翻訳へもどる 愛する人がガンの治療を受けているとき  When Someone You Love Is Being Treated for Cancer


 「あなたは、まず自分自身のことをきちんとできるようにしておく必要があります。もし、自分のことができないようなら、あなたは他の誰の介護もできません。教えてもらったり、助けてもらうことを遠慮してはいけません。」                         − フランシス ―


目 次 

小冊子の目的
介護者とは誰でしょうか
介護することに慣れる
自分自身の心や身体と精神のケア
医療ケアチームと話す
家族や友人と話し合う
人生設計
振り返る
介護者の権利宣言
各種問合せ先
その他の情報


(もどる) この小冊子にはあなた自身と、あなたに必要なことについて述べられています。


 ガン患者の世話をしてきた多くの人たちが、もっと早く知っていたらよかったのにと感じた介護のヒントをこの小冊子に集めました。簡単に見えるものもありますが、やってみると大変なこともあります。

 あなたにとって一番いい方法でこの小冊子をご利用ください。最初から最後まで読んでも良いでしょうし、必要なところだけ見るのも良いでしょう。
 二人として同じ人はいません。この小冊子には、あなたにあてはまる章も、あてはまらない章もあるでしょう。また、後になって役に立つ章もあるかもしれません。

使用用語:ここで用いられている「愛する人」や「患者」という言葉はこの小冊子全体を通してあなたが介護をしている人を指しています。また、読みやすくするためにガンになった人という代わりに、「彼」や「彼女」といった語を用いています。

 他の介護に関してのNCI小冊子としては、下記のようなものを取り寄せたりウエブサイトから印刷することができます:

愛する人が、ガンの治療を終えたとき
     (When Someone You Love Has Completed Cancer Treatment)
愛する人が、進行ガンになった時
     (When Someone You Love Has Advanced Cancer)
小児のガン、両親のためのハンドブック
     (Young People With Cancer : A Handbook for Parent)
親がガンになったとき、10代の若者のためのガイド
     (When Your Parent Has Cancer: A Guide For Teens)
兄弟がガンになった時、10代の若者のためのガイド
     (When Your Brother or Sister Has Cancer : A Guide for Teens)



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介護者とは誰でしょうか

(もどる)  この小冊子は、愛する人がガンの治療を乗り越えることができるように援助しているあなたのためのものです。あなたは、自分ではそう思っていなくても「介護者」です。あなたが愛する人のために自然にやっていること、お世話をしていることがわかるでしょう。
 介護者は、家族であったり友人であったり、いろいろな場合があり、状況も違います。ですから、介護の方法もさまざまですし、最善な方法ということもありません。
 介護とは、診察とか食事の準備とかいった日々の行動の手伝いをするという意味で用いられますが、遠く離れていても介護ができる場合もあります。電話で愛する人のためにお手伝いやサービスの手配をしなければならないこともあるでしょうし、また、介護には、感情面や精神面でのサポートをするという意味もあります。あなたは、愛する人が、こみ上げてくるさまざまな感情に向き合い、その気持ちをなんとかしようとしているのを支えているところかもしれません。話をしたり、聞いてあげたり、また、ただそこに一緒にいることなども、大事なことなのです。
 治療期間中の介護やサポートをすることはたやすいことではありません。ほとんどの介護者が、自分自身の気持ちやしたいことを後回しにしてしまうのは自然なことで、ガンになった人のことだけを考えて介護の仕事をたくさん抱え込んでしまいがちです。これは短期間なら良いでしょうが、長く続けることは大変ですし、あなたの健康にもよくありません。もし、自分のこともできないようなら、他の人の世話などできません。まず、ひとりひとりが自分自身の健康に留意することが大切です。

 「自分自身に留意し、可能な限りの情報を持ち、他の人からの支援を受けることによってあなたは最高の介護者になるでしょう。」 −レニース−



(もどる) 介護することに慣れる

 あなたの強さと限界について考えてみること
 なぜ助けてもらうことが大切か
 遠距離からのケア



役割を変えること

 「週に一度ですが、子供たちを学校に連れて行ったあとで、私は母を診察につれてゆきます。それから、私は母の家へ一緒に帰り昼食の用意をして、母のそばでしばらく座っています。母はそんなことは自分ですると言うので、いつも言い合いになります。母にとっては、私に頼らなければいけないということがいやなのです。」   −リン−

 あなたが若くても年をとっていてもでも、あなたは介護者としての新たな役割を担うことになります。ガンになる前は、一緒に生活を楽しんでいたとしても、その人を支える方法は違ってくるでしょう。それは今までそんなに経験したことのないものかもしれませんし、以前よりずっと意思の強さを必要とするかもしれません。今のあなたには介護は初めてのことかもしれませんが、愛する人のガンを通して、さまざまなことを学んでゆくことになるでしょう。介護について、以下のようなことがよく言われます。:

・あなたの配偶者もしくはパートナーは、あなたが世話をするときのみに心が安らぎます。
・母親の場合は、今までは世話をする立場だったために、逆に(成人した子供である)あなたの
 世話を受けることに躊躇することがあります。
・成人した子供が癌になった場合は、親の世話になりたくないと思うかもしれません。
・あなた自身に健康上の問題ガある場合には、だれかの世話をすることは肉体的にも精神的に
 も困難になります。

 あなたの役割が今どのようなものであっても、役割の変化を受け入れるのは大変でしょうし、混乱したり、ストレスを感ずるのもよくあることです。もしできるなら、他の人たちやサポートグループの人にあなたの気持ちを話してみましょう。また、カウンセラーや心理学者に相談するのもいいでしょう。愛する人の前では話せないことでも言うことができるので、カウンセラーと話してよかったと言う介護者も多いです。「家族や友人と話す」(Talking with Family and Friends)には、もっとヒントが書かれています。


あなたの気持ちに向き合う

 「もう精神的に疲れ果ててしまいました。何がなんだかわかりません。ちょっとの間よくなったかと思えば、二時間もしたら何かが起こったりします。私はどうしたらよいか分かりません。」      − デイビッド−

 あなたは愛する人をケアをすることで、さまざまな思いを持ったことでしょう。このような思いはとても強いものですが、患者の治療とともに揺れ動くものです。このゆれ動きをジェットコースターにたとえる介護者も多いです。あなたは、悲しみ、怖れ、怒り、心配といった感情をもつでしょう。こういった思いを感じたり、行動に表したりするのに正しい方法とか、間違った方法などはありません。
 以下に述べてある思いを、今持っているかもしれませんし、ほとんど感じていないかもしれません。また、そのような思いを別の時に感じるかもしれませんし、少しはましに感じる日もあるでしょう。あなたが感じている思いを他の介護者も同じように感じていると知れば、少しは落ち着くでしょう。さまざまな思いがあり、それが当たり前なことだと知ることが、これらを超えていくことの第一歩です。自分自身のさまざまな思いを受け止め、折り合いをつけるための時間をとりましょう。


 怒り
 自分自身や、家族、そして患者などに怒りをおぼえるのが普通だと介護する人たちは言います。怒りは、怖れ、パニック、心配といった言いあらわしにくい感情から生まれることもあります。できれば、こういった感情を他の人にぶつけることは避けましょう。怒りというものは、きちんと処理すれば健全な感情でもあります。怒りは、あなたが行動したり、もっといろんなことを知ったり、あなたの生活を明るく変える原動力にもなります。しかし、こういった感情がずっと続いて、まわりにいつもあたり続けるようならば、カウンセラーや精神医療の専門家に相談してみましょう。

 悲しみ
 あなたは、あなたの愛する人の健康や、ガンになる前に一緒に過ごしていた日々の生活というような、あなたがいちばん大切にしてきたものを失うことを悲しんでいるかもしれません。悲しいときには悲しみましょう。変わりつつあるものを受け入れて、それらに順応するには時間が必要です。

 罪悪感
 罪の意識は、介護する人にはよくおこることです。介護が十分ではないか、自分の仕事や、愛する人との距離が介護の妨げになっているのではなどと心配するかもしれません。あなた自身が健康であることにでさえ罪の意識を感ずるかもしれませんし、陽気に明るく振舞えずに気がとがめることもあるでしょう。でも、それでいいのです。あなたが悩んでいても、それを表にあらわさないことで、他の人にはあなたの気持ちを悟られないのですから。

 不安や抑うつ
 不安とは、過度に心配したり、リラックスできなかったり、緊張したり、パニックに襲われたりすることをいいます。支払いをどうしようとか、どんなことで家族が影響をうけるだろうかとか、そしてもちろん、愛する人がどうやってガンに向き合っているのかなどを心配する人が多いです。うつ病とは2週以上も悲しい気持ちが続くことです。もしこういった症状があなたのいつもの生活に影響してきたら、誰にも頼らずに耐えている必要はありませんから、医療関係者と相談してください。この大変な時の、あなたの症状を楽にしてくれるでしょう。

 希望や絶望

 「力のなさを感じる。何もできないときがある。痛みもイライラも無くせない。できることは、ただいることだけ。何の力にもなれずに。」  −セシル−

 愛する人がガンの治療をうけていると、程度はさまざまでも、あなたは希望や絶望を感じるでしょう。そして、あなたが望むものも時とともに変わってゆくでしょう。なにをおいても望むことは治ることでしょう。でも、安らぎ、平穏、受け入れ、そして喜びなどといったものを望むこともあるかもしれません。絶望感をぬぐい去れないのならば、心を許した家族や、友達、医療関係者、宗教家や精神指導者のような人たちと話すといいでしょう。

 孤独
 あなたのまわりにたくさんの人たちがいたとしても、介護の孤独を感ずることがあります。あなたは、だれもあなたのしていることを分ってくれなかったり、人に会う時間が少なくなったり、今までしていたことも時間がなくてできなかったりと、孤独に感じるかもしれません。どんなときであっても、あなたはひとりきりではありません。介護をしているほかの人たちも同じような気持ちを抱えています。 心を通わす方法の参考に「愛する人との結びつき」(Connect with Your Loved One)を読んでみて下さい。



 他の対処方法

(モドル1)  失敗を気にしない
 完璧な人間なんて誰もいません。一番良いことは、自分の失敗から学ぼうとすることです。最善を尽くし、自分自身にあまり多くを期待しすぎないようにしましょう。

 泣くなどして自分の感情を示す
 いつも明るく陽気に振舞う必要はありません。いろんな変化に対処するための時間を取りましょう。悲しいときや動揺したときには、泣いてもいいのです。

 自分のことに精力を費やす
 あなたの大切なことに時間と精力をかけましょう。その他のことはとりあえずおいておきましょう。たとえば、疲れているときには患者の衣類をたたんだりしないで、思い切り休みましょう。

 怒りの感情を理解する
 あなたの愛する人が、あなたに怒りをぶつけることがあるかもしれません。人間であれば、いちばん身近な人に自分の感情をぶつけることは、普通のことです。自分に向けられたこととして、そういった怒りを受け止めないようにしましょう。患者は、自分の怒りが他の人にどういう受け止め方をされるか分らないことがあるのです。ですから、患者が落ち着いたら、あなたの気持ちを話してしてみたらどうでしょうか。怒りはあなたへ向けられたものではないということを忘れないようにしてください。

