レディランサー 帰郷編
「エディ、どう?」
母と姉のアリサが、ジュンを連れて居間に戻ってきた時、ぼくは呆然としてしまい、しばらく声が出なかった。
ジュンが、赤い絹地に白や紫の花模様の、豪華な振り袖を着せられていたからだ。
黒く短い癖っ毛の髪も、きちんとピンで止められ、華やかに揺れる髪飾りを挿してある。
金糸の刺繍がある、重量感のある帯も、背中で大きく華やかに結ばれている。
着物自体には見覚えがあった。何年か前、アリサが何かのパーティで着たものだ。しかし、それがジュンを包む日が来ようとは。
ジュンは小麦色の肌に薄く化粧されていて、照れたような、困ったような顔である。オレンジがかったピンク色の口紅がよく映えて、見違えるように華やかだ。元々、美人顔ではあるのだけれど、日頃は何しろ、質実剛健だから。
「あたしにはちょっと、豪華すぎると思うんだけど……」
ジュンは長い袂を持て余す身振りをしているが、若い女の子が着飾らないで、誰が着飾るのだ。
「よく似合うわ」
「素敵よ、可愛い」
二人がかりで着せた母と姉は、いたく満足そうである。
「着物は元々、日本の民族衣装だから」
「みんなに見せびらかしていらっしゃい」
ぼくたちはこれから、友人たちとの同窓会に行こうとしていた。《エオス》が近くの星系まで来たので、一週間の休暇をもらい、ジュンと二人で、ぼくの郷里の惑星にやってきている。
ぼくは勘当の身なので(勘当と言い張る父は、艦隊勤務ではるか彼方にいるが、ぼくが実家に泊まったりしたら、後できっと怒るだろう)、昨夜は近くのホテルに泊まったが、ジュンはぼくの家に泊まった。そうでないと、母と姉が承知しなかった。
二人とも、ジュンと仲良くなりたいと熱望していたからだ。
内心ではきっと、
(いつかは、エディと結婚……)
と期待しているのに違いない。ジュン本人は、ぼくのことを男だなんて思っていないことを、ぼく自身はよくわかっているのだが。
この時期に同窓会が開かれたのは、たまたまである。しかし、ぼくが出席できると知ると、友人一同から、
『ぜひ、ヤザキ嬢も一緒に』
という熱い要望が来たのだ。
要望というか、ほとんど脅迫である。ぼくがジュンを連れて行かなかったら、みんなに首を絞められるに違いない。
何しろジュンは、市民社会の新たな英雄だから。
カイテル製薬の社長だったドナ・カイテルに誘拐された父親を、辺境から無事に奪還してきたことで、ジュンは、
『もしかしたら、父親以上の豪傑かもしれない』
と言われるようになった。
また、ティエンの事件からの生還もある。
その陰にアイリス一族という助力者がいることは、ぼくとジュンだけの秘密だ。
アイリスたちは、無事に(というか、過激にというか)、辺境で勢力を伸ばしているらしい。人類が将来、彼女たちと共存できるように願うばかりだ。
「でも、これ、歩きにくいんですけど……」
ジュンは金色の草履を履いた足元を見て、遠慮がちに言う。
「そう、だから、転ばないように、内股でお上品にね」
「エディ、気をつけてエスコートしてあげるのよ」
慣れない衣装に困惑するジュンには悪いのだが、ぼくは単純に感動していた。
まさに、生きた宝石。
こんな美少女をエスコートできるなんて、ぼくは果報者だ。
「ほら、なんか感想は」
アリサに肘でつつかれ、ぼくははっとした。
「あ、綺麗だよ、とっても……」
だなんて、陳腐なことしか言えない。ぼくが作家か詩人なら、この感動をもっとうまく言い表せるのに。
「そう?」
ジュンは甘い色に塗られた唇を尖らせ、恨めしいような顔をしてみせるが、さすがに、母や姉の好意を無にするようなことは言わない。
「それじゃあ、行ってきます……着物、汚さないように気をつけますから」
ぼくはジュンを車の助手席に乗せ、ほとんど『天国へのドライブ』という気分だった。首都のホテルまで三十分あまりの、快適な走行である。着物の長い袂はジュンの膝の上に揃え、帯揚げなどの付属品を崩さないよう、慎重にシートベルトをかけた上でのこと。
もちろん、司法局の護衛車両は距離を置いて前後に走っているが、それはいつものことなので、風景の一部になっている。同窓会の会場になったホテル周辺も、既にきっちり警備されている。誘拐や狙撃の危険はないだろう、たぶん。
ああ、男でよかった。
こんな美しい女の子を連れて、車を運転できるなんて。
しかし、
「これ、後ろに寄りかかれない……」
