話題2014年

(目次)
2014年 謹 賀 新 年 !! 1月14日 川畠成道 ヴァイオリン・コンサートとレセプション 1月25日 小山実稚恵リサイタル作曲家の想いシリーズ『バッハの想い』 3月12日〜23日 第3回高松国際ピアノコンクール  3月22日 東大和市音楽連盟主催講演会『オペラとオペレッタ』  季節は早くも、弥生から卯月へ! 4月25日〜26日 NHKラジオ深夜便出演のお知らせ 5月10日 小山実稚恵の世界〜ピアノで綴るロマンの旅第17回(6月21日)〜舞曲の園レクチャー&サロン 5月16日〜19日 宮崎国際音楽祭 取材 5月21日〜22日 小岩井農場と盛岡、賢治の足跡を訪ねて 5月29日 中村紘子先生邸の夕食会 6月18日 アルド・チッコリーニ ピアノリサイタル 7月5日 尾高尚忠指揮 NHK交響楽団演奏会 7月6日 鷲見加寿子先生、東京音楽大学退任記念コンサート 「三合菴」(さんごうあん) 7月7日 コンサート・イマジン「七夕コンサート」 7月8日 九段下『郷酒』 7月12日 七夕の雅楽 7月13日 渡邉規久雄ピアノ・リサイタル 7月20日 東京交響楽団定期演奏会 7月21日 岩崎淑先生 三大祝賀大パーティー 7月24日 根津 海鮮茶屋 「田すけ」 7月29日 映画『パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト』 8月1日 宮沢賢治生誕118年・没後80年記念コンサート 8月22〜23日 「アフィニス夏の音楽祭2014 山形」 取材 8月24〜25日 「木曽音楽祭」 取材 9月9日 読売日本交響楽団 第540回定期演奏会 9月11日宮澤賢治作詞作曲『星めぐりの歌』による変奏四重奏曲・変奏二重奏曲 CDリリース記念演奏会 9月12日 東京二期会 オペラ『イドメネオ』初日 9月14〜15日 なかうみ交響楽団 第11回記念演奏会 9月18日 中央区民カレッジの秋のクラシック連続講座 9月20日 サントリーホール オープニングフェスタ2014 9月24日 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団コンサート 9月29日 ワーグナー『パルジファル』 10月4日 東京交響楽団第623回定期演奏会 10月3〜5日仙台クラシックフェスティヴァル 10月18日 フレデリック・ショパン物語 11月2〜3日 沖縄オペラ協会公演 ヴェルディ『ドン・カルロ』4幕上演 11月17日 小山実稚恵トークサロン 11月23日 中村紘子・デビュー55周年記念リサイタルとレセプション 10〜11月 中央区民カレッジ 12月4日 読売日本交響楽団第543回定期公演 12月16日 ベートーヴェンのお誕生日


★ 2014年 謹 賀 新 年 !!

  新しき年のはじめの初春の けふふる雪のいや重け吉事 (大伴家持)

 元旦、東京地方は雪にはなりませんでしたが、街路も門口も美しく掃き清められ、新年の清々しさに満ちています。
 新年の引き締まった気分をそのまま維持して、何事にも前向きに取り組み、結果として、よきことの重なる年になりますように、と心から願っております。

○昨年の活動の回顧
 春に『諏訪根自子』(アルファベータ)を、秋に『宮澤賢治の聴いたクラシック』(小学館)を出版させていただきました他、10月には既刊2著を文庫版に新装していただき、『クラシックの作曲家たち』『クラシックのピアニストたち』(いずれもヤマハミュージックメディア)を新たに世に送ることができました。
 出版社3社のご担当者様、関係各位、なによりも読者の皆様に心より御礼申し上げます。

 『宮澤賢治の聴いたクラシック』を出しました昨年9月、九段下の『郷酒』(ゴーシュ)という、賢治ファン垂涎のお店でお祝いをいたしました。 岩手の郷土料理、銘酒、その他、美味しいものがいっぱいの素敵なお店です。
 拙著も置いていただいていますので、この『郷酒』でもお求めになれます。

