CARSTEN DAHL
WYNTON KELLYが生きていた時代の空気を感じさせる1枚である
"BLUE TRAIN"
CARSTEN DAHL(p) LENNART GINMAN(b), FRANDS RIFBJERG(ds)
2004年8月 スタジオ録音 (MARSHMALLOW-RECORDS MMEX 104)
4月21日に発売になったピカピカの新譜。予約を入れてから待つこと1ヶ月。封を切るや否やすぐさまトレイに載せてみた。
予約を入れたときには、既にネット試聴で一部分だけ聴いていた。間違いないだろうと確信を持って注文した1枚だ。このMARSHMALLOW-RECORDSは国内のレーベルで、後に出てくる曲のタイトルにもなっている上不氏が主宰するレーベルだ。なかなか良心的なレーベルで、新譜でも4曲をそれぞれ1分半ほど試聴できる。これは自信の成せる業だと思う。1分半も試聴できるサイトは、先ずない。前述のHPにアクセスして、一度、試聴してみて欲しい。
しかしながら、こうやってネット試聴していても、実際に手にしたCDとは相当印象が違うものなのだ。ネット試聴はファイルを相当圧縮しているので音が悪い。加えて、長いといっても1分半なので全部を聴けるわけではない。これは良いだろうと思っていても実際手にすると想いと違ったりするのはやむを得ないことだろう。
で、このアルバムであるが、ベースにLENNART GINMAN(JAZZ批評 221.で共演)、ドラムスにFRANDS RIFBJERGが入っている。目指す音楽は1950年代のハード・バップなのだろうか。演奏スタイルがやけに古い。そういえば、DAHLの演奏するピアノも100年前のピアノだという。ベースもドラムスもサポートに徹している。丁々発止のインタープレイを展開するというスタイルではない。昔ながらのハード・バップを新しい感性で再現してみせたということか。
プロデューサーの上不氏が意図的にこの道を選んだということは想像に難くない。謂わば、DAHLの多面性を見せつけるために。あるいは、最近演奏されることが少なくなったハード・バップ・スタイルを継承するために。あるいは、100年前のピアノの音色を生かすために!
敢えて説明を必要としないスタンダードもしくはジャズ・ジャイアンツのオリジナルがズラリ!どの曲も指を鳴らしたくなる。
@"I'LL CLOSE MY EYES" いきなり来ましたよ。
A"ALL THE THINGS YOU ARE" ウ〜ン、いいね。
B"NIGHT AND DAY"
C"IN A SENTIMENTAL MOOD" こう来たか。
D"MINORITY"
E"MELLOW MOODS" ウ〜ン、アーシーだ!
F"AUTUMN LEAVES"
G"WHAT'S NEW" 通常スロー・バラードで甘ったるく演奏されることの多いこの曲をミディアム・テンポのグルーヴィなフィーリングで演奏。
H"WARMING UP FOR MR.JOHFU" 主宰者、上不氏に捧げた曲であろう。DAHLのオリジナル。
I"BLUE TRAIN" タイトル曲のブルース。ミディアム・スローで泥臭さを演出。
J"DEAR OLD STOCKHOLM" 指を鳴らしたくなる快さ。
K"IT COULD HAPPEN TO YOU"
ドラムスとベースが控えめで抑揚がないように感じるのは、敢えて昔風のハード・バップ・スタイルを踏襲しているからなのか。DAHLの唸り声をマイクが拾い過ぎなのも、敢えてマイクの本数を少なくしているからなのか!謂わば、装飾の少ない素のままのハード・バップと認識頂きたい。
実は僕の評価も最初聴いてからしばらくの間は辛目の評価になっていた。これは"MINOR
MEETING"(JAZZ批評 261.)をよく聴いているから、そういう評価になってしまうのであって、客観的にみれば聴くほどに味の出てくるアルバムだと思う。むしろ、コンセプトの違いというのだろうか、単純に比較出来ない演奏スタイルの違いがあるのだ。
と、ここまで書いて、暫し、休憩。
その後、土、日曜日と陶芸に行く往復の車の中でこのCDだけを6回聴いた。不思議なことに6回繰り返し聴いても聴き飽きることがない。もうひとつ、通常は12曲もあるとひとつや二つはパスしたくなる曲が出てくるものだが、それがない。全12曲、6回フルに聴いた。
そして分かったこと。これは意図的に1950年代のスタイルで演奏したということ。前述の"MINOR MEETING"とは演奏スタイルがまるで違う。DAHLの右手は極力シングルトーンで弾き、左手のバッキグは極めて少ない。そしてサスティーン・ペダルがほとんど使われていない。このあたりは"MINOR MEETING"と対照的だ。
言ってみれば、21世紀のハードバップのあり方と1950年代のハードバップのあり方を対照的に演奏してみたという感じなのだ。
このアルバムにはピアノのケリー節こそないが、WYNTON KELLYが生きていた時代の空気を感じさせる1枚である。もしこのアルバムが御気に召したなら、是非"MINOR
MEETING"との聴き比べをしてみて欲しい。
さて、貴方はどちらを取りますか?
僕?勿論、このアルバムもお気に入りに入れましょう。本当に甲乙点け難い!
で、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。 (2005.04.25)
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