小浜でとれる山菜

小浜市内で採れる山菜のご案内。お寺の裏山で採れるものを中心にご紹介する。ときには自然の中に分け入って自ら山菜を採り、自ら料理して食べてみるのもいいものである。ただし採っていい場所と悪い場所があることをわきまえなければいけない。
 
リョウブ(令法)。春一番に出る新芽を食べる。リョウブはどこの山にでも生えている、樹皮に特徴があって木を覚えやすい、中低木で新芽を採取しやすい、という入門者向けの山菜。新芽の色はうす茶色、それが湯に入れるときれいな緑色に変わり、おひたしにすると少しにがみがあるが、このにがみが天ぷらには合う。
 
戦中戦後の食糧難のときには、リョウブの新芽を湯がいて乾燥して保存し、雑炊に入れて食べていたという。それをリョウブ飯といい、毎日そればかり食べていたので、リョウブは二度と見たくないという人もいたとか。つまりどこでも大量に手に入る山菜であり、過去にそれだけたくさん食べられてきたのだから、まちがいなく安心安全な山菜である。
 
タラノキ。これの新芽が山菜の王者タラの芽、林道わきによく生えているが、新芽を採るのは一回だけにしないと木が枯れる。するどいトゲには要注意。さっと湯がくか天ぷらにすると、さわやかな味と香りがおいしい。タラノキ、コシアブラ、タカノツメ、ハリギリ、はすべてウコギ科の木なので味も香りもよく似ている。ウコギの木はこのあたりの山には生えていないが、私は庭で育てて食べている。
 
コシアブラ(漉油)。タラの芽よりもおいしいと評判の山菜。やはり新芽を食べる。ただしこの木は数が少なく、しかもそこそこ大きくなる木なので見つけても手の届かないことが多い。
 
タカノツメ(鷹の爪)。コシアブラとよく似た木、新芽の時期や食べ方は同じであるが、味はコシアブラの方がいいと思う。ともに掌状複葉で、コシアブラは小葉が五枚、タカノツメは三枚。
 
ハリギリ(針桐)。この木は数が少なく、裏山を探してもひょろひょろとした細い木が数本あるのみ。木が細ければ新芽も小さく採れる数も少ない。この木の巨木が見たければ若狭町成願寺(じょうがんじ)の闇見(くらみ)神社か、若狭町杉山の椙杜(すぎもり)神社へ。うそでしょうと思うような巨木がある。とくに椙杜神社の木はでかく、木がでかければ新芽もでかいはずだが、でかすぎて新芽にまったく手が届かない。
 
ニワトコ(庭常)。春一番に芽吹く樹種の一つ。二月下旬に出る新芽を食べる。ただしこの木は数が少なく、またそれほどおいしいものではなかった。実は果実酒にできるというが試したことはない。
 
クサギ(臭木)。道路脇によく生えている低木。若葉を湯がいて食べる。強いにがみが持ち味の山菜。名前のとおり特有の強い臭いを持っているが、湯がくと臭いは消える。真夏に白い花をたくさんつけ、秋の赤い実もよく目立つ。
 
ワラビ(蕨)。鮮やかな緑色、淡泊で雑味のない味わい、トロリとした舌触りのよさ、を合わせもつ山菜の王者のひとつに数えられるシダ植物。裏山の尾根ぞいに生えている。その群生地は十年に一度くらいイノシシに根こそぎ掘り返されている。どうやら根を食べているらしい。昔はワラビの根のデンプンでわらび餅を作っていたとか。ワラビを食べていた家畜に膀胱がんが頻発し、調べてみたら発がん性があることが分かった、ということでワラビを食べる人は減ったが、湯がいてアク抜きをすると発がん性はなくなると言われている。
 

フキ
(蕗)。採取する時期と料理法によっては、第一級のごちそうになる山菜。小浜にはあまり自生していない。
 
ツワブキ(石蕗)。出たばかりの柔らかい茎の部分を食べる。葉の部分はまずい。春を味わうべく私は毎年一度か二度食べているが、ていねいに料理するとおいしく食べられる。意外とどこにでも生えていて、一度にたくさん採れるのもうれしい。晩秋に一年の最後を飾る黄色い花を咲かせてくれる。
 
ヤマモモ(山桃)。六月の下旬ごろに熟す実を食べる。そのまま食べてもジャムにしてもおいしい。この木はたくさん生えているが実のなる木は少ない(雌雄異株)。ヤマモモの実を売っているのを見たことがあるが、売っている実に比べると山でとれる実はかなり小さい。なおすべての木の実のできには当たり年とはずれ年がある。
 