情けない声でジュンが言う。相手が悪党なら、得意の蹴りをお見舞いする子だが、堅い帯で締め上げた正装だと、勝手が違うのだろう。
「ごめん。母と姉が無理を言って」
二人とも、ぼくが女性連れで帰郷したのが、嬉しくてならないのだ。ジュンは別に、ぼくの何というわけではないのだが(そりゃあ、ぼくの側には野心があるが)、今は単なる〝船の仲間〟にすぎない。
最大限に言っても、〝親友〟である。
そこから〝恋人〟に進むは、長い道程が必要だ。永遠にたどり着けない可能性だって(悲しいが)ある。
それでも、軍を辞めてさすらっていたぼくが、ジュンと出会ってから再出発した――そのことが、二人を安堵させている。
『ジュンに何か変なこと、言わないでくれよ』
母と姉には、何度も念押ししなければならなかった。ぜひ息子の恋人に、とか、弟を生涯よろしく、なんて言われた日には、ジュンの方が困ってしまうではないか。
「ううん。こんなに歓迎してもらって、それはとっても嬉しいんだけど……」
「今日一日だけ、我慢してくれないかな」
ぼくは拝むような気持ちだった。せっかくこれだけ着飾ったのだから、同窓会でみんなに見てもらいたい。
ぼくは横に張りついて、不埒者がジュンを口説いたりしないよう、睨みを効かせるつもりだ。
まさに、人生の晴れ舞台。
「まだ時間はあるから、途中で何か軽く食べるかい?」
会場に着いたら、ジュンは握手攻めや記念撮影攻めになり、飲み食いするゆとりはないかもしれない。有名人の宿命だ。
「食べるぅ?」
ジュンは恨めしげにつぶやいた。
「これで、ものが入るのかな。そのうち、酸欠でぶっ倒れるかも。昔の人は、本当にこんなもの着て暮らしてたの?」
「うーん、それはたぶん、上流婦人の衣装だろうね」
「映画で見たけど、庶民はもっと涼しそうな格好してたよ。あ、でも、お城のお姫さまとか、位の高い侍女とかは、ズルズル長い裾を曳いてたな。あれよりはまだ、ましなのか」
「そんなに辛い?」
「ほとんどゴーモン」
「ごめんよ。苦しい格好させて。でも、ほんとに綺麗で、夢みたいだな」
ついうっかり、本音を洩らしてしまった。ジュンに何か気づかれたのではと、横目で様子をうかがってしまう。でも、ジュンは慣れない着物の襟元を気にしているだけのようだ。
「ま、いいけどね。お母さんたちが、せっかく着せてくれたんだから……でも、奴らが見たら、爆笑だろうな」
というのは、《エオス》の先輩たちのことだ。
先輩たちは〝鬼軍曹〟の役を引き受けているから、ジュンには厳しく当たる。次々と仕事を言いつけ、ちょっとでも失点があれば、びしばし叱る。
でも、本当はジュンを妹のように思い、見えない所で気を配り、守ってくれているのだ。ジュンのこんな晴れ姿を見たら、表面上は、
『馬子にも衣装だな』
とか何とか、からかうかもしれないが、心底では、涙ぐむのではないかと思う。普段のジュンは、男より男らしくあろうとして、着古した作業着のようなものばかり着ているから。
本当にまったく、女の子が、男らしくなろうなんて思わなくてもいいのに……仕事を頑張ることと、男のように振る舞うことは、違う次元の話ではないか。
まあ、ジュンの場合は、賞金首の親父さんを守るため、男ばかりの輸送船に乗り込むという点で、過剰に気を張っているからだけど……
途中、街道沿いのレストランに入り、軽食を摂った。ジュンも少しは、食べ物が喉を通ったようだ。慣れない着物姿で、袖や裾の扱いに苦労しながら。
でも、そのおかげで、普段のジュンとはまるで違う身のこなしになっている……時代劇で見る、身分の高い武家娘のようだ。普段が躍動の美なら、今日は抑制の美というところか。
それから車に戻り、惑星首都の一角にあるホテルに向かう。
ホテルの正面ロビーに着き、遠巻きの警備の中、ぼくがジュンを車から降ろして、エスコートしようとしたら……
待ち構えていた男どもに、わっと囲まれ、さらわれてしまった。
「ようこそ、ミス・ヤザキ!!」
「お待ちしてました!!」
「貴女をお迎えできて、光栄です!!」
「今日はまた、何てお美しい!!」
「さあ、こちらへどうぞ!!」
気がついたら、ぼくは後にぽつんと取り残されている。すると、ダークスーツを着た司法局の面々が、
「危険物を持っている人間は、いませんから」
と苦笑で言う。
それはそうだろうが、これでは〝番犬〟の役を果たせないではないか!! 親父さんに『ジュンを頼む』と言われているのに!!
