独断的JAZZ批評 347.



KEVIN HAYS
やはり3人揃ってナンボの世界であって、ピアノもベースも含めた3者の力が拮抗したストレートな演奏を聴いてみたいと思うのはピアノ・トリオ・ファンの常というものだ
"FOR HEAVEN'S SAKE"
KEVIN HAYS(p), DOUG WEISS(b), BILL STEWART(ds)
2005年1月 スタジオ録音 (JAZZ EYES 001)

KEVIN HAYSは初めて聴くピアニスト
メンバーを見ると、BILL STEWART(ds)に目が留まった
久しぶりにBILL STEWARTを聴いてみたいと思った
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BILL STEWARTというドラマーは僕のお気に入りドラマーだ。兎に角、よく歌うドラミングと4ビートのシンバリングが素晴らしい。4ビートで1、2、3、4とシンバルを叩くだけで躍動感が沸々と湧き上がってくるドラミングというは本当に素晴らしい。どのドラマーも同じように4ビートを刻んでいるのだけど、何故こうも躍動感に差異が出てくるのか僕には分からない。チンチカ・チンチカと刻むシンバリングを聴くと「ああ!BILL STEWARTだ」と何故か分かってしまうのだ。
既に紹介したアルバムの中で、1994/1988年録音の2枚組みアルバム、JOHN SCOFIELDの"SUMMERTIME"(JAZZ批評 7.)はイタリアのPERUGIAでのライヴ録音で、無名時代のSTEWARTが聴ける。このアルバム、PAT METHENY(g)とSTEVE SWALLOW(b)を迎えギター2本のカルテットで演奏されている。刺激的で味のあるアルバムだ。今も引っ張り出して聴いているが、これなんかは是非とも再発して欲しいアルバムのひとつだ。
最近ではAKIKO GRACEの"MANHATTAN STORY"(JAZZ批評 101.)やBILL CHARLAPのNEW YORK TRIO(JAZZ批評 30.)でも活躍しているのは周知の通りで、今や、引っ張り凧のドラマーとなった。

@"SONNY MOON FOR TWO" 
ピアノのイントロからフェードインのような形でSTEWARTの刻む4ビートのシンバリングが入り込んでくる。このあたり、とてもスリリングである。一方、ピアノはあくまでもクールである。
A"FOR HEAVEN'S SAKE"
 ベースがテーマを執るが、高音部でのそのチマチマとした演奏が僕は嫌いだ。ビート感が全くない、指先だけの演奏だ。が、アドリブになってSTEWARTがブラッシュの4ビートを刻むようになると、徐々に昂揚感を増してくる。ブラッシュからスティックに持ち換えるあたりからベースも2ビートから4ビートを刻み始め、「良い感じ」になってくる。名曲だけに最初からガツンといって欲しかった。
B"LADY DAY" 
C"BEATRICE" 

D"BEAUTIFUL LOVE" このアルバムの極めつけはこの曲でしょう。いきなり、STEWARTが快い4ビートを刻んでいく。この快さ!ったら、ありゃしない。これぞ、BILLの真骨頂でしょう!これだけ気持ち良い4ビートがあるのだから、KEVIN HAYSにはもっともっと感情を表に出した熱気溢れるピアノを弾いて欲しかった。それが凄く心残り。
E"IT COULD HAPPEN TO YOU" 
BILLの軽快なブラッシュ・ワークに乗ってピアノが踊ってくれればいいのだが、なかなかそうならない。演奏にメリハリがなくて実にまどろっこしい!このHAYSのピアノはもっとストレートであれば良かった。いつもこうなのかどうなのか知らないが、これを聴く限り、頭でっかちのピアニストという印象を持ってしまう。もっと、ストレートな感情の発露があっていいと思う。
F"IF EVER I WOULD LEAVE YOU" 
テーマの途中からドラムスとベースが入ってきて、アドリブではアップ・テンポの4ビートを刻んでいくのだが・・・。何故か、スキッとしない。
G"CARAVAN" 

図らずも、BILL STEWARTの素晴らしさを再認識させるアルバムとなった。3者のコラボレーションというよりは、BILLのドラミングだけが際立った。ドラマー一人良くても、ピアノ・トリオとして評価が上がることはない。やはり3人揃ってナンボの世界であって、ピアノもベースも含めた3者の力が拮抗したストレートな演奏を聴いてみたいと思うのはピアノ・トリオ・ファンの常というものだ。   (2006.06.23)



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