 (左写真)年末にもお邪魔して、拙著をよろしくお願いしてきました。
 (右写真)はゴーシュにちなみ、チェロの帯留めです。

 クラシック音楽のレクチャーとしましては、以下の講座、イベントの講師、トークのお相手を務めさせていただきました。
●小平楽友サークル  小平中央公民館
  連続10回シリーズvol.8 華麗なるオペラの年〜ヴェルディ・オペラへの招待
    3月〜7月、毎月第1、第3水曜日、午前10:00〜11:00
  連続10回シリーズvol.9 ワーグナーとお好みア・ラ・カルト
    9月〜14年2月 毎月第1、第3水曜日、午前10:00〜11:00
 ※このシリーズは継続中です。ご興味のある方は、ぜひご参加ください。
  お問い合わせは、代表の山田洋子さん(t:042-345-8862)までお気軽に。
  先日12月18日は、ヴァイオリニストの高橋和歌さんをお迎えして楽しいクリスマス・コンサートを開きました。
  写真は、出演者の森永亜由美さん、山田洋子さん、高橋和歌さんと。
●オーチャードホール プレイベント
 5月26日 小山実稚恵さんとのトークサロン
●中央区民カレッジ 築地社会教育会館
     7月19日 カレッジ・デビュー講座『諏訪根自子 美貌のヴァイオリニストの生涯と音楽』
        出演:瀬崎明日香さん
  11月5日 『錦秋に聴きたい、とっておきのクラシック』
  11月12日『フランス・ヴァイオリン音楽の精華』
        出演:瀬崎明日香さん、佐々木祐子さん
●目黒区東山社会教育館講座 連続4回シリーズ『音楽史を彩る女性たち』
  10月2日 レスボス島のサッフォーから、『乙女の祈り』のバダジェフスカまで
      10月9日 ファニー・メンデルスゾーン
  10月16日 クララ・シューマン
  10月23日 幸田延と日本の女性作曲家
●千代田区講座 作曲家シリーズ vol.2
  11月22日 モーツァルトの生涯と音楽〜2つのト短調交響曲を中心に
  11月29日 シューベルトの『ます』は2つあるの?
  12月6日  スメタナの『モルダウ』〜祖国への限りない愛をこめた河の一生物語
  12月13日 幸田延〜日本人として初めてソナタを書いたのは、文豪露伴の妹だった!
 (写真)最終回に受講の方々と記念写真をとりました。
     昨年のシリーズにもきてくださった方が多く、嬉しい再会でした。
     また、来年もおめにかかりましょう!
●フィリアホールのプレレクチャー
  12月3日  小山実稚恵ピアノ・リサイタルに先立って『ゴルトベルク変奏曲』の徹底解剖
●杉並公会堂のプレトーク
  11月29日 小山実稚恵さんとのトークサロン
●今年の第九
 都響、シティフィル、新日フィルの3公演を聴きました。
 シティフィルと新日フィルのバリトンは、いずれも河野克典さん。
 新日フィルでは、ステージ奥の合唱団の前、シティフィルではステージ前列がソリストの位置でしたが、ステージ後方からも、深みと温かみのあるバリトンがよく響きました。


★ 川畠成道 ヴァイオリン・コンサートとレセプション
2014年1月14日 ノルウェー王国大使館
 川畠さんは以下の曲目を演奏なさいました。
 ことに、スクリーン・テーマの『ムーンリバー』と『サンライズ・サンセット』、グリーグのソナタが圧巻でしたので、どなたの編曲か、あとでうかがったところ、寺嶋陸也さんとのことで、思わず納得。

 本日の3曲を含むスクリーン・テーマを集めた最新アルバムが3月にリリースされるそうです。
 クライスラー:美しきロスマリン 愛の悲しみ 愛の喜び
 スクリーン・テーマ:チャップリン〜スマイル、ムーンリバー(寺嶋陸也編曲)『屋根の上のヴァイオリン弾き』〜サンライズ・サンセット
 グリーグ:ヴァイオリン・ソナタ第3番〜第2楽章、第3楽章
 サラサーテ:ツィゴイネル・ワイゼン
 メンデルスゾーン:歌の翼に

   レセプション会場のヤマハのピアノの上には、『松竹梅』の可愛い樽酒が飾られていました。
   左写真は、ノルウェー大使夫人のアニタさん、川畠成道さんとのスリーショット。 インド出身のアニタ夫人はジャーナリストとして活躍中の魅力的な女性です。


♪ 第3回高松国際ピアノコンクール
2014年3月12日〜23日 サンポートホール高松


(左写真) ポスター写真  (中、右写真) コンクール会場からは高松港が臨めます。

(写真) オーケストラ・リハーサル日のために、審査員も取材陣も体の空いた3月20日、高松港から瀬戸内海をクルーズして、現代アートの島、直島にわたり、ベネッセ・ミュージアムほかを見学しました。
 写真は、審査員のひとり、ロシアのヴォスクレセンスキー教授と直島のベネッセ・ミュージアムで。

3月19日の第3次審査を通過した5人のファイナリスト19日夜の結果発表会場にて
 左より
 アンナ・ツィブレヴァ、ノ・イエジン、ムン・ジオンMon Ji Yeong、リード・希亜奈、アンドレイ・シチコ
3月22日の本選の結果は次の通り。
 第1位 ムン・ジオンMon Ji Yeong (韓国 18歳)
 第2位 アンドレイ・シチコ(ベラルーシ 19歳)
 第3位 ノ・イエジン(韓国 27歳)
 第4位 アンナ・ツィブレヴァ(ロシア 23歳)
 第5位 リード・希亜奈(日本・アメリカ 19歳)
※詳細は『音楽の友』5月号にレポートいたします。
♪ 1月25日 フィリアホール 小山実稚恵リサイタル 作曲家の想いシリーズ 『バッハの想い』
 フィリアホールを会場に小山実稚恵さんが継続中の「作曲家の想いシリーズ」、今回はバッハでした。
 実稚恵さんは『ゴルドベルク変奏曲』をメインとして、ブゾーニ編の『シャコンヌ』を採りあげられました。
 演奏の前に、この2曲について少しお話をさせていただき、そのあとは客席から拝聴しましたが、それぞれの声部がくっきりと際立ち、変奏ごとにゆたかな表情を伴って生き生きと奏される『ゴルドベルク』に感嘆いたしました。
 『シャコンヌ』は格調高く、しかもブゾーニらしい華やかさがありました。