 自分自身を許す
 これはあなたにとってすべきことのひとつです。おそらく、あなたは、今できることをしているのです。今後さまざまなときに、またやり直す機会がきます。



 
あなたの強さと限界について考えてみること

 「子供の頃、私たちはふたつのことを教わりました。ひとつは、『細かいことにくよくよするな』、そしてもうひとつは『すべて些細なことだ』です。だから、あなたは自分にとって何が大切かを見極めなければなりません。出来ないようなことではなく、自分でできることに目を向けましょう。」     −アン−

 介護する人の対処法のひとつは、自分の出来る範囲内のことに精力を注ぐように努めることです。之は次のようなことです:

・診察日の予約をいれるのを手伝う  
・食事など、毎日必要なものを手伝う
・愛する人の仕事を引き受ける
・ガンや、治療の選択肢についてよく知る
・そのほかできることがあればなんでもやってみる

 介護する人の多くは、ふりかえってみれば自分がいろんなことを引き受けすぎてしまったとか、もっと早くだれかに助けてもらえばよかったとか言っています。あなたにできることと、できないことを正直に考えてみましょう。介護作業のなかで、あなたが得意であることや、あなたが、しなければならないことは、何でしょうか。また、他の人に頼めること、一緒にできることは何でしょうか。もしあなたが絶対にしなければならないようなことでなければ、任せるようにしましょう。


 優先順位を決める
 毎週の作業や活動のリストを作りましょう。それぞれにどれだけの時間がかかり、どれだけの重要性があるかを把握しておきましょう。もし、大して重要でないものならば、あなたの予定リストから削ってしまいましょう。そうすれば、あなたがほんとうにやりたいと思っていることに、もっと時間を割くことができるでしょう。でも、それで他のだれかががっかりするかもしれませんが、他の人が何と思おうと、あなたは自分が大切だと思うことをきちんとやればいいのです。どうなっているかを話せば、ほとんどの人は分ってくれるでしょう。






(モドル1)
 なぜ助けてもらうことが大切か

 「他の人が手伝おうと言ってくれたら、何かやってもらいましょう。しなければならないことをお願いしましょう。自分のプライドなど気にせずに助けてもらいましょう。」
   −シボンヌ−

 他人の手助けを受け入れるのは気が重いときもあります。困難な状況になると多くの人たちが離れてゆく傾向があります。そういう人たちは、「この程度の事なら私にだってできるのだから、あの人だって・・・」と考えます。しかし、患者の治療中にはより大変な状況になってゆくこともあります。予定を変えて、新たな作業を引き受けなければならなくなるかもしれません。「することが多すぎて、もう私の手に負えない」と言う介護者は多くいます。

 あなたが誰かの助けを受けることで、あなたの愛する人も助かることもあることを忘れないでください。その理由は:

・あなたが健康でいることができます
・何もかもあなたがしているのではないということで、あなたの愛している人が気持ちを軽くする
 ことができるかもしれません。
・介護を手伝ってくれる人の中には、あなたに時間を作ってくれたり、あなたが持ち合わせてい
 ない技術を提供してくれたりすることもあります。



 他の人があなたを手伝う方法
 もし誰かが夕食を作ってくれたり、お使いに行ってくれたりしたら助かると思いませんか。もしそう思うのであれば、時間が無くて出来ないようなことを他の人に代わってもらうのはあなたのためになることでしょう。そのようなあなたを支えてくれる体制は一人のことも、大勢のこともあります。そして、その支え方もさまざまです。
 あなたの手助けをしたいと思いながらも、あなたが何をして欲しいのかわからないし、どうやって切り出せばいいのか分らない人もたくさんいます。まず初めに、あなたが必要なもの、本当に助かるものを頼んでみましょう。たとえば、こんなことを頼んでみたらどうでしょうか:

・ 料理、掃除、買い物、庭仕事、子供や老人の世話などといった家事。
・ 一緒に話をして、あなたの気持ちを聞いてもらう。
・ 愛する人の病院への送迎。
・ 子供の、学校や課外活動などの送迎。
・ 必要な情報を調べてもらう。
・ 連絡係になって、あなたの愛する人の最新の病状を伝えてもらう。


誰が助けてくれるか
 あなたの仕事を助けてくれそうな人を考えて見ましょう。家族や、友達、近所の人、同僚などを含めて、あなたが知っている人や、グループの人たちを思い出してみてください。信仰団体や、市民団体、グループの人たちも、あなたの手助けをしてくれるでしょう。

一時休養のための援助を探す
 一時休養ヘルパー(RES-pit)はあなたの愛する人の付き添いをします。一時休養ヘルパーは有料の場合も、ボランティアの場合もあります。もっと早くから一時休養ヘルパーを頼めればよかったのにと言う介護者はたくさんいます。一時休養ヘルパーがいれは、あなたは少し休めますし、友達に会ったり、用事をこなしたり、なんでも好きなことができるようになります。一時休養ヘルパー、は患者を持ち上げてベッドや椅子に乗せたりするような、患者の身体を扱うこともしてくれます。もし、このサービスを受けたいと思うなら、以下のようなことをしておきましょう:

・だれかが時々家の中に手伝いに入るということを先に話しておきましょう。
・友人や、ヘルスケアの専門家、または地域の高齢者団体から紹介してもらいましょう。
・どういった仕事ができるかを一時休養ヘルパーにたずねておきましょう。

 一時中断ヘルプは、家族、友人、近隣、同僚、信仰団体、宗教団体、政府機関、NPO団体などから受けることができます。あなたが何のために支援や自分の時間が必要でも、それは介護者としてのあなたの失点ではないことを覚えておきましょう。

断られたときのために
「私たちはたくさんの人たちのサポートを受けてきました。でも、当てにしていた人は少なく、助けてくれたのはあまりよく知らない人たちがほとんどでした。良く知っている人たちも、私たちを避けていました。人間なんてまったく分らないものですね。」
  −ジェシ−

 手助けしてくれない人たちがいます。そのときには、おそらく傷ついたり、怒りを感じたりするでしょう。特に、あなたがあてにしていた人の場合にはなおさらでしょう。なぜ助けてくれないのかと思うかもしれませんが、それにはいろいろな理由があります。よくある理由をいくつか挙げてみます。:

・自分自身の問題を抱えていたり、時間がない場合があります。
・ガンを怖れていたり、以前、ガンに関係したひどい思いをしたことがあり、もうそんなめに合い
 たくないので係わり合いを持ちたくないという人もいます。
・わざわざ大変なことにかかわって、火中の栗を拾うようなことはしたくない人もいます。
・それがあなたにとって、どんなに大変かがわかっていなかったり、はっきりと頼まなければ何が
 必要なのかわからない人もいます。
・あなたのことを気にかけていることをどうやって示せばいいのか分らなくて、気まずい思いをして
 いる場合もあります。

 誰も助けてくれないときには、必要な事柄を話し、何を手伝ってほしいかきちんとお願いしましょう。それでもだめなら、あきらめるしかありません。でも、人間関係を大切にしたいなら、自分がどう感じているかを伝えましょう。そうすることで、長い目で見ればお互いの人間関係を傷つけてしまうような憤りやストレスを蓄積させないようにできるでしょう。



 援助を求めるヒン


 障害と対処法

障害
 彼がガンであることは個人的なことだ。何で僕があちこち頼みに行かなくてはならないのか。

対処
 あなたと、あなたの愛する人が、誰に何をいつ話せばいいか考えましょう。

・今、いちばん親しくしている本の少しの人だけに頼みましょう。
・ あまり詳しくは伝えないようにしましょう。「彼は病気なの」とか、「彼女は今日は気分が良くない
 みたい」というようなことだけにしましょう。
・家族の誰かや、友人、信仰団体の人に病気のことをみんなに伝えてもらいましょう。
・知人ではなく、地域の機関や団体などに援助を求める。


障害
 みんなすることがいっぱいある。しなきゃいけないことを放っておいたり、取りやめたりさせたくない。

対処

 もし他の人に負担をかけることが気になるのなら、ちょっと考えてみてほしいことがあります。

・誰もがおそらく手助けをしたいと思うものです。
・もしたくさんの人から助けてもらえれば、あなたの負担は軽くなります。
・誰か似た状況の人がいたら助けてあげたくなりませんか。あなたは、手を貸してくれるように
 頼まれたらいやな気がしますか。


障害
 うまく言えないけど、今はちょっと手伝う気がしない。

対処
 人は一番助けが必要なときに、助けを求めたがらないものです。あなたは通常の社会生活や普通の人たちとはなれているので、援助を求めることをいかに大変なことと思っているのでしょう。
 友達や、信仰団体の人やカウンセラーなど、あなたが信じられる人と話してみましょう。こういった人はあなたの考えや気持ちを整理する手助けをしてくれるでしょうし、支援を得る方法をあなたが見つけるのを手伝ってくれるでしょう。


障害
 私には家族の世話をしたり、自分自身でもしなきゃいけないことがあります。」

対処
 支援体制を持つことは、あなたの家族の世話をする一つの方法です。他の人に作業を分担することで、あなたは自分自身でやりたいと思っていることができるようになります。





(モドル1)
 遠距離からのケア

 「私たちの家族は米国じゅうに散らばっています。ですから、実際に手伝うことは大変です。でも、『愛しています。何かしてほしいことはあるの。』と電話をかけてくる回数が増えました。たとえ、手助けできることは、そんなに多くはなくても、ただ電話をたくさんかけるだけで、心の重荷が少しは軽くなります 。」   −パティ−

 ガンに罹った、愛する人から遠くはなれていることは、本当に大変なことです。彼女の世話がどうなっているのかを、一歩立ち遅れて伝わってくるように感ずるかもしれません。でも、たとえあなたが遠く離れたところに住んでいたとしても、問題を解決したり、中心的な取りまとめ役としてサポートすることはできます。
 介護する人が、患者である愛する人から1時間以上離れた場所に住んでいる場合、通信手段として電話や電子メールを最も活用しています。しかし、こういった手段で必要なことを判断するには限界があります。医療上の救急事態は別にして、遠距離にいる介護者は、電話で対応できる状況なのか、実際に会いに行く必要があるのかどうかを判断しなければならないということに直面します。

 窓口を探す
 多くの遠距離の介護者は、支援を提供する有料のものと、ボランティアでなされるものの両方を調べることが有用だったと言っています。危篤のときや、単に確認したいだけのときでも、大切な人のそばに住んでいて、日中でも夜間にでも電話できるような人たちの支援ネットワークを作っておきましょう。その地区の訪問ボランティアや、成人ディケアセンター、食事の宅配サービスも調べてみましょう。地域の電話帳のコピーをとっておけば、手際よく連絡することができます。医療ケアチームの人たちなどには、緊急時のために勤務先と自宅、携帯電話の番号などを知らせておきましょう。

その他のヒント

・介護をうける人の近くに住んでいる家族や友人に電子メールで毎日新しい情報を知らせてもら
 えないか頼んでみましょう。または、あなたの大切な人の状況や、必要としているものについて
 の情報を共有するためにホームページを作るのもいいかもしれません。

・電子機器やコンピュータが得意な人と、別の連絡方法がないか相談しましょう。ビデオやインタ
 ーネットの利用技術は日々進歩しています。

・患者やその家族に対して航空券やバス路線に関して特例があるかどうか、旅行代理店に電話
 してみましょう。病院のソーシャルワーカーも、自家用飛行機のパイロットや、癌患者や家族を
 支援する企業といった情報をもっと教えてくれるでしょう。

