・ | ガンの生物学的療法 Q&A | Biological Therapies for Cancer: Questions and Answers |
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キーポイント |
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・ 生物学的療法はガンと戦ったり、他のガン治療に起因する副作用を軽減するために 身体の免疫機構を用います。(Q1参照) ・ 生体反応緩和物質(BRMs)は身体内に自然に生成されますし、また研究室で生成す ることもできます。BRMsは、疾患と戦う身体の能力を高めたり、指示したり、再生産 したりするために、身体の免疫防御作用とガン細胞の両方に作用します。(Q3参照) ・ 生物学的療法は、インターフェロン、インターロイキン、コロニー刺激因子、モノクロー ナル抗体、ワクチン、遺伝子治療や、非特異性の免疫調節性の薬剤などが含まれま す。(Q4〜10) ・ 生物学的治療は多くの副作用を引き起こすことがあり、それは薬剤や患者によりさま ざまです。(Q11参照) |
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Q 1.生物学的治療とは何か Q 2.免疫系とその要素とは何か Q 3.生体反応物質とはなにか、またどのようにガン治療に使用されるか。 Q 4.インターフェロンとは何か Q 5.インターロイキンとは何か Q 6.コロニー刺激因子とは何か Q 7.モノクローナル抗体とは何か Q 8.ガンワクチンとは何か Q 9.遺伝子治療とは何か Q10.非特異性免疫調節性薬剤とは何か Q11.生物学的治療に副作用はあるか Q12.関連資料 |
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1. 生物学的治療とは何か |
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生物学的治療(免疫療法、生物療法、生体反応緩和療法とも呼ばれる)は、手術、化学療法、放射線療法などを含むガン治療の比較的新しい治療法です。生物学的療法は直接的又は間接的にガンと戦ったり、他のガン治療に起因する可能性のある副作用を軽減するために身体の免疫機能を用います。 |
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2. 免疫系とその要素とは何か |
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免疫系とは、外部からや、自己自身ではない侵入物による身体への攻撃を防御するために、はたらく、細胞と器官の複雑な相互作用です。このネットワークは感染症や疾患を守る身体の予防機能のひとつです。免疫系はガンを含む疾患にさまざまな方法で対抗します。たとえば、免疫系は身体内の健康な細胞とガン細胞との違いを認識し、ガン細胞を除去するように作用します。しかし、免疫系は、必ずしもガン細胞を異物とは認めません。免疫系が壊れていたり適切に作用しない場合にガンが発現する可能性があります。 生物学的療法は免疫系を治療したり、刺激したり、また強化するように作られています。 |
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免疫系細胞には以下のようなものがあります。 リンパ球は血液中や身体の多くの部分で見つけることができる白血球の一種です。リンパ球には、B細胞、T細胞、NK細胞などの型があります。 B細胞(Bリンパ球)は抗体(免疫グロブリン)と呼ばれているタンパク質を分泌する血漿細胞に成長していきます。抗体は、鍵が錠に一致するように抗原と呼ばれる異物を認識し、付着します。B細胞のそれぞれは、一つの抗体が一つの特異性抗原を認識するようにつくられます。 T細胞(Tリンパ球)は、主にサイトカインと呼ばれるタンパク質の産生により作用します。サイトカインは免疫系細胞間の連絡を取りあう作用をし、この中にはリンフォカイン、インターフェロン、インターロイキン、コロニー刺激因子などがふくまれます。 ある種のT細胞(キラーT細胞と呼ばれる)は、感染物、異物、やガン細胞を直接的に攻撃するタンパク質を放出します。他のT細胞(ヘルパーT細胞と呼ばれている)は、他の免疫系防御細胞に信号を出すためのサイトカインを放出することで免疫反応を調節します。 NK細胞は、異物や感染した細胞や腫瘍細胞を束ねて殺す強力なサイトカインやタンパク質を産生します。 キラーT細胞とは異なり、最初に接触した目標に対して、急速に攻撃を開始します。 食細胞は、食菌作用として知られている作用で、微細生物体や分子などを飲みこみ消化してしまうことができる白血球です。血液中を循環する単球や、身体の全体の組織に存在するマクロファージなどを含む数種類の食細胞があります。 |
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3. 生体反応物質とはなにか、またどのようにガン治療に使用されるか。 |
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ある種の抗体、サイトカイン、免疫物質はガン治療用に研究室で清算することができます。これらの物質はせいた違反の物質(BRMs)と呼ばれています。BRMsは、疾患と戦う身体の能力を高めたり、指示したり、再生産したりするために、身体の免疫防御作用とガン細胞の両方に作用します。BRMsにはインターフェロン、インターロイキン、ココロニー刺激因子マノクロナール抗体、ワクチン、遺伝子治療、非特異性の免疫調節製の薬剤を含みます。これらBMRsに関しては、Q4〜Q10で述べられています。 研究者は、新しいBRMsの発見、それらの働きの解明、それらをガン治療で使用する方法などを続けています。 生物学的療法は以下のように使われています。 |