ヤマボウシ(山法師)。実を食べる。この木もたくさん生えていて、夏の初めに大きな白い花をたくさん咲かせるが、花は枝の上に上向きに咲くので、下を通っても気がつかないことが多い。そのかわり上から見下ろしたときにはあっと驚くほどよく目立つ。花が終わると実ができ、実も気づきにくいなり方をし、九月ごろ赤く熟して上品な味わいになる。じゃまなタネが三つ四つ入っているのが欠点。果実酒にするとおいしい。
 
アケビ(木通)。アケビの実の甘さは山中では貴重な存在。ただしアケビの木はたくさんあるが、食べごろの実を見つけるのは難しい。たいてい猿かカラスに先にとられてしまうのである。アケビ科の常緑樹のムベも自生していて実は同じように食べられる。ムベの実は熟しても割れない。アケビの新芽を木の芽と呼んで食べる地域もある。つるも葉もおいしいがたくさんは採れない。
 
小浜に生えているアケビのほとんどは小葉が三枚の三つ葉アケビ。それに対して植物名アケビの木は小葉が五枚、小葉の形にも違いがあり、新芽は三つ葉アケビの方がおいしい。地上を直線的に這う三つ葉アケビのつるでアケビ細工を作る。
 
スダジイ(すだ椎)。この木のドングリがシイの実。小浜にはスダジイの木が多く、シイの実もたくさん落ちるが、小さなドングリなのであまり目に付かない。生で食べられるほどアクがなく、しかもおいしい実なので、大きければいい食料になると思う。落ちるのは九月下旬。日本にはドングリの木が二二種あるが、大半のドングリはアクが強くて食べられない。
 
マテバシイ(馬刀葉椎)。これもシイの木の一種、川崎の台場浜公園に五・六本植えられていて、十月初旬に落ちる大きなドングリを煎って食べる。アクはなくまあまあの味。九州や沖縄に自生する南方の木のせいか、小浜ではできる実の数が少ないように思う。
 
クリ(栗)。小浜の山に自生する木の代表種のひとつ。十月の初めにイガにつつまれた実を落とす。柴栗(しばぐり)とか山栗と呼ばれる野生のクリの実は、小さくて食べるのに手間がかかるが味はいい。
 
ラカンマキ(羅漢槙)。これはイヌマキの変種、中国原産とされ、葉がふつうのイヌマキより小さい。青井の小浜公園にこの木が一本植えられていて、コケシのような形の二段重ねの実を付け、果肉の部分は食べられる。また果実酒にしてもおいしい。実が熟すのは十月の初めごろ。ここの木は二年に一度実をつけるらしい。
 
オニグルミ(鬼胡桃)。これは野生のクルミの木、下根来(しもねごり)から上(かみ)根来あたりの道ぞいに自生している。塩竃(しおがま)の吉井医院の前の海岸にも生えていて、ちゃんと実もできる。実は九月の初めに熟し、味は売っているクルミと同じであるが、実が小さいだけに中身も小さい。カナヅチで割って食べる。
 
カヤ(榧)。カヤの実はおいしいが、カヤの木は久須夜ヶ岳へ上る道ぞいで小さな木を一本見つけたのみ。果実酒にするなら九月初旬、食べるなら九月下旬。
 
サルナシ(猿梨。コクワとも)。実を食べる。キウイに近いつる性の植物で味もよく似ている。果実酒にするなら九月初旬、食べるならもう少しあと。実にしわが寄ってきたときが食べごろ。山歩きをしていると、林の中でサルナシの太いつるをよく見かけるが、たいていは手の届かない高い木の上で実をつける。小浜では久須夜ヶ岳へ上る道ぞいと、おにゅう峠へ上る林道ぞいに、手の届くところに実のなる木が生えている。サルナシはマタタビの仲間であるが、小浜でマタタビの木を見たことはない。
 
ツノハシバミ(角榛)。これはヘーゼルナッツの仲間、秋にできる実を食べる。久須夜ヶ岳の山頂付近でこの木を一本見つけたが実はまだ食べていない。ヘーゼルナッツなるものも食べことがない。
 
トチノキ(栃。橡)。巨木になる樹種のひとつ、上根来からおにゅう峠に上る林道ぞいにかなり大きな木が数本ある。九月の初めに落ちる実を食べる。飢饉のときの非常食として知られるトチの実は、アクの強さとアク抜きに手間がかかることでも有名。そのため実を拾って天井裏に放置しておいてもネズミも食わず、そうして貯めた実を飢饉のときアク抜きをして食べていたのだろう。一度アク抜きに挑戦してみようと思っている。
 
クサソテツ(草蘇鉄)。このシダ植物の新芽がよく知られた山菜のコゴミ。北川(きたがわ)の河原で発見し、裏庭に移植して育てている。

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