が保有している情報は、住民全体のものであることを認識し、積極的に提供することが原則です。議会・行政から住民への情報提供手段が充実しても、住民自らがそれを積極的に活用しなければ情報は生かされません。そのために住民は議会・行政の情報に関心を持ち、まちづくりに参画する姿勢が大切です。 3.議会・行政から提供される情報の多くは、住民にとって理解しにくいものです。そのため、行政は、住民にわかりやすい内容と方法で伝えることを心がけなければいけません。同様に行政は住民の求めている情報や住民が発信する情報を敏感に把握し、国や他の自治体の情報も積極的に取り入れて、地域づくりに生かす姿勢が必要です。 4.軍事情報を国家に独占させない事は、住民の平和的生存権を守る上で重要です。 |
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(7)自己情報コントロール権 【事項案】 1.個人に関する情報は、その個人自身のものです。個人の情報をいつ、どのように、どの程度まで、保有させ、伝達するか、を自ら決定する権利が、その個人にあります。 2.自己情報コントロール権を実質的に保障するため、議会・行政は、その個人情報の取扱う全ての業務の、全ての過程に、住民の意見を反映させて、その仕組をつくらなければなりません。 3.個人情報を取扱う全てのものは、住民の自己情報コントロール権を保障しなければなりません。 |
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【解説・補足】 1.個人の情報をむやみに知られない権利は、個人の自律と自己決定を可能にする上で、欠くことのできない権利です。今日のように情報処理技術が進展した社会においては特に、思想・信条などの内面に関する情報に限らず、氏名、住所、年齢、行動、身体的特徴その他、個人に関わる全ての情報について、その取扱いの方法により、個人の人格権を損なう危険性が高くなっています。 ただし、大きな権限を持ち、社会に対して大きな責任を負っている公人は、その権限や責任の大きさに応じて、個人情報権利に関して制約を受けざるを得ません。それは、その権限に対して、社会的なコントロールを確保するために必要だからです。 2.行政・議会が扱う全ての情報は、住民から預かっているものです。そのため、原則的にその全ての情報は、住民との間で共有されます。行政・議会の個人情報の取扱い方についての情報も、住民との間で共有され、住民がコントロール出来る状態にしなければなりません。 3.民間の事業者についても、その性質や量に応じて、条例や任意の規則などの適切な規則を定めなければなりません。その際、集会・結社及び言論、出版その他一切の表現の自由を保障する為の充分な配慮をしなければなりません。 |
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3.国との関係 【事項案】 1.憲法で明確に自治体が行うことを禁じている事項については、沖縄自治州の権限は及ばないものとする。それ以外の事項については、住民の信託に基づき設置された沖縄自治州に包活的に権限がある。沖縄自治州は、自治立法権、自治行政権、自治司法権、自治外交権を有する。 2.沖縄自治州は、特に沖縄に関連する立法において、国会に対して法案の提出権を持つ。 3.沖縄自治州議会の制定する州法は、憲法に抵触するものであってはならず、国の行政機関が制定する命令に優位することとする。国法において国の権限とされた事項についても、沖縄自治州の権限に移行するように沖縄自治州から国会に対して発議することができる。 4.沖縄自治州知事は、沖縄自治州の住民の安全と福祉の増進に関る国の業務については、所管担当大臣と同格の立場で、安全保障を含む国の行政に関与する権限を持つ。 5.国と沖縄自治州との間で、法律の解釈について争いのある場合には、裁判所において解決を図らなければならない。 |