・もし、飛行機であろうが自動車であろうが、愛する人に会うために旅をするのならば、帰宅後ち
 ゃんとあなたが休憩をとれるように時間を計算しておきましょう。顔を見に行ったあとには一息
 入れる時間もないと言う遠距離の介護者が多いです。

・長距離の電話代を節約するためにテレホンカードをディスカウントショップで入手することもよい
 かもしれませんし、契約している電話の長距離料金体系や、携帯電話のプランを検討すれば、
 電話料金を減らすことができるかもしれません。





(もどる)
自分自身の心や身体と精神のケア


 自分のための時間を作る
 自分のケアをすることについての誤解
 自分自身をはぐくむ方法
 ガンに向き合うことの意味を見出す
 抑うつや不安に関して助けが必要ですか
 自分自身のケアをする


 自分のための時間をつくる
 あなたは、自でしたいと思っていることが今はまだ大切なことだとは思っていないのかも知れませんが、すべての用事を済ませたときには、自分の時間はまったく残ってないことになるかもしれません。それとも、愛する人ができないのに、自分だけ楽しむことに気が引けているのかも知れません。
 ほとんどの介護者は同じような気持ちを持つと言います。しかし、自分自身の欲求、希望、願いを大切にすることは、介護を続けてゆくためにとても大切なことです。(介護者の権利宣言の章を参照)
 あなたの心と身体、そして精神を快復させるための時間を持てば、もっとよい介護者となれるでしょう。次のようなことを考えてみましょう。

・自分自身のための何か素敵なことを見つけましょう。ほんの2〜3分のことでもいいのです。
・「あなたのために」ということを減らしてみましょう。
・予約とか、お使いなどのような、自分でなくてもできること、また、お願いできることを考えてみま
 しょう。
・ 友達との別の付き合い方を探してみましょう。
・ もっとたくさん「非番」時間を作ってみましょう




(モドル2)
自分のケアをすることについての誤解

誤解:自分のケアをすると、愛する人から離れてしまう。
事実:愛する人一緒にいようといまいと、自分のケアはできます。大切なのは、自分自身をおろ
    そかにしないことです。

誤解:自分のケアをすると、他のことをする時間が無くなる。
事実:気持ちが高まる本の一節を読むといったことなら、ほんの数分しかかかりません。また、
    他のことでも介護の合間に少しずつできるでしょう。

誤解:自分のケアをどうしたらよいのかわからない。できるかどうかもわからない。
事実:あなたが幸せを感じたり、気が軽くなったり、もっとリラックスできたり、気力がわいてくると
    感じるときは、いつでも自分自身のケアをしているということです。そんなものを挙げてみて    ください。

*フロリダ州サンコーストのホスピス、“介護中の自分自身のケア:自分自身のケアへの障害を取り除く”から、許可のもと転載。(http://www.thehospice.org/rmvbarriers.htm)



自分自身を育む方法

(モドル2) 自分自身の気持ちを見つめる
 「ほんの少しの静かな時間が欲しいのです。夫がうたたねをはじめたら、そんな気持ちがとても強くなって、本を読んだり、ポーチに座ったりします。化学治療と放射線治療を受ける日々は、とても疲れますから。」   − アデル−

 自分の考えや感情のはけ口を持つことは大切です。あなたの気分を高めることができることを考えましょう。話をすることで負担が軽くなりませんか。一人静かに過ごす時間のほうが良いでしょうか。あなたの生活の様子にもよりますが、おそらく、どちらも必要でしょう。あなたにとっても、他の人たちにとっても、あなたに何ガ必要なのかを知ってもらうことは良いことです。

安らぎを見つける
 介護をしなければという気負いの息抜きをすることが必要です。安らぎを感じ足り、くつろげるようなことを考えましょう。一日にたった数分でも自分の時間が取れれば、介護集中できるようになると介護者たちは言います。
 どんなに些細なことでも、毎日、自分自身のために何かするような時間を15分〜30分はとりましょう。(次の“自分のためにできる小さなこと”参照)
 たとえば、軽い運動の後は疲れやストレスが少なくなるとよく言われます。散歩したり、走ったり、軽いストレッチなどをしてみましょう。
 くつろぐ時間をとっても、なかなか楽にはならないという場合もあるでしょう。そんなときには、ストレッチやヨガなどのようにリラックスプログラムの運動が良いという人や、深呼吸したり、ただ静かに座っているほうが良いという人もいます。

自分のためにできる小さなこと
 毎日、どんなに小さなことであっても、自分自身のために何かをする時間を作りましょう。以下のようなものがあります:

・昼寝(居眠り)
・運動やヨガをする
・趣味を続ける
・ドライブに出かける
・映画を観る
・庭仕事をする
・買い物に行く
・電話をかける、手紙を書く、電子メールを送る

 くつろぐ時間をとってもなかなか楽にはならない場合もあるでしょう。そんなときには、、深呼吸や瞑想などをすると良いという人もいます。

支援グループに参加する
 「私が週に1〜2回したいのは、私と同じ境遇の人やグループの人たちとと話をすることです。」
                                            − ビンス−

 支援グループは直接集まることもありますし、電話や、インターネットで集まることもできます。支援グループの人たちは、出来事の新たな視点でのとらえかたや、問題への対処の仕方を教えてくれ、あなたが一人ではないことを気づかせてくれます。支援グループでは、お互いの気持ちや、意見を交換し、同じような問題を抱えている人の手助けをします。支援グループに行って、ただ話しを聞くだけが好きな人もいますし、このような分かち合いに不安を感じ、参加することがいやな人もいます。
 もし、あなたの地域にサポートグループがみつからなかったら、インターネットで探してみましょう。ウェブサイトの支援グループに大変救われたと話す介護者もいます。


カウンセラーと話す
 あなたは介護の仕事に圧倒され、他の支援グループと話してみたくなるかもしれません。そのときには、カウンセラーや、心理学者、精神医学の専門家などと相談するのがいいと言う介護者もいます。信仰団体の指導者に相談すると良いという人もいます。愛する人や周りの人たちには話せないようなことでも、こういう人たちには話せるでしょう。また、今まで思ってもいなかったようなやり方で自分の気持ちを表したり、収める方法を見つけ出せるかもしれません。

愛する人との関係
 ガンによって、あなたと愛する人とのつながりが以前より強くなることもあります。ともに困難に立ち向かったとき、人はさらに強く結びあうものです。できれば、共に過ごす特別な時間を作ってみましょう。あなた今共に歩んでいることの強さ、そして今まで乗り越えてきたものから力を得ましょう。そうすれば、前向きな見通しをもち、希望を持って、将来に向かって進むことができるでしょう。

他の人との関係
 「近所の人が私の様子をたずねるときに、『元気。』という返事を求めているのはかまわないのです。でも、元気じゃないときには、誰かわかってくれる人、ただ聞いてくれる人と話せればいいだけなのです。だからあなたは、なにも答えなくていいから、私の話を聞いていてください。」
 
   −キャシ−

 調査によれば、介護者には人間関係がとても大切です。どうすればよいかわからなくなったときや、愛する人には言えないようなことがあるときには、特に人間関係は大切です。自分の気持ちや恐れなどを素直に打ち明けられる人を探しましょう。立場の違う人と話すこともよいことです。介護者には、電話を利用したり直接あって話ができる個人的なネットワークを持っている人がたくさんいます。また、愛する人の介護に関する問題に何か心配なことがあるのなら、介護チームに相談することもよいことです。いろいろな解決策を知っていることで不安を減らすことができます。

明るく生きる
 介護で忙しいときには、なかなか明るい気分にはなれないことでしょう。介護者としての役割をすることもつらく思うかもしれません。生活の中で何かよいことを探すことで気分が明るくなるといいます。一日に一度は、あなたへの感謝の言葉や、医療関係者からの特別なサポートといったことを思い出してみましょう。また、素敵な夕日、抱きしめてもらう、読んだり聞いたりした面白いことなど、明るい気分になれるひと時を過ごしましょう。

微笑んでみる
 愛する人が治療を受けているときでも、微笑むことは構いません。笑いは本当に健康的なことです。笑うことで緊張がほぐれ、気分もよくなります。面白いコラムを読んだり、コメディー番組を観たり、陽気な友達と話すことも良いですし、前にあった面白いことを思い出してみるのもいいでしょう。つらい時にもユーモアのセンスを忘れないことが気分を明るくする技となります。

何か書いてみる
 愛する人のガンについての考えすぎと、考え不足には微妙なバランスがあります。何か書いてみることにより否定的な考えや気分を楽にするという研究があります。さらに、書くことで自分自身の健康状態を良くすることにもつながります。どんなことでも構いません。最もストレスを感じたことでも、心のそこに秘めていたことでも、ストレスのなかった日のことや親切だった介護仲間など気分が良かったことなども良いでしょう。

感謝の心
 あなたは愛する人のためにそこにいられることを感謝したり、明るく行動したり、今まで知らなかった方法で他の人の役に立つことができる機会を得たことをうれしく思うことでしょう。人間関係を築いたり、深くしたりする良い機会を与えられたと感じている人もいます。でも、これは介護はたやすいとか、ストレスがないということではなく、介護することに意味を見出すことが、介護をよりしやすくするのです。
 もしできるなら、いつもしていることを続けましょう。そうでないとストレスを増加するという調査があります。必要なら時間を変えたり、短くしたりして、うまくできるように簡潔化してみましょう。

ガンについてもっと知る
 愛する人の医学的な状況を理解することは心強く、どうすればよいかがわかります。たとえば、愛する人のガンのステージなどです。それにより治療中に何がおこり、何をしなければならないかを知ることができます。(資料の章を参照)


あなたのからだのケア
 「学校から帰ったら、お母さんと私のどちらかがお父さんのそばにいて、交代でランニングをします。ランニングは私自身のための時間ですし、それがランニングを続けるたった一つの方法なのです。」  −メレディスー

 忙しくて、また愛する人を気遣ってばかりいて、自分自身の健康管理を忘れているかもしれませんが、自分の健康管理をすることも、とても大切なことです。自分の体をいたわることで他の人を助ける強さが生まれてくるのです。
 新たなストレスや、日々の多忙な仕事は、介護する人には新たな健康の問題をもたらすことがあります。もしあなたが病気になったり怪我をしたりすると自分のケアがより重要なことになってきます。介護する人がよく経験することをあげておきます。

・ 疲労(疲れたと感じる)
・ 免疫力の低下(疾患への抵抗力の低下)
・ 睡眠障害
・ キズが直りにくい
・ 血圧の上昇
・ 食欲や体重の変化
・ 頭痛
・ 俯瞰やうつ、気分の変化





(モドル2)
ガンに向き合うことの意味を見出す

 介護者の多くはガンがきっかけとなって人生について精神性、生きる目的、一番大切に思うものなどに新しい見方をし、深く考えるようになります。ガンという経験を肯定的に考えると同時に否定的に見てしまうことは良くあることです。あなたやあなたの愛する人は、なぜガンが自分たちの人生に割り込んできたかを理解することに苦悶することでしょう。またなぜこのような試練にたえなければならないのか疑問に思うことでしょう。
 ガンが進行や宗教に及ぼす影響は人によってさまざまです。信仰に背いてしまう人もいれば、信仰を強くする人もいます。ガンと向き合うようになってから自分の信仰に疑いを持つことも良くあることです。しかし、自分の価値を見つけようと答えを探し求めることはガンに向き合うことの意味を見出すことになるでしょう。


