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「核兵器禁止条約」時代と北朝鮮危機

被爆県・自治体はどう向き合うか

 10月22日、長崎県地域・自治体研究所の例会が開かれ、長崎の証言の会の山口響さんが標記タイトルで講演を行いました。
 山口さんは核兵器をめぐる大きな柱は禁止条約の問題と北朝鮮問題だが、条約推進派は北朝鮮問題をどう扱うか声を上げていないし、北朝鮮の危機を煽る人たちは禁止条約は紙上の約束であって意味がないという言い方をし、かみ合っていないと指摘しました。

□核兵器禁止条約のポイント
 禁止条約はほとんどの行為を禁止している。そのポイントは(1)「使用するとの威嚇」禁止がはいったことで核抑止の否定となった(参加国のハードルを上げたことは事実だが)。(2)たんに「実験」禁止となったことで、CTBTにもない臨界前実験も禁止される。(3)「自国内への配備」禁止で核兵器の持ち込みが禁止される(「寄港」はグレーゾーン)。(4)核兵器製造企業への「資金供給」や核兵器の「通過」「使用の準備」禁止も検討されたが、見送られた。

□禁止条約に対する批判的意見への反論
(1)核保有国が入らないので実効性がない。→静観すればいいのに強く反発したのは核兵器が絶対悪という規範が広がると核使用のハードルが上がってしまうから。影響は絶大だ。
(2)核保有国と非保有国の亀裂を深め、NPT体制を損なう。→すでに保有国が核軍縮の約束を果たそうとしない時点で、NPT体制は弱体化している。禁止条約は核軍縮義務を果たさせるよう、保有国に圧力をかけるもので、NPT体制の強化になる。
(3)目前の北朝鮮問題の解決には役立たない。→短期的にはそうかもしれないが、条約を使って朝鮮半島の非核化をどう進めるかポジティブに考えるべき。

□北朝鮮危機とは何か
 北朝鮮が一方的に攻撃を仕掛けてくるという意味の危機ではなく、北朝鮮が核・ミサイル開発を進め、その挑発に米国などが乗って紛争がエスカレートする中で、偶発的に核使用に至りかねないという意味の危機。

□話し合いは無駄か?
 オバマ政権が行ってきたのは「戦略的忍耐」であって事実上の無視だった。北朝鮮の要求はキム体制の維持にほかならない。米国は対話も選択肢に入れているが日本政府は対話は必要なく、各国に外交関係を絶てとまで言っている。残念ながら日本の世論も半数以上が「圧力強化+米国の核の傘」に賛同しているのも事実。

□国民保護訓練は非現実的
 長崎県でも北朝鮮ミサイルを想定した「国民保護訓練」が実施される。意図的な対日攻撃の可能性が高いかのような印象操作であり、対処法が原始的で現実性に乏しい。すでに14道県で実施されたが「田舎」ばかり。都会でやるとパニックになるからだろう。政府にとっては「非現実的」であろうとも構わなく、戦時意識を高揚させて9条改憲への足がかりにしたいと思っているのではないか。

(2017年10月23日)