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【解説・補足】 1.新地方自治法の施行に伴い、国と地方公共団体の関係は「対等・協力」となった。補完性の原理に基づき、国の内政に関する様々な権限について、住民により近い市町村を最優先し、つぎに沖縄自治州を優先する。国は沖縄自治州でも担うのにふさわしくない事務事業のみ担うことになる。 2.国会への法案提出権は、議院内閣制を採用する国においては、通常、内閣及び議員に付与されているが、州の代表から構成される上院を有する国においては、上院議員すなわち州政府の代表が議員として国会への法案提出権を有する。この点から、州政府が法案提出権を有することを憲法上否定するものではないと考え、沖縄州への法案提出権付与を特別法に規定する。 3.沖縄自治州は、国との関係において、住民の安全と福利の増進という観点から、駐留米軍基地問題や安全保障問題を含む全ての問題について、対等な立場で協力し合い、積極的な解決に資するように努めなければならない。沖縄自治州政府は、住民の安全を守るために国際的武力紛争の犠牲者保護に関するジュネーブ条約の第一議定書第59条の「無防備地区」の宣言を含め、あらゆる措置を考えていくこととする。 4.州の立法の権限は、一括付与方式で、「憲法で明確に禁止していないもの」であれば、自治体にも権限があるとの解釈をする。国法との州法の調整が問題となり、その基本的原則を特別法に盛り込む。州法は、国家の制定法に準ずる位置付けである。憲法第95条の特別法において、沖縄自治州は、この特別法により自らに関する組織編成権を有することとなる。また、沖縄自治州に関する法について、国会における改正を迅速化する必要がある。 5.沖縄自治州は、自治司法権に基づき、沖縄自治州裁判所を設置する。沖縄自治州の州法に関連する事案については、自治州裁判所に訴えを起こす事ができる。沖縄自治州裁判所は、最高裁判所のもとに置かれる。「最高裁判所法」の改正並びに州法の制定により、沖縄自治州が、沖縄州裁判所判事の指名権を獲得すること、判事審査の住民投票制度を設けることなどが考えられる。 |
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4.財 政 【事項案】 1.沖縄自治州及びこれに属する市町村は、自治財政権を有する。 2.全国民の法の下における平等と幸福追求の憲法上の権利を保障するために、沖縄自治州及びこれに属する市町村の人々に提供されるべき公共サービスの財源を、国は、平和的領土・領海の維持・保全の観点を含めて、沖縄自治州及びこれに属する市町村に保障しなければならない。 3.国は、沖縄自治州及びこれに属する市町村に対し、次の各号に配慮して財源を移転する。 |
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ア 全国平均と同等の一人当たり政府支出 イ 機会の不均衝是正をめざす自立経済の促進 ウ 国境・離島地域としての沖縄地域の特殊事情 |
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4.国は、財源移転の基準を定め、これに基づき、財源を移転する。 国は、財源移転の基準を公開しなければならない。 5.国の課税秩序に反しない限りにおいて、沖縄自治州は課税する権利を有する。 6.沖縄自治州及びこれに属する市町村は、米軍、米軍基地内施設及び軍人・軍属等への課税については、州内の事業所及び住民と同等の原則を適用する。 Aただし、国は米軍との協定に基づき、当該請求に対して米軍に代わって支払うことができる。 7.沖縄自治州の予算および決算に関する権限は、沖縄自治州議会が有する。 8.沖縄自治州議会は、毎会計年度の予算を編成する。予算の編成にあたっては、州内市町村の均衝ある発展に配慮する。予算編成の過程を住民に公開しなければならない。 9.沖縄自治州政府は、沖縄自治州議会及び住民に対し、定期に、少なくとも毎年一回、沖縄自治州の財政状況について報告するとともに、常時閲覧できるようにしなければならない。 |