介護者の多くは、信仰、宗教、霊感といったものが、ガンの治療に立ち向かう力の源であり、信仰によって人生の意味を知り、ガンを経験したことの意味を理解できたと言っています。信仰や宗教は、介護者やあなたの愛する人が、同じ信教の人たちと交流する場ともなります。それは、同じような経験や人生観を持っている人たちであり、手助けしてくれるでしょう。宗教が、ガンに向き合っていく人たちや、ガンから回復していく人たちのどちらにも大切なものでありうるという調査報告もあります。

信仰や宗教を通して、安らぎや意味あいを見出すための方法を述べておきます。

・ 希望を与え、より高次元の力に結びつく助けとなるような資料を読む
・ 恐れや不安を減らすために、祈りや瞑想をする。
・ あなたの信仰の指導者と、あなたの心配や怖れについて話す
・ 新しい人たちと出会うために信仰や精神的な集会に参加する。
・ あなたの礼拝所で同じような経験をした人たちと話をする
・ ガンのような慢性病に向き合っている人たちのために、礼拝所で情報源を探す



(モドル2) 抑うつや不安に関して助けが必要ですか。

 
 前にも述べたように、以下にリストしたものの多くは普通のことです。あなたが多くのストレスを抱えているときは特にあてはまるでしょう。しかし、これらの兆候のいくつかが2週間以上も続くようならば、医療提供者に話をしましょう。治療が必要なこともあります。


 感情の変化
・ 心配、不安、憂うつ、なかなか消え去らない抑うつ感
・ 気がとがめたり無力感を持つ
・ 困惑、抑え切れない感覚、不安定な感覚
・ 無力感や絶望感
・ 不機嫌になったりふさぎ込む感覚
・ たくさん泣くこと
・ 傷つけたり自殺したくなる
・ 心配事や問題ばかりが気になる
・ ある考えが頭から離れなくなる
・ 何も楽しめない(食事や、友達といることや、セックスなど)
・ ほんとうは安全だと分っている状況や物事を避ける
・ 集中力の欠如や注意散漫になる、または何かを失ってしまうという不安感


 身体の変化
・ 理由のない体重の増減
・ 睡眠障害や睡眠不足感(十分眠っても眠気と感じる)
・ 心臓がどきどきする
・ 口が渇く
・ 汗をたくさんかく
・ 胃がむかむかする
・ 下痢(ゆるい、水様便)
・ 身体の動きが緩慢になる
・ 疲労感が消えない
・ 頭痛や他のさまざまな痛み


 


(モドル2)
 自分自身のケアをする

 以下のような自分自身のケアをすることは簡単なことのようですが、ほとんどの介護者にとって、実際に行うことは容易ではありません。あなたは自分の心と身体の両方において常に健康に注意を払う必要があり、たとえ、あなたが、他の人のことを第一に考えている場合でも、これは大切なことです。

・ 自分自身の検査や、検診、その他必要な治療をきちんと続ける。

・ 処方された自分の薬の服用を忘れないでください。通院を減らせるように、余分に薬を処方し
 てもらえないか医師に頼んでみましょう。食料雑貨品や薬局が宅配してくれるか確認してみまし
 ょう。

・健康的な食事を摂りましょう。適切な食事は健康の源です。もしあなたの愛する人が入院中だっ
 たり、医師の診察に時間がかかるようならば、家から軽食を持っていきましょう。たとえば、サン
 ドイッチ、サラダ、調理済み食品、缶詰の肉などは弁当箱に簡単に入れることができます。

・十分に休息をとりましょう。静かな音楽や、深呼吸などは睡眠を誘います。十分な睡眠をとって
 いないときは、短い仮眠をとれば回復するでしょう。睡眠不足が続くようならば医師の診察をう
 けましょう。

・運動、ウオーキング、水泳、ランニング、自転車などは数少ない身体を動かす方法です。庭仕
 事や、掃除、草刈り、階段を上がることといった運動でもあなたの身体の健康保持に役立ちま
 す。毎日少なくとも15〜30分は身体を動かようにすれば、気分もよくなり、ストレスの解消のもな
 ります。

・リラックスできる時間を作りましょう。ストレッチや、読書、テレビを見る、電話をかけるなどが良
 いかもしれません。あなたがくつろげるものが何であれ、きちんとそのための時間をとりましょう
 。自分の欲求にこたえて、自分自身のストレスを減らすことが大切です。


(もどる)  医療ケアチームと話す

 あなたの愛する人が治療を受けている間に、してあげなければならないことがたくさんあります。あなたの大きな役割のひとつは、医療ケアチームとあなたの愛する人がうまくやっていけるように手助けをすることです。とりわけ、診察時に一緒に行ってほしいと言われるかもしれません。そのときのヒントを以下にあげます。


 診察に行く準備を手伝う

・処置や検査を受けた日時などを含めて患者の医療情報をファイルしたり、ノートにとっておき、
 診察の際にそのファイルを持ってゆきましょう。
・ 服用した薬剤の名前や量、服用回数などのリストをつくっておきましょう。このリストも診察時に
 は持ってゆきましょう。
・ 愛する人のために情報を集めるときは、政府や国家機関などの信頼性の高い情報源だけを調
 べましょう。
・ 疑問点や心配ごとなどをまとめたリストを作りましょう。リストは、いちばん聞きたいことからリス
 トしましょう。
・ 事前に以下のことを電話で確認しておきましょう。
  担当医が必要なすべての検査結果、診療記録、その他の書類のコピーを持っているかどうか
  あなたは道筋や交通手段がわかっているか、また必要に応じてホテルの情報なども。
・ もし、あなたが主治医と話したいことがたくさんあるならば、次のことが大丈夫かどうか確認して
 ください。

   *診察時間が延長できるかどうか(時間延長にともなう料金も確認のこと)。
   *その場でできなかった質問は医師と電話で話ができるかどうか確認しておきましょう。
   できなかったとしても、他のスタッフが相談にのってくれるでしょう。たとえば、看護師は
   あなたのほとんどの質問に答えてくれるでしょう。
・あなたがたの予想とは違った説明がされるかもしれませんから、診察前にあなたの愛する人と
 話し合って心の準備をしておきましょう。


 医師と相談する
 診察のときにあなたが同行するのであれば、担当医とあなたの愛する人が話をする際のヒントをあげます。

・ 医師の答えがよくわからなかったら、医師にもっとわかりやすく説明して欲しいと伝えましょう。
・医療に関して得たどんな助言であっても医師に相談しましょう。誤った情報や、誤解をまねくよう
 な情報もありますし、医師の説明と矛盾したりすることもあります。
・ 懸念事項についてきちんとした話がないならば、質問のしかたを変えてみましょう。そうすること
 で、担当医はあなたの懸念事項が良くわかります。
・ 診察時にメモをとりましょう。もしくは、テープで録音してもよいかたずねてみましょう。
・愛する人が自分の希望を聞いてもらえていないと感じるようなら、担当医を変えてもらうことは
 患者の権利です。


 治療に関して聞いておくべきこと
・ どんな診療記録やコピーを持参したらよいか。
・ 治療にあたって何を前もって準備すればよいか。
・ 治療期間はどれくらいか。
・ 患者本人だけで治療を受けられるか。誰か一緒に行ったほうが良いか。
・ 私や家族のものが治療に立ち会ってもよいか。
・ 治療中に患者を少しでも楽に過ごさせるために何をしたらよいか。
・ 治療の副作用にはどんなものがあるか。
・ 治療後、何に注意していればよいか。どういうときに先生に連絡したらよいか。
・ 保険請求ができるか。分らないことや、問題が起こった場合、誰に相談すればよいか。


 痛みに関しての質問

 ガンではさまざまな副作用が起こり得ますが、患者家族が質問をためらうことが多いもののひとつが、痛みに関するものです。しかし、痛みをうまく管理できれば治癒に集中でき、楽しく過ごすことができます。痛みに気をとられている場合は、ぼんやりとしていたり、眠れなかったり、毎日の行動に集中できないといったように、人が変わってしまったように思えるでしょう。
 医療チームは定期的に痛みの程度をたずねるべきですが、どんな痛みについても隠さずにいるかどうかは、あなたと患者である本人次第です。痛みや不快感は我慢する必要はありません。ガンの治療にはひどい痛みがつきものと思い込んでいる人もいますが、そんなことはありません。痛みへの対処は治療の間ずっと行われれますので、痛みやその他の症状について医療ケアチームと定期的に相談することが大切です。
 文句を言っているように思われたり、痛みを訴えたらガンが進行していると思われたりするのではないかと心配して、痛みのことを医療ケアチームに伝えたがらない人たちも中にはいますし、痛みは我慢するしかないものと思っている人たちもいます。痛みがあることに慣れてしまい、痛みなしで生活できるということを忘れてしまうこともあります。
 こういう時こそ、愛する人にはっきりと口に出して言うように促すことが大切ですし、また、あなたがかわって伝えるべきでしょう。痛みのことや、それが日常生活をどれだけ妨げているかを医師に正直に伝えましょう。処方された鎮痛剤がどの程度効果があるかについて、服用後さまざまな時間に話し合ってみましょう。鎮痛剤が効かなかったり、不快な副作用があれば処方を調整したり、種類を変えたりできます。
 もし、愛する人が必要とするならば、より強い鎮痛剤や用量を増やしたりすることを怖れないでください。ガン患者では依存症の問題はほとんどありません。むしろ鎮痛剤は快適に過ごすことに役立ちます。


 セカンドオピニオンを得るべきか

 医師はセカンドオピニオンを求めると気を悪くするのではないかと心配する人もいますが、ほとんどの医師はセカンドオピニオンを歓迎しますし、多くの医療保険会社はセカンドオピニオンに関して診療費を支払います。
 セカンドオピニオンを得る場合、医師は初めの医師の治療法に同意するかもしれませんし、あるいは別の治療法を提案することもあります。いずれも場合も、あなたはより多くの情報が得られ、おそらく自分が主体であることを感じ、自分の選択肢に納得し、自分の決断に確信が持てるでしょう。





(もどる)
家族や友人と話し合う

子供たちおよび10代の子供たちの心を支える
子供たちの生活に関わり続けてゆく方法
子供たちの反応と、その対応のしかた
いろいろな年齢の子供たちと話し合うヒント
ガン患者であるあなたの配偶者(パートナー)とのコミュニケーション
親族や友人とのコミュニケーション





(モドル3)
子供たちおよび10代の子供たちの心を支える

 “子供の時期は一度しかありません。そうして、それは子供の発達にいちばん大切な時期です。あなたの病気を障壁と思わず、むしろ、あなたの力強いメッセージや愛情を伝えるための踏み台とし、あなたが子供たちをもっと理解し、また、子供たちもあなたを信じ、さらに強くあなたを愛してくれるようになる格好の機会にしましょう。事実を愛と希望に満ちて伝えることができれば、子供たちに現実を勇気を持って受け入れられるように導くことができます。“ - ウェンディー・ハーファム医師*

