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| 『カーテンコールの灯』(Ghostlight)['24] | |||||
| 監督 ケリー・オサリバン&アレックス・トンプソン | |||||
| 自責であれ、コンプレックスであれ、悲しみであれ、心のうちにある囚われが人に心身の不調を与えている際に最も有効な療法は、セラピーなどの“心理療法”ではなく、他者の感情を生きる演技というものを己が生身で行う“演劇”なのかもしれない。自身の感情やアイデンティティから離れる時間を持つことによって、自ずと自身を対象化したり、自縄自縛の囚われからの解放を促したりできるのかもしれないと感じた。そのことを決して上手な語り口で描いていたようには思えないが、演劇の持つ力というものを十分に感じさせてくれる作品にはなっていた気がする。 家族のなかでも最も深い傷を負っていたのが、しばしば問題行動を起こし、カウンセラーの世話にもなっていた娘のデイジー(キャサリン・マレン・カプフェラー)ではなく、息子の恋人クリスティーン(リア・クビレテ)への想いを否定し自死に追いやった悔恨と自責を、心中未遂で生き残ったクリスティーンの母親の薬物管理責任を問う訴訟に転換させて辛くも持ち堪えようとしているダン(キース・カプフェラー)であったから、その意味でも、彼がリタ(ドリー・デ・レオン)に地元劇団の活動に誘われたことは、僥倖というほかない巡り合わせだったように思う。 演劇活動にまつわる小咄的なネタが愉快に繰り広げられるなかでも幾許かの変化はダンに訪れていたのだろうが、劇団活動の真骨頂はやはり公演にあるわけで、妻シャロン(タラ・マレン)と娘の協力も得て、堂々とロミオを演じるに至っていたことが印象深かった。 それはともかく、五十路のリタのジュリエット役に対して堪え切れない不満を表明していたロミオ役の若者タイラー(チャーリー・ルーベック)が可笑しかった。そこでインティマシー・コーディネイターの話が出てくるのかと唖然とし、リタのパンチが炸裂したことに笑った。おじさんロミオ役に若いジュリエット役でのタイラーの如き言い分に対するロミオ役のパンチは、今もって許されないに違いないが、まことラヴシーンというのはデリケートなものだと改めて思った。『荒馬と女』のマリリンや『昼下がりの情事』のオードリーの胸の内は、どうだったのだろう。 | |||||
| by ヤマ '25.12.17. 美術館ホール | |||||
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