独断的JAZZ批評 685.

FRED HERSCH
同じHERSCHのソロ・ピアノを聴くのなら"BIMHUIS"の方をお勧めしたいし、「ピアノの詩人」をより強く実感できるのではないかと思っている
"ALONE AT THE VANGUARD"
FRED HERSCH(p)
2010年11月〜12月 ライヴ録音 (PALMETTO : PM 2147)


前掲のBRAD MEHLDAUのソロ・ピアノの余韻が未だ覚めやらぬうちのソロ・ピアノ第2弾。今度はFRED HERSCHだ。MEHLDAUのアルバムは近来にない強烈な印象を残しているので、HERSCHのアルバムを評価するには少しの時間的猶予が必要かもしれない。じっくりと聴き込んで行きたいと思う。
HERSCHのアルバムは今までに5枚ほど紹介しているが、その中に5つ星はひとつもない。これだけのピアニストと思いつつも、何故か心震わすアルバムに巡り合えない不思議。
今度のアルバムは2003年録音の"IN AMSTERDAM LIVE IN BIMHIUIS"(JAZZ批評 356.)以来のソロ・アルバムだ。このアルバムはVILLAGE VANGUARDにおける6日間のライヴ録音の中から最終日の演奏をピックアップしたものらしい。

@"IN THE WEE SMALL HOURS OF THE MORNING" 本当にHERSCHはピアニストとしての能力を回復したのだろうか?ピアノの一音一音にかつての瑞々しさが蘇っているのだろうか?僕には疑問だ。最後に入るオーディエンスの拍手の音が少々大きく録れているので耳障り。
A"DOWN HOME" 
「BILL FRISELLに捧ぐ」とある。
B"ECHOES" 
こういう演奏を聴くとHERSCHらしくないなあと思ってしまう。激しいというよりは荒いというか、雑な印象が残ってしまう。病に倒れる前のHERSCHでは聴けなかった演奏だ。
C"LEE'S DREAM" 
「LEE KONITZに捧ぐ」とある。
D"PASTORALE" 
「ROBERT SCHUMANNい捧ぐ」とある。そう、クラッシク界のシューマンのことらしい。抑揚とかメリハリのない演奏で、とても中途半端な感じ。
E"DOCE DE COCO" 
すべての曲が7分以上の長尺で、どの曲も長いと感じてしまう。
F"MEMORIES OF YOU" 
G"WORK" 
T. MONKの曲。HERSCHはMONKの曲が好きなようだ。"BIMHUIS"でも"EVIDENCE"が入っている。どうもイメージにそぐわない。
H"ENCORE : DOXY"
 バラード風の演奏で最後の最後になって"DOXY"のテーマが現れる。

「ピアノの詩人」といわれるFRED HERSCHであるが、このアルバムではどうも「詩人」らしくない。一時は、エイズ脳症により昏睡状態になるまで病状が悪化し再起不能といわれたHERSCHであるが、ここまでピアノを弾けるように回復したということは確かに凄い。しかし、演奏までが本当に復活したのだろうかという疑問が僕にはある。
「ピアノの詩人」らしいのは、むしろ、2003年録音の"IN AMSTERDAM : LIVE AT THE BIMHUIS"(JAZZ批評 356.)の方ではないかと思うのだ。美しさ、繊細さどちらをとっても"BIMHUIS"の方が上ではないか?美しさと力強さが交錯するHERSCHのオリジナルである"A LARK"や"VALENTINE"が収録されている"BIMHUIS"の方がアルバムとしての満足度が高い。
この"VANGUARD"は「奇跡の復活」ばかりが喧伝され、同情的な評価に陥っているように思えてならないのだ。そういえば、酷評した2010年録音のピアノ・トリオ盤"WHIRL"(JAZZ批評 641.)もそんな感じのする1枚だった。
僕としては、同じHERSCHのソロ・ピアノを聴くのなら"BIMHUIS"の方をお勧めしたいし、「ピアノの詩人」をより強く実感できるのではないかと思っている。   (2011.03.11)

試聴サイト : http://ww
w.allmusic.com/album/alone-at-the-vanguard-r2124397



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