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【解説・補足】 1.戦後の”アメリカ世”及び復帰後の”大和世”を通して莫大な公共投資が沖縄地域になされたが、沖縄における「自立経済の確立」「安定した社会の実現」は未だ実現していない。その要因には様々なものが考えられるが、1つには、自治財政権が不十分なため、公共投資や予算の執行が地域の実情にそぐわない形でなされたことによる。 自治財政権の確立は、今後の沖縄自治州における地域づくりにおいて最も重要な鍵であるといえる。 2.沖縄自治州は、領土こそ小さいものの広大な領海を有する。沖縄自治州が属することにより、日本国は、広大な領海とそれに付随する漁業資源や海底資源などを有することが可能となり、現在及び将来にわたる潜在的価値は計り知れない。 また、「竹島」や「北方領土」の例をみるまでもなく、国境地域に自国民が永続的に居住するということは、最も平和的な領土の維持・保全の方法である。 したがって、沖縄自治州において日本国民としての最低限の生活(ナショナル・ミニマム)が維持できるよう配慮することは、日本の国民益にかなう。 3.沖縄自治州のみならず、地理的な不利性や国策や規制等により、他地域と同等の努力をしても、“経済的発展や自立経済の構築が困難な地域”“税収が低い地域”は国内に多く存在する。 特に沖縄自治州及び州内市町村は、“国境性”及び“離島性”という特殊事情を抱えており、特段の配慮を必要とする。 例えば、沖縄は全国的な鉄道・道路ネットワークから孤立しており空港及び港湾の果たす役割は他の都道府県よりもはるかに重要な意味を持つ。このため、沖縄の空港・港湾を全国的な公共交通ネットワークの一部と見なし、ガソリン税や高速道路料金を空港・港湾整備に必要な財源として移転する。 4.適切な財源の移転は、歴史的にみても世界的にみても、国を維持する際に必要な当然の政策であり、財源を移転する側とされる側の関係は手続き上のもので、そこには本来、上下関係は存在しない。しかしながら、財源を移転する側の裁量範囲が大きくなればなるほど、その影響力がおおきくなり、往々にして、上下関係が成立する傾向にある。 したがって、沖縄自治州への財源移転にあたっては、一定の基準に基づきこれを行うこととし、国による裁量の余地を残さないことが重要となる。 5.国及び他の道州との二重課税にならない限りにおいて、沖縄自治州は課税する権利を有する。 例えば、環境税や入域税、賭博税などが考えられる。また、「泡盛」は琉球王国時代からの沖縄の特産品であり、その税収は沖縄自治州へ帰するものとし、税率についても沖縄自治州に決定権を付与することを検討する。 6.沖縄自治州は重要な経済基盤である土地の多くを基地に取られているため、経済的発展の可能性を奪われている。また、基地は住民生活にとって典型的な迷惑施設であり、環境破壊施設であるため、本来、人口密集地や貴重な自然環境を有する地域と基地は相容れない。さらに、同じ自治州内に居住し存在するにもかかわらず、基地施設及び軍人・軍属と自治州住民及び事業所とでは税制面で必ずしも平等とはいえない。 そこで、米軍、米軍基地内施設及び軍人・軍属等への課税については、州内の事業所及び住民と同等の原則を適用し、その税収は、沖縄自治州自立経済のための財源とするだけでなく、環境税と同様の趣旨にのっとり、基地被害の根絶、基地環境監視、基地縮小のための施策等の財源とする。 7.財政民主主義の基本原則に則り、沖縄自治州の予算及び決算に関する権限は沖縄自治州議会に属し、その執行にあたっては沖縄自治州議会のチェックが必要である。 8.現行の国や都道府県の制度と異なり、毎会計年度の予算の編成は沖縄自治州議会が主体となって行い、沖縄自治州政府は補佐的に予算案を提出するものとする。 9.財政状況については、これまで以上に紙媒体の報告や閲覧を充実させるだけでなく、電子媒体(インターネット)を活用し、24時間いつでも何処からでも閲覧できる体制を構築する必要がある。 |
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5.沖縄自治州と市町村の関係 【事項案】 1.沖縄自治州と市町村の関係は対等・協力である。沖縄自治州は、住民が創設するもっとも基礎的な自治体である市町村の自治を最大限尊重しなければならない。 2.市町村は、住民が創設するもっとも基礎的な自治体としての役割を担う。沖縄自治州は、広域自治体として、市町村を支援する補完的役割を担う。市町村が行うことが適当でない/できない事務を補完的に処理する。 3.沖縄自治州と市町村の紛争は、沖縄自治州に置く自治州裁判所の管轄とし、自治州裁判所が判断する。 |
