時間をかけて  Taking Time : Support for People with Cancer
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ガンとともに生きることは、大変なことです。今あなたはどのような場面にいるのでしょうか。ガンにかかっていることを宣告されたところでしょうか。それとも治療中でしょうか。どのような場面にても、さまざまな思いを持つことでしょう。そのような思いを受け入れて、それにどのように対処していくかということは、大切なことです。ガンに対するそのような思いは長い間にわたって持つことになるでしょう。

この本は、ガンにかかっている--あなたのために書かれました。でも、この本はあなただけではなく、あなたのそばにいる人たちにも役に立つと思います。この本は、それらの人々があなたの今後の生活に関して理解する助けになることでしょう。たとえあなたに近い親族がいなくても、また家族から遠く離れて暮らしていても、「家族」と呼べる友達がいるでしょう。あなたにとって、「家族」が何を意味しても、あなたの愛する人やあなたの手助けをしてくれる人たちと、この本を読んでください。

              目次

はじめに ・・・・・・iv
この本の使い方 ・・・・・・v
1.あなたの思い:ガンにかかっているということを知る ・・・・・・1
  否認 ・・・・・・2
  憤り ・・・・・・3
  恐れと心配  ・・・・・・3
  ストレス ・・・・・・4
  疼痛 ・・・・・・5
  自制心と自尊心 ・・・・・・7
  悲しみと抑うつ ・・・・・・8
  罪の意識 ・・・・・・9
  孤独感 ・・・・・・9
  希望 ・・・・・10
要約:ガンにかかっていることを知る ・・・・・11
2.家族に関すること  ・・・・・13
  家族の中での役割の変化 ・・・・・14
  配偶者とパートナー ・・・・・16
  子供たち ・・・・・17
  成人した子供たち ・・・・・20
  両親 ・・・・・22
  親友 ・・・・・22
  要約:ガンと家族 ・・・・・23
3.ガンについての思いを共有すること ・・・・・25
  友人や家族のあなたのガンについての思い ・・・・・25
  聞き上手を探す ・・・・・26
  話をする良いタイミングを選ぶ ・・・・・26
  憤りを表す ・・・・・27
  楽しそうに振舞うこと ・・・・・28
  言葉なしで気持ちを分かち合うこと ・・・・・28
  要約:ガンについてのあなたの考えと気持ちを分かち合うこと ・・・・・29
4.ガンやその対処法をさらに良く知る ・・・・・31
  介護士たちから学ぶ ・・・・・32
  治療の選択肢を知る ・・・・・33
  あなたのガンについてもっとよく知る ・・・・・34
  要約:ガンについて知り、自分自身を取り戻す ・・・・・35
5.人々を援助する人たち ・・・・・37
  家族と友人 ・・・・・38
  ほかのガン患者 ・・・・・38
  支援グループ ・・・・・39
  精神的なささえ ・・・・・41
  医療介護の人たち ・・・・・42
  病院の人たち ・・・・・45
  介護者 ・・・・・46
  要約:援助する人たち ・・・・・49
6.新しい自分像への対処 ・・・・・51
  疲労 ・・・・・52
  あなたの自分像 ・・・・・52
  活動的であること ・・・・・53
  支援を受けること ・・・・・53
  配偶者やパートナーとともにガンに向き合う ・・・・・54
  デート ・・・・・55
  要約:新しい自分像に向き合う ・・・・・56
7.一日一日を生きる ・・・・・58
  日ごろの生活を続ける ・・・・・58
  仕事 ・・・・・60
  将来について ・・・・・62
  要約:一日一日を生きる ・・・・・64
参考資料 その他の情報 ・・・・・65

                                                                              iii

(もどる) はじめに

ガンはあなたの生活をかえます。

 ガンは大変な病気ですが、かかったからといって、誰もが死ぬわけではないのです。
アメリカ人の900万人近くはガンに罹ったことがあります。その人たちにとってガンとは高血圧や糖尿病のような慢性的な健康上の問題なのです。
慢性的な病気を持っている人と同じように、ガン治療が終わったあとでもガンに罹っている人はずっと定期的な検査受ける必要があります。
 しかし、他の慢性病とは異なり、ガンの治療を終えた後は薬を常用したり特別メニューの食事を取るようなことは必要ありません。
 もしガンにかかったなら、少しのうずきや痛み、また病気の兆候などが気になるでしょう。ちょっとした痛みでも気になることでしょう。
 死ということについて考え、死ぬことと健康であることとの間を、行きつ戻りつする不安な気持ちを持つことは自然なことですが、生きることに眼を向けることも重要なことです。
 ガンは、けして死の宣告ではないということを、心に留めておいてください。
 たくさんのガン患者が、見事に治療されています。また、長い存命期間を得ています。
ガンとその治療とともに、毎日を精一杯生きましょう。

  明日の夜明けのことは、誰も知らない。(アフリカのことわざ)

ガンのさまざまな受け止め方

 この本は、他のガン患者からさまざまなことを学ぶために書かれたものです。
他の方が、どのようにガンに対処したかということを知ることは、自分の心の持ち方の参考になります。ガンがもたらすさまざまな問題をいかに対処したかという例を知ることは、自分がその問題に対処することになったとき、自分自身の対処法を発見する、良い参考となります。
                                                       iv
ガンとともに生きるアイデアの共有

 ガン患者とその家族、友人、介護者など、多くの方がこの本を書くことに協力してくれました。ガンとともに生きるためのアイデアや、ヒントなどを与えてくれた、これらの人たちに深く感謝いたします。それらのコメントは、イタリック体で書いてあります。
 また、Taking Timeを校閲してくれた医療関係者にも感謝いたします。そのコメントと実践的なヒントは、長年にわたりガン患者と係わった経験に基づくものです。

この本の使い方
 人は一人として同じではありません。この本のある章はあなたの状態に役に立つかもしれないが、ほかの人には当てはまらないかもしれません。自分に有用な章を読んでください。ほかの章は後で必要になるかもしれません。
 この本は7章に分かれており、最後に資料をつけてあります。目次を見て、現在の治療に一番役に立つと思うところを見つけてください。各章は、何が書かれているかがわかるように“はじめに”という見出し部分をおいています。また章の内容を要約した“要約”という部分を章の終わりにつけています。

 これは“すべてあなた自身のことだ”ということを忘れずに、読んでください。
                                                        v
(もどる) 第1章
あなたの思い:ガンにかかっているということを知る

 ガンにかかったことを知ったときに、さまざまなことを感じる事と思います。この思いは日ごと、時間ごと、また分ごとにでさえ変わっていくでしょう。
 そのさまざまに変化する思いとは、次のことなどでしょう。

・ 否認
・ いきどおり
・ 恐れ
・ ストレス
・ 不安
・ 落ち込み
・ 罪の意識
・ 孤独感

これらの感情を持つことは普通のことです。
誰もいつでも、元気ではありません。でもガンに対処している間は、希望はあなたの人生の重要な部分となります。

 医者がこんなことをいいました。
 「お気の毒ですが、テストの結果、ガンにかかっています。」
 ほかの言葉は聞こえませんでした。頭が真っ白になりました。
 「きっと何かの間違いだろう・・」そう思い続けました。
                                                       p-1
 ガンにかかったと知ることはショックです。そのとき、どうなりましたか。凍りつきましたか、びっくりしましたか、それとも腹立たしく思いましたか。医者の言葉が信じられなかったのではないでしょうか。そこに友達や家族が同席していたとしても、一人ボッチに感じたことでしょう。そう思うことは、普通のことです。

 多くの人にとって、ガンと診断されてからの数週間は、苦しみです。「ガン」という言葉を聴いてから、息をすることも、何を言われたかを理解することも困難になることでしょう。家にいても、考えることも、食べることも、また眠ることにもできなくなってしまうでしょう。
 ガン患者とその人を取り巻く人々は、さまざまな思いを経験することでしょう。
この思いはしばしば突然変化します。
 それはこのようなことでしょう。

・ 怒り、恐れ、そして悩み
・ ガンに罹っていることが信じられない
・ 自分自身をコントロールできない
・ 悲しみに沈み、罪の意識にさいなまれ、孤独感を味わう
・ 将来への強い希望を持つ

この章は、ガンにかかったと知った時のさまざまな思いを考えます。
(もどる) 否認
 初めて「ガン」と診断されたとき、その診断を信じることができなかったり、ガンにかかっていることを認められなかったりします。これを否認といいます。この「否認」という行為は、その診断を受け入れることができるまでの、心の準備をする時間を与えてくれます。またそれは、将来について、希望に満ちたよりよい考えを持つ時間を作ってくれます。
 しかし「否認」は深刻な問題になることもあります。その期間があまりにも長いと、必要な治療を受ける機会を逃してしますことにもなります。また、ガンであることを受け入れた後も、周りの人が、あなたがガンであることを否認することも問題となります。
 ガンにかかった人々や、周囲の介護する人々が、この「否認」の期間を通して協同していくことが大切です。治療が始まるころには、たいていのひとが、ガンであることを受け入れます。
                                                       p-2
憤り
 ガンであることを受け入れると、憤りや恐れを抱くことがあります。「何で私が」と思い、次のようなことに対して腹立たしく感じることは自然なことです。

・ ガンに対して
・ かかりつけの病院や医師に対して
・ 健康な友達や愛する人たちに対して

 信仰心の厚い人でさえも、神に対して腹立たしく思うことでしょう。
 いきどおりは、表すことの難しい思い、たとえば、恐れ、パニック、欲求不満、不安、無力感などに由来するものです。怒りを感じたときは、すべてOKなどと偽ってはいけません。その怒りについて、友人や家族と話し合ってください。話し合うことでたいてい気分がよくなります。(ガンの思いの共有 参照)

  話すことは愛すること・・ケニヤのことわざ

恐れと心配
 「ガン」という言葉は、誰でも怖がらせる。「ガン」という診断は何者にもまして恐れられるものである。
 「ガン」にかかったと聞くことは恐ろしいことです。次のような心配事が生まれるでしょう。

・ ガンそのものや治療による痛み
・ 治療により気分が悪くなったり、外見が変わったり
・ 家族の養育について
・ 必要経費の支払い
・ 仕事の継続
・ 「死」
                                                       p-3
 友達や家族も、次のようなことに思い悩むでしょう

・ あなたのふさぎこみや痛み
・ 十分な援助や愛や理解ができないこと
・ あなたのいない生活

 ガンに対する恐れは、言い伝えやうわさ、古い情報などによるものです。何が期待できるかを知り、ガンとその治療を知ることで気分が明るくなり恐れ少なくすることができます。

 前立腺ガンの人が次のように言っています。

 私は、自分の罹ったガンについてあらゆる物を読みました。最悪の事態を想像するより、何が起こるかを知りましょう。事実を知ることは、恐れを軽くします。
ストレス
 あなたの体は、ストレスに反応し、ガンにかかっていることを心配するでしょう。
おそらく、次のようなことを感じることでしょう。

・ 心臓の鼓動が高まる
・ 頭痛がしたり体が痛くなる
・ 食欲がなくなる
・ 胃の具合がおかしくなったり下痢をしたりする
・ 体がふらついたり、よわよわしく感じたり、めまいがしたりする
・ のどや胸にしこりを感じたりする
・ 寝すぎたり眠れなかったりする

 ストレスは、体が疾患と戦うことを妨げることがあります。

次のようなことでストレスを開放することができます。

・ 運動すること
・ 音楽を聴くこと                                            p-4
・ 本や詩、雑誌などを読むこと
・ 音楽や工作などの趣味を持つこと
・ 横になりゆっくり深呼吸するなど、くつろいだり瞑想したりすること
・ 友人や家族といろいろ話し合うこと

 もし、ストレスが心配なら、医師や看護士に相談しましょう。カウンセラーや支援グループを紹介してくれるでしょう。また、ストレスを発散する方法を教えてくれるクラスに入ることもできるでしょう。重要なことは、ストレスをコントロールすることで、ストレスにコントロールされることではありません。

疼痛
 疼痛に関してたいていの人が心配したとしても、あなたにとっては、問題にならないかもしれません。ぜんぜん痛みを感じない人もいるし、時々しか痛みを感じない人もいるのです。ガンによる痛みは、たいてい和らげることができますので、痛みがあるのであれば、医師に相談しましょう。医師はその痛みを和らげる方法を知っています。

