独断的JAZZ批評 326.

STEFANO BOLLANI
週末のオフに「春だー!」と言って窓を開け放し、真昼間からビールでも飲みながら聴いてみたい!
"HOMAGE TO BILL EVANS AND JIM HALL"
STEFANO BOLLANI(p), LUIGI TESSAROLLO(g),
2000年4月 ライヴ録音 (DDQ 128044-2)

BOLLANIのピアノとTESSAROLLOのギター・デュオ
BILL EVANSとJIM HALLへのオマージュだという
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STEFANO BOLLANIの素晴らしさを知ったのはSTUNT RECORDSの傑作"MI RITORNI IN MENTE"(JAZZ批評 210.)であった。それまでは国内盤をいくつか店頭で試聴することはあった。しかし、「イタリア・ジャズ界の貴公子」だとか、歌を歌ったりの軟弱な扱いを受けて、とても購買意欲を掻き立てるところまでは至らなかった。その評価を運命的に変えたのが、前述のアルバム。BOLLANIはピアノの全てを知り尽くしているとでも言うのだろうか、兎に角、ピアノの表現力が抜きん出ている。アイディアの宝庫でもある。
"MI RITORNI IN MENTE"の1曲目にある"NATURE BOY"は象徴的なプレイで、このアルバムとも一脈を通ずるものがある。それは、バッキングの妙だ。BOLLANIほどバッキングの上手いピアニストを僕は知らない。ソロを取るのは勿論のこと、裏に回ってバッキングを施したときも絶妙なのだ。主役を引き立たせながらも軽妙に唸らせるバッキングはこのピアニストの最大の持ち味だろう。

このアルバム、タイトル通り、EVANSとJIM HALLへのオマージュである。しかし、その内容はオマージュを超えて、素晴らしいデュオ・アルバムに仕上がった。
兎に角、音が良い!一流のプレイヤーというのは、その楽器の能力を最大限に引き出している。音色ひとつをとっても音の粒立ちや輝きが違ってくるものなのだ。逆に言えば、その楽器の音の美しさを最大限に引き出すことの出来ないプレイヤーは一流とは言えないと思うのだ。
この二人の奏でる楽器の音は実に「嬉しそうな音だ」。リスナーを幸せにする音色だと思う。
ABEIが"UNDERCURRENT"の掲載曲。

@"I'VE GOT YOU UNDER MY SKIN" COLE PORTERの書いた曲だが、なんと意味深なタイトルではないか!美しくも躍動し、一体感溢れる演奏が味わえる。このデュエットの真骨頂だね。
A"MY FUNNY VALENTINE" EVANSとHALLのデュオ・アルバム"UNDERCURRENT"(JAZZ批評 122.)のこの曲と何回も聴き比べてみたが、このアルバムのデュオは明るくて爽やか。そして、セクシーだ。BOLLANIとTESSAROLLOが交互にソロを執るが、その時のそれぞれのバッキングが最高なのだ!バッキングの妙、絡みつくようなインタープレイの素晴らしさをたっぷりと味わって欲しい。

B"DARN THAT DREAM" ピアノの音色に酔い痴れよう。
C"MY MAN HAS GONE HOW" アコースティック・ギターの音色に酔い痴れよう。
D"IL MONDO DI FABIO" 
E"ROMAINE" 
F"BORDER LINE" 
躍動する丁々発止。
G"TURN OUT THE STARS" 
H"IL BARBONE DI SIVIGLIA" 
BOLLANIのバッキングが凄い。
I"I'M GETTING SENTIMENTAL OVER YOU" イタリアン・カラーの明るい演奏で締めくくり。

STUNT RECORDSというのはジャズ・プレイヤーにとっては実に好ましいレコード会社ではなかろうか。ミュージシャン・オリエンテッドなレーベルだと思う。従って、演奏のひとつひとつが活き活きと溌剌としている。STEFANO BOLLANI、CARSTEN DAHL、KASPER VILLAUME、JESPER BODILSEN、MADS VINDING・・・など多くのミュージシャンが傑作を残している。共通しているのは、ミュージシャンの演りたいと思っている音楽が演りたいように成し遂げられたということだろうか。ついでに言うと、録音もすこぶる良い。このアルバムの場合、時々、拍手が入るので、初めてライヴと分かる。

このアルバム、週末のオフに「春だー!」と言って窓を開け放し、真昼間からビールでも飲みながら聴いてみたい!更には、僕はこのジャケット・デザインがすこぶる気に入っている。ジャケットから中に詰まった音楽の素性が分かると言うものだ。
オマージュを超えたアルバムとして「manaの厳選"PIANO & α"」に追加した。   (2006.03.02)



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