独断的JAZZ批評 373.






KASPER VILLAUME
「パブロフの犬」に乾杯
"FOOTPRINTS"
KASPER VILLAUME(p), JESPER BODILSEN(b), RASMES KIHLBERG(ds)
2006年3月 スタジオ録音 (MARSHMALLOW RECORDS MMEX-109)

CD到着後、とりあえず1回聴いてみた
1曲目を聴いた瞬間に、日本酒の冷をぐいっといった
酒を美味くするジャズであること、間違いなし!
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武蔵野スイングホールでKASPER VILLAUMEのライヴを聴いたのが今年の6月。この時はテナーのBOB ROCKWELLをゲストに迎えてのカルテット演奏だった。今回はトリオ。メンバーは全く同じでBODILSENのベースとKIHLBERGの太鼓だ。

@"MR.PC" J. COLTRANEがベーシスト・PAUL CHAMBERSのために書いたブルース。力強い4ビートに乗って全員がスイング。聴いた瞬間、高揚感が増してくる。もう、こうなると「パブロフの犬」状態で、更に高揚感を高めるためにアルコールが欲しくなる。酒飲みでジャズが好きな人間の「条件反射」と言うべきだろう。
A"NICE WORK IF YOU CAN GET IT" 跳躍するドラムスのイントロに始まってピアノが踊る。続いて、気持ちの良い4ビートをドラムスとベースが刻み、いきいきと楽しげにピアノが歌う。曲がいいね。やはりというか、書いたのはGERSHWIN。最高!もう一杯!
B"NIGHT TRAIN" BODILSENのベース・ワークには唸るね。太い音、力強いピチカートと申し分ない。このトリオに、このベーシストありだ!
C"TRUBBEL" 
D"IS THAT SO" しっとり系の佳曲。アドリブではミディアムテンポの2ビート〜4ビートを刻む。ウ〜ン、実に心地よい!

E"PLACE ST. HENRY" ハード・ドライヴのスウィング感溢れる演奏。3者、乗り捲くり!
F"THEME FROM MASH" この曲は今までの「JAZZ批評」の中で紹介したことがあると強く思ったのだが、誰のレビューだったか思い出せない。良い曲なので印象に残っている。ネット検索したら別名を"SUICIDE IS PAINLESS"ということが分かった。GOOGLEの「デスクトップ検索」を利用したら、一発で出てきました!「JAZZ批評 191.」のJACK VAN POLL"TREE-OH IN ONE"の中で9曲目に演奏されていた。余談だが、この「GOOGLE デスクトップ検索」は本当に便利。自分のPCのハードディスクを検索してくれるので、かつて書いたレビューの曲名や演奏者を調べるのに欠かせない。無料ソフトの「GOOGLE ガジェット」をインストゥールすると利用できる。参考まで。
G"ALL OF YOU" 
H"YOU DON'T KNOW WHAT LOVE IS" 有名なスタンダード・ナンバー。ベターッとせずにさらりと演奏している。
I"FOOTPRINTS" W. SHORTERの書いた曲。最近、取り上げられることが多い曲のひとつ。
J"THE FOLKS WHO LIVE ON THE HILL" 最後を締めるピアノ・ソロ。このソロを聴いていると、このピアニスト、やはり只者ではない。虚飾を排した演奏で心を打つ。何回も何回も、何回も繰り返して聴きたくなる。そういうピアノ・ソロだ。

6月のライヴ(JAZZ批評 343.)を聴いた時にも強く印象に残ったのだが、このトリオにBODILSENありで、このベーシストなくしてこのトリオは語れない。まさに、童顔コンビなのだ。STEFANO BOLLANI等とも共演(JAZZ批評 210.と 264.)しているし、今やヨーロッパを代表するベーシストと言えるだろう。強靭なピチカートとよく歌うベース・ワークを堪能頂きたい。
よきサポートに支えられてVILLAUMEの乗りも良い。更に、録音のよさも付け加えておこう。3つの楽器のバランスが良くてとても聴き易い。本当に酒が美味くなるアルバムだ。時にはリラックスして秋の夜長を美味い酒に酔い痴れるのもいいだろう。これが過ぎると「パブロフの犬」になってしまうのだが・・・。そうか、既になっているか!
「パブロフの犬」に乾杯ということで、「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2006.10.28)