 それは以下のような方法によります。

・ 処方箋薬や一般販売医薬品
・ 冷却バックや電気座布団
・ マッサージや、気分を落ち着かせる音楽をきくなどのリラックス
・ 幸福感や穏やかな感じを得られるところにいるようなイメージを持つこと
・ 映画を見たり、趣味に興じたり、さまざまなことで痛みから気をそらせること。

 痛みで困る必要はありません。痛みをコントロールする方法はいろいろありまから、痛みを感じたらすぐに医者に相談してください。いつでもそれに対処する準備はととのえていますから。痛みに対処するということは、すなわちこの章で問題としている感情の問題に対処することになりますから。

   あなたの症状を隠すということは、治ることを望まないということだ。
                       エチオピアのことわざ                  p-5

疼痛尺度と疼痛記録
 疼痛尺度と疼痛記録はどれくらいの苦痛を感じているかを記録するために使うものです。これらのツールは医師や看護士、薬剤師が、あなたの苦痛を処置する方法を見出すために役に立つものです。
 あなたがどれくらいの痛みを感じているかを記述できるのはあなた自身しかいないのです。
痛みに関しては、正しいとか間違っているとかはないのです。
 疼痛尺度は、痛みを0から10で段階分けするようにしています。たとえば、まったく痛みのないときを0とし、これまでに経験した最悪の苦痛のときを10とします。この0と10の間の任意の数字で痛みをあらわすことができます。
 このスケールを使うときは「今日の痛みは0から10の範囲の7です」というようにその範囲を示してください。
 疼痛記録、または日記は、痛みを記述するもうひとつのツールです。この記録・日記には疼痛尺度を書くだけでなく、何が痛みを引き起こしたかや、何が痛みの除去に役立ったかなどを書き留めておくことができます。
 苦痛に関して、医師、看護士、薬剤師、家族や友人に話すときには、次の点に注意してください。

・ どこが痛いか
・ どのような痛みか(さすような、鈍い、ずきずきする、ずっと続く)
・ どれくらいの痛さか
・ どれくらい続くのか
・ 何が痛みを和らげ、何か増加させるのか
・ どんな薬を使っているのか、効き目はどうであるか

 疼痛に関する更なる情報は、ガン情報サービスに連絡を取るか、オンラインの「更なる研究のために P65」を参照してください。
                                                       p-6
自制心と自尊心

 ガンにかかったと知ったとき、もう人生がどうなるかわからなく感じることでしょう。
きっとこんなことを思うに違いありません

・ 生きられるのか死ぬのかわからない
・ 検診や治療で日常の生活がめちゃめちゃになる
・ 理解できない難しい専門用語が飛び交う
・ 楽しいことができなくなる
・ 救いがないと感じる
・ 医療関係者が他人行儀

 たとえ自制心を失ったとしても、あなたにはできることがあります。
 たとえば、次のようなことです。

・ ガンについてできる限りの知識を得る
 1-800-4−CANCER(1-800-422-6237)またはTTY(難聴者用)に連絡する。インターネットの
 http//cancer.govにアクセスして下の左側の“問い合わせ”をクリックする。
・ 質問をする
  話していることが理解できなかったり、ほかの情報が知りたいときには健康相談員に尋ねる。
・ ガン以外のことも考える
  ガンにかかっていても、忙しくしていると気分が晴れる。たとえ予定を調整してでも仕事に行
  くことがよい。また音楽や工作、読書などの趣味を楽しむのもよい。

ガン患者の女性がこんなことを言っています。

 「新しい創造的なことを探していたら、気分がよくなってきていました。いつか写真撮のコース  を受講しようを心にきめていたのです。新しい趣味の満足感はほかの領域までところまで気  分を高揚してくれました。」
                                                       p-7
悲しみと抑鬱

 ガン患者の多くは悲しみやゆううつを感じています。これはどんな病気でも自然なことです。ゆううつになっていると、気力がなくなり、疲れを感じ、食欲がなくなります。
 ゆうつは、深刻な問題となることがあります。悲しみや絶望があなたの人生をふさいでしまったら、病的な欝病といってよいでしょう。以下に8項目の兆候をあげておきます。
 毎日の生活で、該当するものがひとつでもあったら、健康相談員に相談してください。

うつ病の初期兆候

当てはまることがあればしるしをつけてください。

・ 無力で絶望的、生きる意味が見出せない
・ 家族や友達といることに関心がない
・ 趣味やこれまで楽しんでいたことに関心がない
・ 食欲がなかったり、食べ物に関心がない
・ 睡眠障害、眠りすぎたり眠れなかったり
・ 活力の変化
・ 自殺などの考え

 これは、自殺を考えたり、行動したりすることを含み、死や、死ぬことをいつも考えていることも意味します

 うつ病はなおすことができます。医者が薬を処方してくれるでしょう。また、カウンセラーと話したり、同じくガンを抱えている人たちのグループに入っていろいろと半紙をすることを勧めてくれるでしょう。

   顔を太陽に向ければ、影は後ろになる。 マオリのことわざ
                                                       p-8
(もどる) 罪の意識

 ガン患者は、たいてい罪の意識を持っています。たとえば、愛する人を慌てふためかせてしまったことなどで自分を責めたりすることがあります。感情的、金銭的などの負担を感じさせていると思うこともあります。健康な人をねたんだり、またそう思うことを恥じているかもしれません。また、日光浴によって皮膚ガンを起こしたり、喫煙により肺ガンになったりなど、ガンになるような生活をしていたことを後悔しているかもしれません。
 ガンになった人のこのような思いは自然なことです。乳ガンの患者がこんなことを言tっていました。

  「自分がガンになったことに罪の意識を感じても、小さな子供がガンになったことには、それ  を感じない、ということから、ガンにたまたまかかってしまったのだと理解できた。私が悪い   のではなかったのだ。」

 家族や友人は同様に罪の意識を持つかもしれない。

・ あなたが病気であっても、私たちは健康
・ 思うようにあなたを助けてあげることができない
・ ストレスやイライラを感じる

 家族や友人は、完璧であろうとするので、あなたが必要とする介護や理解ができないことで罪の意識をもつこともあるでしょう。
 カウンセリングと支援グループはこの様な思いを癒してくれます。あなたや、家族の誰かが、カウンセラーや支援グループの執拗を感じたら、医師や看護士に相談してください。

孤独感

 ガン患者は孤独感やほかの人からの離別感をもつものです。友人があなたのガンにどう接したらよいかわからずに訪問することができないでいたり、電話さえかけられないでいるかも知れません。
 自分で趣味を楽しんだり、今までしていた楽しかったことも病気のためできないでいるかもしれません。また、あなたの愛する人や介護してくれる人たちと一緒にいても、誰もあなたがどうなっていくのか理解してくれないと感じることでしょう。                     p-9
 ほかのガン患者と一緒にいると、孤独感が薄れることでしょう。支持者グループや同じ難問に取り組んでいる人たちと話をすると、気分が優れてくるものです。(支持者の項参照)

  楽しみを共有すると倍になり、悲しみを共有すると半分になる (スエーデンのことわざ)

 誰でもが、支持者グループを必要としたり、加わったりできるわけではありません。一人の人と話すことが好きな人もいるのです。親友や家族、同じ宗教を持つ人やカウンセラーなどと話すことで気分か優れる人もいるのです。

希望

 ガンになったことを受け入れてしまえば、希望が目覚めてきます。それは次のようなことがあるからです。

・ ガン治療の成功例がある。ガンになった何百万人の人が、今生きている。
・ 治療中でさえ、ガン患者は活動的な生活を送ることができる
・ ガンとともに、またガンを克服して生きる可能性は、今までより、いっそう高くなっている。ガン
 治療が終わったあと、長年生きている。

 「希望は、体がガンに打ち勝つ大切な役割をする」と考えている医師が大勢います。研究者は希望的な考え方や積極的な生活態度が、回復に役に立つと考えています。希望を持つことに役に立つ次のような方法があります。

・ 希望的な事柄を記録して、それを話しましょう。
・ 常日頃していたように、人生の計画をしましょう。
・ ガンだからといって、したいことをやめてはいけない。
・ 希望を持つ理由を見つけましょう。

   夜がいくら長くても、夜明けは来る。  ハウサ(アフリカ)のことわざ
                                                      p-10
 自然に、または自分の宗教や精神的な信念から希望を持てるでしょう。また、ガンにかかっても積極的な生活を送っている人たちの話(たとえばこの本に書かれている人)によっても希望を持つことができるでしょう。


(もどる) 要約:ガンにかかっていることを知る

 ガンとともに生きるにつれて、日ごと、時間ごと、さらに分ごとに変化するさまざまな思いを持つようになります。

 否認、怒り、恐れ、ストレスと不安、落ち込み、悲しみ、罪の意識や孤独感などの思いは自然なことです。誰も、いつでも元気ではありません。でもガンに対処している間は、希望はあなたの人生の重要な部分となります。
                                                      p-11
                                                      p-12
(もどる) 第2章 

 家族に関すること


 ガンはあなたや、あなたの周りの人々の生活を変えてしまいます。

・ 日ごろの生活は、台無しになることもある
・ 生活上の役割や任務が変化するかもしれない
・ 人間関係がひずんだり、また強固になったりする
・ お金や保険に関することが問題になることがある
・ しばらくほかの人と同居する必要があるかもしれない
・ 雑用などのお手伝いさんが必要になるかもしれない

 友人や家族が、ガンになったとか、それらしいことをにおわせたとき、それを聞いた人たちはより親密な関係が生まれたような気がするものです。
 どこの家族もみな同じではありません。あなたにとって家族とは配偶者(夫や妻)や、子供たちと両親であろうし、また同僚や親友までを含んで家族と思う人もいるかもしれない。
この本では、家族とはあなたと、あなたを愛し、あなたの助けになる人たちをさすことにします。

 ガンは、ガンにかかった人のみではなく、その家族にも影響を与えます。あなたのガンに対して家族はどのように向き合うのでしょうか。あなたと同じように恐れたり、腹立たしく思っていることでしょう。ガンになったと知り、治療を開始してから、すべての人の日々の生活が、変化します。たとえば、家族の誰かが仕事を休んで、あなたの治療のために車の運転をする必要ができるかもしれませんし、誰かに身の回りを手伝ってもらう必要ができるかもしれません。

 家族があなたのガンにいかに対応するかは、あなたが過去にどのように困難なことに対応したかによります。
                                                      p-13
 ある家族にとっては、ガンについて話すことは特に困難なこととは感じないかもしれず、ガンが家族の生活にもたらした変化にたやすく順応するかもしれません。
 また、ガンについて話すことができない家族があるかもしれません。この家族の人たちは、問題を一人で解決することに慣れていて、お互いの気持ちについて話したくないのかも知れません。離婚をしたり、何かほかの心配事を持っている家族にとっては、それはガン以上のことかもしれません。

 肺ガンにかかったある女性はこんなことを言いました。

  最初は、ガンについて話すことはとてもつらかったのです。というのは5年前、私たちは離婚  したので、母が引っ越して子供たちと一緒に私を手伝わなくてはなりませんでしたから。最後  には、わかれた夫に私のガンについて話をすることができ、子供たちを助けてくれました。   私の家族はさまざまな困難にあいましたが、なんとか潜り抜けてきました。私にとって、人生  は、変化の毎日でした。

 もしあなたの家族が、ガンについて話すことが難しいのであれば、援助を求めることを考えましょう。医師や看護士が、あなたの家族にとってガンが何を意味するかということを話してくれるカウンセラーを紹介してくれるでしょう。家族にとって大変なことであっても、みんな一緒にガンに立ち向かうことで、より親密になることができます。


家族の中での役割の変化

 家族の中で誰かがガンにかかったならば、全員が新しい役割と仕事を受け持つことになります。たとえば子供たちは今まで以上のお手伝いをしなければならなくなるし、配偶者や仲間は生活費の援助とか、買い物や庭仕事などをすることになるかもしれません。このような新しい役割りに慣れるまで、混乱することでしょう。

