CARSTEN DAHL
"MOON WATER"の時のような、手を触れると切れてしまいそうな鋭さと緊迫感が懐かしい
"TRIBUTE TO NIGHT TRAIN"
CARSTEN DAHL(p), JESPER BODILSEN(b), ED THIGPEN(ds)
2007年 スタジオ録音 (PLOUG : PPCM29)

CARSTEN DAHLの新譜である。タイトルが"TRIBUTE TO OSCAR PETERSON"ではなくて"TRIBUTE TO NIGHT TRAIN"というのが面白い。"NIGHT TARIN"といえば、PETERSONの代表作であるが、そのトリビュート・アルバムの中に"NIGHT TRAIN"の1曲が含まれていないのも面白い。
ドラムスにはPETERSONのかつての盟友、ED THIGPENが参加している。ベースはJESPER BODILSENだ。強力なメンバーを従えて、DAHLが面目躍如とばかりにノリノリの演奏を披露してくれるのではないかと期待は大きく膨らんだ。
CARSTEN DAHLには、このアルバムのようにバップに根ざしたアルバム"BLUE TRAIN"(JAZZ批評 267.)と、自らのオリジナルを中心とした"MOON WATER"(JAZZ批評 246.)のようにアブストラクト的色彩を帯びたアルバムの2面性がある。
僕の好みでいえば、バップ路線は誰にでも出来るけど、オリジナル路線はDAHLにしか出来ない音楽だ。そういう意味で、"MOON WATER"にDAHLの「らしさ」を感じる。

@"HYMN TO FREEDOM" 
PETERSONの十八番の曲だ。最初と最後をこの曲のピアノ・ソロで締めている。
A"SMALL CHANGES" 
B"D & E" 
淡々としたブルース。
C"BENT J ON THE BIKE" 
和気藹々と楽しければいい?
D"YOU STEPPED OUT OF A DREAM" 
E"BAG'S GROOVE" 
BODILSENのベース・ワークは実にオーソドックスでブルースの教則本のようだ。
F"SOMEONE TO WATCH OVER ME" 
この曲ではBRAD MEHLDAU(JAZZ批評 219.)の凄いピアノ・ソロがあるので参考まで。
G"ANGEL EYES" 
H"SUMMERTIME" 
I"POPS ON TOPS" 
J"LAVERNE WALK" 
K"BLUES FOR TOVE" 
L"HYMN TO FREEDOM" 

どの曲も矢鱈と演奏時間が短い。実に、食い足りない。最長の"YOU STEPPED OUT OF A DREA"でも5分49秒だ。あとは4分台が3曲、3分台が6曲、2分台が2曲、1分台も1曲ある。どの曲も激しくスイングするわけでなし、昂揚感が増してくるわけでもない。淡々とした演奏だ。まあ、こういう演奏をするならDAHLでなければならない理由はない。全くの期待外れ。
このアルバム、新譜と思いきや3年も前の録音で、その2007年に、DAHLは"BEBOPISH RUBBISH RABBIT"(JAZZ批評 434.)というバップ・テイストのアルバムをMARSHMALLOW RECORDSからリリースしている。
バップ系のDAHLの演奏を聴くのなら、先にも紹介した2004年録音の"BLUE TRAIN"(JAZZ批評 267.)の方が数段素晴らしい。
今となっては、"MOON WATER"(JAZZ批評 246.)の時のような、手を触れると切れてしまいそうな鋭さと緊迫感が懐かしい。   (2010.08.24)

参考サイト : http://www.myspace.com/carstendahlmusic



 

独断的JAZZ批評 645.