気を取り直して、花で飾られたパーティ会場のレストランに乗り込み、野郎どもの壁を突破してジュンの元へ行こうとしたが、一致団結したスクラムに軽く跳ね返された。
「こらこら、おまえは日頃、ミス・ヤザキと一緒にいるんだろうが」
「俺たちは、今日しか会えないんだからな」
「あっち行ってろ、酒でも飲め」
呆然と立ち尽くしていたら、横から腕を取られた。宝石のブレスレットをはめた、女性の腕だ。腕の主はショートカットの美女だが、えーと、誰だっけ。女性は、髪型と化粧で印象が変わるから。
「エディ、あなたはこっちにいらっしゃいよ」
反対側の腕を、別の女性に取られた。
「そうそう、今日は、お姫さまは他の男性に任せて」
いつの間にか、ぼくは女性たちに取り巻かれていた。同学年だった女性もいれば、年上も年下もいる。集まれる同窓生は、みんな集まっているようだ。甘い香水の香りにむせそうになりながら、質問攻めに耐えることになる。
「ねえねえ、ヤザキ船長って、映画通りの方?」
「再婚なさるおつもりは、絶対にないかしら?」
「副長のオウエン氏って、本命の恋人いる?」
「あなたとエイジさんて、どっちが強いの?」
「辺境に出るの、怖くなかった?」
「違法都市って、どんな感じ?」
何とか答をひねり出すだけで、精一杯。それからは、パーティ開始の乾杯になったり、恩師や先輩に挨拶したりして目まぐるしく、まったくジュンの近くへ行く暇がなかった。
みんなもそれぞれ、近況を報告しあったり、遊びの計画を立てたり、思い出話で笑ったりして、大変な賑わいである。誰かが結婚話でからかわれ、振られた話をして慰められ、新しい酒がどんどん注がれる。
気がついたら、ジュンを囲んでいた一団がいない。どこへ消えたのだ!? まったく、油断も隙もない!!
ふう。
やっと息がつけた。
握手やら写真撮影やらが一段落したので、あたしを取り巻く男性たちに、少し休憩したいと頼み、ホテルのテラスに出ることができた。緑の庭園が見渡せ、涼しい風が通って、気持ちいい。
テラスの椅子に座り(大きく結ばれた帯のせいで、背もたれに寄りかかることはできないが)、飲み物をもらい、ひきつった笑みで、周囲の男性たちの話を聞いていたら……
「やあ、ここか」
際立って印象的な男性が、風のように現れた。
というか、あたしを囲んでいた男性たちの壁を、魔法のようにすり抜けて登場した。
後ろへ流すようにカットした黒髪に、笑いを含んだ黒い目、浅黒い肌。
すらりと背が高く、隙のない身のこなしだ。高価そうな濃紺のスーツを、さりげなく着こなしている。
おまけに、気がついた時は、あたしの手を取ってキスしている。
「初めまして、ミス・ヤザキ。エディの幼馴染みです。ナイジェル・コーヴィッツといいます」
幼馴染みというなら、ここにいる全員、そうだと思うけど。
「お目にかかれて光栄です」
と言った時には、目を上げて、にやりとした。この自分を無視できるものならしてみろ、という自信。
周りにいた男性たちも、引いてしまっている。明らかに、
(また、こいつかよ)
という、うんざり顔で。
でも、誰一人、ナイジェル・コーヴィッツを咎めたり、押し戻したりする者はいない。
おそらく、このナイジェル、少年時代から周囲の男たちに、
(あいつさえいなければ)
と思われていたのでは。
「ミス・ヤザキ、この後のご予定は? よければ、ぼくに案内役を任せていただけませんか? むろん、司法局の護衛付きで結構ですよ」
まるで、あたしが案内を頼むのが当然というような、余裕ある態度。ようやく、周囲からブーイングが上がった。
「よせよ、ナイジェル」
「この人の番犬は、エディに決まってるだろ」
「俺たちだって、そこは遠慮してるんだからな」
「ぼくたちがお話できるのは、この会場だけのことだよ」
あれあれ、エディはここでも番犬呼ばわりか。しかし、ナイジェルという男、男たちの不興など気にしないらしい。
「ぼくはあなたに、特別、興味深い話をしてあげられると思いますよ。エディが昔、ぼくの妹と付き合っていたこととかね」
え。
そうなの?