 あなたの新しい状況に慣れること

 愛する人がガンになったことにより生じた、新しい役割になれるのに、いろいろと」大変なことがあるでしょう。

お金
 ガンは、家族が使ったり貯金したりするお金の額を少なくしてしまいます。あなたが働くことができなくなれば、家族の誰かが働く必要に迫られることがあるかもしれませんし、健康保険についても、どこまで保険がカバーでき、自己負担はどのくらいになるかなど、もっとよく知る必要が出てきます。金銭問題に関することは大変なストレスとなります。
(ガンと仕事に関しては「毎日の生活」p-57を参照)
                                                      p-14
生活の準備
 ガンにかかった人は、住居を変えたり、同居者が変わったりすることがあります。必要な世話をしてくれる人が同居してくるかもしれません。これは少しの間でもあなたの独立性を失うことになり、困難を感じるかも知れません。また、治療のため、遠くまで出かける必要に迫られるかもしれません。治療のため家を離れていることになったら、家庭から何か2,3のものを持っていきましょう。これは、見知らぬところで、心の休めになります。

日常生活
 支払いをしたり、食事を作ったり、子供たちのチームのコーチをしたりなどさまざまなことに助けが必要になるでしょう。このようなことをするために援助を要求することは難しいことかもしれません。

 大腸ガンの治療中の若い男性はこんなことを言っています。

  病院から帰ったとき、元通りの生活に戻りたかったがその元気がなかった。援助を求めるこ  とは難しいことだった。子供たちが、私の回復の役にたっていると感じていることを知ったと  き、援助を受け入れることは容易になった。

計画を作ること
 他の人たちが援助を申し出ていても、あなた自身でも何かができるということを知らせることは大切なことです。できる限りにおいて、決断したり、家庭の雑用をこなしたり、楽しい趣味に興じたりなど、日常の生活をつづけましょう。

 援助を求めることは虚弱とは違います。誰かを雇ったりボランテアを頼みましょう。健康保険はこのような家庭の雑用をする費用を支払うことがあります。地域社会の中でこのようなボランテアを見つけることもできるでしょう。

 援助やボランテアの支払いの可能性は以下のような事柄です。

・ 物理的な介護 たとえば入浴や着替え
・ 家庭の雑用 たとえば掃除や食料品などの買い物
・ 技術的な介護 たとえば特別な食事の食べさせ方や薬の投与

 あなたが自分の時間が必要なように、家族も休息や、楽しみや、自分自身の仕事をすることが必要です。介護を休止することで、介護者自身の必要な時間を作ることができます。介護の休止中に誰かが来て、家族が外出している間の世話をしてくれるでしょう。介護の休止についてもっと知りたければ、医師やソシアルワーカーにたずねてください。(第5章 人々を援助する人たち 参照)
                                                      p-15

配偶者とパートナー

  夫のガンを恐れました。というのは、夫はいつも私の面倒を見てくれましたし、何でも一緒に していたからです。夫が回復するまで介護が出来るほどの強さは、私にはないと思っていまし た。もう回復しないのではないかとも思っていました。彼をがっかりさせたくなかったので、私  の心配について話すことが怖かったのです。

 あなたの夫や妻、パートナーは、あなたが自分のガンについて感じているのと同程度にそれを感じています。愛する人に介護してもらうことは難しいことと思うでしょう。
 ガンに対する反応はさまざまです。ガンが重病であることを認めない人もいるでしょうし、完璧な介護者であろうとする人もいるでしょう。ガンについて話すことを拒む人もいるでしょう。多くの人は将来について考えることが怖いと感じるでしょう。
 あなたとあなたの周りの人々が、あなたの恐れや懸念について話せるのであれば、このようなことについて援助してくれるカウンセラーにあうことができるでしょう。

情報の共有化
 治療法の決定に配偶者やパートナーを参加させることは重要なことです。一緒に医者に会い、ガンの種類について聞きましょう。ガンの一般的な症状についてや、治療法の選択、またその副作用などに知ることは、お互いの将来の計画を立てるのに役に立ちます。
 配偶者やパートナーは、あなたの身体と心を介護するためにそのような情報が必要でしょう。また、それは簡単なことではないが、あなたがもしガンで死んだときの将来を思いそのときのための計画を立てるのにも役に立ちます。また資産運用コンサルタントや弁護士に会うことも必要になるかもしれません。

身近にいること
 誰でも、頼られたり愛されていたりすることが必要です。今までは家庭の中では「強き者」であったのでしょうが、今は、配偶者やパートナーの介護を必要とすることになったのです。これは、あなたの枕を膨らませたり、冷たい水を運んできたり、本を読んで聞かせてくれたりするくらいに単純なことです。相手に性的な魅力を感じることも重要なことです。あなたが治療中で疲れていたり、胃に症状があったり、痛みを感じたりしているときに性に興味をもつことはできないでしょう。
                                                      p-16
 でも、ひとたび治療が終われば、性への興味がわいてくることでしょう。それまで、触れ合ったり、抱き寄せたり、寄り添ったりなどして、お互いが愛しあっていることを表現する新しい方法を見出すことが、必要でしょう。(第6章 Dealing with Self ?Image 参照)

不在の間
 配偶者やパートナーは、それぞれの生活のバランスを保つ必要があります。自分たちの日常の身の回りの雑用などをする必要があるのです。また、ガンに対する自分の考えをまとめる時間も必要なのです。もっとも大切なことは、休息をとる時間が必要なことです。愛する人がいない間、一人ぼっちでいたくなければ、一時中断治療を受けることや、一緒に住んでくれる友人を探すことを考えましょう。(介護者 p-46 参照)


子供たち

 子供たちが、あなたがガンにかかったと知り、悲しんだり動揺しているときに、「なんでもない。大丈夫。」などとうそを言ってはいけません。小さな子供でも、そのうそを嗅ぎ取ってしまいます。あなたがよくないということや、以前のように一緒にいることが少なくなったということがわかるのです。以前よりお客が増えたり、電話が多くなったり、治療や、検診のために家を空けることが多くなったというようなことに気がつきます。

    夜、家族で話したことを、翌朝子供たちが話す。   ケニヤの諺

ガンについて子供たちに話す
 子供たちも18ヶ月もたてば、身のまわりで起こっていることを考え、理解します。あなたが病気にかかっていて、医師がそれを直そうとがんばっていることを、子供たちに正直に話すことは大切です。子供たちが最悪のことを想像するよりも、本当のことを話すほうが、よりよいことです。子供たちの疑問に答え、気持ちを落ち着かせましょう。もし答えられない疑問があったなら、後で答えることを約束しましょう。
                                                      p-17
 子供たちと話すときには、子供たちに理解できる言葉や用語、たとえば「腫瘍内科医」の代わりに「お医者さん」、「化学療法」の代わりに「薬」などを使いましょう。あなたが、子供たちをどれほど大切に思っているか、また、どんなお手伝いができるかなどを話しましょう。子供向けに書かれたガンの本を用意しておきましょう。医師や看護士、介護者などがよい本を知っているでしょう。
 先生や隣近所の人、コーチやよく一緒にいる人たちなど、子供たちに関係している大人たちにも、ガンについて話しておきましょう。そうすれば、子供たちの活動を支えてくれたり、子供たちの話を聞いてくれたりしてくれるでしょう。医師や看護士も子供たちの面倒を見てくれ、疑問に答えてくれるでしょう。

子供たちの反応
 子供たちはガンに対してさまざまな反応を示します。たとえば次のようなことです。

・ 混乱したり、怖がったり、さびしがったり
・ 何かしたり言ったことが、ガンを引き起こしたのではないかと悩んだり
・ 静かにしていなさいとか、さらに多くの手伝いを頼まれたりすると怒り出したり
・ いつもより注意が散漫になったり
・ 幼いころへの退行行動を示したり
・ 学校や家庭で問題を引き起こしたり
・ 家を出ることが怖くなり引きこもったり

  「お母さんがガンにかかり、すべてのことが変わってしまった。お母さんと一緒にいたいけど   友達とも遊びたい。弟の面倒を見てほしいのだろうけど、私は前のようにフットボールをし   たい。」


十代の子供たちと親のガン

 十代の子供たちは、親から逃げたり独立したいと思っている時期にあたります。親がガンにかかってしまうと、子供たちは親から離れることが難しくなってしまいます。そして、憤ったり、鬱積した思いを爆発させたり、事件にまきこまれたりします。
 子供たちの気持ちを聞いてあげましょう。あなたのガンについて知りたがっていることを話してあげましょう。考えを聞き、できることなら、あなたが『どうしたらよいか。』ということを聞いてみましょう。                                                p−18
 子供たちは、人生についてほかの人と話し合って見たいと思うことでしょう。友達は、もしその友達が家庭内に病気の人を抱えていればさらによいのですが、大きな助けになります。家族、先生、コーチや精神的な指導者ももちろんよい話し相手です。子供たちが、信頼し身近に感じている人たちと、恐れや思いについて話し合うように、勇気付けましょう。ガンにかかった親を持つ子供たちを援助するグループがある自治体もあります。

子供たちが知っておく必要があるもの

ガンについて

・ 子供たちが、したり、考えたり、言ったりしたことがガンを引き起こしたのではない。
・ ほかの人から感染したのではない。だから、家族にガンが感染することはない。
・ ガンにかかったことは、死を意味することではない。実際多くの人がガンでも生きている。
・ 科学者がガンを治療する新しい方法を見つけている。

家族とともにガンを持って生きること
・ 自分だけではないこと。両親にガンを持っている子供たちがほかにもいること。
・ 病気についてふさぎ込んだり、憤ったり、恐れたりしてもかまわないこと。
・ 特に自分の生活を変えることは必要ないこと。
・ ガンにかかった人を心配して、家族が今までと違った行動をすることもあること。
・ 何があっても、子供たちには心配がないことをわからせておく。

子供たちに何ができるか
・ 皿洗いをしたり、あなたの絵を描いたりなど、良いことをして手助けができる。
・ 学校に行き、スポーツやほかの楽しい活動を続ける必要があること。
・ 先生や、家族や信仰上の指導者などと、ガンについて話してもかまわないこと。
                                                      p-19

成人した子供たち

 ガンにかかったことにより、成人した子供たちとの関係がかわるでしょう。

あなたはおそらく:
・ 健康管理の決断や、請求の支払いや、家の管理をするなどの新しい役割を頼む。
・ 医者から聞いたことを説明したり、検診に一緒に行くように頼めば、医者がどのようなことを  話しているのかを知ることができる。
・ 精神的な援助を依頼する。たとえば、友達や家族との仲介役を頼むなど。
・ 一緒にいる時間を長く取れるように頼む。しかしこれは、仕事があったり、新家庭を築いてい たりすると難しいことですが。
・ 子供たちから慰めやサポートを受けることが・・与えることよりも・・難しいことを知る。
・ 子供たちから、介護されること、たとえば入浴などを気まずく思う。

卵巣ガンの母親を持つ女性はこんなことを言いました。

  「お母さんは、常に家庭の岩のような存在でした。問題が起きたときはいつでもお母さんが   助けてくれました。今は、お母さんを助けなければなりません、まるで私たちが親で、お母さ  んが子供になったようです。その上、私には面倒を見なければならない子供おり、また、仕   事にも行かなければならなかったのです。」

成人したこどもたちと話すこと
 たとえ、気が動転したり心配したりしたとしても、子供たちとガンについて話し合うことは大切なことです。治療のことを話すときにも一緒に話しましょう。ガンから回復できなかったときに備えて、あなたの考えや意思を話しておきましょう。

 成人した子供たちでさえ、親が死ぬことを心配するものです。ガンにかかったということを知ったとき、あなたが子供たちにどれほど大切であったかということを思うでしょう。もし身近にいなかったとすれば、きっと後悔することでしょう。遠くに住んでいたり、仕事の関係で一緒にいる時間が取れなかったことを悔やむことでしょう。
                                                      p-20
 このようなことは、子供たちにガンであることを話すことを躊躇させるかも知れません。もし子供たちに話すことが難しく思えたら、医師や看護士に話して、相談できるカウンセラーを紹介してもらってください。
 できるだけ多くに時間を子供たちと一緒にすごしてください。子供たちをどれだけ大切にしているか話しましょう。愛だけでなく、心配や悲しみや憤りなど、すべての思いを話しましょう。悪いことを言うことを恐れないでください。隠すことよりも心をひとつにすることのほうがずっと良いのです。

    悲しみを隠すことは、救いをなくすこと     トルコのことわざ

親にガンを持つ子供たちのガンに対する危機感
 親がガンにかかると、子供たちは、自分もガンにかかるのではないかと心配します。ガンにかかる可能性について医師と話をすることをすすめてください。