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【解説・補足】 1.新たな地方自治法の施行に伴い、国と県、市町村の地方公共団体は、対等・協力の関係となった。その際、市町村が行うことができない事務を県が、県が行えない事務を県が行うというように、補完性の原理に基づいて、身近な政府/単位に優先的に事務を分配し、市町村の自治を最大限に尊重する。 2.自治州と市町村の事務は、補完性の原理に基づき、垂直補完や水平補完等の様々な形で、補完を行っていく。自治州が行う事務は、大きく分けて以下の3項目が想定される。 (1)広域的事務:地方の総合開発計画の策定、資源開発、天然資源の保全、治山治水事業、道路、河川の建設等 (2)市町村に関する連絡調整事務:市町村合併の案策定、福祉事業のモデル作成、離島及び過疎支援等 (3)補完的事務:高等学校、大学、試験研究機関の設置、雇用、産業振興、公害規制等 3.市町村が事務処理をする中で、沖縄自治州からの是正要求や許可拒否などに対し、市町村の執行機関が不服の場合は、沖縄自治州を管轄する自治州裁判所に対して、審査要求を行うことができる。 |
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6. 市町村 【事項案】 1.市町村は住民が創設するもっとも基礎的な自治体であり、その地域の住民の福祉のため包括的な自治権を有する。 2.主権者たる住民は、憲法の範囲内で、規模と風土に適した仕組みや権限を創造することができる。 3.各市町村は、自治力向上のために相互に協力し、情報共有に努め、自治の拡充のための政策形成については、相互に調査・研究を実施する。 |
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【解説・補足】 1.市民がつくりあげていく地方政府としての位置づけ。市町村は、地域住民の福祉の向上に関するすべてにおいて、統治していく権限を持つ。 包括的権限付与方式・・・世界自治憲章やヨーロッパ自治憲章に示されているようにその地域住民の福祉に関することは、地域で考え実施していく。 2.地域住民でその地域の統治の仕組みや権限を自ら決定することができる。ですから例えば、シティーマネージャーや行政委員会の設置の仕方などは、各自治体によってさまざまな形を選択することができる。 各市町村では自治基本条例の中で、それぞれの地域にあった姿が条文の中に盛り込まれていく。 3.各市町村には、情報の提供・作成義務があり、説明責任を果たさなくてはならない。 情報共有ということは、あらゆるプロセスを公開していくということである。 各自治体間は、相互に協力して公共課題の解決、またより専門的な知識・技能を習得して、施策提言を積極的に行うべきである。 |
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7.沖縄自治州の統治機構 【事項案】 1.沖縄自治州住民の最高意志決定機関として沖縄自治州議会を設置する。自治州内に適用される公職選挙法については別に定める。議会は、住民の直接的な民主主義の権利を尊重しなければならない。沖縄自治州議会は、二院制とし、州内の市町村代表により構成される自治院と、自治州内で直接公選される議員により構成される立法院を設置する。議会の権限及び二院の関係については別に州法で定める。 議会及び議員は、議会及び議員活動に関して、わかりやすく、かつ詳細に住民に伝えなければならない。また、議会の本会議、委員会その他の会議は、公開の不利益を具体的に立証しない限り、すべて公開する。 2.沖縄自治州の行政の執行者として、自治州内全域を選挙区として公選される知事を置く。 3.沖縄自治州知事を補佐し行政を執行する機関として沖縄自治州政府を設置する。沖縄自治州政府の権限及び業務、組織、職員については別に州法で定める。 沖縄自治州政府は、すべての行政活動に関する情報について公開する。 4.国の最高裁判所下に、沖縄自治州裁判所を設置する。沖縄自治州裁判所の権限及び管轄については別に州法で定める。 沖縄自治州議会により、制定された州法の裁判については、沖縄自治州裁判所で取り扱う。 5.沖縄自治州警察安委員会の委員については公選される委員により構成される。沖縄自治州警察の本部長及び幹部職員は自治州職員とし、知事が任命する。 6.沖縄自治州警察安委員会、沖縄自治州警察の権限、業務については別に州法で定める。 |