エディからはそんな話、聞いたことないけれど。
大学の時も、軍に入ってからも、特別に親しい女性はいなかった、とだけ聞いている。憧れのリナ・クレール艦長は、別格としてね。
それ以前の思い出話でも、特にそういうことは……それとも、あたしに話すようなことではない、と思ったのかな。
その時、ナイジェルの肩に男の手がかかり、ぐいと乱暴に横へ押しやった。
「あることないこと言うな!!」
わ、珍しい。
エディが怒ってる。
「ぼくがいつ、エレインと付き合った!!」
エレインというのか、ナイジェルの妹さんは。
その名前がすぐに出てくること自体、何かあったことをうかがわせる。この怒りようも、何かあったから……ではないだろうか。
押しやられたナイジェルの方は、悪びれない態度で襟元を直す。
「やあ、エディ。すっかり元気になったようで、よかったな。《トリスタン》の件では、みんな、心配してたんだぜ」
うわ。
ナイジェルが、わざとエディの傷口をえぐった。
巡航艦《トリスタン》が爆破されて同僚たちが亡くなり、エディが軍を辞めて半年も放浪していたことは、みんな、あえて言わないようにしていたのに。
やはり、エディの顔が紅潮した。
「ぼくに、喧嘩を売りたいのか!? だったら、買ってやってもいいんだぞ!!」
本当に珍しい。エディがこんなに感情的になるなんて。いつもは、短気なあたしをなだめる役に回ることが多いのに。
もしかして、ライバル関係?
エディも少年時代は、今より発火しやすかったのかもしれない。それはそうか。子供の頃から老成してたら、不気味だもんね。
あたしがエディを知ったのは《トリスタン》の事件後だから、それ以前はもっと単純だったり、軽率だったりしたのかも。
エディにはエディの、人生の歴史があるのだと、ようやく実感した。やはり、エディの故郷に来てよかったな。
「まあまあ、せっかくの同窓会なんだから」
「ほら、ナイジェルも何か飲めよ」
周囲の男性たちが、協力してエディとナイジェルを引き離した。あたしがぽかんと見送っていたら、今度は女性たちに取り巻かれる。
「あなたも大変ね。ちょっと、こっちいらっしゃいよ」
いずれも、お洒落で綺麗なお姉さんたちだ。彼女たちはあたしの周りを人垣でガードしてくれ、男性たちから遮ってくれた。
「ごめんなさいね。せっかくの休日、サイン会みたいになっちゃって」
「男ども、すっかり浮かれちゃって。疲れたでしょう」
いたわってもらえたのが嬉しかったので、精一杯にっこりした。
「いいえ、そんなこと。歓迎してもらって、嬉しいです。あたし、飛び入りなのに」
他にも、家族や恋人を連れての出席者はいるから、飛び入り自体は構わないと思うけど。護衛を引き連れた飛び入りは、他にはいないだろう。司法局の護衛チームは、さりげなくあちこちに散って、同窓会の出席者や、他の客の出入りに目を光らせている。
それでも、あたしが多くの市民に知られ、ちやほやされるのはいいことだ。いずれ、アイリス一族の存在が世間に知られるようになったら、
『恐ろしい。絶滅させてしまえ』
ということになるかもしれない。その時、仲立ちになるためには、知名度が高い方がいいに決まっている。
「ところで、あのナイジェルという人、エディと仲が悪いんですか?」
お姉さんたちは、あたしの疑問に応じて、色々と話してくれた。
「エディとナイジェルってね。昔から、あんな感じなのよ」
「ライバル関係っていうのかしら? よく衝突してたわね」
ははあ、やっぱり。
「どっちかというと、ナイジェルの方が一方的に、エディをライバル視してたんじゃない?」
「大抵、二人がトップ争いをしていたものねえ」
「でも、エディは露骨にナイジェルを避けていたわよね」
なるほど、そういうことか。
エディは見た目、のほほんとしているけれど、実際には飛び抜けて優秀で、何でもできる器用な男。その余裕のために、のんびりして見えるだけ。
それに対してナイジェルは、モテます、切れ者ですと自分で言ってるような印象の男だから、お互いに、お互いが目障りだったのかも。
「そのナイジェルの妹さんと、エディが付き合ってたんですか?」
「付き合っていた、とは言えないわね。エレインの片思いだったもの」
へえ。
「せがんでデートしてもらっても、エディの方では、デートとも思っていなかったんじゃない?」
「妹のわがままを聞く、みたいな感じかしら」
「はあ、そうなんですか」
エディはきっと、自分がエレインから熱烈に好かれていることに、気がつかなかったのだろう。
というか、常に周囲の女性にモテているので、それを当たり前の環境と思い、他の男性はそうでないことが、わかっていないのではないだろうか。
それでもまあ、同窓の男性たちに悪く思われていないところが、人徳というものだろう。