(写真)実稚恵さんのドレスは、「ゴルドベルク」に因んだ明るいレモンゴールド。
 わたくしも、渋めの金彩でお箏を描いた訪問着にいたしました。


★ 季節は早くも、弥生から卯月へ!
 みなさま、ご機嫌いかがでいらっしゃいますか。
 すっかり、更新をご無沙汰してしまいましたが、気を取り直して、この1〜2ヶ月をちょっぴり振り返ってみたいと思います。
 1月は、オントモ・ムック『ヴァイオリン&ヴァイオリニスト2014』の執筆に忙殺され、
 2月は逃げ月、あっというまに過ぎる中、古河電工あかがね倶楽部からのお招きで、同倶楽部でクラシック音楽講演会をさせていただき、
 3月は、多数の大学の合唱サークルを中心とする『音楽樹』の合宿に特別講師として参加させていただき、
 つい先日は、高松国際ピアノコンクールの取材に出掛けるなど、あれよあれよと月日は流れ、気がつけはもう桜の季節でした。

♪ 1月4日 ロベルト・ボルトロッツィ ヴェルディ・オペラ・アリア全曲演奏会
   バリトンのボルトロッツィさんが、なんと、ヴェルディの全オペラ中の、バリトンのために書かれたすべてのアリアを一夜で歌われました。
 そんなことが果たして可能か、固唾を飲んで見守りましたが、次第に疲れが滲むどころか、歌い進むほどに調子をあげたのにはびっくり!
 3時開演、途中休憩2回をはさんで8時までの5時間という長時間コンサート。
 バリトン・アリアのある23作の40曲すべてをみごと熱唱されました。

(左写真) このロング・コンサートの仕掛け人、ミリオン・コンサート協会の小尾社長(真ん中)とベテラン・マネージャーの高原さんと。
(左写真) 会場の浜離宮朝日ホール、コンサートのポスターとともに。
♪ 1月8日 カワイ 新年パーティー
 表参道のカワイで開かれたパーティーには、今コンクール真っただ中、あるいはこれからコンクールを目指す若手ピアニストも多数出席。
 彼らを前に、浜松国際コンクール審査委員長の海老彰子先生が、「コンクールは利用するものです。恐れることはありません」と檄を飛ばされました。

(左写真) 海老彰子先生と名器「ShigeruKawai」とスリー・ショット
(右写真) 活躍中の若手ピアニスト、福間洸太朗さん、島田彩乃さん、居福健太郎さんとともに。

♪ 1月23日 東京藝術劇場 都民芸術フェスティバル
 居福健太郎さんが、グリーグのピアノ協奏曲イ短調を快演されました。
 クリアで美しい音色、ゆたかな響き、北欧のひなびた情感の表出、ここまで仕上げられたかげのご苦労に脱帽です!!

(左写真) ソリストを愛情豊かに支えた飯守泰次郎マエストロも「彼はよく頑張った!」と賞賛されました。
(右写真) 居福さんの、藝大での講師仲間さんたちがどっとお祝いに楽屋に押し寄せました。友人の成功をわがことのように喜ぶ笑顔、笑顔、笑顔。胸が熱くなります。 右手前の赤いワンピース姿は、昨年1月30日、ブーランク没後50年の命日に、記念コンサートを開いた、鈴村真貴子さん(話題2013年をご覧ください)。


●ラジオ出演のお知らせ
2014年4月25日〜26日 NHKラジオ深夜便に生出演いたします。

 昨年夏、4夜連続で女性音楽家のお話をさせていただいたNHKラジオ深夜便に、今回は、生放送で出演いたします。
 4月25日(金)の23:30過ぎあたりからの放送で、天気予報を挟んで日付が変わり26日(土)の零時台の適当な時間まで、パーソナリティの元NHKアナウンサー、遠藤ふき子さんとの対談いたします。
    ご注意) 放送時間ですが、23:30過ぎあたりからとお伝えしましたが、23:20過ぎあたりからの出演となるそうです。

 テーマは『 明治洋楽事始め〜瀧廉太郎と幸田延 』
 1903年6月29日に23歳と10カ月で世を去った滝廉太郎といえば、『花』と『荒城の月』があまりにも有名ですが、実は『花』は単独作品ではなく、組歌『四季』の「春」の歌です。
 では、残る「夏』「秋」「冬」とはどんな曲なのでしょうか。
 日本に洋楽が伝わってまだ日も浅い明治30年(1900年)、21歳の瀧廉太郎は西洋クラシック音楽の音階と手法にのっとってこの4曲をかいたばかりではなく、驚くべきことに、4曲すべてに異なる演奏形態を与えたのです。