 遺伝子テストはガンにかかる危険性がどれくらいあるかを知る方法です。ある種のガンにかかるリスクが高いという性質は、親から子に引き継がれます。たとえは、乳ガン患者の子供には乳ガンにかかる可能性があります。しかし、この乳ガンにかかるリスクは同年代のほかの人たちと変わりはありません。もし気になるのであれば、ガンになるリスクについて医者に相談してみましょう。
 遺伝子テストが有効であったとしても、それで求めている答えが得られるとは限りません。もし家族の誰かが遺伝子テストについてもっと知りたければ、医者に相談してください。この部門の専門家を紹介してくれるでしょう。この専門家があなたの疑問に答えてくれることでしょう。 
                                                      p-21

両 親

 最近、寿命が延びてきているので、ガン患者の中にも年長者の面倒を見ている人がいます。たとえば、あなた自身が両親の買い物を手伝ったり、病院へ連れて行ったりしているのではないでしょうか。両親と一緒に住んでいるかもしれません。
 自分のガンについてどの程度両親に話をするか決断する必要が出てきます。この決断は、両親がどの程度ガンについて理解でき、対処できるかということにかかってきます。両親が健在であれば、ガンについて話しましょう。
 ガンになってしまったら、両親の面倒を見るための援助が必要となるかもしれません。治療に要する間だけ援助が必要かもしれないし、両親の面倒を見るために長期間の援助が必要になるかもしれません。家族や友人、医療専門家や、自治体の役員などに援助について相談してみましょう。  (第5章 人びとを援助する人たち 参照)


親 友

     垣根で身を囲わず、友達で囲いましょう。  チェコのことわざ

 あなたのガンを知ったら、友達は心配をし始めるでしょう。でも、何かすることはないかとたずねることを躊躇しているかも知れません。友達に、あなたが必要としている事柄を知らせましょう。友達が気にせずにできることを考えリストを作りましょう。これは、友達が何かできることは無いかといったときに、このリストを見せて、その中からできることを選んでもらうことができます。

リストの内容の例

・ 治療に行くときに子供の面倒を見てもらう。
・ 倒れたときのために冷凍食品を用意してもらう。
・ 礼拝のために祈りのリストに名前を書いておいてもらう。
・ 図書館に行ったときついでに2,3冊借りてきてもらう。                    p-22
・ お茶のみの時間が取れるときに来てもらう。
・ ほかの人に、電話や尋ねてきても良いということを知らせてもらう。(言葉を変えると、来てもら
 うには都合が悪いということをしらせてもらう。)



要約:ガンと家族

 家族には、さまざまな形態がある。夫や妻や子供たちであり、ほかには、生活のパートナーをも意味する。お互いを愛し支えあっている人たちのグループである。

 あなたの家族がどのような形であっても、ガンはあなた自身だけでなく、周りにいる人たちの生活まで変えてしまう。

ガンは家族にさまざまな影響を与える。

・ ガンについて話すことが困難な家族もある。
・ 家族の日常の生活はめちゃめちゃになることもある。
・ 家族間の役割が変わってしまうこともある。
・ 関係がねじれたり、逆に強固になったりする。
・ お金や保険に関することが難しくなることもある。
・ 短期間でも、生活の場が変わったり、同居者が変わったりする。

 ガンによってあなたやあなたの家族の生活が変えられてしまったなら、家族が援助を得られるように外部に手を伸ばしましょう。

・ 家庭内の雑用のために、手伝いが必要となるかもしれない。
・ 一時中断治療により、介護者に休息の期間をとることができる。
・ カウンセラーや援助グループに、ガンによりもたらされた問題に対処してもらえるかもしれな
 い。

 ガン、それにより生じた問題、家族の思い、などについて正直に隠さないでいることにより、ガンによりもたらされた状況の変化に、うまく対応することができる。
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(もどる) 第3章

 ガンについての思いを共有すること

あなたの思いについて話すことは、あなたのガンに対処することに役に立ちます。

・ 聞き上手を見つける。
・ あなたの思いを共有するのに良い時間を見つける。
・ 憤りの気持ちについて理解する。
・ 楽しくもないのに、楽しいふりをしてはいけない。

 家族以外に話ができる誰かが、必要です。
 ガンは、一人で対処するにはあまりにも手ごわいものです。

 友人や家族はあなたのガンについての思いがあります。
あなたがガンについて強い思いを抱いているように、友人や家族も同じように思っています。友人や家族は、次のように感じていることでしょう。

・ 悲しい気持ちを隠したり、否定したりする。
・ あなたのガンについて責任がある誰かをさがす。
・ ガンについての話が出ると、話題をかえる。
・ わけもなく怒る。
・ ガンに関するジョークをいう。
・ いつも明るいふりをする。
・ あなたのガンについて話すことを避ける。
・ あなたに近づかないか、来ても短時間にする。
                                                      p-25

聞き上手を探す
 ガンになったことの感情を話すことはとても難しいことです。しかし、たとえそれが難しいことでも、話をすることは救いになることです。友達や家族に考えや思いを話すことにより、気分が優れることが良くあります。
 友達や家族はあなたに何を言ったらいいのかを知っているとは限りません。良い聞き手であることが助けとなることもあります。アドバイスをしたり、何を考えているかなどを話をする必要はありません。気にかけていたり、心配したりしていることがわかればよいのです。

 家族や友達でもない人に、あなたの気持ちを話すことでも手助けになるでしょうし、ガン患者の支援グループに会ったり、カウンセラーと話をしたいと思うかもしれません。37ページからの第5章「人々を援助する人たち」の項でさらにいろいろなことを知ることができるでしょう。

    一本の矢は簡単に折れるが、十本の束は折れない  日本のことわざ

話をする良いタイミングを選ぶ
 ガンに対する思いを話すのには、タイミングが必要です。もしあなたがその気分ではないときには「いま、ガンの話をする気分ではないのです。」というでしょう。でも、あなたが話したいと思っても、家族や友達がその気分ではないかもしれません。

 いつガンについて話をしたら良いかを、ほかの人が知ることは難しいことです。でも、話をしたいという気持ちは、次のようなサインに現れることがあります。

・ ガンの話題を持ち出す。
・ 新聞記事や、たった今読んだばかりのガンの新しい治療法など、ガンについてしなければな
 らないことを持ち出す。
・ いつもより、長く一緒にいる。
・ 神経質なふりや、少しも面白くもないジョークをいう。
                                                      p-26
 どのように考えているか、どのように感じているかなどを聞くことにより、雰囲気が和やかになるものです。時として、気持ちを言葉に表せないこともあります。抱き合ったり一緒に泣いたりするだけのこともあります。胃ガンの人がこのようなことを言っています。

  妹とガンいついて話すことはとても大変なことでした。結局、「あなたが、心配して恐れている  ことは、わかっている。私も同じなんだ。さあ、ガンの話をしよう。」と切り出しました。妹は救  われたような気持ちになり、一緒にガンの話をしました。


憤りを表す
 ガンに対処しているときは、誰でも憤りやイライラを感じるものです。あなたが頼りにしている人にでさえ、怒ったり、あわてさせたりすることでしょう。以前にはけしてイライラなどしたことのない小さなことにも、そう感じることもあります。
 人はいつでも思いのままを表すものではありません。怒りは言葉ではなく行動に現れることがあります。子供たちや愛犬などにあたるかもしれませんし、ドアを強くバタンと閉じるかも知れません。
 なぜ憤りを感じるか考えて見ましょう。ガンを恐れたり、お金の心配をしたりしているのではないでしょうか。治療に対して不満を持っているかもしれません。進行性のガンを持った人が、次のようなことを言っています。

  以前は、腹をたてて何にでも八つ当たりをしていた。今は妻や娘たちではなく、ガンに対して  腹立たしく思っている。

    怒りがこみ上げたら、その影響の重大性を考えなさい。     孔子
                                                      p-27

楽しそうに振舞うこと
 少しも楽しくないのに、楽しそうに振舞う人がいます。楽しそうに振舞うことで悲しみや憤りを感じずにいられると思っているのでしょう。家族や友達は、あなたをふさぎこませたくないので、何の問題もないように振舞うことがあるかもしれません。陽気に振舞うことで、ガンがなくなってしまうと思っているのかもしれません。
 ガンにかかっているときは、さまざまな理由でふさぎこむことがあります。いつか必ずふさぎこむ日が来ます。そのときには、明るい振りをしてはいけません。それは、あなたが必要とする助けを遠ざけることになってしまいます。楽しいことのみではなく、正直に、自分の気持ちを話しましょう。肝臓ガンのお年よりは次のようなことを言っています。

  友達の善意の、陽気な、楽観的な、明るいアドバイスは、時として気まずいものになります。  あなたが、愛想笑いをしなければならなくなるような事をしないように、友達にお願いしてお  きなさい。


言葉なしで気持ちを分かち合うこと
 たいていの人にとって、病気にかかっていることを話すことはつらいものです。また、ガンは個人的なことで、公然と話をすることは難しいことだと思っているのかも知れません。もし話すことが難しいと思ったならば、気持ちを分かち合う何か別の方法を考えましょう。たとえば、自分の気持ちについて書いてみることも良いでしょう。これは、手記や日記を今まで書いたことが無ければ、それを書き始める良いきっかけとなります。自分の気持ちについて書くということは、自分の気持ちを整理し、コントロールするのに、良い方法となります。始めるのに必要なことは、何でも良いから書いてみることです。
 手記は個人的にも、共有にすることもできます。手記をお互いの会話の代わりに使うこともできます。あなたのガンについて周りの人に話すことが難しいと感じたらこの手記の共有という方法を試してみてください。お互いのみが知っている、決められたところにノートやメモ帳を置いておくのです。何か知らせたいことができたら、そのノートやメモ帳に書きこみ、戻しておきます。相手の人も同じようにします。こうすることで、話をしなくてもお互いが何を思っているかを知ることができます。

 もし、電子メールが使えるのなら、それも声を出すことなくお互いの気持ちを分かち合う良い方法です。

                                                      p-28
(もどる)  要約:ガンに関するあなたの考えと感情を分かち合うこと

 ガンは一人で対処するには、難しい。初めはガンについて話をすることが難しくても、考えや感情を分かち合うことがガンに対処していく助けとなる。

 次のことを心に留めておきましょう。

・ 聞き上手を探す
 何をしたら良いかをアドバイスする人を必要としなくても、話を聞いて、今のあなたの状態を理
 解しようとする人は必要です。そのような人を、家族以外から探すことも必要です。
・ 良いタイミングを見つける。
 ガンについて話をしたいというサインを送ってくることがある。自分以外の人に考えや、感情
 について聞くことができます。
・ 憤りの気持ちを理解する。
 罵りの言葉は、欲求不満や心配や悲しみなど、怒り以外の感情によるものです。なぜ怒って
 いるのか、なぜそれをぶつけるのかを考えて見ましょう。このような感情から逃避してはいけ
 ません。そのような感情を分かち合い、理解するように心がけましょう。
・ 陽気な振りをしてはいけない。
 落ち込みそうな気分から逃れたいとしても、陽気に振舞うことは素直な気持ちを表すことの妨
 げになります。陽気な振りをしてしまうと、ほかの人にあなたの本当の考えや気持ちを伝える
 ことができません。
・ 地域社会に援助を求めなさい。
 支援グループやカウンセラーは、より多くの援助を与えてくれます。
                                                      p-29
                                                      p-30
(もどる) 第4章

 ガンや、その対処法についてさらによく知る

 ガンになったと知ったとき、日常生活がめちゃめちゃになったと感じたことでしょう。ガンのタイプとその治療法を良く知ることが、自制心を取り戻すことになります。

ガンの種類とその治療法を次のような方法で知ることができます。

・ 医師や看護士に聞く。
・ 診察の間、ノートを取る。
・ セカンドオピニオンをとる。
・ 1-800-422-6237のインフォーメーションセンターに電話する。
・ インターネットで(http://cancer.gov)ガンについて調べる。
・ 公立の図書館や患者用の病院の図書館で調べる。

 ガンについて知ることにより、医師とどの治療法があなたに最適かを話し合うことに役立ちます。

  「最初は、圧倒されていました。でも情報を集めたことによって、医師とガンについて楽に相  談をし、治療法について決める予備知識をもつことができました。」

 ガンは人々から、生活のコントロールを奪い去ってしまいます。未来が真っ暗になり、生きるのか死ぬのかさえわからなくなってしまうでしょう。また、あなたの健康管理について援助してくれるかどうかわからない医師に、頼ることになってしまうかもしれません。
 ガンやその治療についてできる限りのことを知ることで、生活のコントロールを取り戻せたと感じるものです。どうなるかを予測できることで、決定をより容易に下すことができます。あなたは自分のガンとその治療について、どれくらいのことを知っていますか。
                                                      p-31
     雲がわいてきたのを見たら、雨水をためる準備をしなさい。
                                   ゴーラ(アフリカ)のことわざ