「エレインが告白したのかどうかは、わからないわ。でも、ある時からエディを追いかけるのやめたから、あきらめたんじゃない?」
うーん、そうか。
ナイジェルにしてみたら、
(俺の可愛い妹を泣かせやがって、この野郎)
という気持ちもあるんだろうな。
エディって本当に、罪作りだ。自分が周りの人間に劣等感を与えることが、わかっていない。
まあ、文句は言えないけどね。あたしは日々、その優秀なエディに甘えて、楽をさせてもらっているのだから。
帰りの車の中で、あたしは草履を脱ぎ、ぐったりしていた。
楽しかったけれど、気を張って愛想笑いしていたから(エディの地元で、評判を落としたら大変!!)、人疲れしている。
でも、あとはもう、エディの家に帰って、この着物を脱がせてもらうだけだから。そうしたら、再びゆったりと呼吸ができる。
昔の日本女性って、本当にこんなものを着て、日常生活送っていたのか。それとも、もっと楽な着付け法があるのかなあ。
「ごめんよ、疲れさせたね」
と運転席のエディが言う
。
「ううん。いろんな話が聞けて、よかったよ。楽しかった」
エディの子供時代のあれこれ。思った通りの少年時代だ。みんなに愛される優等生。
でも、ただ一つだけ、悲しいことを聞いた。エディのことを好きだったエレインは、大学卒業後、惑星開発局に入り、輸送船に乗っている時、違法組織の襲撃を受けて、同僚共々亡くなっているという。
それを聞いたので、あたしはナイジェルが気の毒になった。
可愛い妹が、せめて少女時代、初恋を実らせていればよかったのにと、何度も悔しく思っていたのだろう。エディにからんだり、八つ当たりしたい気持ちがあっても、無理はない。
「ねえ、あのさ……」
運転しているエディに、あたしはつい、確かめずにいられない。
「エレインて、どんな女の子だったの? エディより、一つ年下だったんだよね」
途端に、エディが苦いものを舐めたような顔をする。
「ジュン、何を聞いたのか知らないけど、ぼくはエレインと交際なんか、していなかったからね」
はいはい。
「でも、同じ町内なんだから、一緒に遊んだりとかも、してたでしょ」
「そりゃ、子供の頃は、みんなで混じって遊ぶよ。でも、それだけだから」
あくまでも、その他大勢と同じと言いたいのか。
「告白されたりしなかった?」
「だから、そんなことは何も、全然、なかったよ」
ふーん。
でも、周りで見ていたみんなは、違う意見なんですけど。
エレインはきっと、エディに告白しようかどうしようか、散々悩んだに違いないのだ。でも、エディが自分を何とも思っていないのは明らかだったので、そのうち、自然にあきらめてしまったのだろう。
「まあ、それじゃ、そうとして……ナイジェルっていうのは、子供の頃からエディと仲悪かったの?」
エディがますます、苦い顔になる。こんな顔を見るなんて、初めてかもしれない。
「あいつはとにかく、傲慢が服着て歩いてるような奴だから。常に自分が、その場で脚光を浴びていないと、気が済まないんだよ」
と断定する。
「頭が良くてスポーツ万能、女の子にはモテモテ。おかげで、あんな厭味な性格に育ったんだ。今日はきみがヒロインだったから、きみの前でアピールしたかったんだろう」
「そうなのかな……」
頭が良くてスポーツ万能、女の子にモテモテというところ、エディも同様なんですけど。
ただ、ナイジェルの方は、自分の優秀さを自覚していて、颯爽と振る舞っている。エディの方は『ぼくなんか、たいしたことない』と謙虚に思い、控えめに振る舞っている。
考えようによっては、エディの方が悪質かもしれない。だって、それでは、周囲の人間は、エディを公然と妬むことも、憎むこともできないではないか。
「ジュン、まさか、あいつと何か約束なんか、してないよね」
「約束?」
「つまり、後で個人的に会おうとか、そういう……」
あ、そうか。
もし、エレインについて何か聞きたいと思ったら、ナイジェルに通話すればいいわけだ。よし、今夜、メッセージを入れてみよう。
「そんな約束なんか、する暇なかったよ」
と答えておいた。嘘ではない。通話くらい、黙っていれば、エディにはわからないことだしね。
自宅でお母さんやお姉さんと夕食を共にした後、エディは近くのホテルに引き上げた。車で五分の距離だ。
自分の家なんだから、自分の部屋で眠ればいいと思うのだけれど、お父さんに勘当された身ということで、遠慮しているのだ。
勘当自体は気にしていない、と言うくせに。
あたしは以前、こっそりエディのお父さん、ロナルド・フレイザー大佐と会い、勘当を取り消してくれるよう、お願いしたことがある。
それは叶わなかったけれど、お父さんがエディを愛し、心配していることはよくわかったから、それでよかった。勘当を言い渡したことも、エディを甘やかさないための親心なのだ。