  春の『花』はピアノ伴奏によるソプラノとアルトの女声二重唱、または二部合唱
  夏の『納涼』はピアノ伴奏による独唱
  秋の『月』はソプラノ、アルト、テノール、バリトンによる無伴奏四重唱、または無伴奏四重唱
  冬の『雪』はピアノとオルガン伴奏による四重唱、または混声四部合唱
 番組では、『花』以外の3曲もすべてお聴きいただく予定です。
 また、『荒城の月』も、こんにちわたくしたちの知る曲は瀧の原曲とは異なりますので、どこがどう違うのか、そのあたりのお話もしたいと思っています。

 後半では、その瀧の東京音楽学校での先生であり、明治楽壇の最高実力者であった幸田延のお話に移ります。
 この幸田延こそが、日本人として初めて、ソナタ形式に拠る本格的なクラシック器楽曲を書いた作曲家です。
 そのヴァイオリン・ソナタも皆様のお耳にお届する予定です。

 ちょっと遅いお時間ではございますが、是非、お聴きいただけましたら幸いです。

                 


● 小山実稚恵の世界〜ピアノで綴るロマンの旅 第17回(6月21日)〜舞曲の園 レクチャー&サロン
5月10日 15:00開演 オーチャードホール地下 リハーサル室
 2006年春から始まった小山実稚恵さんの12年間24回シリーズもいよいよ佳境。 2014年6月21日の第17回に先んじて、プログラムについて小山さんご自身から語っていただき、曲目の一部も演奏していただくという贅沢なイベントが開かれ、そのトークのお相手を務めさせていただきました。


・・・テーマカラーは藍紫、その心は「秘密・ひそかに、しかし激しく」・・・

 コンサート当日の演奏曲目は次のとおり。舞曲の中でもワルツとマズルカが中心です。
♪ プログラム
    ドビュッシー:レントより遅く
    ドビュッシー:マズルカ
    シューマン:ダヴィッド同盟舞曲集(18の性格的小品)作品6
    ショパン:ワルツ 第7番 嬰ハ短調 作品64−2
    ショパン:ワルツ 第8番 変イ長調 作品64−3
    ショパン:マズルカ 第45番 イ短調 作品67−4
    ショパン:マズルカ 第37番 変イ長調 作品59−2
    シマノフスキ:20のマズルカ 作品50より抜粋
    リスト:4つの忘れられたワルツより 第1番
    リスト:メフィスト・ワルツ第1番「村の居酒屋での踊り」
 今回の最大曲、シューマンの『ダヴィット同盟舞曲集』の秘密は、将来妻となる当時まだ10代半ばのクララによるマズルカのテーマが第1曲に借用されていること。
 シューマンとクララは、もうこの頃から、楽想を共有していたのですね。またこの舞曲集には、シューマン自身に内在する、快活でちょっぴり攻撃的なフロレスタンと、内向的で思慮深いオイゼビウスというふたつのキャラクターが入りかわり立ち代わり現れます。
 楽譜冒頭のこんな格言も印象的です。
「この世にはつねに、喜びと悲しみがともにある。喜びには控えめであれ。悲しみには勇気をもって備えよ! 」
 シマノフスキのマズルカは、同じポーランド人によるマズルカとはいってもショパンのマズルカとはまったく毛色の異なるもの。南部の山岳地帯に住む人々から取材した、民俗カラーの強いひなびた舞曲で、ボトハレ音階という独特の音階が使われています。

 そんなお話のあと、参加のみなさまと記念写真を撮り、楽しいワインパーティーに移りました。


● 宮崎国際音楽祭 取材
5月16日〜19日
    今年も薫風さわやかな季節に南国宮崎にお邪魔しました。 宮崎国際音楽祭も今年で第19回。後半の山場を取材しました。
 拝聴したコンサートは以下のとおり。
      5月16日(金)午後4時開演「名曲コンサートT〜ヴァイオリンの饗宴〜」と
      5月16日(金)午後7時開演「名曲コンサートU〜ヴァイオリン協奏曲の競演〜」
      5月17日(金) 午後1時開演「新星たちのコンサート」
      5月17日(土)午後3時開演「チャイコフスキー・哀愁の旋律」
      5月18日(日)午後3時開演「情熱のオペラ〜カルメン抜粋〜」
 「ヴァイオリンの饗宴」と「ヴァイオリン協奏曲の競演」は、1974年リトアニア生まれのヴァイオリニスト、ジュリアン・ラクリンさんを中間世代として、一世代上の徳永二男さん、一世代若い三浦文彰さんという三世代ヴァイオリニストが繰り広げる、小品と協奏曲の世界です。
 おひとりおひとりの個性の違いはもちろんのこと、彼らを生み育んだ時代の個性とその変遷を辿ることのできる、興味深い連続コンサートでした。
 最終日18日の「情熱のオペラ〜カルメン抜粋〜」には、88年ドイツ生まれの才能豊かなメゾ・ソプラノ、マリア・フィセリエさんが出演。まだお若いのに、カルメンの情熱的で奔放なキャラクターを見事に表現されました。    (※ 詳しいレポートは『音楽の友』7月号に書きました!)


