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三菱長崎造船が新型護衛艦の主事業者に

8隻の設計を統一してコストを抑制


三菱重工業が提案したイメージ図

 8月9日、防衛装備庁は18年度から連続発注予定の新型護衛艦について、主事業者を三菱重工業に、下請負者を三井造船に選定したと発表しました。1隻ごとに建造者を選定してきた従来方式を大きく変更するものです。

 13年12月に閣議決定された「防衛計画の大綱」は「周辺海域の防衛や海上交通の安全確保及び国際平和協力活動等を機動的に実施し得るよう、多様な任務への対応能力の向上と船体のコンパクト化を両立させた新たな護衛艦等により増強された護衛艦部隊を保持する」と記していました。

 この「コンパクト艦」について、防衛装備庁は1隻当たり約500億円の建造費用を前提とした企画提案を公募し、選ばれた主事業者と下請負者が設計を共通化してコスト低減を図る方式をとったのです。また仕事を振り分けることで3社しかない護衛艦の造船基盤が弱体化することを防ぐ狙いもありました。

 ジャパンマリンユナイテッド(JMU)、三井造船、三菱重工業の3社がそれぞれ企画提案を提出。(1)設計建造能力、(2)関連企業の管理能力、(3)維持整備管理能力の観点から三菱重工業の提案がもっとも高く、次点が三井造船でした。

建造中の「あさひ」との比較
  基準排水量 全長 全幅 最大速度 建造費
あさひ 5,100トン 151m 18.3m 30ノット 701億円
新型艦 3,900トン 130m 16m 30ノット超 500億円

 三菱重工業提案の船体は表のように小型で、90年代の護衛艦のサイズですが、62口径5インチ砲、垂直発射装置、対艦ミサイル発射装置、対艦ミサイル防御装置、機雷敷設装置などの武器の他、哨戒ヘリの搭載・発着機能、水中無人機、水上無人機の運用が可能となっています。

 防衛省は18年度概算要求に2隻分の建造費約1,000億円を盛り込もうとしています。4年間の予算で8隻を建造する計画で三菱が6隻、三井が2隻(2番艦・8番艦)を受け持つ見通し。

 今回の結果は三菱長崎造船にとっては願ったり叶ったりのもの。大型客船事業の大規模赤字で分社化を余儀なくされ、立神工場を自衛隊艦艇専用にしたものの、当然視されていた15・16年度のイージス艦受注を逃しました。現在建造中の「あさひ型」2番艦を今年秋に進水させると、新たに取り掛かる艦艇がしばらくない状態だったのです。

(2017年8月10日)