今回も、エディの自宅を訪問することは、(エディには内緒で)フレイザー大佐に報告してある。どうぞゆっくり泊まって下さい、とのことだったから、あたしは安心して、お母さんやお姉さんの歓迎を受けられたわけ。
四人で楽しく夕食を済ませた後(あたしは着物から自分の私服に戻ったので、お腹一杯食べられた)、結婚しているお姉さんはダンナさまの待つ家に引き上げ、あたしは二階の客室に引き取った。そして、ナイジェルに通話申し込みのメッセージを送った。
少し待つうちに返答があり、本人が通話画面に出る。
「やあ、今晩は、ミス・ヤザキ。連絡してくれて、ありがとう」
改めて向き合うと、やはりかっこいい。きりりとした精悍なハンサムだし、ちょっと暗さがあって、そこがまたいい味になっている。
あの野郎、やっぱりだ。
どんな嘘八百並べたのか知らないが、まんまとジュンをおびき寄せやがって。しかも、こんな夜遅く。
今日という今日は、もう我慢ならない。
後で訴えられても構わない。叩きのめしてやる。
司法局の護衛たちの間をすり抜けて、ナイジェルの家の玄関に向かった。もしドアを開けないつもりなら、銃で吹き飛ばしてやる。
ところが、ドアは開いた。奥から声がする。
「入れよ、こっちだ」
子供時代に何度も遊びに来ているので、間取りはわかっていた。川に面した居間の方へ行くと、ソファの上で……
ジュンの上に、ナイジェルがのしかかっている。奴の脚とジュンの脚が、もつれあっている。
一瞬で、全ての良識が吹き飛んだ。
ジュンが何か叫んだ気がするが、構わずナイジェルの襟首を掴んで引き起こし、拳で顔を殴った。腹を膝で蹴った。その後はもう、どれだけ殴り、蹴ったのかわからない。
「やめて、やめて!!」
ジュンにしがみつかれて制止されたが、勢いがついていて、すぐには止まらない。
はっとしたのは、ジュンが床に倒れて、小さな悲鳴を洩らしたからだ。
ぼくが突き飛ばしてしまったらしい。何ということを。
「ごめん!! 怪我はない!? 大丈夫!?」
慌てて膝をつき、ジュンを助け起こした。自分の手が血にまみれているのに気がついて、はっとする。もちろん、自分の血ではない。
振り向いたら、ナイジェルは床にうつ伏せに倒れていた。あたりに点々と、血が飛び散っている。まさか、殴り殺してしまったのじゃないだろうな。
体格は向こうの方がやや上だが、こちらは空手の有段者だ。奴は剣道の高段者だけど。
「あたしは平気……それより、ナイジェルを見て」
ジュンが言うので、やむなく、奴が息をしているか確かめた。さすがに、殺してはまずい。
幸い、意識はあるようで、身動きして、低いうめきを漏らした。服が血で染まっているが、ただの鼻血だ。
「謝らないぞ!! 訴えるなら訴えろ!!」
と奴に怒鳴った。
どうしてか、昔から、こいつとだけは仲良くなれない。
遠く離れていれば忘れていられるのだが、いったん近付いてしまうと、ガラスを爪でひっかくように、不快さで神経が苛立ってしまう。
妹のエレインは、いささかわがままではあっても、いい子だったのに。
「しっかりして」
ジュンがタオルを持ってきて、ナイジェルの顔にあてがっている。
「救急車呼ぼうか。どこか折れたんじゃない?」
「かもな……」
いい気味だ。ジュンに手出しをするからだ。
惑星《タリス》で本物の戦闘を経験して以来、ぼくは、自分の中にある野生に気がついている。普段は押さえているが、何かあれば、それが目を覚まして暴れることを知っている。短い時間だったが、その野生を久しぶりに解放して、すっきりした。空手の稽古では、理性を失うことなどできない。
「エディ、あんたね」
ジュンが厳しい顔で、ぼくを振り向いた。
「いきなり、これはないでしょ。あたしたち、ただ話をしていただけなのに」
何だって。
「だって、だって、きみ、きみの上に、あいつが……」
それ以上は、とても口に出せない。襲われた……ように見えたのだ。まさか、合意の上だったなんてことは……あるわけない。あるわけない。
「どう見えたのか知らないけど、何もなかったよ。もし、あたしが無礼な真似をされたのなら、まず、自分で相手をぶん殴るに決まってるでしょ。ナイジェルは何も抵抗しなかったのに、一方的に殴るなんて、あんまりじゃないの」
そんな。
なぜ、かばうんだ。
明らかに、絡み合ってたじゃないか。
まさかジュンまで、奴の悪魔的手口にかかったのでは。
少年時代、不思議でならなかった。女の子に対する誠実なんて、かけらも持っていない奴なのに、どうして、新たな餌食になりたがる女の子が絶えないのか。
「とにかく、外に護衛班がいるでしょ。車で病院に送ってもらうから」
たまには、入院も悪くない。
どうせ家には食料もないし、いて楽しい場所でもない。同窓会が済んだら、すぐ引き上げるつもりだった。
ぼくの生活の場は今、他星にある。設計事務所に勤めて、自由時間には趣味や社交を楽しみ、優雅に暮らしているのだ。