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・ ガンの成長を、止める。制御する。抑制する。 ・ 免疫系により、ガン細胞を発見されやすくし、破壊されやすくする。 ・ 免疫系細胞(たとえばT細胞、NK細胞、マクリファージ)の殺傷能力を高める。 ・ 健康な細胞の成長過程のように、ガン細胞の成長過程を変更する。 ・ 正常な細胞のガン細胞化を妨害するか、逆転させる。 ・ 化学療法や放射線療法などにより損傷を受けたり破壊された正常細胞を修復したり 再生する身体能力の強化。 ・ ガン細胞の身体のほかの部位への転移を防ぐ。 臨床試験中のものもありますが、ある種のBRMsは標準治療となっています。BRMsは単独で使用されたり、化学療法や放射線治療など、他の治療と併用して使われています。 |
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4. インターフェロンとは何か |
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インターフェロン(IFNs)は身体内で自然に発生するサイトカインの1種類です。それはBRMsとして使用されるために研究室で産生された、第一のサイトカインでした。インターフェロンには、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγの3種類があります。インターフェロンαは、ガン治療でもっとも多く使用されています。 研究により、インターフェロンが、患者の免疫系が癌細胞に対抗して働く方法の改善に役に立つことを発見しました。加えて、インターフェロンはガン細胞の成長を遅らせたり、がん細胞がより正常な細胞の行動となるように発達させることなどに直接作用する可能性があります。また、研究者はある種のインターフェロンがNK細胞、T細胞、マクロファージを刺激し、免疫系の抗がん機能を高める可能性もあると考えています。 アメリカ食品医薬品局(FDA)は、ヘアリーセル白血病、黒色腫、慢性骨髄性白血病とAIDS関連のカポシス肉腫を含む特定の種類のガンの処置のために、インターフェロンαの使用を承認しました。調査によれば、インターフェロンαは腎臓ガン、ホジキンリンパ腫など他のガンの治療にも効果的である可能性がわかりました。研究者は他の多くのガンの治療のためにインターフェロンαと他のBRMsや化学療法との組み合わせの臨床試験を行っています。 |
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5.インターロイキンとは何か |
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インターロイキン(IL)はインターフェロンのように身体内に自然に存在し、また研究室で産生できるサイトカインです。さまざまなインターロイキンが特定されています。インターロイキンー2(IL-2又はアルデスロイキン)は、カン治療にもっとも広く研究されています。インターロイキンー2は、ガン細胞を破壊するリンパ球のような、さまざまな免疫細胞の成長や活動を刺激します。FDAはインターロイキンー2を、転移性腎臓ガンや転移性黒色腫の治療法として承認しました。 研究者は、白血病やリンパ腫、脳、直腸、結腸、胸部、前立腺のガンの治療のためにインターロイキンの可能性を研究しています。 |
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6.コロニー刺激因子とは何か |
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コロニー因子(CDF)(造血成長因子とも呼ばれる)は、通常は腫瘍細胞には直接影響を与えません。むしろ、骨髄幹細胞が、白血球や血小板、赤血球に発達することを促進させます。骨髄はすべての血液細胞の基であるので身体の免疫系にきわめて重要です。 CDFによる免疫系への刺激はガン治療を受けている患者に有用となる可能性があります。抗ガン剤が白血球、赤血球、血小板などを産生する身体機能に損傷を与える事があるので、抗カン剤の投与を受けた患者は感染症の発現、貧血、出血などのリスクが高くなります。CDFを用いて血球の産生を刺激することにより、血液製剤による感染リスクや輸血などの必要性を増すことなく抗がん剤の服用を増加させることができます。この結果、CDFは大量化学療法と併用されるときに特に有効であることがわかりました。 |
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CDFのいくつかの例とそのガン治療への応用は以下のようです。 |
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・ G-SCF(フィルグラスチム)とGM-CSF(サグラモスチム)は、化学療法を受けている 患者の白血球数を増加させ感染リスクを低下させることができます。G-CSFとGM-C SFは、幹細胞及び骨髄移植に備え幹細胞の産生を刺激します。 ・ エリスロボイエチン(エボエチン)は、赤血球数の増加をさせることができるので化学療 法を受けている患者の赤血球輸血の必要性を減少させることができます。 ・ インターロイキンー11は、身体の血小板産生を助けるので、化学療法を受けている 患者の血小板輸血の必要性を減少させます。 研究者は、臨床試験でCDFの、リンパ腫、白血病、多発性骨髄腫、黒色腫及び、脳、肺、食道、胸部、子宮、卵巣、前立線、腎臓、大腸、直腸など多種多様なガンの、治療のために臨床試験を行っています。 |