(写真左) 毎年、美しい花で彩られている宮崎県立芸術劇場のエントランス
(写真中) ホールの前で、青木賢児名誉音楽監督、事務局の吉永さんとともに
(写真右) 打ち上げパーティーのアトラクションでタンゴを熱演する徳永二男音楽監督


● 小岩井農場と盛岡、賢治の足跡を訪ねて
2014年5月21日〜22日
    盛岡市の北西約12キロ、岩手山の南東山麓に広がる小岩井農場は3,000ヘクタールもの広大な農地を擁する日本最大の民間総合農場です。
バターやチーズのブランド名としても知られる「小岩井」という名称は、明治24(1891)年の創業時、日本鉄道会社副社長の小野義眞、三菱の総帥・岩崎彌之助、鉄道庁長官の井上勝の三名の創業者の苗字から一字ずつとって名づけられました。
 もともと、このあたりは火山灰に覆われた不毛の入会地でした。明治半ば、近代的な大農法を広大な土地で実践したいと考えていた創業者たちは、明治23年に東北本線が盛岡まで延伸されたのを機として、翌年、ここに農場を開いたのです。農場で働く人々は酸性の土壌を根気よく改良し、防風林、防雪林を設け、牧草を植え付けて基盤の整備を図り、ここを美しい農場地に生まれ変わらせていきました。
 そんな小岩井農場にとって画期的な出来事は、大正10(1921)年6月25日、盛岡・雫石間をつなぐ日本国有鉄道橋場線が開通し、農場の南6キロに小岩井駅が開業したことでした。そのおかげで、人的資源はもとより、肥料、飼料、農機具等の大量輸送が一気に可能となり、農作物の出荷の便も、それまでとは比べ物にならないほど向上しました。
駅が開設された翌年、大正11(1922)年の5月21日のことです。
 まだ駅舎も新しいこの小岩井駅に、ひとりの青年教師が降り立ちました。
 前年12月から稗貫郡立稗貫農学校の教諭として代数、化学、英語、農業、土壌などを講じていた25歳の宮澤賢治です。かれはすでに何度も小岩井農場を訪れたことがあり、ここの自然と人的英知の融合をこよなく愛していました。
 この日、賢治には目的がありました。それは、小岩井農場を一日がかりで踏破しながら、その折々の実景と心象風景を、画家がスケッチブックに描きとるのと同じように、言葉を紡いでスケッチしていくことでした。 賢治は小岩井駅から一路、小岩井農場をめざし、歩行のテンポのままに、実際に目にしたもの、それによって心に映じたものを口語詩の形に整えて、携行の手帳にどんどん書きつけていきました。
 このようにしてできあがった口語詩は吟行地の名称そのままに『小岩井農場』と名づけられて、大正13(1924)4月に自費出版した口語詩集、といっても賢治はそれを「詩集」とは名づけることなく「心象スケッチ」という彼独自のジャンル名をこの作品集に与えていますが、その心象スケッチ『春と修羅』に収載されました。
 この心象スケッチ『春と修羅』こそ、賢治の最初にして、生涯2作のみ世に出た作品集のうちの1作です。ちなみに、もう1作とは、同じ年の12月に、これまた自費出版した童話集『注文の多い料理店』です。

さて、『春と修羅』には、序と69編の口語詩が収載されています。
『小岩井農場』はそのうちの最長編であるばかりではなく、賢治の全詩作品のなかでも最長作です。なにしろ、全詩句は591行。おそらく、日本語で書かれた口語詩のなかでも最長作でしょう。

 わたくしは、賢治没後80年にあたる2013年に、賢治とクラシック音楽との関わりを綴り、賢治が実際に耳にした当時のクラシック・レコードの音源復刻CDを添えた書籍『宮澤賢治の聴いたクラシック』を小学館より出版させていただきました。
 その第4章では、大正11年5月21日の賢治の小岩井吟行を中心テーマとしております。そこで、賢治が歩いたのと同じ5月21日に、小岩井農場をこの足で歩き、この目と耳を開いて92年後のこの農場の姿を確認しようと、2014年5月21日と22日、ここを探訪いたしました。同行者は、『宮澤賢治の聴いたクラシック』の編集長、小学館の横山英行氏、同書の編集、資料精査の担当でご本業は独立行政法人・国立文化財機構の理事である辰野裕一氏、同書の装丁画を描いてくださった賢治画家の田原田鶴子氏、それに小岩井農場取締役の辰巳俊之氏と賢治資料館の館長、野澤さんです。

 盛岡駅から2両編成の田沢湖線に乗り換えて、大釜駅の次が小岩井駅。駅舎は増改築もあったとのことですが、構造体は当時のものが生かされていました。近々、取り壊して新築が検討されているというので、その前に訪れることができてほっとしました。
 駅前には、賢治の『小岩井農場』の一節を刻んだ石碑があります。
 石碑の台座には、往時の小岩井農場を描いた石版画も。



