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「戦争への道」は実行段階に

ながさき9条フェスタで前田哲男さん語る

 5月3日、ながさき9条フェスタが開かれ、会場で120名、オンラインで30名が参加しました。軍事ジャーナリストの前田哲男さんが会場からの質問に応える形式で講演を行いました。

Q1)戦争法が成立して5年の受け止め方は?
 戦争法施行までは、戦争への道は「準備段階」と言われていたが、今は「実行段階」にある。
 日米2+2で「台湾海峡の平和と安定の重要性」が明記されたことは重大。「台湾条項」は日中間に国交がない時に明記されたもの。1973年の日中共同声明後は自然消滅した。この「古臭い」内容が菅政権下で復活したことは極めて大きい。

Q2)「敵基地攻撃能力」とは?
 「敵基地攻撃能力」は1950年ごろから国家の自然権として「自衛権の限界はどこか」という「法理論争」としてあった。それがイージス・アショアを断念した後、前安倍首相が「新しい方向の安全保障政策」を提唱し具現化した。
 「新しい」とは「迎撃」ではなく「攻撃」という意味。安倍首相の意思は、現菅政権にひきつがれ「新しい安全保障」は対中包囲網という形で実行に移されている。

Q3)南西諸島防衛構想の内容と狙いは?
 1200kmに及ぶ南西諸島の対岸は中国。中国から太平洋へのルートは、鹿児島と奄美大島の間、沖縄と宮古島の間、宮古島と石垣島の間、南に抜けるには台湾海峡しかない。南西諸島は中国の「ビンの栓」のようなもの。威圧するには南西諸島の武装化が重要だが、逆に中国には先制攻撃のオプションを与えている。アメリカのはるか東のかなたにあって、国防の第一線。その第一線に日本が立っている。しかし、そこに住む15万人の安全は考えていない。

Q4)私たちがなすべきことは?
 いまは危機的な状況にある。自民党憲法草案は9条に自衛権を明記し、9条2項に「国防軍を置く」を盛り込んでいる。憲法で自衛権と国防軍が認められれば、教育現場、社会生活すべてを軍事の論理が覆いつくす。
 私たちは、憲法を守るだけでなく、そのもとでの安全保障を考えなければならない。「協調的安全保障」「人間の安全保障」という、憲法が1940年代から言ってきたことを誇りに思い、それを時代に合うように考えていく。それが私たちの役割ではないだろうか。

(2021年5月4日)