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7.モノクローナル抗体とは何か |
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モノクローナル抗体(MOABs又はMoABs))と呼ばれる研究室で作られる抗体の効果については、研究者に評価されています。これらの抗体は単一の細胞により生産され、特定の抗原に対して有効です。研究者により、さまざまなガン細胞の表面で見つかる抗原に特有であるMOABsを作る方法を研究しています。 MOABsを作成するために、まずマウスに人間のガン細胞を注射します。これに反応してマウスの免疫系はこれらのガン細胞に対する抗体を作ります。その後、マウスからこの抗体を生産するマウスプラズマ細胞を取り出し、ハイブリッドーマと呼ばれる複合細胞を作るために研究室で成長させた細胞と融和させます。ハイブリッドーマは、これらの純粋な抗体やMOABsを大量に、かつ無限に生産することができます。 |
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MOABsは、多方面にわたるガン治療に利用される可能性があります。 |
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ラジオアイソトープを運んでいるMOABsは卵巣や結腸、前立腺などのガンの診断に役立つこともできます。 |
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リツクサン(リツクシマブ)とハーセプチン(トラスツマブ)は、FDAの承認を受けたMOABsの例です。リツクサンは非ホジキンスリンパ腫の治療のために使われます。ハーセプチンは、HER−2と呼ばれるタンパク質を多量に生じる転移性乳ガン患者の治療に用いられます。 |
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(ハーセプチンに関する詳細な情報に関してはインターネット上の、国立ガン研究所(NCI)ファクトシートの「ハーセプチンR(Herceptin-R)(トラスツマブTrastumab):質問と回答」を利用することができます。 http://www.cancer.gov/cancertopics/factsheet/Therapy/herceptin |
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臨床試験では、リンパ腫、白血球、黒色腫や、脳、胸部、肺、腎臓、大腸、直腸、卵巣、前立腺、その他の領域におけるガンの治療のためのMOABsが研究されています。 |
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8.ガンワクチンとは何か | ||
ガンワクチンは現在研究中の生物学的治療のひとつの種類です。はしか、耳下腺炎、破傷風などが発現する前に、感染症のためのワクチンが注射されます。これらのワクチンは、感染因子の表面に存在する抗原の弱められた物質を、免疫細胞に曝すので感染症に対して有効となります。この暴露により免疫系が、感染因子に特有なプラズマ細胞の産生を増加させる誘引となります。免疫系も感染因子を認識するT細胞の産生を増加させます。これらの活性化された免疫細胞はこの暴露を記憶しているので、次に抗原が身体内に侵入すると免疫系にはすでに反応が準備されており感染症をとめることができます。 研究者により患者の免疫系にがん細胞を認識させる可能性のあるワクチンを開発しています。ガンワクチンは、既存のガンを治療するか(治療ワクチン)ガンの発現を予防(予防ワクチン)するように作られています。治療ワクチンはガンと診断されてから注射されます。このワクチンは既存の腫瘍の成長を止めたり、再発することを防止したり、先に実施された処置により殺されなかったがん細胞を除去します。腫瘍が小さいうちに与えられたガンワクチンはガンを根絶する可能性があります。 一方では、予防ワクチンは、ガンが発現する前に健常な人にあたえられます。このワクチンは免疫系を刺激し、ガンを引き起こす可能性のあるウイルスを攻撃するように作られています。これらの発がん性ウイルスを目標にすることで、特定のガンの発現を予防することが期待されています。 早期のガンワクチンの臨床試験は主に黒色腫に関係したことでした。治療ワクチンはリンパ腫、白血病や脳、胸部、肺、腎臓、卵巣、前立腺、脾臓、大腸、直腸などのガンを含む多くの治療に使用されています。 また、科学者はガンワクチンが他のBRMsと結合して使われる方法を研究しています。 |
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9.遺伝子治療とは何か |
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(もどる) | 遺伝子治療とは、疾患と戦うために人の細胞内に遺伝子物質をもたらす実験的な治療方です。研究者はガンに対する免疫応答を改善することができる遺伝子治療の方法を研究しています。たとえば遺伝子はがん細胞を認識して攻撃するその能力を高めるために免疫細胞にくみいれられます。もう一つのアプローチは、がん細胞がサイトカインを生産して免疫系を刺激する原因となる遺伝子をガン細胞自身に注入することです。多くの臨床試験では、遺伝子治療とガンの生物学的治療への潜在的適用を研究しています。 遺伝子治療に関する詳細な情報はNCIのインターネット情報「ガンの遺伝子治療(Gene Therapy):質問と回答)を利用することができます。 http://www.cancer.gov/cancertopics/factsheet/Therapy/gene |