口語詩『小岩井農場』は、賢治が小岩井駅で汽車を下車する場面から始まります。
       わたくしはずゐぶんすばやく汽車からおりた”
        そのために雲がぎらつとひかつたくらゐだ”
 賢治は駅を背に北へまっすぐ歩きだし、ここで左に曲がりました。(左写真)
 そのあと、馬車に乗れずに徒歩で小岩井農場までひたすら歩き、農場入口につくと、今度は本部の建物を目指します。
      本部の気取つた建物が 桜やポプラのこつちに立ち”
 賢治が「気取った建物」と描写した本部は、現在も、管理部・施設資材部として健在です。今見ても、とてもおしゃれな建物ですから、大正年間にはどれほど「気取った建物」だったことでしょう。(右写真)

 そのあと、農場の賢治足跡やその他の見どころを歩きました。


 木造四階建ての『四階倉庫(しかいそうこ)』(左写真)  地中の冷気を利用した天然冷蔵倉庫 (中写真)  8人の屈強な男たちが心をひとつにして牧草を踏みつけ続けないと、上部から投入される牧草に埋もれてしまうほどだったという、巨大なサイロ2基。この規模のサイロは珍しく、ひとりが欠けても怠けてもダメだったそうです。(右写真)


 よく耕されて黒々とした、作付前の農地を背にして記念写真。この土の色を、賢治は「ヴァンダイク・ブラウン」と表現しています。17世紀フランドルの画家ヴァン・ダイクが好んで用いた黒みがかった茶色です。(左写真)
 小岩井農場名物、ソフトクリームはまろやかでコクがあるのに、意外にあっさりしていて、もうひとつくらいいけそうでした。(中写真)
 まきば園のポニー。これでもうおとなだそうです。賢治の『小岩井農場』に登場する馬種は「ハックニー」ですが、ポニーでも大満足。(右写真)


お目当て場所のひとつ、まきば園の売店。(左写真)  ここの棚に拙著を置いてくださっていることを確認するのも、小岩井探訪の目的のひとつでした。「あった、あった」と3人で喜び合いました。(右写真)

 後方、上半分が雲に覆われているのが岩手山。手前の、鞍をかけたように上部が平らかな山がくらかけ山。どちらも賢治の愛した山です。(左写真)
 賢治作品とは直接関係ありませんが、テレビ・ドラマなどで有名になった一本桜。(中写真)
最後に、賢治が長編詩『小岩井農場』の終幕で、「雲はますます縮れてひかり わたくしはかつきりみちをまがる」と書いた箇所はどこかを、野澤さんから教えていただきました。  賢治が「かつきりまがる」と綴った道とは、現在では林になっていて、よくみれば昔は道だったことがわかるのですが、普通は気づくことができない元道でした。みんなで、ここが賢治のまがった道だ、と指差して、写真を撮りました。(右写真)


 午後は盛岡へ。盛岡出身の田原さんの案内で賢治ゆかりの地をいくつかまわりました。
 今もきよらかな湧水がこんこんと。賢治清水。(左写真)
 盛岡は5,000円札でお馴染みの新渡戸稲造博士のふるさとでもあります。新渡戸先生とフォー・ショット(右写真)
小雨模様ではありましたが、収穫一杯の、小岩井&盛岡、賢治の旅でした。


● 中村紘子先生邸の夕食会
2014年5月29日
    アイルランド出身の名ピアニスト、ジョン・オコーナー先生が来日されましたので、オコーナー先生と長いおつきあいのある中村紘子先生がご自宅で夕食会を開き、お手料理でおもてなしをなさいました。 わたくしまでお招きにあずかり、素晴らしい夜景を楽しみながら、プロ級のお手料理をお相伴させていただきました。
 食卓を囲んだのは、両先生、ピアニストの奈良希愛さん、わたくしの4人ですが、実は足元に、紘子先生の愛犬ウリちゃんがチョコチョコ。



● アルド・チッコリーニ ピアノリサイタル
2014年6月18日
    1925年8月15日、ナポリ生まれのアルド・チッコリーニは現代最高峰と目される88歳の現役ピアニスト。
 巨匠の演奏をぜひ耳にしようと、初夏の夕べ、多勢のピアノ・ファンが東京藝術劇場に詰めかけました。
 いくらか、お痩せになり、ステッキを突かれてステージに登場なさいましたが、ピアノに向かう姿勢にはまったく危なげがありません。
 前半は、ブラームスの『4つのバラード』op.10と、グリーグのピアノ・ソナタ ホ短調。遅めのテンポ、虚飾を排した音ででじっくりと表現されたブラームス、次第に熱を帯び、フィナーレのコーダで圧倒的なクライマックスの築かれたグリーグ。
 うーん、さすがです。
 後半は、ボロディン『小組曲』、カステルヌオーヴォ=テデスコ『ピエディグロッタ1924 ナポリ狂詩曲』というどちらも初めて聴くプログラム。
 曲が進むにつれてますますタッチの冴えてきた巨匠の若々しい演奏によって、舞曲の躍動感、民謡の愉悦感がホール一杯に広がりました。

