翻訳へもどる 乳ガン予防研究    Breast Cancer Prevention Studies




     キーポイント
     乳ガン予防試験(BCPT)
     タモキシフェンとラロキシフェンの研究 (STAR)
     首都圏でのSERM研究
     他の乳ガン予防研究
     NCIの乳ガン予防の優先事項
     乳ガンリスクの推定
     発現リスクの高い女性のための選択肢
     参照された参考文献
     関係資料

     NCIに関して


  キー-ポイント

・ 乳ガン予防研究は、ガンに罹っていない女性を含めた臨床試験であるが、疾患を発現する
 リスクが高い
・ 乳ガン予防研究(BCPT)でタモキシフェンを投与された女性は、薬を投与さえなかった女性
 よりも低い乳ガンの発現率を示した。本研究の成績は1998年(BCPT を参照。)に発表
 された。
・ もう一つの試験、タモキシフェンとラロキシフェン(STAR)は、ラロキシフェンをタモキシフェンと
 比較をしている。本研究の成績は2006年(STARを参照)に予想される。
・ 首都圏でのSERMの研究は、乳ガンリスクの高い閉経前の女性において、ラロキシフェンを
 テストしている。成果の完全な報告は2005年(首都圏のSERM研究を参照)の早期に発表
 された。
・ 他の乳ガン予防研究は、現在進行中である。(他のガン予防研究の項参照)


(もどる)  乳ガン予防研究は、乳ガンを発現するリスクや可能性を減らす方法を研究する臨床試験 (人において実施される)です。予防研究は、通常乳ガンに罹ったことのない女性において行われますが、これは参加者に疾患を発現するリスクが高くなります。そのような研究を通して、研究者はどのようなステップが、あらゆる人種や民族の女性において、乳ガンのリスクを低下させるのに効果的であるかを、決定できることを期待しています。
 大部分の乳がん予防研究は、この疾患の発現に関連しているといわれる根拠、多くの場合はエストロゲンというホルモンの暴露、に基づいて行われています。最近におけるいくつかの乳がん予防研究は、選択的なエストロゲン受容体モジュレーター(
SERMs)とよばれている薬の効果をテストすることにありました。
 SERMsは若干の抗エストロゲン性とエストロゲン様性の両者を併せ持っている薬です。抗エストロゲン活性は、胸部組織においてエストロゲンの作用を妨害することにより、乳がんリスクを低下させる働きがあると思われ、エストロゲン様の性質は、閉経後の女性において骨密度の損失を予防する働きがあると考えられています。しかしながら、SERMsは、閉経前女性において骨損失を与える可能性があります。



乳ガン予防試験(BCPT)

 乳ガン予防試験(BCPT)は、国立ガン研究所(NCI)によって資金が提供され、胸部および臀部の矯正に関する国家プロジェクト(NSABP)により推進されました。BCPTは、タモキシフェン(NolvadexR)、SERMの一種、が疾患を発現するリスクが増加した女性の乳ガンを予防できるかどうかを確認するように計画されました。
 本研究は1992年4月に参加屋の募集を開始し、1997年9月に募集を終えました。本研究はアメリカとカナダの300以上のセンターで、閉経前および閉経後の13,388人の女性により行われました。
 結果は、
プラセボ(不活性の物質で、臨床試験薬と見かけもそっくりで、同じ方法で投与される)を投与されるように無差別に選択された女性群に比較して、タモキシフェンを投与された無差別選択の女性群では、浸潤乳ガンの診断をされたのは49%以下でした。タモキシフェンを投与された女性では、乳腺や小葉の上皮内ガンなど、非浸潤性乳ガンの診断を受けたものも、49%以下でした。また9人の女性(タモキシフェン群3名、プラセボ群(1)6名)が乳ガンで死亡しました。
 BCPTにおいて、タモキシフェンに関連した大部分の副作用は一時的なものでしたが、いくつかの深刻な健康問題を含む、長期にわたるリスクがありました。それは、子宮内膜ガン(子宮の内表面のガン)、子宮肉腫(子宮の筋肉壁のガン)、肺塞栓(肺の血液凝結塊)、深静脈血栓症(大静脈の血塊)、脳卒中などです。
 これらのリスクのためにタモキシフェンを服用している女性は、医師によりどのような副作用の徴候でも観察されなければなりません。BCPTのすべての参加者は、定期的に追跡調査を受けるように依頼されています。
 本研究の終了時には、タモキシフェン群に編入されたが、5年間のタモキシフェン療法を完了していない参加者には、治療を続ける機会が与えられました。プラセボ群の女性は、もうひとつの試験、タモキシフェンとラロキシフェンの試験に参加するように勧められました。(この研究に関しては以下の章を参照) BCPTに参加したプラセボ群の女性には、医師からタモキシフェンを投与してもらえる選択権が与えられました。


