FRED HERSCH
「奇跡の復活」どころか「奇跡の凡作」と言いたくなる
"WHIRL"
FRED HERSCH(p), JOHN HEBERT(b), ERIC MCPHERSON(ds)
2010年1月 スタジオ録音 (PALMETTO RECORDS: PM2143)


今までにFRED HERSCHのアルバムは4枚ほど紹介しているが、未だに5つ星がひとつもない。これだけの名手でありながら、何故か強烈な印象を残さない。例えば、"NIGHT & THE MUSIC"(JAZZ批評 419.)などは星3.5で中古の買取市場に出してしまった。ベースの名手、DREW GRESSがいても、ドラムスのNASHEET WAITSの無粋なドラミングで損をしている・・・ということがあったとしても、HERSCHの実力はこんなものではないだろう。その中で、「いっそのこと思い切ってベースもドラムスも入れ替えてみたらどうだろうか?」と書いたが、偶然にも、それが実現したのがこのアルバム。
何でもHERSCHはHIVによって一時、昏睡状態までいったという。それゆえに、このアルバムは「奇跡の復活」と喧伝されている。

@"YOU'RE MY EVERYTHING" 
軽快なドラミングでスタートするスタンダード・ナンバー。一聴した感じは3者の緊密感が未だ熟成していない感じだ。それと、今年1月の録音の割には録音が良いとはいえない。3者のバランスももうひとつだ。
A"SNOW IS FALLING" 
この曲もそうだけど、3者の一体感が希薄だ。何にもまして躍動感の欠如が最大のウィークポイントだ。
B"BLUE MIDNIGHT" 
PAUL MOTIANが書いたフリー・テンポのバラード。バラードであっても躍動感が必要だと考える僕には、ただ饒舌なピアノ・プレイに聞える。
C"SKIPPING" 
つまらないテーマ。頭の中でこねくり回したような印象のテーマ。パス。
D"MANDEVILLA" 
HERSCHの書いた美しい曲だけど、ただそれだけ。ある意味、淡々と弾いているといえば、そうなのかもしれない。
E"WHEN YOUR LOVER HAS GONE" 
この演奏も淡々としていて高揚感に欠ける。
F"WHIRL" 
HERSCHのピアノが高揚感を増してきてもベースとドラムスがそれに呼応していかないもどかしさがある。
G"SAD POET" 
これもHERSCHのオリジナルだけどテーマが詰まらないし、アドリブも面白くない。やはりHERSCHは絶好調とは言えないのでは?
H"MRS. PARKER OF K. C." 
I"STILL HERE"
 珍しくベースのHEBERTがソロを執るが、もやもやした印象が拭えない。

全ての演奏が平坦な印象で起伏に乏しい。従って、メリハリも少なくて退屈な演奏だ。奇跡の生還をしたのかもしれないが、演奏は好調時のものに程遠い。総入れ替えのサポート陣も物足りない。少なくてもベースはDREW GRESSの方が良かった。ドラムスのMCPHERSONも然り。今までと大差はない。
ある意味淡々としたピアノ・プレイなのだ。こういう静かで淡白な演奏が好みの方にはうってつけだと思う。トリオとしての一体感、緊密感、躍動感を求めるとなると、満足はし難いのではないだろうか?「奇跡の復活」どころか「奇跡の凡作」と言いたくなる。出来れば何回も繰り返して聴きたくないアルバムだ。   (2010.08.07)

試聴サイト : http://www.emusic.com/album/Fred-Hersch-Whirl-MP3-Download/11949463.html



独断的JAZZ批評 641.