だが、こうして故郷の町に近い病院に入るのも、たまにはいいだろう。
かつてのガールフレンドたちも交互に(好奇心満々で)見舞いに来たし、何より、ジュン・ヤザキがいてくれる。
殴り合い……いや、ぼくが一方的に殴られた理由は、司法局からも医師からも、特に詮索されなかった。
「まあ、若いのですから、色々あるでしょう」
と同情されただけだ。
その代り、マスコミが騒ぎ立て、派手に報道してくれた。ジュン・ヤザキを巡る三角関係だと。
ぼくは、彼女に横から手出しした〝自信過剰の自惚れ男〟。市民社会はおろか、辺境にまで知れ渡っただろう。職場に戻ったら、さんざん冷やかされることは間違いない。
エディは露骨に不機嫌な顔で、すぐ外の通路にいる。
病室のドアは、もちろん開放したままだ。司法局の護衛チームは、ジュンの滞在中、この病院を取り巻いている。おかげで、報道陣も勝手に踏み込んではこられない。
結局、エディは『自分にふさわしい女性』を、生涯の女神として選んだのだ。
彼が少年時代、どんな女の子からの誘いにも舞い上がらず、『茫洋とした顔』をしていたのは、彼のプライドが、『そこらの女の子』に夢中になることを、自分に許さなかったからだろう。
自分で自覚していないが、エディは途方もなく理想の高い男だ。自分に対しても、自分が付き合う相手に対しても。
こうしてジュン・ヤザキと知り合ったことで、それが改めて納得できた。これから先、ジュンが彼の期待を裏切ることがあれば別だが、そうでない限り、番犬としてでもいいから、エディはジュンを追い続けるだろう。
それはもう、それでいい。
エディが玄関に到着した時、ジュンはぼくの芝居に協力してくれ、エディに殴られたい、というぼくの希望を叶えてくれた。
別に、罪滅ぼしなどではない。エレインに対して犯した罪は、いまさら消せない。ただ、エディが逆上してくれて、ぼくに飛びかかってきてくれれば、それでよかった。
エディは認識していないと思うが、彼が自分からぼくに触れたのは、先日の同窓会の時も含めて、二十何年かの人生のうち、ほんの数える程度の回数だけ。
少年時代に一緒にサッカーや剣道をしていた頃も、彼はぼくと距離を取ろうとしていた。エディの潜在意識は、ぼくの気持ちを察して、警戒していたのかもしれない。
殴られる時でもなければ、触れてもらえない関係。
女の子に愛撫されるより、エディに殴られる方が貴重だなんて、われながら笑えてくる。
どうして、こういうことになっているのだろうか。
それは、自分でもわからない。
ただ、ぼくは内心では、女たちの厭らしさにうんざりしていた。
彼女たちは、自分が可愛い、美しい、賢い、有能だと思っている。
男たちが自分に魅惑され、進んで自分の奴隷になりに来ることを、当たり前と思っている。
そんな傲慢・残酷な種族に、なぜ屈服しなければならないのか。
子供が産めることが、そんなに偉いのか。
現代の技術なら、人間など、カプセルでいくらでも培養できるではないか。
古代ギリシアの男たちの言い草ではないが、女などに煩わされなければ、男は高貴な一生を送れるだろうに。
問題は、彼女たちに勝てても、エディに勝てないことだった。
ぼくがエディに執着する限り、永遠に勝ち目はない。
地元の町を離れ、大学に進み、彼のことは忘れようと思っていた。両親が離婚し、エレインが死んで、ますます、過去は遠いものになった。
しかし、《トリスタン》の事件報道でエディの名を見た途端、心臓が苦しくなり、ちっとも忘れられていなかったのだと悟った。
ぼくは永遠に、片思いに苦しむ運命か。
しかし今回、ジュンのおかげで、エディに一矢報いることができた。奴はこれからも、ジュンに覆いかぶさっていたぼくのことを思い出しては、嫉妬にもだえ苦しむだろう。
ぼくの唇は、彼女の頬にそっと触れただけなのに。
「なに笑ってるの」
短い黒髪の少女は、新しいお茶のセットをテーブルに置いてくれた。
「エディに殴られて、そんなに幸せ?」
「まあね……」
奴はすぐそこの通路にいるので、会話を聞かれないよう、ぼくらは声を低めている。それが余計、親密なように、エディには見えるだろう。ざまあみろ。
「告白して、すっきりすればいいのに。自分で言わないと、そのうちあたしが、ついうっかり、しゃべってしまうかもしれないよ?」
「そうだね」
そうなったら、惨めだろう。エディに嫌悪されながら、同情されるなんて。
それよりは、憎まれ、嫉妬される方がましだ。
「五十年くらい経って、悟りを開いたら、告白できるかもしれない」
「まあ、あなたの人生だから、いいけどね。じゃあ、あたし、そろそろ行くから」
今日はこれから、エディとドライブに行く約束だそうだ。
「せっかくの上陸休暇だから、エディにも楽しんでもらわなくちゃ」
「了解。ぼくの分も楽しんできて」