タモキシフェンとラロキシフェンの研究 (STAR)

(もどる)  NSABPは、STARとして知られている、タモキシフェンとラロキシフェンの研究を行っています。その研究資金はNCIにより主に供給されています。
 本研究に参加した19,0000人は35歳以上であり、乳ガンを発現するリスクの高い閉経後の女性でした。
 本研究はラロキシフェン(Evister)、SERMの一種、が、疾患のリスクが増加している女性の乳ガンの発現率の低下が、タモキシフェンに匹敵するかどうかを確定するためにおこなわれました。タモキシフェンと同様に、ラロキシフェンの副作用は一時的なものでした。しかしながら、タモキシフェンと同様に、ラロキシフェンは肺動脈塞栓症と深在静脈血栓症のリスクを増加させます。STARは、参加者の新規募集が終わり、結果の公表は2006年の夏に予想されています。



首都圏でのSERM研究

 NCIは、乳ガンの危険性の高い23歳から47歳までの間で、ラロキシフェンの安全性を評価するために、首都圏SERM研究も行っています。本研究には、37名の女性が参加しました。研究成果の完全な報告は2005年に発表されます。


他の乳ガン予防研究

 アロマターゼ阻害薬は、ホルモン感受性乳ガンを治療するために、アメリカ食品医薬品局(FDA)により承認されているものであるが、乳ガンの予防として臨床試験されています。
 この薬は、副腎酵素のアロマターゼに干渉します。そのため、閉経後の女性
(2)におけるエストロゲン産生に影響を与えます。NCIは、ホルモン類に影響を受けない乳ガンの高いリスクの女性に対する予防法についても研究しています。この乳ガンはホルモン感受性乳ガンよりも処置が困難です。これらや臨床試験に関する詳細な情報に関しては、NCIのガン情報サービス(CIS)から入手することができます。

 電話:1-800-4-CANCER(1-800-4-6237)
 ウエブサイト: http://www.cancer.gov
 
 研究者は、非ホルモン感受性およびホルモン感受性腫瘍についてさらによく知るために乳ガンの基礎生物学も研究しています。この研究により、すべての種類の乳ガンを予防する、より良好な予防法が見出されることでしょう。


NCIの乳ガン予防の優先事項
(もどる)  乳ガンの、社会への影響に対する認識から、NCIは1997年にNCIの乳ガン研究に関する活動の分析と、今後の展開への見通しをするために、乳ガン評価推進委員会(Breast Cancer Progress Review Group (PRG) )の専門家と擁護者の会議を開きました。乳ガン研究の現状の評価に基づき、評価グループは乳ガンの予防と治療を推し進める研究を優先事項として報告しました。
 1998年8月に評価グループは、レポート行動計画:乳ガン研究の優先事項(Charting the Course :Priorities for Breast Cancer Research)、を発表しました。この報告書は次のウエブサイトから閲覧可能です。

 ウエブサイト: http://planning.cancer.gov/pdfprgreports/1998breastcancer.pdf

 2004年10月にNCI内の乳ガン研究グループは、この公開されたPRG報告の今後の見通しを評価し、NCI乳ガン最新報告者を発表しました。これにはNCIの乳ガン研究一覧と、PRGの会議により示された優先事項である方向付けが示されています。
 この報告書はNCIが乳ガンの研究を進めていくためのガイドとして大いに役にたつでしょう。この報告書は以下のウエブサイトで閲覧できます。