 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
 開演前に、ピアニストの熊本マリさんにしばらくぶりにお会いしておしゃべりの花が咲きました。
 あとで、写真を交換し合いました。
 マリさんは11月26日に、モンポウ、グラナドス、リストというプログラムでリサイタルをなさいます。
 お得意のスペインものとリスト、魅惑の選曲ですね。
 みなさまも、ぜひ、お出かけくださいませ。


  ● 尾高尚忠指揮 NHK交響楽団演奏会
2014年7月5日 埼玉会館大ホール
    前半は、小山実稚恵さんをソリストに迎えた、ラフマニノフのピアノ協奏曲第2番、後半は、ショスタコーヴィチの交響曲第5番
 尾高マエストロの、ぴたりとツボを抑えたタクトのもと 小山さんは幅広いダイナミクスを用い、スケールの大きなラフマニノフをお弾きになりました。
 ショスタコーヴィチは緊張度の高い非常に引き締まった演奏でした。
 (写真) 終演後、楽屋で。


● 鷲見加寿子先生、東京音楽大学退任記念コンサート
2014年7月6日 紀尾井ホール
    数々の優秀なお弟子さんを世に送られつつ、演奏家としてもコンサートに、レコーディングに活躍しておられる鷲見加寿子先生がこのほど、長年教鞭をとられた東京音楽大学を退任され、その記念コンサートが鷲見先生ご自身、及び、多勢のお弟子さん方の出演により開催されました。
 第1部、第2部は若手のお弟子さんたちのソロ、
 第3部はすでに演奏家として世に出ておられる方々のソロとデュオ。
 第4部は、鷲見先生がピアノを担当され、ヴァイオリンの佐藤俊介くんを中心とする若手弦楽器4名と、シューマンの室内楽作品の最大傑作、ピアノ五重奏曲が演奏されました。
 第3部で、スクリャービンの『幻想ソナタ』を独奏した佐藤彦大(ひろお)くんと久々の再会。
 第1楽章では、長大なスパンによる大きなクライマックスが築かれて、一呼吸置いたのちに、繊細なピアニッシモで次の楽句が歌い出され、耳を洗われるような新鮮な感動が・・・。そこに、彼の成長ぶりを感じました。
     現在、モスクワ音楽院でヴィルサラーゼ先生に師事しています。
(左写真)鷲見先生と佐藤俊介くん。
(右写真) 彦大くんとのツー・ショット

   


● 「三合菴」(さんごうあん)
2014年7月6日
    白金5丁目にある14席のお蕎麦屋さんです。
 紀尾井ホールのコンサートのあと、北里病院に叔父を見舞い、その帰りに、従妹の案内で初めて立ち寄りました。
 夜は要予約だそうですが、運よく、席がありました。
 ビールをお願いしたら、間髪を入れずに、海苔をちらしたほうれん草のおひたし、小さな茶碗蒸し、卯の花炒りの3品がさっと並びます。(写真左)


 感動的なことに、なんと、この3品が「お通し」だったのです。
 どれもほどよいお味でビールが進みます。ことに、敢えて具を入れず絶品の出汁だけで仕立てられた茶碗蒸しは最高でした。
 浅蜊の紫雨煮(写真中)、天麩羅盛り合わせ(写真右)をいただいたあと、これほど美味しいお蕎麦は初めて、というべき、10割せいろを。
 あとで知ったのですが、ミシュラン一つ星のお蕎麦屋さんだそうで、予約もなしに日曜夜突然訪れて、賞味できたのはつくづくラッキーだったことがわかりました。


● コンサート・イマジン「七夕コンサート」
2014年7月7日 紀尾井ホール
    ドイツが誇る世界的名テノール、ルネ・コロさんは1937年11月20日生まれ。コンサート・イマジンの招きでこのほど来日されました。
 7月1日にはシューベルト『冬の旅』全曲、
 7月3日にはシューマン『詩人の恋』全曲、シュトラウス歌曲他
 このふたつのリサイタルを開かれたあと、7日の七夕コンサートにご出演。
 3公演とも拝聴しましたが、驚異の名唱でした。
 ことにこの日は、『タンホイザー』中の大曲、『ローマ語り』を何の無理も気負いもなくらくらくと歌われたのです。
 その秘訣は、あれこれ考え過ぎずあるがままに、という生活信条にあるのでは、とステージ・インタビューで語られました。
  


● 九段下『郷酒』
2014年7月8日
 1ヶ月半ぶりに、『郷酒』へ。
 『宮澤賢治の聴いたクラシック』を置いていただいている、岩手の郷土料理のお店です。
 岩手銘酒『ぎん銀河』を、なぜか境港ゆかりの、目玉のお父さんのおちょこでいただきます。
(右端の写真)このおちょこがお気に入りです。少しみずらいですが、おちょこの左上に目玉のお父さんが付いています。
● 本日の帯留め
 夏向きの寒色の帯と帯留めにしました。
 若葉色の紗の献上帯に、丸い翡翠玉3つをえんどう豆風に並べた帯留め


