独断的JAZZ批評　８４９．

"THE ENDLESS MYSTERIES"
GEORGE COLLIGAN(p, melodica), LARRY GRENADIER(b), JACK DEJOHNETTE(ds)
2012年12月　スタジオ録音　(ORIGIN RECORDS : ORIGIN 82654)

今から9年前に、このCOLLIGANの"PAST-PREZENT-FUTURE"（JAZZ批評　２６３．）を聴いて、「聴き疲れする」として星二つと酷評してしまったのだが、今度はどうだろう？
何て言ったって、メンバーが凄い！大好きなDEJOHNETTEとGRENADIERだもの、悪かろうはずがないと確信してゲットした。10曲全部、COLLIGANのオリジナルでトータル70分を超えている。

①"WAITING FOR SOLITUDE"　ピアノのリリカルなイントロで始まるが、イン・テンポになると野太いGRENADIERのベースが絡んでくる。DEJOHNETTEの張り切り具合がドラミングにも表れている。
②"SONG FOR THE TARAHUMERA"　これは気持ちいいね！最高！強靭なビート感とドライブ感。これぞジャズ・ベースでしょう！「昔、RICHARD DAVIS、今、LARRY GRENADIER ! 」ってところかな。ノリノリのCOLLIGANとDEJOHNETTE もいいね。
③"HER MAJESTY"　ボサノバ・タッチの美しくて軽快な演奏だが、テンション高めで徐々に高揚感が増していく。と同時に、後半にかけてブロック・コードの多用が目立ってくる。COLLIGANは高揚感が増してくるとブロック・コードを多用するという傾向があるようだ。
④"LIAM'S LAMENT"　フリーのベース・ソロで始まる。ここではピアノからメロディカに持ち替えている。さながら3人によるフリーのインプロビゼーションという様相を呈している。
⑤"IT'S HARD WORK !"　アドリブのためのテーマという感じで、泥臭くて美しさの欠片もないテーマだ。
⑥"THOUGHTS OF ANA"　ピアノ・ソロ。美しいバラードであるが静かに熱を帯びている。いいね、心に沁みる。
⑦"OUTRAGE"　一転して、タイトルの如く、激しいピアノのブロック・コードで始まる。アブストラクト風の殴り合いという感じ。
⑧"THE ENDLESS MYSTERIES"　硬くて太いGRENADIERのベース・ワークが堪能できる。僕が求めているアコースティック・ベースの音っていうのはこういう音色なのだ。ヨーロッパのベーシストは速弾きしたがるので弦の緩さが音に出てしまう。残念ながら、こういう硬く引き締まった音色は聴くことができない。
⑨"WHEN THE MOON IS IN THE SKY"　心地良いワルツ。DEJOHNETTEのシンバル・レガートが最高！良いドラマーってのは絶対的にシンバル・レガートが上手い！
⑩"IF THE MOUNTAIN WAS SMOOTH, YOU COULDN'T CLIMB IT"　ジャズのチューンとしては面白いタイトルが付いた。演奏の方は迫力満点にDEJOHNETTEがドラムを叩けば、COLLIGANが速いパッセージとブロック・コードで攻めまくる。

このアルバムの成功はDEJOHNETTEとGRENADIERの参加にあると言っても過言ではないだろう。
いつものことながら、GRENADIERのベースには唸るね！強靭な指から弾き出されるビートが凄い！硬くて太くて逞しい音色にこそアコースティック・ベースの真髄がある。そこに、現代最高のベーシストと賞賛する理由がある。
GRENADIERはBRAD MEHLDAU TRIOのレギュラー・ベーシストとして活躍する一方で、日本人ピアニストとの共演歴も多数ある。AKIKO GRACEの"MANHATTAN STORY"（JAZZ批評　１０１．）、後藤浩二の"HOPE"（JAZZ批評　４６５．）や山中千尋の"WHEN OCTOBER GOES"（JAZZ批評　１１３．）などはいずれも素晴らしいアルバムに仕上がった。是非、併せて聴いてもらいたいアルバムだ。
COLLIGANをはじめとする3人のインタープレイが素晴らしい。久しぶりに、現代アメリカのピアノ・トリオの心意気を示したアルバムということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。　　　(2014.02.04)

試聴サイト　：　 http://www.youtube.com/watch?v=F8sZI3w61I0
　　　　　　　　　　http://www.amazon.com/The-Endless-Mysteries-George-Colligan/dp/B00F0MNH7G

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