 ウエブサイト:
  
http://planning.cancer.gov/pdfprgreports/2004breastcancer-pdf/allchapters.pdf


乳ガンリスクの推定

 大部分の乳ガン予防試験は、この疾患の発現リスクが高くなっている女性を対象としています。たとえば、乳ガンは、60歳以上の女性に、より多く発現していることは明らかなことです。リスクの増加に関するほかの因子は、個人の乳ガンに関する家族暦や、BRCA1や、BRCA2などの特定の遺伝子の変化などが有ります。
 NCIとNSABOの研究者は、乳ガンリスク調査ツールと呼ばれているコンピュータープログラム(CD-ROM版)を開発しました。このツールは、女性や医療従事者が、認識されているリスク因子に基づく乳ガンの発現に関する可能性を推定することに役に立ちます。このツールは、タモキシフェンに関する情報も提供します。CDはNCIのガン情報サービス(CIS)へ問い合わせることにより入手できます。

  電話: 1―800――4―CANCER (1-800-4-6237)
  ウエブサイト:: 
http://www.cancer.gov/publications


発現リスクの高い女性のための選択肢

(もどる)  医師は、乳ガンが発現したときに、初期の段階(3)で発見できるように、高リスクの女性には日ごろの観察と定期的な検査を勧めています。これらの女性は、予防研究に参加したり、タモキシフェンを摂取したり、また、乳ガンリスクを低減するための予防手術を受けることも考慮する必要もあります。予防の乳房切除は、乳ガンリスク(4)を低下させたり、乳ガンを予防するために、片方または両方の乳房を切除する手術です。
 既存データーによれば、乳房切除手術は、中〜高リスクの女性
(5)の乳ガン発現可能性を有意に低下(約90%)させることを示しています。他に予防の卵巣摘出(BRCA1やBRCA2の遺伝子の突然変異による卵巣ガンの発現リスクの高くなった女性の卵巣を摘出する手術)によって、乳ガンのリスクが約50%低下させるというデーターもあります。
 予防試験への参加、タモキシフェンの服用、予防の手術を受けるなどは、個々人の意思です。どのような医学的技法や、処置でも治療の有益性とリスクは考慮されなければなりません。この二つのバランスは女性の個人の、また家族の病歴と、有益性とリスクをどのように評価するかということにかかっています。手術を考えている方や他の方法を考えている方は、このリスクについて医師と話し合う必要が有ります。



参照された参考文献

(1) Fisher B, Costantino JP, Wickerham DL, et al. Tamoxifen for prevention of breast
    cancer: Report of the National Surgical Adjuvant Breast and Bowel Project P-1
    Study. Journal of the National Cancer Institute 1998; 90(18):1371-1388.

(2) Chlebowski RT, Col N, Winer EP, et al. American Society of Clinical Oncology
    technology assessment of pharmacologic interventions for breast cancer risk
    reduction including tamoxifen, raloxifene, and aromatase inhibition. Journal of Clinical
    Oncology 2002; 20(15):3328-3343.

(3) Thull DL, Vogel VG. Recognition and management of hereditary breast cancer
    syndromes. The Oncologist 2004; 9(1):13-24.

(4) Stefanek M, Hartmann L, Nelson W. Risk-reduction mastectomy: Clinical issues and
    research needs. Journal of the National Cancer Institute 2001; 93(17):1297-1306.

(5) Hartmann LC, Schaid DJ, Woods JE, et al. Efficacy of bilateral prophylactic
    mastectomy in women with a family history of breast cancer. New England Journal of
   Medicine 1999; 340(2):77-84.

(6) Rebbeck TR, Lynch HT, Neuhausen SL, et al. Prophylactic oophorectomy in carriers
    of BRCA1 or BRCA2 mutations. New England Journal of Medicine 2002; 346(21):
    1616-1622.


関係資料

(もどる)  出版物 (http://www.cancer.gov/publications から入所可能)

・ National Cancer Institute Fact Sheet, The Study of Tamoxifen and Raloxifene (STAR):
  Questions and Answers

・ National Cancer Institute Fact Sheet 7.5, Preventive Mastectomy: Questions and
  Answers

・ National Cancer Institute Fact Sheet 7.16, Tamoxifen: Questions and Answers

・ Taking Part in Clinical Trials: Cancer Prevention Studies: What Participants Need To
  Know

・ What You Need To Know About? Breast Cancer


NCIに関して

ガン情報サービス({フリーダイアル}
  電話: 1-800-4-CANCER(1-800-4-6237)
  TTY:: 1-800-332-8615

ウエブサイト
  NCIサイト: http://www.cancer.gov
  NCIサービス:: https://cissecure.nci.nih.gov/livehelp/welcome.asp



(もどる) 2005年6月1日見直し