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10.非特異性免疫調節性薬剤とは何か |
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非特異性免疫調節性薬剤は、免疫系を刺激するか、間接的に免疫系を高める物質です。これらの薬剤は、キー免疫細胞を目標としているが、サイトカインの産生や免疫グロブリンの産生の増加の様な二次的な反応を示すことがあります。ガン治療で使用される火特異性の免疫調節性の薬剤は、かん菌カルメット・ゲラン(bacillus Calmette -Guerin) (BCG)と、レバミゾール(levamisole)です。 結核ワクチンとして広く使われていたBCGですが、表層の膀胱ガンの手術後の治療として使用されます。BCGは炎症により刺激され、免疫反応として作用します。BCGの溶液は患者が排尿により膀胱をからにする前に膀胱に点滴され、約2時間そのままの状態で保持されます。この処置は、通常6週間に一度行われます。 レバミゾールはフルオラシル(5−FU)化学療法と共に手術後の第三期大腸ガンの治療に用いられます。レバミゾールは、低下した免疫機能の回復に有効な可能性を持っています。 |
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11.生物学的治療に副作用はあるか |
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他の種類のガン治療のように、生物学的治療にも多くの副作用を引き起こすことがありえます。それは薬剤や患者によってさまざまです。発疹やむくみはBRMsが注射された部位で発現する可能性があります。インターフェロンやインターロイキンを含むいくつかのBRMsは、発熱、冷え、吐き気、嘔吐、食欲の損失などを含むインフルエンザのような症状を引き起こすことガがあります。疲労感はBRMsの良く見られる副作用です。血圧も影響を受けることがあります。IL−2(インターロイキン−2)の副作用は投与量によっては非常に激しいこともあります。IL−2の高用量を投与された患者は密接に観察される必要があります。 CDFの副作用は骨痛、疲労感、発熱、食欲喪失などです。MOABsの副作用はさまざまで重大なアレルギー反応を引き起こす可能性があります。ガンワクチンは事痛と発熱を引き起こすことがあります。 |
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12.臨床試験に関する詳細な情報はどこで得られるか |
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これらの生物額的療法や他の進行中の臨床試験に関する生物額的療法の情報はNCIのウェブサイトの臨床試験のページから入手可能です。 http://www.cancer.gov/clinicaltrials/ |
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関連資料 |
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刊行物 (インターネットhttp://www.cancer.gov/publicationsで利用可能) National Cancer Institute Fact Sheet 7.18, Gene Therapy for Cancer:Questions and Answers 国立癌研究所データ表7.18、癌のための遺伝子治療:質問と回答 National Cancer Institute Fact Sheet 7.45, HerceptinR (Trastuzumab):Questions and Answers 国立癌研究所データ表7.45、ハーセプチンR(Trastuzumab):質問と回答 National Cancer Institute Fact Sheet 7.46, Access to Investigational Drugs:Questions and Answers 国立癌研究所データ表7.46、治験薬への道:質問と回答 Biological Therapy:Treatments That Use Your Immune System To Fight Cancer 生物学的療法:癌と戦うためにあなたの免疫系を使用する治療 Taking Part in Clinical Trials:What Cancer Patients To Know 臨床試験に参加すること:癌患者が知っておく必要があるもの What You Need To Know About? Cancer あなたが知っておく必要があるもの ガン |
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(もどる) | 国立ガン研究所(NCI)資料 ガン情報サービス(無料) 電話 1-800-4-CANCER (1-800-422-6237) TTY 1-800-332-8615 オンラインサービス NCIウェブサイト http://www.cancer.gov ライブヘルプ NCIのオンラインによる援助 https://cissecure.nci.nih.gov/livehelp/welcome.asp |