介護師たちから学ぶ
 医師や看護士、介護師からガンとその治療について、いろいろな事を学ぶことができます。
でも、怖がったり戸惑ったりするので、教えてもらうことに苦労することがあります。これは新情報を得ることを難しくしてしまいます。でも、ここに情報を得る良い方法があります。
 医師や看護士に、あなたのガンの種類とその段階を書き留めてもらうことです。
 ガンにはさまざまなタイプがあり、それには固有の名前がついています。段階は、腫瘍の大きさと、それが体のどこに広がっているか、ということをあらわします。
 ガン名と段階を知ることで、次のようなことに役立ちます。

・ ガンについてもっと多くのことを知る。
・ 医師とあなたにどのような選択肢が残っているかを知る。

聞きたいことはすべて聞く

 医師はあなたの疑問や心配について知りたいと思っています。質問事項を書き出して、診察の折に持っていきましょう。先に質問を送っておくこともできます。先に質問を知っていれば、医師や看護士はその答えを用意しておいてくれます。もし、質問が多ければ、医師は、それに答える特別な時間をとってくれるでしょう。

 質問がばかげているとか、無意味であるとかとは思わないことです。あなたの疑問はすべて重要なことで、答えを聞く価値のあるものです。二度でも、三度でも同じ質問を繰り返してもかまわないのです。もちろん医師に平易な言葉を使ってくれるようにお願いしたり、初めての言葉の説明を求めたりすることもかまわないのです。
 医師の言ったことを理解するため、自分の言葉で内容を繰り返して、確認しましょう。

  訊くことは、5分くらい馬鹿になることであるが、訊かなければ一生馬鹿のままである。
                                                中国のことわざ
                                                      p-32
診察を受けるときには誰かと一緒に行きましょう
 診察に行くときは、家族か友人に一緒に行ってくれるようにお願いしましょう。そうすれば、聞き落としに注意したり、ノートを取ったり、質問をしたりしてくれるでしょう。後で、医師が何を言っていたのか話し合うこともできます。診察に行くとき誰も一緒にいってくれる人がいないのなら、家族や友人に電話で話をしてくれるように頼んで見ましょう。

医師と話をするときには、ノートやテープレコーダーを持っていきましょう。

 患者は、たいてい、医師と話をした内容をよく覚えていないものです。ノートを取ったりテープに録音したりしてもよいか聞いてみましょう。後でノートを読み返したりテープを聴きなおしたりしてください。これは、何を話したか思い出すのにとても良い方法です。さらに、家族や友人にこのノートを見せてください。そうすれば、医師が何を話したかを一緒に理解することができるでしょう。
(もどる) 治療の選択肢を知る

 治療の選択肢について次のようなことから知ることができます。

・ 医師に尋ねる。
・ セカンドオピニオンを取る。
・ ガン情報センターに電話する。1−800−4−CANCER(1-800-422-6237)、TTY(聴力障害者
  用)(1-800-322-8615)
・ インターネットであなたのガンのタイプについて調べる。

       あらゆる道は、二つの方向を持っている。   ロシアのことわざ

 主治医に、あなたの治療の選択肢についてたずねましょう。たいてい複数の治療法があるものです。それぞれがどんな効果があり、おこるかもしれない副作用(治療の反作用)は何かということをたずねましょう。医師が、あなたにどの治療を望むかを選択させる場合は、その選択肢についてあらゆることをたずねましょう。治療を始める前に、その選択について考える時間がほしいときには、その時間を取ってもらいましょう。

 ガン患者の治療をしている医師(腫瘍内科医)からセカンドオピニオンを取りましょう。この医師は、最初の治療法に賛成するかもしれないし、別の方法を薦めてくれるかもしれません。たいていの健康保険は、このセカンドオピニオンの費用を支払ってくれます。保険証券を読んだり、保険会社に電話したり、ソーシャルワーカーと話をしたりして、あなたの保険がセカンドオピニオンの支払いをカバーしているかどうか調べましょう。
                                                      p-33
 ガン情報サービスセンターに電話をしましょう。1-800-4-CANCER(1-800-422-6237)またはTTY(聴力障害者用) 1-800-332-8615 です。
 ほかの治療の方法についての情報や、あなたの疑問について答えてくれるでしょう。

 NCIのサイトであなたのガンについて調べてみましょう。

あなたのガンについてもっと良く知る
 あなたのガンについて知るための、ほかのいろいろな方法があります。本を読んだり雑誌の該当する記事を読んだりインターネットで探すこともできます。でも、あなたが探して知った知識については、必ず医師に話して確認しましょう。あなたが理解できていないことについて説明をしてくれるし、その知りえたことが、本当でなかったり、あなたのためには役に立たなかったりすることを教えてくれます。次に、ガンに関する情報を得る方法をまとめてみます。

・ 医師に、小冊子やデーター表など一般的なガンに関する印刷物をもらう。
・ 公立図書館や、病院や医科大学に付属する患者や家族に開放されている図書館に行き、ガ
 ンに関する情報を探す。
・ 病院に電話して、患者とその家族のためのガンに関するプログラムがあるかどうか尋ねる。
  たいていの病院では、そのようなクラスや支援グループがあります。
・ インターネットで探す。NCIのウエブサイトは検索を始めるのに良いサイトです。もし、コンピュ
 ーターを持っていないときには、図書館に行けば自由に使えるコンピューターが設備されてい
 ます。
・ ガン情報サービスセンターに電話をしましょう。1-800-4-CANCER(1-800-422-6237)または
 TTY(聴力障害者用) 1-800-332-8615 です。
                                                      p-34
    要約:ガンについて知り、自分自身を取り戻す

 ガンにかかったと知ったときには、将来を見失ってしまうことでしょう。まるで、日常の生活がめちゃめちゃになってしまったように感じるでしょう。

 自分自身を取り戻すためには、そのガンについてできる限りの知識を得ることです。医師や看護士と話をしましょう。図書館やインターネットやガン情報センターに連絡してあなたのガンやその治療に関する知識を学びましょう。
                                                      p-35
                                                      p-36
(もどる) 第5章

 援助する人たち

 ガンにかかったとき、たとえあなたの願いが多すぎるとしても、そのすべてがかなえられることはまれことです。

必要な援助を受けるために、次のようなことに眼を向けて見ましょう。

・ 家族と友達
・ ガンにかかっているほかの人たち
・ 支援グループの人たち
・ 宗教上のまたは信仰上の人たち
・ 保健医療提供者
・ 介護者

 一人でガンに立ち向かう必要はありません。ガン患者が支援をうけていればガンに対処することは難しいことではないと気づくはずです。
 支援を求めたり、受けたりすることは難しいことだと思っているかもしれません。一人で何でもすることになれていたり、支援を受けることは、弱者のしるしと思っているかもしれません。またほかの人に、あなたの弱点を知られることがいやだと思っているのかも知れません。このような思いは自然なことです。あるガン患者はこんなことを言っています。

  「私はいつも強い男であった。だが、今はほかの人の支援を受けなければならなくなった。
  初 めは抵抗があったが、支援を受けることが多くの困難を克服するのに役立った。」

 人は支援をすることに喜びを感じるものです。友達があなたと一緒にいても何を言ったらよいか、何をしたら良いかがわからないことがあります。あなたを避ける人もいるかもしれません。でも、料理を頼んだり、子供を学校に迎えに行ってくれるように頼んだりすればもっと気楽になれるかもしれません。
                                                      p-37
 家族や友達、ガンを持っている人たち、信仰上の、また宗教上の指導者、保健医療提供者などが支援をする方法はたくさんあります。また、あなたの介護者に、あなたが支援したり、援助したりする方法もたくさんあります。

家族と友人
 家族や友人があなたを支援する方法はいろいろあります。でも、家族や友人たちは、『何をしてほしいのか』というヒントやアイデアを、あなたが出してくれるのを待っていることがあります。あなたが話し相手をほしがっているとは知らない友達が、「どうしてるかと思って、ちょっと電話しただけだよ。」などというかもしれません。もし誰かが、「何かできることはないかな。」といってきたら、お使いや、診察のために車を運転してほしいと頼みましょう。

 家族や友人は、次のようなこともできます。

・ あなたと親しく付き合い、抱きしめたり、手を握り締める。
・ あなたが希望や恐れについて話すのを聞いてくれる。
・ 運転や食事の手伝い、お使いや家庭の雑用などの援助。
・ 医師の診察や、治療への同行。
・ 友人や家族に、あなたが何をしてほしいかを教える。

      少しの援助は、多くの哀れみに勝る。  ケルト人のことわざ

ほかのガン患者
 友人や家族が援助してくれているとしても、あなたはガンに現在かかっている人や以前にガンにかかったことのある人に会いたいと思うことでしょう。その人たちとは、あなたが、ほかの人とは話せないことについていろいろと話をすることができます。ガンにかかった人たちはあなたが何を感じているかを理解し、さらに次のようなことができるでしょう。

・ 何が期待できるかを話し合う。
・ どのようにガンに立ち向かい、普通の生活をしているかをおしえてくれる。
・ 一日一日を充実させる方法を学ぶ助けとなる。
・ 未来に対する望みをあたえてくれる。
                                                      p-38
 医師や看護士に、あなたがほかのガン患者に会いたがっていることを話しなさい。病院内のほかのガン患者に、診察室やガン支援グループを通して会うことができるでしょう。

    道の先の方のことを知りたければ、帰ってきた人に聞きなさい。  中国のことわざ

支援グループ
 支援グループとは、ガン患者やガンにかかわった人たちの集まりです。このグループは、あなたや、あなたの愛する人が、同じ問題を抱えた人たちと顔を合わせて話し合うことができます。たいていのグループには、話し合いと同じように勉強会を開催しています。また会合を運営するリーダーがいます。このリーダーはガン患者であったり、訓練を受けたカウンセラーです。
 支援グループが自分には合わないと感じることがあるかもしれません。支援グループが助けてくれないと思ったり、あなたの気持ちについて、ほかの人と話し合いたくなかったりするでしょう。または、ミーティングが、あなたを悲しませたり落ち込ませたりすることを心配しているのかも知れません。

 支援グループが、非常に役に立つということを知ることは、良いことです。グループの人たちは次のようなことをします。

・ ガンを持つとはどんなことかということをはなす。
・ お互いが良くなるように助け合い、望みを持ち、一人ではないことを感じさせてくれる。
・ ガンの最新の治療法について勉強する。
・ ガンに対処する方法に関しての情報の共有をする。

 ある女性がこう言いました。

  「初めてほかのガン患者と一緒になって、みんなの口から、私が感じていたのとまったく同じ  恐れや憤り、喜びなどが話されるのを聞いたときのうれしさは、言葉にあらわすことができま  せん。あなたはこの人たちを完全に信頼することができます。私は、この会合に救われる思  いのめまいのようなものを感じました。」
                                                      p-39

支援グループのタイプ

・ 一部のグループはすべてのガンを対象としていますが、ほかのグループでは特定のガン、た
 とえば乳ガンの女性や、前立腺ガンの男性のみを対象としていることがあります。
・ グループは、誰にでも開かれているか、特定の人たち、たとえば特定の年齢、性別、文化、宗
 教などで限られていることもあります。あるグループが10代かそれ以下の子供たちだけを対
 象としているようにです。
・ ガンに関するすべてのことを対象としているグループや、ガンの一部分たとえば治療の選択
 と自尊心についてのみを対象にしているグループもあります。
・ 治療のグループは感情的な事たとえば、悲しみや悲嘆というようなことを対象にしています。
 精神的な支援をする専門家たちがよくこのグループを構成しています。(P42からの“ヘルスケ
 アーの人たち”を参照)
・ ガンにかかっている人があるグループに属し、その愛する人が別のグループに属していると
 いうようなグループがあります。この場合、考えていることや、感じていることの本心を話すこ
 とができ、それによって誰かの心を傷つけるというようなことがありません。
・ 患者と家族が一緒に同じグループに属していることもあります。この場合、お互いが、相手の
 状況を理解するのに大変都合の良いことになります。
・ オンラインの支援グループは、コンピューターで会合をするグループです。チャットルームや
 リストサーブ、討議場(司会者のいる)などで、電子メールを使って話し合いをします。昼でも夜
 でもいつでも話をすることができるので、このオンライン支援グループが好まれることがありま
 す。また、ミーティングに行くことができない人たちにも好まれています。このオンライングルー
 プの最大の問題は、ここでの話し合いの内容が確実であるかどうかの確信が得られないこと
 です。インターネットで知ったガンに関することに関しては、つねに医師と話し合ってください。

