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安保法制と9条のこれからを考える

 9月18日、「靖国」と「侵略」を考える市民のつどいが開かれ、木村草太さん(首都大学東京;憲法学)が「安保法制と憲法のこれから」と題して講演しました。

♦憲法は張り紙のようなもの
 憲法は、問題を引き起こしやすい国家権力に、それを繰り返させないように向けられた張り紙。戦前の国家権力は(1)戦争、(2)人権侵害、(3)独裁、という過ちを犯した。それを踏まえて憲法がつくられた。(1)軍隊と戦争をコントロールする(戦争の放棄)、(2)人権を保障する(国民の権利及び義務)、(3)権力は分立して、独裁は許されない(国会、内閣、裁判所、財政、地方自治)。戦後に憲法ができた国はどれもその構成がよく似ている。日本の場合は(1)と、国民主権を鮮明にした「象徴天皇」が特徴的だ。

◆9条1項・2項を残した自衛隊の明記
 自衛隊の任務をどう書くか、論点は2つある。さしあたって、個別的自衛権までの(日本への武力攻撃があったときに対処をする)組織として自衛隊を置くという甲案。その自衛隊に集団的自衛権(外国での武力行使)を認めようという乙案は別の論理になる。

 両者は性格が異なるので国会法上は別々の国民投票となる。甲案が可決される可能性はあるが、となると安保法制は違憲ということになる。乙案は否決の可能性が高く、それは安保法制に国民がノーを突きつけたことになり、安倍政権にとっては共にイバラの道になる。彼らはごまかして両者を1つの投票にしようとするだろうが、それをさせてはならない。

◆9条の今後を考える
 9条については、本来的には、国際社会の中で日本がどうあるべきか、非常に大きな文脈の中で語られるべき話。世界で侵略があったときに、それを助けるために国際貢献として参加した方がよい世界になるという議論ができる。一方で、武力行使を一切しないという立場だからこそできる人道支援を可能とする9条があることが日本のためにも国際社会にも有益だとする議論もできる。9条は単に日本が丸腰になるのではなく、日本が非武装を選べるような平和な国際社会をつくろうという理想を込めたものでもある。

 緊迫する国際情勢の中で、「戦争に巻き込まれなければいい」とか、「戦争にならず自分の都合のいい時に先制攻撃のできるお得な憲法は何か」という、卑しい9条論議はやめよう。

(2017年9月19日)