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立憲主義の危機−大異を残して大同につけ

 2月20日、「平和憲法を守る長崎ネットワーク」が講演会を開きました。水島朝穂さん(早稲田大学教授)が「立憲主義と安保関連法−違憲の法律を施行させてはならない−」と題して講演。戦争法の問題点や危険性について軽快な語り口で説明され、日本国憲法についての理解を深めその意義を改めて考える場となりました。(以下、概要)

 1935年、天皇機関説(主権は国家にあり天皇はその機関である)事件はスキャンダル的な発端だったが、やがて凄まじい圧力が憲法学者を襲った。翌年二・二六事件、そして日中全面戦争へ。この間、たった2年である。昨年、著明な憲法学者の「安保関連法は違憲」に対して憲法学会に、スキャンダラスなものすごい攻撃がきた。80年前とそっくり。安保法を放置すれば危険だ。それほど安倍政権はテンポと勢いとパワーがある。

 戦後、文部省が社会科教科書用につくった『新しい憲法のはなし』には致命的な弱点があった。それは憲法の本質の理解のさせ方である。憲法は国民が権力者に守らせるべきものなのに、「私たちが守るべきもの」としている—立憲主義という言葉を流行らさせなくした罪がある。戦前の学生や政治家たちの方が立憲主義に親しんでいた。立憲主義の柱は2つ。(1)権力者の立ち入れない聖域をつくり権利を保障=「自由」。(2)権力の暴走を抑えるための三権分立(水平・垂直)。日本はさらに半数ごとに改選する参議院があることで他国にないほど民主的な制度。

 1954年、政府は軍隊を合憲とするために「戦力とは自衛のための最小限度を超えない実力」とする解釈を行って自衛隊を発足させた。それは専守防衛に限定し、集団的自衛権を否定する解釈でもあった。しかし2年後の参議院選挙で2/3をとり、憲法を変える目論みだったが実現できず、その解釈が60年間続くことになる。それを安倍内閣は「7.1閣議決定」で壊し、自衛隊を違憲の存在にしてしまった。

 安保関連法の中で一番危険なのは「捜索救助活動」だろう。「後方地域」「周辺」が外れたために支援活動地域は世界中に及ぶ。近傍で戦闘行為が始まれば自衛隊は危険を回避するために「休止」「中断」することになっているが、「捜索救助活動」では継続もできるようになっている。養成費の高い米軍パイロットの救出のために自衛隊員が戦闘に巻き込まれて命を落とす危険性が高くなる。

 安倍内閣は「緊急事態条項」による「お試し改憲」を狙っているが、その資格はない。(1)改正手続によらず壊憲した内閣にそもそも改憲を行う資格はない、(2)「緊急事態条項」は戒厳令と同じでクーデター状態=立憲主義の自殺、(3)災害に対処するというが、オリンピックへの資財投入でフクシマの復興を遅らせている。

 私たちの意思を現す方法としてデモ・集会、訴訟、選挙がある。それらを有機的に結びつけて効果的に力を発揮し、この国の立憲主義を守ろう。そのためには大異を残して大同につこう。

(2016年2月21日)