 もし、支援グループを選ぶのであれば、いくつかのグループを訪ねて、それがどのようなものであるかを見てみましょう。どのグループがあなたに合うのでしょうか。たいていのグループは無料ですが、少し費用のかかるところもあります。保健がこのサポートグループの費用をカバーしてくれるか調べてみましょう。

どこに支援グループがあるか
 病院、ガンセンター、地域社会、または学校などに、支援グループが組織されています。以下は、近くの支援グループを見つける方法です。

・ 近くの病院に電話をして、ガンの支援プログラムがあるかどうかをたずねる。
・ 新聞の健康欄で、ガン支援グループのリストを見る。
                                                      p-40


(もどる) 精神的なささえ
 精神性とは、世界を見てその中にあなた自身の居所を見出すことです。精神性には信頼、宗教、心情、価値、そして自己の存在価値をも含みます。教会、寺院、モスクなどに行く行かないにかかわらず、たいていの人は精神性をもっています。
 ガンはその精神性に影響を及ぼすことがあります。ガンが新しい、またはより深い意味合いをその信念にもたらすことがあります。また、その信念が打ち砕かれることもあります。

 たとえば、
・ なぜガンにかかったのか理解に苦しむ。
・ 生きる目的について、ガンが人生にどのように影響してくるのか、などに思い悩む。
・ 神への信頼に疑問を持つ。

 自分の信頼心が、心の安定の元であることが理解されるでしょう。神に祈ったり、宗教的な本を読んだり、瞑想したり、精神的な支えとなる人たちと話したりすることにより、ガンによりよく対処することができることがわかるでしょう。ガン患者の奥さんは、こういいました。

  「私自身では、夫の病状をどうすることもできませんでした。落ち込んでいたときはたいへん  でした。でも、私の信頼心が力を与えてくれ、平静を取り戻しました。」

 ガンは、人の価値観を変えてしまいます。所有しているものや、日常での任務などは、価値が低くなってしまったと感じることでしょう。愛する人と過ごす時間を多くしたり、ほかの人を助けたり、野外で活動したり、新しいことを勉強始めたりすることでしょう。

        満足している人は、必ずしも豊かではない。  スペインのことわざ
                                                      p-41


医療介護の人たち

 ガン患者には、医療を提供する治療チームがあります。このチームには、医師、看護士、ソーシャルワーカー、薬剤師、栄養士、その他の医療介護の人々が含まれます。おそらく、これらの人たちを同時に見かけるということは無いでしょう。実際、決して会うことの無い人も、この医療提供者の中にいます。


医師
 一人のガン患者には、たいてい二人以上の医師がついています。たいていは、一人の医師と会っていることと思います。この人はあなたのチームのリーダーです。この人はあなたと合うだけでなく、あなたの治療チームのほかの人たちと共同作業をしています。
 あなたがどのように感じているかを、必ず医師に伝えるようにしてください。気分が悪くなったり、落ち込んだり、痛みを感じたりしたときには、医師に知らせてください。(詳細は、P−5の疼痛尺度と疼痛記録を参照)

 あなたがどう感じているかを知れば、医師は、次のようなことができるでしょう。
・ あなたが良くなっているか悪くなっているかがわかる。
・ ほかの薬や治療が必要か否か、判断できる。
・ 必要とするほかの支援が得られるよう援助する。

 医師がどれくらいの頻度で会いに来るか、いつテストをするのか、治療が開始されるどれくらい前に知らされるのか、などをたずねましょう。


看護士
 たぶん、治療チームの中で看護士に一番多く会うことでしょう。もし入院していれば、看護士は一日に数回あなたを見に来るでしょう。家にいるとすれば、訪問看護士が来て、治療や看護の手伝いをしてくれるでしょう。看護士はクリニックや医師のオフィスでも仕事をしています。
 看護士とは、日々の懸念事項について話をすることもできます。看護士は、特定の薬が気分を悪くすることもあるというような、何が予想できるかというようなことを話してくれます。また、何があなたを悩ませているのかなどについても話をすることができます。
 看護士は、希望や援助を与えてくれ、家族や友達とあなたの感情について話をする方法なども教えてくれます。
 看護士は、治療チームのほかの人たちと共同作業をしています。看護士に、更なる援助が、ほしいかどうか知らせてください。
                                                      p-42

薬剤師

 薬剤医師は処方するだけでなく、あなたの使用している薬剤について教えてもくれます。

たとえば、
・ 服用している薬が、どのように作用するか。
・ 薬をどのような頻度で服用するか。
・ 副作用とその対処法について。
・ 併用すると危険な薬について
・ 食べてはいけない食品や、してはいけないことなど。たとえば長時間にわたって太陽に照らさ れているなど。


栄養士
 ガン患者は、食事を取ることや、消化することに障害を持つことがあります。食事を取ることの問題は、抗ガン剤や治療の副作用として起こることがあります。またふさぎこんで食欲を失い、食べたくないと感じることによることもあります。
 栄養士は、栄養的でおいしく、食べやすい食品について教えてくれます。また食べることを容易にする方法、たとえば化学療法を受けているときに、食物が金属のような味がしないようにプラスチックのフォークやスプーンを使用することなどを教えてくれます。ガン患者の障害についてよく知っている栄養士を紹介してくれるように、医師や看護士にお願いしてみてください。


ソーシャルワーカー
 ソーシャルワーカーは、ガン患者や家族にミーティングで、以下のような日々のニースについて支援していきます。
・ あなたの近くの支援グループをみつける。
・ 金銭問題、請求の支払いをするようなこと。
・ あなたの上司とガンについて話をする。
・ 事前指示や遺書など、事務処理に関すること
 (事前指示や遺書に関しては、第7章 p63 日々を生きる 参照)
・ 家族や愛する人とあなたのガンについて話をする。
・ 失意や悲しみ、悲嘆などに関する感情に対処する。                     p-43
・ ストレスに対処し、リラックスする新しい方法を学ぶ。
・ 医療保険、契約上カバーするものとカバーしないものなどについて学ぶ。
・ 病院やクリニック、医師のオフィスへの交通手段を探す。
・ 訪問看護士の訪問を手配する。


患者指導員
 患者または医療指導員は、あなたのガンについてさらに知ることを援助します。あなたのニーズに適する情報を見つけ出します。患者指導員は、あなたが理解しがたいことを説明できる専門家でもあります。たいていの病院や治療センターには患者指導員が運営する資料センターがあります。このセンターには、本、ビデオ、コンピューター、やその他の機材が用意されており、あなたやあなたの家族の支援をします。これらの機材は、あなたのガンの種類、治療法の選択、副作用、ガンとともに、またガンを乗り越えて生きることなどの理解をすることに役立ちます。医師や看護士に患者指導員と話をすることをお願いしましょう。


心理学者
 たいていの人は、ガンのような深刻な病気にかかるとふさぎ込みます。心理学者は、あなたの心配していることについて話し合うことで、あなたやあなたの家族を支援します。心理学者は、何があなたをふさぎ込ませているかという原因究明だけではなく、あなたの感情や心配事に対処していく方法についてアドバイスをします。
 ガン患者支援の経験を積んだ心理学者と話をしたいというニーズを、医師や看護士に知らせましょう。


精神科医
 ガン患者は、落ち込んだり、ほかの精神的な障害を起こしていることもあります。精神科医はこのような障害に対して薬を処方することのできる医師です。精神科医はこのような感情について話し合いができ、必要とする精神医学的支援をしてくれます。精神科医に会いたいと思ったら医師や看護士に相談してください。
                                                      p-44

公認相談員とその他の精神医療専門家
 公認相談員、精神治療専門家、精神指導者、研修看護士、またほかの精神治療専門家も感情や、悩みごとや心配事に対処してくれます。たとえば、こんなことです。

・ ストレスやふさぎこみ、悲嘆などについて話し合う。
・ 支援グループや治療期間の指導
・ 仲立ちとしての仕事、たとえば子供たちの学校や仕事上の上司との仲立ちなど。
・ 近くの医療提供者や医療サービスなどを差し向けること。

 近くの精神医療専門家を探すために、医師や地元のガンセンターと話し合いましょう。


病院の人たち
 病院にはあなたの入院滞在をより容易にしてくれる人々がいます。

 患者相談員は、あなたが問題や心配事、たとえば、医師や看護士、ソーシャルワーカーなどと話をすることが難しいと感じるようなことがあるときに援助をしてくれます。あなたとあなたの医療チームとの架け橋となります。

 退院プランナーは、退院の準備などを、あなたやあなたの家族とともに計画します。退院プランナーは、退院後の通院の予約や、家で必要と思われるものの準備などの支援をします。

 ボランテアは、病院に患者を訪ねてきて、元気付けと支援をします。本やパズルなどを持ってきてくれます。ボランテアたちは、たいていガンにかかったことがある人たちです。ボランテアの人たちに会いたければ、病院のスタッフに声をかけてください。
                                                      p-45

介護者
 介護者はあなたの日常の作業、たとえば入浴、衣服を着る、食事をするなどを援助してくれます。介護者は、家族のメンバーだったり親しい友人であったりします。あなたと同じに介護者自身も、援助や支援を必要としています。介護者への支援は以下のようなことも含みます。

・ チームを組む。
・ 介護者と情報を共有する。
・ ほかの介護者を見つける。
・ 介護者を助けるために、自分でできることは自分でする。
・ 感謝の気持ちを表す。

          友情に一方向はない。    マサイ(アフリカ)のことわざ


チームを作る
 介護者のチームを作りましょう。そうすれば、たった一人の人に頼ることはなくなります。チームなら、次のようなことを交代ですることができます。

・ 洗髪や、背中をさすってくれたり
・ 食料の買出しや、調理をしたり
・ 診療室まで車で送ったり
・ 銀行や郵便局などへのお使いをしたり
・ 台所を掃除したり、芝刈りをしたり
・ 放課後子供を学校へ迎えに行ったり


介護者に情報を知らせる
 あなたの治療や介護に関する情報を、介護者に知らせておきましょう。あなたの介護の中心となっている人と一緒に、医師や看護士と話をするようにお願いしましょう。あなたのガンについて、治療について、また非常事態のときに何をすればよいのかを話してもらいましょう。                                                          p-46
 次のようなことも役に立ちます。
・ 重要な電話番号のリストを作る。このリストには、あなたの医師、看護士、薬剤師、家族、近
 隣の人々、友人、精神的指導者などの番号を載せておきましょう。コピーを作って、家の電話
 のそばにも置いておきましょう。
・ 服用している薬について知らせておく。最新の服用している薬のリストを作りましょう。それぞ
 れの薬の名前だけでなく、一回の服用量、一日の服用頻度も記入しておきましょう。また、介
 護者には気をつけなければならない副作用や、薬のアレルギーなども知らせておきましょう。
・ 重要な書類に関して、知らせておく。介護者に、保険証書、社会保障書類、遺言状や生前指
 示書(尊厳死の遺言)、委任状などの保管場所を知らせておきましょう。(生前指示書(尊厳死
 の遺言)、遺言状や委任状などについては、P-63 第7章“日々を生きる”参照)


生きがいを見つける
 町には地域ボランテアがいます。これらの人々は、住居地や仕事場の近くで援助の手を差し伸べています。ボランテアは次のような方法で探すことができます。

・ 地域の新聞を見る。
・ 病院、図書館などで訪ねたり、研修会に行く。
・ 国または地方の健康部に電話する。
・ ガン情報センターに連絡し、(P-65の“参考資料”を参照)近くのボランテアプログラムを紹介
 してもらう。

 また、一時中断医療や在宅医療、ホスピスなどのサービスをしている地方自治体もあります。一時中断医療プログラムは、あなたの介護者が休みを取る時に、ほかの人を派遣してくれます。より詳しくは、地元の病院や在宅医療センター、ホスピスなどに連絡を取ってください。さらなる情報はp-65の“参考資料”を参照してください。
 在宅医療は、自分の家で、入浴や着替えなど、個人的なことを支援してくれる技術的な介護を受けることができるものです。医師がこのサービスを指示します。さらに詳しくは、医師または看護士に訊ねてください。
                                                      p-47
 ホスピスは、末期ガン患者に大きな安らぎを与えるものです。医療サービスや、末期ガン患者とその家族に、精神的なサポートをおこないます。ホスピスが一時中断医療をすることもあります。近くのホスピスについての更なる情報は、医師に相談してください。