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【解説・補足】 1.議会 沖縄自治州議会は二院制とするが、参議院、衆議院や上院、下院という名称だと、国会や米国議会の仕組みを重ねて考えてしまうため、新たに州内の市町村代表により構成される議会を自治と、自治州内で直接公選される議員により構成される議会を立法院と呼称する。(名称については要検討) 自治州の予算については先に立法院に提出しなければならない。予算について自治院で立法院と異なった議決をした場合に、立法院の議決を沖縄自治州議会の議決とする。ただし、自治州内の市町村への予算配分の仕組みの決定に関しては自治院が最終議決権を有する。 沖縄自治州内では国法を有効とするが、法律の範囲内において州は自らの住民の福祉に関して州法を制定することができる。州法は国の省令に優位する。 沖縄自治州議会は、州法提出権と予算編成権を有する。このため、条例準備、予算査定、監査のための機構を議会内に設置する。 両議院の議員は、法律の定める場合を除いては、議会の会期中逮捕されず、会期前に逮捕された議員は、その議院の要求があれば、会期中これを釈放しなければならない。また、両議院の議員は、議院で行った演説、討論又は表決について、院外で責任を問われない。 自治院の任期は、各市町村長の任期と同じとする。立法院については、例えば任期は四年、任期は三期までを限度とし七十歳を定年とするような任期制の導入を検討する。 沖縄自治州議会は、議員の兼業化や、住民の傍聴を容易にするために、通年制や、夜間、土、日曜日の開会など多様な運営方法の導入を検討する。 2.知事 知事は予算教書(メッセージ)、州法教書の提出権及び沖縄自治州議会の議決に関して拒否権を有する。 知事については、例えば任期は四年、任期は二期までを限度とし六十五歳を定年とするような任期制の導入を検討する。 また、参議院を道州の代表で構成する等の国会の改革を提案し、知事による地域からの国の法案提出権を有することを目指す。 3.行政 地方自治法、地方公務員法の適用除外となる部分については別に州法で定める。 三役、部局長制を廃止し、一定の経営責任を有する幹部職員(政治的任用:理事or執行役員)により運営する。 行政職員の国籍条項を廃止し、兼業禁止規定の改定により、非営利活動や非政府組織、州議会議員、市町村議員との兼業を可能とするとともに、すべての住民に門戸を開く。 行政職員については勤務日、時間、場所等について多様な勤務形態を認め、行政の公正性を維持するための最小限の職員を除いて、期間を限った勤務が可能な業務については任期制の公募による採用を行う。 4.司法 自治権、立法権と同じく司法権を地方が有するために、沖縄自治州裁判所は憲法の下におく下級裁判所とする。この場合、国の地方裁判所も併存し国の法律に関する裁判は国の津法裁判所、州法に関する裁判は沖縄自治州裁判所が取り扱う。 沖縄自治州裁判所においては、国内の判例のみならず、国際的な人権保障の水準を念頭に裁判官の良心に基づき独自の判断をする。また、公正な裁判制度の維持のため、2審制導入の検討を行う。 裁判官・検事の人事はその公正性、育成システムを担保するため、国の裁判所、検察の人事のなかに置く。 5.警察 沖縄自治州警察は自治州内に権限を持つ地域警察とするが、刑法の下、犯罪捜査に関しては全国警察と協力して行い、沖縄自治州外での逮捕権を有する等、広域化する犯罪に対応できるようにする。 |
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