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災害対処は日本国憲法の視点から

 7月1日、長崎県地域・自治体研究所の総会で、宮入興一さん(長崎大学・愛知大学名誉教授)が「災害と日本国憲法」と題して講演を行いました。

 宮入さんは、阪神淡路大震災以降、巨大災害を「千載一遇のチャンス」として、平時では進めることのできなかったハードな都市づくりなど災害資本主義とも言うべき事態が横行してきたことを紹介。しかし国民や被災地・住民が求めているのは人権優先の「人間的復興」だと指摘しました。

 一方、東日本大震災では米軍・自衛隊による「災害派遣」の新展開である災害ミニタリズムという事態が生まれました。これに対峙するのは日本国憲法の平和的生存権です。さらに政府・自民党は憲法改悪の突破口として、災害を口実にした「緊急事態条項」導入を画策しています。これは災害ファシズムであり、対抗するものは日本国憲法の人権保障、権力の分離、立憲主義。宮入さんは、いつかは分からないが必ず大災害は起こる。私たちは災害を口実にしたこのような動きを十分に理解しながら対応していくことが求められていると述べました。

 以下は「災害ミリタリズム」の項です。

東日本大震災で米軍は「トモダチ作戦」と銘打った迅速かつ大規模な支援活勤を、自衛隊と密接な関係を保ちながら共同活動として実施した。この「作戦」は「人道支援」を名目にアメリカの太平洋軍司令部の指揮下で展開された、「太平洋有事519 作戦」という名の実戦であった。仙台空港の復旧は嘉手納の特殊作戦航空群を動員。地上部隊の主力は、沖縄の海兵遠征部隊を佐世保の揚陸艦等に分乗させて充てた。

 このとき防衛省( 市ヶ谷)、在日米軍司令部( 横田基地)、自衛隊統合任務部隊司令部( 仙台)の3箇所に「日米調整所」を設置して活動調整を行った。この経験は将来のあらゆる事態への対応のモデルと位置づけられた。

 米国は「トモダチ作戦」で(1)米軍に対する日本人の容認度を高めるのに成功し、(2)米軍と自衛隊との内部連携や調整機能を飛躍的に向上させ、日米安保体制の実質的な内部体制を強化させた。(3)これを契機に、日米関係が一段と強化され、安保体制の新段階を画そうとする日米安保の新時代(沖縄・本土の米軍再編、オスプレイ導入、安保法=戦争法制定、憲法改悪への策勤などを含む)への重大な転機となった。

(2018年7月2日)