   それしかなければ、勇気を奮い立たせることだ。      ユダヤのことわざ


介護者への気遣い
 ガンとその治療は、誰にでも大変なものです。もちろんあなたの介護者にとってもです。介護者に休みを取ることを勧めてください。そうすれば、用事を済ましたり、趣味を楽しんだり、休息することができます。
 介護者は、サポートグループに加わり、ほかのガン患者のお世話をしている人たちに会いたいと思っているかもしれません。近くのグループを探すには、近所の病院やガンセンターに連絡してください。
 介護者の落ち込みのサインに気をつけましょう。もし、介護者が落ち込んでいると感じたら、話をして見ましょう。専門的なアドバイスを受けるように勧めてみましょう。その間は、ほかの人が代わってサポートをしてくれることを話しましょう。
 落ち込みのサインについては P-8を参照してください。

気にかけていることを示す
 ユーモアのセンスを忘れないようにしましょう。友人や家族と冗談を言い合うのが好きならば、それを続けましょう。あなたを狼狽させるものを笑うことは、良いことです。ユーモアは自己コントロールの感覚を得る良い方法です。ガンの手術をたった今受けたばかりの婦人はこんなことを言いました。

  「手術のあと、多数の管が私についていました。それが見舞い客を居心地の悪いものにして  いました。みんなそのハイテクの機材を見ているので、“生物工学人間になった。”と冗談を  いいました。みんな笑い出し、気分がほぐれ、和やかに話すことができるようになりました。」

   ひとつの思いやりの言葉は、冬の3ヶ月間を暖める。   日本のことわざ
                                                      p-48
 そして“ありがとう”ということを忘れないようにしましょう。介護人に、その援助、支援、愛を感謝していることを伝えましょう。


(もどる) 要約:援助する人たち

 ガン患者のニーズは、ガンのためにしばしば変化していきます。日常の作業は、より困難になっていきます。感情が激しくなり、精神的な問題は以前にも増して迫ってきます。
 たとえ、ガン患者の欲求がいろいろとあっても、その欲求がすべて満たされることは難しいことです。どこでその必要とする援助が満たされるのか、知らない人が大勢います。

 援助を求めることのできるグループには、次のようなものがあります。

家族と友人。食事や、医療機関への送り迎え、電話、などの手伝いは役に立つことを知って
  はいます。それをしてあげたいとも思っていますが、何をしてほしいと思っているのかがわか
 りません。
ほかのガン患者。ガン患者は、ほかのガン患者と特別な気持ちの結びつきをします。何を今
 までしてきたか、またほかの人がどのように対処してきたかを聞くことにより、力づけられます・ 支援グループ。さまざまな支援グループがあります。どのようなグループが良いのかを考え
、 その様なグループを探すことを、介護士に相談しましょう。
・ 精神的な援助は、あなたの所属する教会や信仰に関するセンターから受けることができま
 す。また、読書をしたり、ほかの人と話したり、瞑想したり、祈ったりすることで、心の平静と強
 さを得ることができます。
地域及び病院に所属する介護者。訓練を積んだ専門家は、必要なあらゆる欲求に答える
 ことができます。
日常の介護をする介護人。あなたの介護をすると同時に、自分自身の身の回りのことをす
 る必要があることを理解してください。
                                                      p-49
                                                      p-50
(もどる) 第6章

新しい自分像への対処


 ガンにかかり、治療を始めると変化が起こります。


■ ガンにかかる前ほどの活力がなくなる。
■ 体が以前と同じではなくなる。
■ 独身の場合、女性関係が難しくなる。性生活で新しい困難が生ずる恐れがある。
■ 伴侶がいる場合、その関係の変化に直面する恐れがある。

 これらの変化は、受け入れがたいものです。しかし、ガンにかかった人は、時とともに以下のような新しい自分自身をもつようになります。

■ 人生に能動的になる。
■ 必要なとき援助を受けるようになる。
■ 性と親密性に関して、愛する人とオープンに話せるようになる。

 ガンとその治療は、あなたの外見と感じをかえます。


■ 外科手術は傷跡など外見に変化を生ずることもあります。
■ 化学療法は、脱毛などを生じることもあります。
■ 放射線療法は体力の消耗をきたします。
■ 薬により体重の増加や、太ったりすることもあります。
■ 治療が食事を難しくすることがあります。胃がひっくり返ったように感じたり、吐き気を催した
  りすることもあります。気分が悪くなり食欲がわかなくなることもあります。
■ 治療によっては、妊娠できなくなったり、精子に障害が出ることもあります。
                                                      p-51
 ガンの治療は数週間から数ヶ月かかります。良い点は、これらの副作用は治療が終わればなくなってしまうことです。
 治療が始まる前でも、これらの副作用について、できる限り知りたいと思うことでしょう。この副作用についての処置を医師と話し合うことが大切です。医師は、薬を代えたり、別な食べ物を指示してくれるでしょう。
 将来子供がほしいと思うならば、ガンの治療開始前に、生殖器関係の医師に紹介してもらいましょう。


疲 労
 ガンの治療が始まると疲れを感じる(非常に疲れるか、気力がなくなる)ものです。気力にあふれた、充実した日と、疲れてどうしようもない日があるでしょう。この疲れはガンの治療が終わってもしばらく続くこともあります。人によっては数ヶ月続くこともあります。
 気力にあふれた日と、疲労した日とどちらもあることを知っておきましょう。気分の良い日には何か特別なことをしてみましょう。疲れているときには、十分休みましょう。自分の予定を変えなくてはならないとしても、ほかの人に疲れていることを言うのを躊躇してはいけません。

  「ガンにかかる前は、気力にあふれていました。一日中働き、帰宅しては家族サービスをし、  テニスをして、活発な社会活動をしていました。いまは、自分の活力を節約し、化学療法を   受ける用意をしなければならないのです。毎日疲れきっており、ベッドから出るのにも苦労を  しています。」


あなたの自分像
 私たちはみんな自分がどのように見えるかという自分像をもっています。それは必ずしも好きではないかもしれないが、それになれ親しんでいます。
 ガンとその治療はその自分像を変えてしまいます。脱毛とか手術痕などにより変わってしまいます。治療が終われば、これらの変化(たとえば脱毛)は、元に戻ることもあります。ほかの変化(痕跡)は、自分像の一部として残ってしまいます。変化にはいろいろとあります。誰もがわかる変化もありますし、本人以外に気がつかない変化もあります。受け入れやすい変化もあれば、それに慣れるのに時間のかかるものもあります。                        p-52
 これらに対処することは大変なこともあります。でも、時間とともにそれらを受け入れていきます。家族や友人は、あるがままのあなたを愛することで、それを援助するでしょう。


活動的であること
 活動的であることは良いことです。水泳をしたりスポーツをしたり、エクササイズクラスに参加することなど、活動的であることは新しい自分像を受け入れるのに大変役に立ちます。活動的になれる方法について、医師に相談してみましょう。
 趣味やボランティア活動などは、自分像のイメージアップにつながります。読書をしたり、音楽を聴いたり、手芸をしたりなどです。また、子供たちに読書の仕方を教えたり、ホームレスの避難所でボランティア活動をしたりすることもあるでしょう。ほかの人を援助することに参加したり、楽しいことをすることで自分自身が快くなることを知るでしょう。


支援を受けること

 整形手術。ガンの手術が外見を変えてしまったときには整形手術(形成手術)を受けることもあります。この種類の手術は新しい自分像に適応するのに大変にやくにたちます。たとえば、手術痕を目立たなくする手術を受ける子ともできます。たいていの医療保険はこの整形手術代の支払いをカバーしています。

 
義肢。ガンのために体の一部が切断されたときには、義肢(人工の体の部分)をその部分に取り付けることができます。たとえば、足が切断されたときには義足がそこにとりつけられます。たいていの医療保険はこの義肢代の支払いをカバーしています。

 
かつらとスカーフ。ガンの治療は頭髪の脱毛を引き起こすことがあります。保温をしたり、強い日差しから守ったりするのに、頭をカバーすることも必要になります。また、かつらやスカーフは外見を整えることにもなります。

 治療が始まる前に、かつらを用意しておくことは良い考えです。これは、かつらの色や形を自分自身の髪に合わせることができます。髪がなくなる前にかつらをつけ始めることもできます。かつらやスカーフが、ぴったりと合うように、それでいてやわらかくて、よわよわしい頭皮を傷つけることのないように選ぶこともできます。かつらの費用を所得税の控除とすることもできるかもしれません。たいてい治療がおわれば、色が違ったり感じが違ったりすることはありますが、髪は元のように生えてきます。
                                                      p-53


配偶者やパートナーとともにガンに向き合う

 ガンにともに向き合うことによってより強い絆を結び合うカップルもいます。自分たちの人生を新しい方向でみつめていきます。以前は重大なことに見えた問題も、そうは感じなくなります。多くの問題を抱えたカップルもいます。心理学者はこんなことを言っています。

 ”ガンの治療が始まる前に良い関係を築いていたカップルは新しい問題に対処する良い下地 を持っています。もし、関係に問題が生じたとすれば、この問題の本当の原因はガンになる以 前にあったものと思われます。“


性生活の変化
 ガン患者とその配偶者またはパートナーはお互いに愛を表現することに困難を感じることもあるでしょう。たとえば、ある人が言うには、その人の奥さんは、ガンが移るのを怖がって以前のようにキスをしてくれなくなったそうです。ガンが人から移ることはありません。もしあなたからガンが移ることを心配している人がいたら、医師に話を聞くことをすすめてください。
 ガンとその治療のためにセックスの問題を抱えている人もいます。たとえば、外見がいやでその気にならないとかです。もしこのことが起こったなら、よく話し合ってみることです。あなたの身体より、あなた自身を愛しているはずです。45歳の人はこんなことを言っています。

  「私の妻は乳房除去手術を受けたので、私の愛が以前と少しも変わりがないということを理  解しがたかったのです。私は、妻のガンを取り除くことが重要だったのです。左の乳房よりも  妻のいろいろな長所を愛していることを、わからせなければなりませんでした。」

 あなたの配偶者やパートナーはあなたと愛し合うことを怖がっているかもしれません。あなたを傷つけたり、気分の優れないときにしようとしたりすることを心配しているのです。愛し合いたいのか、抱きしめたり、キスをしたり、寄り添うだけでよいのか、教えてあげましょう。                                                            p-54 
 ガンやその治療は、セックスにほかの問題をひきおこします。
・ 疲労感がセックスの意欲をなくす。
・ 手術が体位に苦痛を強いる。
・ 前立腺ガンの治療は勃起障害を引き起こす。
・ 膣の乾燥を引き起こす治療がある。
・ オルガスムを感じることができないことがある。

 ばつが悪いと感じても、援助者に性生活の話をしましょう。医師や看護士に、問題が起こっていることを話しましょう。薬やお互いが満足できる何か方法があります。また、ガンに対処している間、ほかのカップルとどのようにしたら良いかを話し合うことも役に立つことがあります。
 あなたは、外見ではなく、あなた自身が重要なのです。あなたの、ユーモアのセンス、知性、愛らしさ、良識、才能、誠実さ、その他のさまざまな品性があなた自身を形作っているのです。セックスだけが人間関係の基ではありません。愛や尊敬を表現する方法はたくさんあります。

デート                                
 あなたが独身者であるなら、デートすることを心配することでしょう。あなたが以前のような良い外見ではなくなってしまったことを気にすることでしょう。ガンについてどのように、いつ話したらよいのかわからないことでしょう。
 乳ガンの女性は、デートは想像していたよりずっと簡単だったといっていました。疾患についていつ話したらよいのかなど自然にわかってしました。また、自分のガンはデートしている相手には何の害ももたらさないことも話しました。

 「ボーイフレンドに、ガンのことと、私の体を見せることがいやであることを話しました。彼は安 心しました。それはなんでもないことだと言いました。私自身が大切で、体がどのように見える かではないと。」
                                                      p-55

(もどる)