 18ヶ月くらいになると、子供たちは自分のまわりの世界を理解しはじめます。子供たちに正直に、あなたの愛する人がガンであることを説明することが大切です。子供たちが最悪のことを想像するままにしておくよりも、ガンについてきちんと真実を伝えるほうがずっとよいと専門家は述べています。
 あなたの日々のストレスや怖れは子供たちにどのように接するかに影響を与えます。あなたは、子供たちのために時間をとりたいという気持ちと、ガンになったあなたの愛する人の世話にも時間が必要であるという気持ちの板ばさみになることでしょう。だからこそ、子供たちの気持ちをわかろうとするのと同じく、あなたがどういう気持ちでいるのかを子供たちに知ってもらうことはいいことです。しかし、あなたは子供たちが考えていることを理解しているつもりになってはいけませんし、同様にそういう話に子供達がどう反応するかも、予想することはできません。
 *ハーファム医師(1997年著書:When A Parent Has Cancer: A Guide to Caring For Your Children. New York, NY; HarperCollins Publishers Inc., pp. 3, 8. Harpham, W. 1997. より許諾を得て引用


この章は子供たちがこのようなことに向き合うためのヒントが書かれています。


 話を切り出す

 深刻な問題を話し合うことが苦手な家族もあります。しかし、話しにくい問題であるほど、話し合わなければもっと深刻なことになってしまうでしょう。以下に、愛する人のガンについてどんな年齢の子供たちにも話しておいたほうがいいと思われることをいくつかあげます。

 ガンについて

・”あなたがしたこと、考えたこと、言ったことのせいでガンになったわけではありません。”
・“あなたに、お母さんを治す責任はありません。でも、お医者さんがお母さんを治している間、お母さんが快適に過ごせるように、あなたにもできることがあります。”
・“他の人からガンがうつることはありません。”
・“家族の誰かがガンになったからといって、今後、他の誰かがガンになるということではありません。もちろん、あなたも。”


 ガンへの対処方法

・”ガンに向き合っていく上で、動揺したり、怒ったり、怖がったり、悲しんだりすることはいけない
 ことではありません。あなたはあらゆる感情を経験するでしょうし、時には幸せも感じるでしょう。
 こういった気持ちはすべて普通の感情です。“
・“どんなことが起ころうと、あなたをいつも大切にします。”
・“あなたや私たちみんなのことを心配して、まわりの人たちが、いつもと違った振る舞いをするか
 もしれません。”


いつもオープンなコミュニケーションを心がけましょう

 ごく幼い子供たちにガンの影響について話をすることは容易ではないかもしれません。子供たちに、ガンになった人の絵を描いてもらったり、人形を患者にみたてて人形遊びをさせたりしてもよいでしょう。年齢が上の子供たちは、もっと別の方法で自分たちの気持ちを表現させることができるでしょう。

 小さな子供は同じ質問をなんどもなんども繰り返すものです。それは自然なことであり、あなたは、その都度穏やかに答えてあげる必要があります。10代の子供の場合は、難しい質問や、あなたが答えられないような質問をしてくるかもしれませんが、誠実に対応しましょう。こういった問題を考えてゆくことが、子供たちの成長のプロセスでもあることを忘れないでください。


死について話す

 子供たちから、死についての質問や、心配を受けることを予期しておきましょう。子供たちは、たとえあなたの愛する人の予後が良いものであったとしても心配するものです。

・ ガンはひとつの病気にすぎないことを子供たちに教えましょう。
 もし、あなたの愛する人の予後が良好な場合、子供たちに、医師は治療ができると思っている
 ということを伝えてあげましょう。

・ 子供たちが、愛する人のガンをどう思っているか、そして、心配していることは何なのかをじっく
 り聞いてあげましょう。そして、思い間違いをしているようなら、正しいことを教えましょう。

・ 愛と希望をもって、真実を子供たちに伝えましょう。
 自分でも確信が持てないようないい話で子供たちをだまさずに、愛する人が、今、よい治療を
 受けていて、あなたも家族がよくなることを望んでいると、そして先のことはわからないけれど、
 精一杯生きられることを話して安心させてあげましょう。

・ ガンやその他のことで予想しないことが起きたとしても、子供たちの生活については心配は要
 らないとしっかり伝えましょう。愛する人がいなくなったとき、しばらく子供たちは悲しむかもしれ
 ませんが、永遠の愛も感じることができるでしょう。また、どうやったら再び幸せが訪れるかを
 子供たちは学んでゆくでしょう。

・ 愛する人がもうすぐ死んでしまうのではないことを子供たちにわかってもらいましょう。
 もし何か状況が変わったり、死というものがあり得る状況になったら、子供たちにきちんと伝え
 ると言って安心させてあげましょう。そして、あなたの愛する人がよくなるとあなたは考えており 、またそう望んでいると話を締めくくりましょう。そして子供たちが今日という日を精一杯生きる
 ように励ましましょう。


 関わっている活動を続けること

 あなたの愛する人の治療期間中は、子供たちの日常生活に関わる活動を続けることが困難になってくる場合があります。しかし、そういった活動は今までよりむしろずっと大切といっていいかもしれません。以下に、他のガン患者の家族が自分の子供たちとふれあいを持ち続けるために心がけたいくつかの方法をあげます。




(モドル3)
 あなたの子供たちの生活に関わり続けてゆく方法

・一番重要な活動を選びましょう
 もし、あなたがそれぞれの子供たちに、たったひとつずつしかできないとしたら、何がいちばん
 重要ですか。すべての事柄をリストアップしてみましょう。もしできるなら、子供たちにもリスト作
 りに加わってもらいましょう。あなたは、子供たちが選ぶものに驚かされるかもしれません。

・誰か他の人に代わりに行ってもらいましょう
 あなたが子供たちの行事に参加できないとき、代わりに行けそうな、子供たちのよく知っている
 大人はいませんか。もしいれば、行事のビデオや写真を撮ってもらえるかもしれません。

・相乗りをしましょう
 他の子供たちの両親と交代で送り迎えできないか考えてみましょう。

・子供たちの外出前後でそばにいるようにしましょう
 あなたの子供が活動のための準備をするのを手伝いましょう。そして、帰ってきたら迎えてあげ
 ましょう。

・子供たちに再現してもらいましょう
 もし、あなたが行けないなら、どんなことがあったか子供たちに話をしてもらいましょう。または
、出来事のいくつかを子供たちに再現してもらってもいいでしょう。

・子供たちと新たなつながりをつくりましょう
 子供たちと新たなつながりをもつ方法を考えてください。子供たちを寝かしつける、一緒に食事
 をする、電話やメールで会話するといったことを忘れずに続けましょう。子供たちが宿題をする
 ときに、時間を決めて同じ部屋であなたも何かするようにしてみましょう。一緒に散歩するのも
 良いでしょう。たった5分でも、それぞれの子供たち一人一人のために、邪魔の入らない時間が
 と れればすばらしいことです。

・あなた自身の活動に子供たちを参加させてみましょう
  あなたの活動に子供たちが加わることはできませんか。食品雑貨店に行くことでも、一緒に過 ごす時間をつくれます。大人の活動に、あなたと一緒に参加できるなら子供たちは自分たちが
 特別だとさえ感じるかもしれません。

・子供たちの学校と常に連絡をとりあいましょう。
 先生にあなたの子供たちが学校でどうしているか確認するか、生活指導員や、コーチから情報
 を得ましょう。


 あなたの子供の行動と感情を理解しましょう

 愛する人がガンになったとき、子供たちはさまざまな反応をします。次のようなものがあるかもしれません。

・混乱したり、怖がったり、怒ったり、孤独になったり、押しつぶされそうになったりするかもしれま
 せん。
・ 治療による結果を見て、おびえたり、どうふるまえばいいかわからなくなったりします。
・今までと違って、親と離れなくなったり、注意散漫になったりします。
・責任を感じたり、罪悪感を持ったりします。
・いままでより多くの家の手伝いを頼むと怒り出したりします。
・学校で問題を起こしたり、宿題をしなくなったりします。
・摂食障害や睡眠障害、勉強が遅れたり、友人関係での問題をおこしたりします。
・今自分の世話をしてくれているのが親でないことに怒り出したりします。

 こういった行動は普通にみられるものですが、あなたの子供の問題に関する別のサポートが必要になるかもしれません。(次ページのヒントを参照してください)


 10代の子供たちの気持ちを理解しましょう

 幼い子供と違い、10代の子供たちの場合、問題はよりわかりにくく、複雑となります。以下に、心にとめておくべきことをいくつかあげます。

・10代の子供たちは自分の家族から独立しつつある時期で、それは自然なことです。ガンによっ
 て、こういったことが妨げられて、中には感情を行動に表したり、反対に引きこもったりする子供
 もいます。

・ 「私を放っておいて」というメッセージを発する10代の子供もいます。しかし、それでもあなたの
 心遣いや手助けを必要とし続けるものです。

・ 10代の思春期であること自体が常にストレスに満ちたものです。あなたが感じる彼らの気分の
 変化は、愛する人の病気とは関係ない場合もあります。

・ 10代の子供たちは普段どおりでいたいと望みます。子供たちが通常の活動に参加できる時間
 を必ずとってあげてください。

・ いつでもコミュニケーションがとれるようにしておいてください。何かを決める際には、10代の
 子供たちも出来るだけ参加させてください。子供の生活に今起こっていることについて話せる
 相手がいることを確認しておきましょう。あなたにとっては、今、10代の子供たちの行動や感情
 を完璧に把握しておくことは難しいでしょう。そのときには、10代のあなたの子供と心を通わす
 ことができる信頼できる大人の人に頼んでみましょう。



 子供たちの反応と、その対応のしかた

(モドル3)  もし子供たちが混乱していたり、怯えていたりしていたら:

・ あなたが子供たちを愛していることを思い出させましょう。
・ あなたやあなたの愛する人と一緒に過ごせるすてきな時間をとってあげましょう。
・ 枕元で本を読んであげたり、帰宅時に家で出迎えたりといった毎日の日課を続け、安心させて
 あげましょう。
・ 同じ部屋で、それぞれ別のことをしていたとしても、一緒に過ごしましょう。
・ 子供たちが驚かないように、治療の副作用(脱毛や、嘔吐、倦怠感など)による変化を前もって
 子供たちに教えておきましょう。
・ 愛する家族の病状がよくなる前に、しばらくの間、体調が悪くなるかもしれないことを子供たち
 にわかってもらいましょう。この時期を乗り越えれば、その後は治療によってもっと元気になると
 説明しましょう。


 もし、あなたの子供たちが以前に比べて、寂しそうにみえたり、注意力散漫になっているようにみえたら以下のことをしてみましょう。

・子供たちが自分の気持ちを話したり、あなたに質問しやすくしてあげましょう。あなたが子供た
 ちの話に耳を傾け、子供たちの気持ちを理解していることを知らせましょう。
・ 子供たちに注意を払うための新しい方法をさがしてみましょう。もし、あなたが病院にいたり、
 家から離れている時間が長いなら、子供たちがわかるような場所にメモを書いておいたり、電
 話で話す特別な時間をつくってみるのも良いでしょう。
・あなたの子供たちが楽しめる特別なことを考えてみましょう。
・ 子供たちの寂しさが和らぐように他の子供たちや大人たちと話しあうようにすすめてみましょう。

 もし、あなたの子供たちが行っていた日常の活動をやめてしまったときは、以下のことをしてみましょう。

・家での変化によって、普段の活動をやめてしまったり、成績や友情に悪影響を及ぼすことは、
 子供たちにとってはよくありません。子供たちがなぜ普段の活動をやめてしまったかを確かめ
 ましょう。その理由は以下のようなものが考えられます。