するとジュンは、かがみこんで、ぼくの額にキスしてくれた。
「また、帰りに寄るよ。いい子にしてて」
ベッドに横たわったまま、苦笑で見送った。ぼくが得たものは、ジュンの同情。
エディは苛々しているだろうが、どうせぼくも、あと数日で退院する。エディはどこかで、手加減していた。ぼくが抵抗しなかったからだ。
ベッドから眺める窓の外は、高い青空だった。風もさわやかで、ドライブにちょうどいい。
ジュンもまた、美しく、残酷な女の子の一人だ。彼女に振り回されるのが、エディの選んだ幸福。
好きにしろよ、番犬野郎。
かつて、学校では、
(わたしはナイジェルと付き合ってるのよ)
というのが、女の子仲間での、一種のステイタスだった。たとえ、〝今月のガールフレンド〟にすぎなくても。
エレインだって、エディにつきまとっていたのは、当時のあの子の視界の中で、エディが一番グレードの高い男だったからだ。
――この自分には、エディが相応しい。
そう思っていたのだ。わが妹ながら、可愛くない娘だった。エディに相手にされなくて、当然だ。
だが、少なくともエレインは、エディをデートに誘うことはできた……女に生まれたおかげで。
ぼくのような、ひねくれた兄を持っていなければ、あの子はあのまま、エディと公認の仲になれたかもしれない。
だが、それでも、エディがエレインに恋することは、なかったのではないか。
やはりエディは、自分に相応しい女性に出会うまで、〝眠れる王子〟のままだったろう。
ばたばたと足音がして、ジュンが慌ただしく戻ってきた。忘れ物か? だが、エディは付いてきていない。何か口実をつけて、置いてきたのか。
「いま気がついたの!! あたし、あんたに紹介したい相手がいる!!」
誰のことだろう。
ぼくの〝病気〟を治療しようというつもりなら、大きなお世話だ。
誰かに焦がれることは苦しいが、この苦しさがなければ、きっと生きている意味がない。
「女性と付き合う気はないよ」
「そうじゃなくて。あのね、チェリーっていう女の子がいるの。ちょっと訳ありで、あたしとエディが後見役というか……相談役になっているの」
「だから?」
「今度、時間をとって、あたしと一緒にチェリーに会ってほしいんだ。エディは厭がるだろうけど」
なぜ、ぼくがその子と会う必要があるのだ。
しかし、ジュンは一方的に語り続ける。
「あなたにも、チェリーの相談相手になってほしいの。いま十四歳なんだけど、ちょっと特殊な育ち方をして、身寄りもいなくて、施設に入ってるんだ。あなたなら、きっと力になってやれると思って」
自分だって、まだ十六のくせに、そんな子の心配までしているのか。
「チェリーはエディのことを……自分の王子さまと思っているんだよ。エディのことを、とっても頼りにしているの」
「へえ?」
「いずれ、どこかの夫婦と養子縁組が成立するかもしれないし、しないかもしれないけど、あたしたちが友達であることは間違いないから」
それは、つまり、ぼくのライバルということではないか。
いや、女の子であるなら、ぼくよりはるかにましな立場だ。エディはジュン一筋だろうが、身寄りのない女の子に親切にするくらいの余裕はあるだろう。
「なぜまたぼくが、そんな子と……」
「詳しくは後で説明するけど、エディはチェリーのことを、妹みたいにしか思っていないの。だから、チェリーにとっては、報われない片思いなの。まあ、少なくとも、今のところはね。もし、あたしたちに何かあった時は、チェリーのことを助けてやってほしいんだ。きっと、ものすごくショックを受けると思うから」
はっとした。
ジュンは、自分たちが死んだ後のことを心配しているのだ。そのチェリーという子のために。
「ぼくなんかに……そんなことを頼んでいいのか?」
エレインは、ぼくを憎んだまま死んだはずだ。成人してからは、ほとんど会わないままだった。
「だって、あなたなら、エディを大好きな女の子の気持ちがわかるでしょ」
つい、苦笑が出る。エレインが聞いたら、何と言うか。
「同病相憐れむってことか?」
「憐れむんじゃなくて、助け合うの。あなただって、もしもエディが先に死んでしまったら、誰か思い出を語り合う相手がいた方がいいでしょ」
ずきんときた。エディが死ぬ。ぼくを嫌ったまま。いや、ぼくのことなど、思い出しもしないまま。
そんなことには……なってほしくない。
それに、この頼みに応えることで、ジュンとつながりが持てる。
それは、エディとつながることでもある。そういう動機からの親切でもいいと、ジュンは思うらしい。
「わかった。その子に引き合わせてくれるんだね」
「うん、都合のついた時に。チェリーには通話して、あなたのことを話しておく。エディと同じ町で育った、幼馴染みのお兄さんだって」
ジュンが立ち去った後、ベッドに横たわったまま、一人で考えた。
エディを大好きな女の子、か。