要約:新しい自分像に向き合う

 ガンにかかり、治療が始まると変化が生じます。

■ ガンにかかる前ほどの活力がなくなる。
■ 体が以前と同じではなくなる。
■ 独身の場合、女性関係が難しくなる。
■ 性生活で新しい困難が生ずる恐れがある。

 これらの変化は、受け入れがたいものです。しかし、ガンにかかった人は、時とともに
以下のような新しい自分自身をもつようになります。

■ 人生に能動的になる。
■ 必要なとき援助を受けるようになる。
■ 性と親密性に関して、愛する人とオープンに話せるようになる。
                                                      p-56
                                                      p-57

(もどる) 第7章

一日一日を生きる


 ガンにかかったなら、一日一日を精一杯に生きましょう。

■ 日々の仕事をこなし、毎日を楽しく生きましょう。
■ 可能なら、仕事に戻りましょう
■ 将来の計画を立てましょう。

 ガンとともに生きることは、今までに経験した中で最大の難問でしょうか。たいていの人にとっては、そうでしょう。ほとんどの人にとって、ガンに対処し、死ぬことについて直面することは、人生を変えるできごとです。

  「ガンは、毎日をいかに過ごすかを、真剣に考えさせました。時間が限られていることを意識  させられましたので、毎日をできる限り充実させようと決心しました。私にとって良いと思わ   れるもの、満足をもたらすものに時間を使おうと誓いました。」

 毎日をできるだけ普通に過ごすようにしましょう。猫をかわいがったり、夕日を眺めたりなど、好きな単純なことを楽しみましょう。友達の結婚式や、孫の高校の卒業式などの大きなイベントを楽しみましょう。

      季節ごとに、それぞれの楽しみがある。  スペインのことわざ


日ごろの生活を続ける
 元気だと感じたら、日ごろの生活をしましょう。これは、仕事に行ったり、家族や友人と時間を過ごしたり、趣味の活動をしたり、旅行に行ったりすることも含んでいます。
                                                      p-58
 同時に、ガンについての思いに関する時間も取りましょう。でも、気分が優れないときに、楽しそうなフリをすることはやめましょう。自分の感情を無視することは、自分の気持ちを、少しではなく最悪にします。(第3章 P-25ガンについての思いを共有すること 参照)

 以下の質問を参考にして、自分の時間の使い方を考えて見ましょう。
・ 誰と一緒にいたいか。
・ 誰が笑わせてくれるか。
・ 時間をどのように使いたいか。
・ 何か楽しくさせるか。
・ 一番楽しめるものは何か。
・ 好きでないものは何か。
・ 今までしたことがないことで、したいことがあるか。


楽しみ
 ガンにかかった人は、今までしたことがない、何か新しい楽しいことを始めます。たとえば、熱気球に乗ったり、深海釣りなどをしたことがありますか。何か楽しいことをしようと思っていても、それをする時間が取れなかったのではないでしょうか。ガンにかかった若い女性はこんな風にしました。

  「私たち患者は、あまりにも多くの有意義な活動で生活を満たしてしまうので、正気を保つた  めの息抜きまでなくしてしまう。」

 何かするためにではなく、楽しむために何かをしましょう。でも、へとへとに疲れないようにしましょう。疲れすぎると、落ち込むものです。十分に休息をとりましょう。そうすれば気力を力強く感じ、楽しい活動を楽しむことができます。

        旅は、ほうびである      タオのことわざ
                                                      p-59

体の運動
 身体的活動、たとえば水泳、歩行、ヨガ、サイクリングなどをすると、より活力がましてきます。このような身体活動は、体を強くし、気分を爽快にしてくれます。毎日、エクササイズをすると、次のようなことが起こります。

・ 気分良く感じることが多くなる。
・ 筋肉の調子を整える。
・ ガンの治癒を早める。
・ ストレスのコントロールをする。
・ 悪い考えから気をそらせる。

 もし、今までこのような身体運動をしたことがなくても、これから始めることができます。何かしたいと思うことを選んで、医師にそのOKをとりましょう。もしベッドに寝ていなくてはならないとしても、何かできることはあります。
 ゆっくり始めましょう。一日5分か10分くらい運動しましょう。十分できると感じられたら、30分くらいまでゆっくりと時間を延ばしていきましょう。この運動の最中に痛みを感じたら、医師や看護士に知らせましょう。


仕 事
 ガン患者は、仕事に戻りたいと思うことがあります。この仕事は、収入だけでなく、毎日の規則正しい生活のリズムを与えてくれます。仕事は人々の気分を高揚してくれます。
 仕事に戻る前に、医師や上司に相談しましょう。仕事に十分耐えられることを確認しましょう。仕事の時間を短縮したり、仕事の内容を変更することも必要かもしれません。化学療法や放射線療法を受けていても十分に仕事をすることができる人もいれば、治療が終わるまで、控えなければならない人もいます。
                                                      p-60
上司や仲間と話し合う

  「仕事に戻ることが不安でした。一番大きな問題は何を上司や仲間に話をするかということ   でした。彼らは協力的でしたが、私は、私を以前と同じようには仕事ができないと思っている  だろうと疑っていました。」

 上司や仲間が、あなたがガンにかかる前とは、少し違った扱いをしていることに気がつくかもしれません。何を言っていいのかわからず、また気持ちを傷つけてはいけないと思って、何も言わないことがあります。あなたがガンについて話をしたいということを知らずに、むしろ仕事のみに集中していると思っているかもしれません。
 もしできるなら、ユーモアやジョークを言ってみましょう。ユーモアは気まずい雰囲気を壊して、和やかにしてくれます。上司や仲間に、ガンについて話したいと思っていることや、話すチャンスを知らせましょう。それが自分で思っているほど難しいことではないことがわかるでしょう。

法的な権利
 ガン患者が仕事に戻りたいと思ったり、新しい仕事に就こうとしたときに、障害にぶつかることがあります。数年も前にガンにかかった人でさえ、トラブルとなることもあります。真実でない社会通念を信じていて、ガン患者を平等に取り扱つかおうとしない経営者もいます。ガンは人から人へと伝染し、またはガン患者は病気がちであると思っている人もいます。また、ガン患者は保健が低いと思っていたりします。
 これらは、ガンのような障害を持った人を差別する(不平等に取り扱う)のは法律違反です。

 以下の法律は労働者の権利を保護しています。

・ 連邦社会復帰法 1973年
・ アメリカの障害者法 1990

 ほとんどの州には、ガン患者の権利を保護する法律が定められています。もし、ガンであることを理由に、就業することができなかったと思われるときには、法律的手段(告訴)を講ずることができます。以下は法律的な権利について知る方法です。

■ 州のソーャルワーカーと話をし、法律について勉強する。ソーシャルワーカーは、あなたの就  業に関する権利を保護してくれる、州の代理人の名前を教えてくれるでしょう。
■ 州の労働局や市民権利保護事務所に連絡を取る。
                                                      p-61
■ 州の議員や州知事に連絡を取る。インターネットや図書館などで、誰が地区の議員であり、   どうすれば連絡が取れるかを知ることができます。
■ 国立ガンセンター(NCI)のホームページで、ガン立法データーベースプログラムを参照する  URLはhttp://www.scld-nci.net/

 ガン患者としての特典についてもう少しあります。ひとつは、家庭医療休業法です。この法律は、労働者に、家族や医療上の問題に対処するために、最高12週間の無給の休暇を与えることを認めています。さらに詳しくは、勤務先近くの労働局で調べてください。また、アメリカ労働局に連絡することもできます。
(202)693-0066 または http://www.dol.gov/

 ガンのために仕事に復帰できない人もいます。たとえば、重い箱を持ち上げることが仕事の一部であった人が、それができなくなってしまったとかです。もし、以前の仕事ができなくなってしまったときには、州の社会復帰プログラムに連絡を取ってください。ほかの仕事に必要な技術の訓練プログラムを調べてみましょう。詳しくは、電話帳の青いページの州の行政のところを調べてください。


将来について
 治療後については、回復後に何をしたいかを考えることでしょう。目標を設定することは良いことです。目標を設定することで、前向きに考えたり行動したりすることができます。目標は来週、来年、そして将来どうしたいかということに眼を向けさせてくれます。ガン患者の一人が言ったように・・
 
  「治療が終わったら、ヨーロッパ旅行に行こうと思いました。治療中の時間を、訪問予定の国  を調べたり、ほかの人の旅行記を読んだりすることに使いました。新しいカメラを買い、使い  かたを覚えました。フランス語の復習もしました。」

 目標は、つらい時間を乗り越えることにも役に立ちます。実際、結婚式に出席するとか、新しく生まれた孫に会いに行くなどのことは、医師が期待した以上の良い結果をもたらしました。                                                         p-62
 ガン患者にとって“家の整理をする”ことなどは良いことです。遺書の作成や末期のことについて愛する人と話をすることを考えて見ましょう。自分の写真をアルバムに貼ったり、家族の歴史を書き残したり、自分のものを整理したりなどしたいと思うことでしょう。
 家の整理をすることは、諦めではありません。実際、それはガン患者が一日一日を充実して生き、将来について考える方法なのです。病気であるか否かにかかわらず、誰にでも大切なことです。

    明日を待ち望めば、明日はやってくる。望まなくても、やってくる。
                                        セネガルのことわざ


事前指示
 事前指示は、死ぬ間際にどのようにしてほしいかを事前に自分で決めておける法的な文書です。それは、自分でそれを言うことができなくなってしまったときに、愛する人や医師に、何をしてほしいかを知らせてくれるものです。
 ガン患者は将来についてのさまざまな選択肢に直面します。自分の最後について話すことはつらいものです。でもそれをすれば、気持ちが落ち着きます。それは、愛する人や、介護者にその選択をさせず、自分自身で厳しい選択をしたのだという心配りです。

 事前指示には次のようなものが含まれます。

■ 相続人の間でお金をどのように配分するか。
■ 死ぬ間際にどのような医療をしてほしいか。(尊厳死)
■ 自分自身で決定できなくなったときに、代理で医療の決定をする「医療代理人」への委任状
■ ほかの誰かに自己のお金や物を分け与える信用状

 更なる情報は、ガン情報サービスへ問い合わせをしてください。
1-800-4-CANCER (1-800-422-6237) またはTTY(難聴者向け)1-800-332-8615
インターネット http://cancer.gov. LIVE HELPをクリック
                                                      p-63
 治療を終了すれば、ガンにかかる前と同じ生活に戻れると期待していることでしょう。しかし、生活が落ち着くまでには時間がかかります。これはつらい期間です。治療後の生活に適応できるまでの間、”前向きに(Facing Forward)”シリーズの“治療後の生活(Life After Cancer Treatment)”を読むことを薦めます。ガン情報センターやインターネット http://cancer.gov で無料で手に入れることができます。


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要約:一日一日を生きる

 ガンとともに生きるということは、死を見つめることではなく、残された自分の命を−それが長くても、短くても− どのように生きるかということです。日々の活動を続け、楽しいことをしましょう。どちらも、精一杯生きることに必要です。

 精一杯生きるということは次のようなことでしょう。

■ 日々の仕事と楽しみを満喫する。
■ できるなら、仕事に復帰する。
■ 将来の計画を立てる。
                                                      p-64

(もどる) 参 考

 自分自身や、家族、医師のために、更なる情報が必要となったとき、次の国立ガンセンター(NCI)のサービスが役立つでしょう。

電話
ガン情報サービス (CIS)
 正確な、最新のガンの情報を、患者、家族、医療従事専門家、一般へ提供します。情報の専門家が、最新の科学情報をわかりやすい言葉に直し、英語、スペイン語、TTYで提供します。
 フリーダイヤル:1-800-4-CANCER (1-800-422-6237)
TTY(難聴者向け):1-800-332-8615

インターネット
 http://cancer.gov
NCIのウェブサイトで、ガンへの対処、ガンの因子と予防、検査と診断、治療と生存率、治験、統計、資金、訓練、雇用機会、研究所とそのプログラムの案内をしています。

ほかのガン支援グループ
“前向きに(Facing Forward)”シリーズ:“治療後の生活(Life After Cancer Treatment)”
 この小冊子には、ガン患者へのサポートを提供するさまざまなグループの情報がふくまれています。必要な方はガン情報サービスまで連絡をいただくか、インターネットで手に入れることができます。  http://cancer.gov
                                                       p-65

NATIONAL CANCER INSTITUTE

NIH Publication No.05-2059
Revised September 2003
Printed August 2005