   ・疲労感
   ・不幸感
   ・友人とうまくやってゆけない
   ・集中できないか、うまくいかない。

・家でそのような変化にうまく適応することが大切だということを話しておきましょう。どうやったら、日常の行動に戻れる手助けができるか子供たちにたずねてみましょう。

 子供たちが罪悪感を持ったり、自分のせいでガンになったと考えているようなとき:

・「あなたのせいでガンになったわけではなく、あなたがしたこととか、考えたこと、言ったことで
 ガンにはなりません」と、子供たちにきちんと話し理解させましょう。
・ どのようにしてガンになるのか、簡単に説明しましょう。
・ 愛する人がガンになってしまった子供たちのために書かれた本を、一緒に読みましょう。
・ 医師や看護師に事実を説明してくれるように頼んでみましょう。



 もし、子供たちが、自分の生活が影響を受けていることに憤りや腹立ちを感じているとき
(たとえば、静かにしてなければいけないとか、家の手伝いをたくさんしなければいけないとか、友達とあそべなかったりなど)

・子供たちの感情を確かめておきましょう。何が原因で怒っているのか話し合ってみましょう。
 子供たちが、怖れや疲れのせいで怒っているということをあなたが知っているとしても、子供
 たちの話すことに耳を傾け、子供たちの感情を聞いてあげることが大切です。

・自分の怒りが、何かほかのことに対する八つ当たりかもしれないと子供たちが納得するように
 してあげましょう。おそらくは、ガンや家庭に怒りを感じているのかもしれないし、怯えや心配か
 らきているのかもしれません。ただ悲しいだけなのかもしれません。

・くれぐれも子供たちに自分の怒りをぶつけるようなことがないようにしてください。くりかえします
 が、何か他に怒りの原因があるかもしれません。


 子供たちが反抗し始めたり、問題を起こし始めたとき

・子供たちがどう思っているかあなたが知っていること、そして、大変な状況だと分っていることを子供たちに伝えましょう。
・ 怖れや怒り、孤独、退屈といったことに対する反発的行動であるかどうか見極めましょう。どんな感情を持っても悪いことではないけれど、そういう行動であらわすことはよくないことだと理解させましょう。必要なら学校の先生や、小児科医、カウンセラーなどにアドバイスやサポートを頼みましょう。


(モドル3) いろいろな年齢の子供たちと話し合うためのヒント

幼児(2〜5才)

・できるだけ短い時間で話すようにしましょう。この年齢の子供たちは、ほんの短い間しか集中
 できません。
・ 単純明快に話しましょう。何が起こっているかを絵に描くのもいいかもしれません。
・ 現在や、将来の、毎日の子供たちの日課についてのどのような変化に伝でも話しておきましょ
 う。
・ どんな質問にも答えること、そしていつでも話をすることを伝えましょう。


未就学期(6〜9才)

・短い時間で話すようにしましょう。この年齢の子供たちは、ほんの短い間しか集中できません。
 あなたが伝える必要があることをすべて伝えるには、何度かに分けて話すようにしましょう。
・ この子供達は感情が高まることがあります。あなたの話している間、別なことに気をとられてそ
 ういった感情を表すことがありますが、それでも問題はありません。そうすることで、彼らは自分
 たちのペースで、話と、自分の感情とに向き合っているのです。
・ 例え話を使いましょう。子供たちが病気になったとき、お医者さんのところへ行ってよくなったこ
 とを思い出させましょう。
・ 間近に起きるようなことを伝えましょう。この年齢の子供は何週間、何ヶ月も先といった将来のことは考えられません。
・ 子供たちの世話を誰がしてくれるかを伝えておきましょう。
・ 子供たちの質問には全部答えましょう。そして、この次はもっと話そうと言ってあげましょう。


小学校低学年(10〜12才)

・ 少しは長く話してみましょう。
子供たちのペースで話をしましょう。
・ ガンという病気を子供たちがすでにしっているかたずねたうえで、子供たちが聞いていることが
 家族の状況にあっているかどうか確かめましょう。もし間違ったことを聞いているようなら、正し
 いことを伝えましょう。
・ 子供たちは、嫌な話は聞かなかったり避けたりするものです。
・ 単純に、具体的に話しましょう。
 たとえば、あなたの愛する人の身体にしこりがあって、それを取らなければいけないというよう
 に話すのもいいでしょう。
・ 現在のことだけではなく、これからのことについても話しましょう。
たとえば、休日や、予定されている行事などがどうなるかを子供たちに伝えましょう。
・ あなたが子供たちの質問には誠心誠意答えるつもりだということを子供たちに伝えましょう。
 そして、いつでも話したいときに話していいのだということを教えておきましょう。


10代の青少年(13〜18才)

・あなたとさらに長い間話すことができるでしょう。あなたの子供に話のリードをさせましょう。

・ 子供達が話題を無視しようとしたり、避けようとするかもしれないことも心得ておきましょう。
 10代の青少年の場合は、怖れていたり、恥ずかしいときにこのように振舞うことがあります。
 あなたの愛する家族の身体のことを話したがらないかもしれません。特に、乳ガンや、性器の
 ガンの場合は特にその傾向があるかもしれません。

・子供たちには自分たちの感情に対処するために自分の時間が必要です。ひとりでいたいと思う
 かもしれませんし、友達といたいと思うかもしれません。そういった時間を子供たちに与えましょ
 う。

・10代の子供たちの場合、ガンについての事実を話すべきです。あなたが事実を話すことで、子
 供たちの間違った情報を修正することができます。本などを与えて、あとで読んでもらいましょう
 。自分自身でいろいろ調べてみたいと思う子供たちもいますから、そういう場合は、子供たちが
 信頼できる情報源から学んでいるかどうかと、あなたの愛する人の場合にあてはまる情報であ
 るかどうかを確認しましょう。

・10代の子供たちの場合は、よく「もしも〜だったら」という質問のしかたをします。彼らは将来の
 ことをできるだけ多く知りたいのです。再度強調しますが、子供たちの質問には、あなたが出来
 る限り精一杯の答えをしてあげてください。そして、またいつでも喜んで話をするということを子
 供たちに伝えましょう。

・子供たちはガンによって彼らの生活にどんな影響が出てくるかを知りたがります。社会生活に
 支障をきたしたり、家での自分の仕事が増えるかどうか気にしたりするかもしれませんが、それ
 は自然なことです。彼らに正直に対応してください。


(モドル3)  ガン患者であるあなたの配偶者(パートナー)とのコミュニケーション

“夫には、じっくり考え事をする時間をとってもらうように心がけています。なんでも性急にやろうとしたり、解決しようとすべきものではありませんから。”             -ポーリーン

パートナーとの関係が、ガンの治療を通じてさらに強まる人たちもいますし、弱まってしまう人たちもいます。ほとんどのガン患者とそのパートナーは、夫婦としていつも感じているよりもずっと強いストレスにさらされるのが通常です。そのようなストレスには次のようなものがあります

・互いを支えあうにはどうやったらいちばんいいかを知りたい
・ 新たにわきあがってくる感情への対応
・ コミュニケーションのとりかたの理解
・ 意思決定
・ 役割の変化
・ たくさんの役割のやりくり(子供の世話、家事、仕事、介護など)
・ 社会生活の変化
・ 日常生活の変化
・ 性的に疎遠になる

人によって感情の表し方は違います。ものごとを率直に話し合う人もいますし、他のことに気持ちを集中するような人もいます。食器を洗ったり、家のまわりを修理したりすることで感情を表す人たちもいます。内面にこもってしまう人もいます。それぞれがみな自分の対処のしかたを相手にわかってもらいたいために、そういった感情表現の違いがストレスを引き起こす場合があります。みんなそれぞれ違った反応のしかたをするものだということを思い起こせば、あなたのストレスも減るかもしれません。


あなたの愛する人につらい話をしなければならないとき

 つらい話題を持ち出すことは精神的にも疲れてしまいます。たとえば、闘病中の家族に別の治療や別の医師のほうがよいのではないかと考えたり、あなたの愛する人が衰弱して見え、自立心が無くなったとか、あなたの重荷になっていることを気にしながら、それに関しては話したくないといったような場合もあるかもしれません。ここに、つらい話をしなければならない際のヒントをいくつかあげましょう。

・前もって言うことを練習してみましょう
・ あなたが言わなければならないことを、パートナーは聞きたがらないかもしれないということを
 心に留めておきましょう。
・ 静かな時間を選び、話していいかどうかたずねましょう。
・ 話の目的をはっきりさせておきましょう。(パートナーに、なぜあなたがこの話をしたいのか、
 そして、話すことで何をあなたは望んでいるのか)
・ 心を込めて話しましょう
・ あなたのパートナーにも話す時間を与えましょう。よく聴き、途中でさえぎらないようにしましょう。
・ 一度の話だけでものごとが解決すると思わないで下さい。
・ 『それは大丈夫』といつも言うことはありません。

 話し上手になることは、聴くことを心がけることが最良の場合もあります。じっと話を聴くことが、あなたがその人たちのためにそこにいることを示すひとつの手段である場合もあります。また、そうすることが、あなたにできる一番有益なことかもしれません。そして、あなたの愛する人が言いたいことがなんであれ、愛する家族の人生や、愛する家族自身のガンに親身になってあげることが大切です。人は自らの考えと怖れを、それぞれのやり方で、対処せねばなりません。あなたは、愛する人が、その話について考える気持ちがあるかどうか、そして別の機会に話す気持ちがあるかどうかをたずねてもいいでしょう。あなたの愛する人は、その話題を他の誰かと相談したいと思うこともあるかもしれませんから。

 自分から話を切り出さない人もいますが、あなたが話を始めたら答えてくれるかもしれません。介護する人が話かけるためのヒントをあげてみます

・『話しにくいことだけれど、私はいつでもあなたの話をちゃんと聞き、答えるつもりです』

・ 『私は、今の治療がどうなっていて、これからどうしたらいいかを話し合ったほうがいいと思うけ
 ど、今週でも、いつかその話をしませんか?』

 身近な人たちとどのように話すかを他の介護者に教えてもらうことも役立つ場合があります。たとえば、こんなことをたずねてみましょう。

・『あなた自身がさまざまな感情をもてあましているときに、どのようにして他の人の感情を心にと
 めていますか。』

・『いやな話題を持ち出した後でも、どうやったら前と同じようにしていられますか。』

 もしあなたが、ガンやつらい問題を話しづらいままであるなら、精神医療の専門家に相談しましょう。自分ではわからない問題点を見つけ出してくれるかもしれません。しかし、もし愛する人があなたと一緒に行きたがらないときは、自分ひとりで予約をとりましょう。精神医療の専門家と話をすることで、そういった話題の切り出し方についてのアイディアを得たり、今、感じているざまざまな感情についても相談できるでしょう。


(モドル3)  コミュニケーションを改善する方法

 “夫は、すべての人たちに対して、たとえ両親にでも、いつも元気でいようとするのです。夫は、「とっても元気ですよ」と言うのです。でも、そういう夫に私はイライラさせられます。だって、家では全然元気ではないのですから。”                 -ベティ


 深刻な問題を他の夫婦よりも、もっと簡単に話し合える人たちもいます。深刻な問題を話し合うときどう感じるかは、あなたとパートナーにしかわかりません。以下の章は、あなたがた二人のコミュニケーションの方法について、考えてみる際の参考になるかもしれません。


