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「安倍9条改憲」の現在と私たちの課題

長崎県9条の会 愛敬浩二講演会

 11月4日、愛敬浩二さん(九条の会世話人・名古屋大学教授)の講演会がありました。現状をリアルに捉え、いかに改憲議論に向き合うか示唆に富むものとなりました。

1.安倍9条改憲の現状と今後の情勢
 安倍首相は自分の任期中に9条改憲をして名を残したいだけ。改憲勢力にとって安倍はエースで「野蛮な情熱」を持っているから守ろうとしている。2項を残しても自衛隊を書き込んでしまえば後は解釈でなんともでもなり、歯止めは完全になくなる。
 過去の選挙で自民党は比例代表の得票率で40%を超えたことがない。国民投票で自民党案が通る保証はない。これまで安倍は選挙になると野党の政策を取り込んで争点隠しをして勝ってきたが国民投票にはこの手は使えない。世論調査では改憲賛成が多いが安倍政権の下での改憲だと減る。改憲のエネルギーは安倍から出ているが、安倍がブレーキになっている。

2.どのように改憲論議に挑むべきか
 憲法論議は、よりよい憲法とは何か議論すること。改憲論議は極めて政治的問題。「憲法を変えない」は相手が提案している憲法条文に反対しているだけ。はっきりとわけて議論すべき。
 改憲派が護憲派を「1ミリも改憲しないのか」と攻撃・批判する。反撃には「発議する側は、『現在、○○条があることで▼▼ができない。■■と条文を変更すればこれができる。だから改憲するんだ』と説明すべきだ」と、憲法9条を改正して何がしたいのか語らせること。

3.合憲としたいのはどの時点の自衛隊か
 自衛隊の存在を認めるだけだという場合、どこの時点なのかが問題。非常な勢いで安全保障政策は転換している。かつては戦闘機(F4ファントム)配備の際に、それが攻撃型性格を持たないように空中給油装置を撤去するなど配慮していた。しかし安倍政権は集団的自衛権一部容認の閣議決定を行い、さらに「護衛艦いずも」を戦闘機の発着可能な空母に改修する検討に入った。空母は出かけていって戦闘機を飛ばす侵略するために必要なもの。結局は米軍も利用できるようになる。

4.日米同盟の実態こそ真の論点
 日本は世界の警察であろうとする米国の劣位の同盟国。米国が困る日本の防衛路線は①非武装、②自主防衛、③全面的な米国依存で、米国の下働きとして努力することを望んでいる。
 劣位の同盟国は捨てられることを恐れ、優位の同盟国の戦争に必要以上に積極的な貢献をしようとする危険がある。そして優位の同盟国は、状況次第では劣位の同盟国を切り捨てる。その危険を考えるべきだ。
 米中の関係下で、日本はリアルな安全保障を考えないといけない。米国に従っておけば大丈夫と思っているが米国は日本の意志とは無関係に戦争を始めたり、やめたりする。危険という緊張感がないからその手を縛っておく必要がある。9条でなんとか縛っているからダメな政府でも自衛隊に死傷者を出さずに済んたのだ。
 憲法9条を守ろうという側も丁寧に議論しなくてはいけない時期に来ている。重要なのは一人ひとりが何で戦後の反戦平和にこだわるのか、その思いをあらためて確認すること。自分言葉で語ることがいちばん人を説得できる。

(2018年11月5日)