 ストレスがあることを隠さない

 あなたやあなたのパートナーにとってのストレスの原因となることのなかには、今すぐには解決できないものもあります。そんなストレスの原因になるようなことについて、二人で話し合ってみることはよいことです。話し合うときは、このように言ってみたらどうでしょう。“今日、これを解決できるわけじゃないけど、それがどうなっているか、そして私たちがどう感じているかを、ただ話しあいたいだけなのです。”


 話し合うべき話題には、次のようなものも含まれるでしょう。

あなたがたそれぞれが
 ・ 変化や未知のことにどのように対処するか
 ・ 介護する側、される側としてどのように感じているか
 ・ 人間関係や、家での役割の変化にどのように対処するか
 ・ どのようにお互いのつながりを求めたいのか
 ・ どんな問題が夫婦関係のあつれきとなっているのか
 ・ 大切にされること、感謝されることをどのように感じるか、または感じたいか
 ・ どのように相手に感謝しているか


 ひとつのチームになる

 “私が夫のことをどれだけ愛しているかを、言葉を超えて夫に示すことができること、そして、夫が私や私たちの子供たちへの思いのためにガンに立ち向かっている姿をみることは、私にとって神の恵みであると感じます。そんな大切で重要な毎日を身近に感じられることは私の特権です。”                                               -ローズマリー

 あなたとパートナーは今まで以上に、ひとつである必要があります。ふたりで考えてゆくためのヒントを以下にあげます。

・なにを二人で決断すべきでしょうか。
・ 何を一人だけで決断すべきでしょうか。
・ ふたりで乗り越えた困難なことは他にもありましたか。今回の状況と似てますか?違いますか
・ 分担できそうな家の仕事はなんですか?
・ どんな役割分担ならやりやすいですか?どんなものが苦手ですか。
・ あなたがたはそれぞれ何を必要としていますか。
・ どうしたら、他の人が手助けできますか。


 ありがとうと言う方法をみつける

 あなたのパートナーは、あなたの家庭がうまくいくように、たくさんのことをしてくれていたことでしょう。しかし、今、あなたはその手助けがなくてもやっていかなければなりません。この困難な時期には、することがたくさんあるので、あなたのパートナーがしてくれている、ほんの些細なことに気がつくことは難しいかもしれません。でも、出来るだけそういったことを見つけて、パートナーに感謝の気持ちを伝えましょう。ほんの少しの感謝の気持ちを見せるだけでも、あなたがたふたりとも心が豊かになるでしょう。

 スケジュールを立てる

 多くの夫婦は、特別な予定を立てることが役に立つといいます。あなたのパートナーの状態によって、何か計画するのによい日もそうでない日もあるはずです。ですから、あなたも、間際に予定が変わっても気にしないことが必要でしょう。

 気取らなくてもよいのです。ただ、一緒の時間を過ごすだけでよいでしょう。たとえば、ビデオをみたり、食事に出かけたり、昔の写真をみたりとか、一緒にしたいことであれば、どんなことでもよいでしょう。誰かを懐かしく思ったら、その人たちと一緒にできる計画をたててもよいでしょう。

 親密になる方法をさがす

 “結婚して42年。私たちは言葉など必要ではないくらいの絆で結ばれています。”  ゲイル



 あなたは、あなたのパートナーとの性生活が今までと変わってしまったと思っているかもしれません。その原因としていろいろなことがあり得ます。

・ あなたのパートナーが治療で疲れていたり、痛みがあったり、気分が悪い場合
・ あなたが疲れている場合
・ 二人の関係が疎遠であったり、ぎくしゃくしている場合
・ あなた、またはパートナーが、相手の状態を見て心地よくないと感じる場合
・ パートナーを傷つけてしまうのではないかとあなたが心配している場合
・ 治療によって、あなたのパートナーの性欲や性能力に影響がある場合

 こういった問題があったとしても、あなたがたは愛情行為を続けることができます。性的な行為は、ただ肉体的なものだけのものではありません。心での深い交わりもあります。ここに、あなたがたの性生活を改善する方法をいくつかあげます。

・ 性生活について話し合ってみましょう。
 あなたがた二人で話せる時間を選びましょう。ただ、話すことだけに集中して、ふたりがどうやっ
 たら新たな関係を築けるか話し合ってみましょう。

・ 判断を下さないようにしましょう。
 あなたのパートナーが行為を行えないとき、その訳を探ろうとしないでください。何を望んでいる
 かを言う言わないは、パートナーの思うとおりにさせてあげてください。

・ 時間を作る。
 二人の時間を必ず取りましょう。電話やテレビのスイッチを切り、もし必要なら子供たちを何時間
 か、誰かにあずかってもらいましょう。

・ のんびりしましょう。
 絆を深め合いましょう。肉体を伴わずとも、1時間程度、いっしょにいる時間をつくりましょう。たと
 えば、音楽を聴いたり、散歩をしたり。こういった時間は、あらためて絆を深めることになります。

・ 新しい感触を確かめてみましょう。
 ガンの治療や手術で、あなたのパートナーの身体が以前と変わってしまう場合があります。以
 前なら触られて心地よく感じた部分が、今では何も感じなかったり、痛かったりするかもしれませ
 ん。消えてゆく変化もありますが、ずっと残ってしまうものもあります。とりあえずは、ふたりで、ど
 んなふうに触れあえば心地よいか確かめ合ってみましょう。たとえば、抱きしめたり、抱き合った
 り、寄り添ったりしてみましょう。

・ セラピストやカウンセラーに相談しましょう。
 ガン患者の性や性生活を扱う人たちがたくさんいます。





(モドル3)

親族や、友人とのコミュニケーション

 ガンと診断される前からあった家族の問題は、どのようなものでも、今はさらに深刻なものになっているでしょう。あなたが介護しているのが小さな子供であっても、成人した子供であっても、親であっても、そして配偶者であったとしてもあてはまります。あなたが介護をはじめることで、あなたが思いもよらない形で家族の感情や役割の変化を引き起こしてしまうことでしょう。よく知らない親戚や、遠くに住んでいる親戚がちょくちょく現れたりして、事態をさらに複雑にしてしまうこともあります。次のようなことを言う人たちもいます。

・ 成人しているあなたの子供がガンになったとき、『この子を守らなければ』という気持ちがわき
 あがるでしょう。

 “私の娘がガンだなんて、ほんとうにつらい。娘を助けてやれないなんて私には耐えられない。
 でも、あの子たち夫婦は何もさせてくれない。ぜんぶ自分たちだけでやりたがるのだから。”


・ あなたの助けを求めている親を受け入れにくい場合もあります。

 “母がガンになりました。私が幼い頃、病気のときに母がしてくれたみたいに、私は母の看病を
 してあげたい。でも、母は自分のことは自分で全部してしまうのです。「私はいまでも、あなたの
 お母さんなのよ」と言いながら”

 “私には自分の生活もあるし、小さな子供の世話もあるし、仕事もある。お父さんのお世話なん
 て、どうしたらいいかまったくわからない。”


・ 義理の親や友人の親が心配したり、手伝いを申し出てくれるとき、『もう十分』といった気分に
 なることがあります。


 “私の家庭を管理するのは私です。お母さんが手を貸したいのはわかっているけど、 今のままだと、あまりに私の生活に口を出しすぎるのです。” 


コミュニケーションのトラブル

 オープンで心のこもったコミュニケーションが最良であるという報告があります。
それでも介護する人たちは、しばしば次のようなことにぶつかります。

・ いつもと違う方法でのコミュニケーションによる緊張
・ 話し方や心を通わせる適切な方法についての心配りや無理解
・ 何を話せばよいのかわからなかったり、全くコミュニケーションをとろうとしなかったり、正直に
  言わない人たち


(モドル3  家族の話し合いの場を持つ

 “あなたはいつも明るく前向きでいたがるけど、家族には本当の気持ちを見せてほしいと思う。そうすれば、あなたをどうやって支えたらいいか、そして、状況が悪くなったときにも、どうやったらあなたがショックを受けずにいられるか家族のみんながわかるから。“
                                                      - ケン


 身近な家族や友達が、何をすべきかということで一致しないことがあります。治療の選択肢について、家族が議論することもよくあることです。また、他の人より世話をする割合が多いと言い争うこともあります。みんなが、あなたの愛する人に最善のことしようとしても、それに反対する家族もでてきます。それぞれ自分の信念や価値観を持ち込むため、決断することを難しくしてしまいます。このようなときは、医療ケアチームに家族の話し合いの場をつくってもらうように頼んでみましょう。
 あなたの愛する人に、家族会議をもちたいと思っているか、また自分も参加したいと思っているかを聞いてみましょう。そこでは、全員ができるだけ多くの情報を共有するようにしましょう。もし、必要ならソーシャルワーカーやカウンセラーにも同席してもらいましょう。また、必要ならば、話し合うべき問題のリストを用意しておくことも良いでしょう。このような場は、以下のことにも開かれます。

・医療ケアチームの治療の目的を説明するために。
・ 治療に対する家族の要望を述べる。
・ みんなが自分たちの気持ちをオープンに言える場をつくる。
・ しなければならない介護の内容をはっきりさせる。

 こういった話し合いの場では、家族はそれぞれ、どんな気持ちでいるかを話したいと思うことでしょうし、家族みんながどんな手伝いができるか決めることもできます。ひとりひとりにできる適切な役割があるものです。

 話し合いの最後には、医療ケアチームに内容をまとめてもらい、次への計画をたててもらいましょう。


 良いタイミングを選ぶ

 だれかが大切なことを話したいと思ったとしても、他の人はそう思っていないことがよくあります。話し合うときは、あなたが話したいと思っている人が、時間のあるときを選びましょう。静かな場所を選び、テレビを切って、電話が鳴っても出ないようにしましょう。


 すべての人に近況を知らせておく

 親族や友人、同僚などに、愛する人の新しい情報を伝える役目は、主にあなたである場合が多いでしょう。あなたの愛する人に、いつ、誰に、どんなことを伝えたらいいかたずねてみましょう。もし、誰か他の人にこういう役目ができるようならば、「担当者」を選びましょう。担当者は電話や電子メール、手紙などで他の人たちに新しい情報を伝えてくれます。他の人たちに、誰が介護をしているかを知っておいてらうことと、あなたの愛する人が、カードや電話をもらったり、お見舞いにきてもらうことが好きかどうかを知っておいてもらうことが大切です。


(モドル3  ありがたくないサポートを、どう断るか

 “私の義理の姉が見舞いにきて、子供たちがテレビばかり見ていると言いだしました。姉は私のストレスはわかっているとは言ってますが、私は、子供たちにどうしてあげたら良いのでしょうか。私のことをとんでもない悪い母親かなにかのように思わせたいのだとしか思えません。”
                                                  - キャリー

 もし、誰かが有難迷惑な手助けを申し出たら、まずは、心配してくれていることに感謝したうえで、必要な場合には連絡するからと伝えましょう。手紙やカードを送ってくれることや、神に祈ってくれること、お見舞いの言葉を伝えてもらうことなどはとてもうれしいと伝えましょう。
 余計な子供の世話のアドバイスをしたがる人たちもいます。何もできないけれど心配しているという気持ちを表したいだけかもしれません。そういう人たちは、病気のことでは何も言えないので、代わりに子供の世話のアドバイスでそれをしようとしているのです。好意からでたアドバイスではあるのですが、あなたにとっては批判されているように感じられるかもしれません。
 あなたの子供たちに、不必要なアドバイスがなされた場合の対応については、あなたが決めることです。もしあなたが必要としないならば、それに従う必要はありません。もし、子供たちへの心配が必要なことであれば、カウンセラーや学校の先生に、どういうことをしたら良いか相談してみましょう。そうでない場合はその人たちにお礼を述べ、さらに、あなたの子供たちが、この大変な時期を乗り越えるための必要なステップを踏んでいることを話して安心してもらいましょう



(もどる)  人生設計


不妊の問題に向き合う
金銭問題に対処する
仕事の問題に対処する
事前指示書を準備する

 愛する人がガンになったために、あなたのライフスタイルが変わってしまうことを悲しんだり、怒りをおぼえたり、心配したりすることはよくあることです。あなたは自分の仕事や家計に大きな影響を与えるような決断を迫られるかもしれません。こういった問題に対処する方法を見出すことで、多少は心が休まるかもしれません。


 不妊の問題に向き合う

 ガンの治療の影響で子供がつくれなくなるのではないかと心配する人たちもいます。もし、そうであるならば、治療を開始する前に主治医に相談しましょう。あなたの生殖機能を守るための選択肢をきけるかもしれませんし、カウンセラーや不妊治療専門医を紹介してくれるかもしれません。これらの専門家は、あなたがたが選択できる方法を検討してくれますし、あなたがたも、事前に情報にもとづいた選択ができます。詳細に関しては1-888-994-HOPE のFertile Hope へ電話するか、ウェブサイト www.fertilehope.org.を参照してください。


 金銭問題に対処する
(もどる4)
 “私は金の為に働いているのではない。自分の生きがいのために働いている。もしそうでないなら、働くことは全くの無駄だろう。” 
- デビー



 ガンになった人たちと、その家族にとって、経済的負担は切実な問題です。病気の間は、あなたは自分の選択肢を見直す時間も精力もほとんどないことでしょう。しかし、あなたの家族の財政面を健全に保つことは大変重要です。
 病院の支払いに関しては、あなたかあなたの愛する人は病院の医療費相談窓口の担当者と相談してみましょう。月賦での支払いや、医療費の減免を受けられる場合もあります。また、特定の治療費が保険でカバーできるかどうか、医療保険会社に問い合わせてみましょう。

 利用可能な資料に関しての情報は、資料の章やNCIのウエブサイトで “Financial Assistance for Cancer Care“ (ガン治療のための経済的支援)を参照してみてください。

 また1-800-4-CANCER (1-800-422-6237)へ連絡して無料版を入手してください


 仕事の問題に対処する

 "ほとんどの場合、一週間も眠らずに病院から帰ってきて、次の日には仕事に行かなければならない“                                            ローレル

 介護する人にとって、仕事と、愛する人の介護やサポートのバランスをとることが、いちばん大きな負担です。介護によってあなたの職場での環境に次のような影響がでることがあります。

・ あなたの気持ちの変化が大きいために、同僚があなたと一緒に働くことに困惑していたり、
 やる気を失っている
・ 仕事に集中できなかったり、生産性がなくなる
・ ストレスにより、遅刻したり欠勤の電話をするようになる
・ あなたの配偶者もしくはパートナーが働けない場合に、あなたが自分の家族をたったひとりで
 ささえなければいけないという重圧感
・定年がもうすぐなのに、働き続けなければならないというプレッシャーを感じる

 家族の病気に関しての、あなたが勤めている会社の規則や方針を調べてみたほうがいいでしょう。従業員への支援制度がないか確かめてみましょう。多くの会社には、あなたが相談できる労働生活カウンセラーとともに従業員への支援制度があります。従業員のために、老人介護支援制度や、あなたが支援を受けることができるような制度を持っている会社もあります。あなたの雇用者は、介護の為に有給療養休暇を取らせてくれるかもしれませんが、無給の休暇となるかもしれません。
 もし適切な制度が無いならば、何か種々の対応ができないか非公式に聞いてみましょう。たとえば、フレックスタイム、シフトの交代、自分のスケジュール調整、もし必要であれば在宅勤務などが考えられます。

 家族介護休業法(The Family and Medical Leave Act)があなたの場合に適応されるかもしれません。近親の家族が重篤な病状となった場合、雇用者は12ヵ月ごとに12週間までの無給休暇を被雇用者に与えなければならないことになっています。詳細については、U.S. Department of Labor: Compliance Assistance: Family and Medical Leave Act (FMLA) を参照してください。支援を求める先については、資料の章を参照してください。


(もどる4)  生活環境を考える

 治療によって生活環境についての疑問が持ち上がることがあります。これらに関する判断をする際には、以下のことを聞いておくべきでしょう。

・ あなたの愛する人には、どの程度の介護が、いつまで必要になるか。
・ 家を建て替えたり、もっと小さい家などへ引っ越したほうがよいか。
・ 患者本人を家に一人にしておくことは危険か。

 あなたは、あなたの愛する人がどう感じるかも考える必要があります。こういったことを怖れているかもしれません。

・ 自立心を無くす
・ あなたや他の人たちに哀れみをもたれたり、彼らの重荷になる
・ 医療介護施設や、その他の介護施設に入所することになる

 こういったことはつらい問題ですが、医療ケアの専門家からのアドバイスを受けることによって、生活環境を変えることが容易になることもあります。ソーシャルワーカー、医師、看護師、在宅医療業者、高齢者を扱う機関などが相談にのってくれるでしょう。




(もどる4)
 事前指示書を準備する

 “夫が尊厳死の指示書を書いているとき、私は夫の隣に座っていました。わたしたちはお互いにしっかりと確認しあいました。そのおかげで、私が持つことになったかもしれない罪の意識がずいぶん減りました。”                                - ローレル

 自分のガンの治療でのすべての判断を医療ケアチームに任せてしまいたいと思う人もいますし、もっとたくさんの意見を聞きたいと思う人もいます。もし、あなたの愛する人が治療に関してもっと積極的な役割を果たしたいと考えているなら、事前指示書を書いておくように勧めてください。 事前指示書は、あなたの愛する人が自分で重要な問題を決めておくための法的文書です。事前指示書には、もし患者自身が意思決定できなきなったとき、どこまでの治療をしたらいいか、そしてそれを誰が判断するかといったことも書かれます。事前指示書を作ることは、自分たちが望む治療をきちんと受けることに役立ちます。介護する人たちにとっても、事前指示書により愛する人本人の意思がわかり、医療処置の判断がはるかに容易にできるようになります。


(もどる4)  法的文書一覧表

事前指示書

・尊厳死の宣言書は患者が自身で話せない状況になった場合に、どのような医療処置を望むか をあらかじめ知らせておくものです。
・ 医療に関する永続的委任状は、患者自身で医療上の判断ができなくなったときに、その判断を する人を指名するものです。この患者により指名された人は医療代理人とよばれます。


事前指示書に含まれない、その他の法的文書

・ 遺言は患者がどのようにしてお金や財産を相続人に分配するかを示すものです。(通常は相続
 人は生存している家族ですが、家族以外の人を相続人として遺言で指名することも可能です)
・ 信任状(trust)は患者の資金の管理をする人を任命するものです。
・ 委任状(power of attorney)は、患者が自分で財産上の判断ができなくなったとき、患者の代行
 をする人を任命するものです。

 注意:これらの文書を書くときには必ずしも弁護士が必要なわけではありませんが、公証人が必要かもしれません。州ごとに事前指示書に関する法律があります。あなたの州法について弁護士やソーシャルワーカーに確認してください。(詳細は資料の章を参照のこと)


(もどる)  振り返る

 “もしだれか他の人を世話したいという心が芽生えたら、もう大丈夫です。“
                                                マヤ アンジェロ

 介護者として、あなたは毎日バランスを取ろうと努めています。家族や仕事をうまく片付けながら、愛する人の世話をしなければなりません。ともすれば、あなたは患者の要求にこたえることに目を奪われがちになりますが、自分のことを忘れないでいることもあなたしだいです。あなたには、健康な心と身体と力を維持することが必要だと言うことを忘れないでください。そして、もしできることなら毎日振り返るための静かな時間を作るようにしてください。瞑想や祈りもいいですし、ちょっと休憩するだけでも、今この時に安らぎの気持ちを保てるでしょう。
 良くも悪くも、生活の変化は、成長し、学び、そして一番大切なものに感謝する機会ともなります。癌患者を介護する人は、その経験をひとり旅をするようなものとよく言います。そして、その経験は人を永遠に変えてしまうものだと言います。これは、癌患者が自身の経験を言い表すときとほとんど同じです。自ら選んだ旅というのはあたらないかもしれませんが、歩みながら自らを見つめなおし、自分の腕で、力で、そして才能をもって愛する人を支えることができるのです。




(もどる)
 介護者の権利に関する宣言

私には自分自身を愛する権利があります”
 これは身勝手ではありません。愛する人のためのよりよいケアができるようになるためには必要なことです。

 私には、愛する人である患者自身が反対したとしても、“他の人に助けを求める権利”があります。私には持久力と強さの限界があります。

 “私には自分の生活を維持する権利があります。” 介護の必要な愛する人のためではなく、その家族が健康な頃と同じように。私は、愛する人のために私が無理なくできることはなんでもします。しかし、私は自分だけのためにわずかなことをする権利があります。

 私には、時には、怒ったり、落ち込んだり、“堪えがたい感情を表す権利があります。”
,
 私には、愛する人が、私に怒りや罪悪感を押し付けて私に何かを行わせることを“拒否する権利があります。”(患者自身が認識しているかどうかは問題ではありません)

 私には、愛する人のためにおこなったことに対しての“配慮、愛情、許し、そして容認を、見返りとして受け取る権利があります。”

 私には”自分がしていることにプライドを持つ権利があります。“そして愛する人である患者の要求にこたえるために払った勇気を賞賛する権利があります。

 私には“個人としての自分を守る権利があります。”そして、常時の介護を必要としなくなった場合には、私自身を維持するための生活をする権利もあります。

 (作者不明)


(もどる)  資料集

アメリカの社会組織なので省略




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その他の情報

この小冊子のほかに次のような小冊子があります。

Chemotherapy and You: A Guide to Self-Help During Cancer Treatments
 化学療法とあなた 化学療法の間の自助ガイド

Coping with Advanced Cancer  
 進行癌に対処すること

Eating Hints for Cancer Patients :Before, During,and After Treatment
 癌患者のための食事のヒント

If You Have Cancer: What You Should Know About Clinical Trials
 あなたがガンと診断されたとき: 臨床試験について知っておくべきこと

Pain Control: A Guide for People With Cancer and Their Families
 疼痛管理:ガン患者とその家族のためのガイド

Radiation Therapy and You: A Guide to Self-Help During Cancer Treatments
 放射線治療とあなた:がん治療の間の自助のガイド

Taking Time: Support for People With Cancer
 時間をつくって:がんになった人々のサポート

Thinking About Complementary and Alternative Medicine: A Guide for People With Cancer :
 補完および代替医療ついて考えること: 癌の人々のためのガイド

When Cancer Returns
 再発したとき


 これらの小冊子は国立ガン研究所(NCI)から入手できます。特定のガンに関する更なる情報や、これらの小冊子の入手法に関してはNCIのウエブサイト(www.cancer.gov).を開いてください。またNCIの情報サービス1-800-4-CANCER(1-800-422-6237) へ連絡して情報の専門担当者に問い合わせることもできます。





(もどる)         すばらしい介護者、医療専門家、この冊子の発行と監修に
         力添えをいただいた科学者に 心から感謝をささげます。