● 七夕の雅楽
2014年7月12日  オペラシティ・コンサートホール
 早くも5回目の公演となった、東京楽所(とうきょうがくそ)の雅楽公演。
 第一部の「管弦」では、「壱越調調子」「胡飲酒 序」「同 破」「新羅陵王急」が演奏され、
 第二部の「舞楽」では、「蘭陵王」と「納曽利」が舞われました。

 東京楽所とは、宮内庁式部職楽部のメンバーを主体に構成された雅楽演奏団体。
 宮内庁のオーケストラのメンバーを兼ねておられる楽人も多くおられます。

 宮内庁オーケストラの指揮者、北原幸男さんとお会いしました。


● 渡邉規久雄ピアノ・リサイタル
2014年7月13日 よみうり大手町ホール
 今春に大手町に誕生した新しいクラシック・ホールに初めて足を踏み入れました。
 日曜日の大手町はまことに静か。
 その読売新聞本社ビルの4階、5階に、立派なホールが竣工していました。
 重厚な雰囲気の、なかなか音響のよいホールです。
 規久雄さんは、ラフマニノフのソナタ第2番ほかを立派にお弾きになった後、「アンコールにシベリウスの『夢想』を弾きます」とおっしゃり、静謐な小品を奏されました。
 そした再び登場、今度は曲の紹介なしに、さっとピアノに向かわれました。
 そして始まったのは、そうです、堂々の『フィンランディア』。
 ロシアの圧政に苦しむフィンランド国民を励ますために書かれた愛国の音楽です。
聴いているこちらの血までたぎるような名曲の名演で、思わず目頭が熱くなり、終わって、ふと前方をみますと、フィンランド大使がさっと立ち上がられ、惜しみないスタンディンク・オベーションを送っておられました。

(左写真)大使ご夫妻と、渡邉規久雄さん。
(右写真)日本フィルの平井理事長ご夫妻と、規久雄さんとご一緒に写真を撮りました。
 平井理事長は182センチ。規久雄さんはもしかしたらもっとお高いかも知れません。


● フランス国立リヨン管弦楽団日本公演
2014年7月17日 サントリー・ホール
 古稀を迎えたレナード・スラットキン率いるリヨン管の日本ツアー。  この日は、バーンスタインの『キャンディーと序曲』、五嶋龍をソリストとするラロの『スペイン交響曲』、それにベルリオーズの『幻想交響曲』。聴き応え充分のプログラム。  『幻想』の第3楽章のオーボエは、2階のRB席後方にすっくりと立たれ、ステージ上のコーラングレと野趣ある対話を交わしました。まさに、幻想的な野の光景でした。
 実は、リヨン管のセカンド・ヴァイオリン席に坐る北牧香絵さんは、桐朋女子高ご卒業後単身フランスに渡り、パリとリヨンの音楽院で研鑚を積まれたヴァイオリニスト。
 このほど、ご縁があって、ファースト・アルバムのライナー・ノートを書かせていただきました。
 楽屋にお訪ねしてお話ししてきました。とても素敵な方で嬉しくなりました。
 お近づきになったので、19日の東京藝術劇場公演では、ステージ上の香絵さんから目を放すことができませんでした。
 


● 東京交響楽団定期演奏会
2014年7月20日 オペラシティ コンサートホール
 客演指揮者はマルチェルロ・ヴィオッティの息子、ロレンツォ・ヴィオッティ。
 スメタナの交響詩『モルダウ』とターヴィット・ゲリンガス独奏のドヴォルザーク、チェロ協奏曲まで聴いて、蒲田の大田区民ホール、アプルコへ急ぎました。

 ● アマチュア・オーケストラ「コンセール21管弦楽団」の第47回定期演奏会です。
 『2つの4番・枯淡と乙女』と題し、ベートーヴェンとブラームスのそれぞれ4番が演奏されました。
 当初、指揮する予定だった玉置勝彦音楽監督が体調不良につき、コンサートマスターの西田史朗氏が振られたのですが、アンコールだけ、玉置音楽監督が車椅子で指揮台にあがられ、感動的な演奏を聴かせてくださいました。
 ブラームス4番の第3楽章です。
 一見賑やかなスケルツオ楽章ですが、なかなか含蓄に富んだ音楽で、後半には美しいメロディも顔を出します
。  指揮棒なしで、指先に無言のサインをこめた流麗な指揮に、メンバーの方々が本当によく応えておられました。

   素晴らしい演奏会のあと、従妹と玉置音楽監督を入院中の北里病院に送り届け、また、三合あんへと、お店の前まで来たら、お隣に雰囲気のあるフレンチ・レストランを発見。
 ちょうど、雨も降りだしたので、こちらへ入ったところ、それが大正解。
 お店の名前は「Estragon タラゴン」
 パスタもありますが、素性はフレンチ。
 フランスほかで修業なさったオーナー・シェフが、吟味した素材でこちらの希望に添った、美味しくて心のこもったお料理を出してくださいました。
 いただいたのは、前菜盛り合わせ、スズキのグリル、ナスのパスタ。(右写真)
 ワインは、ソーヴィニヨン・ブランと、メルロー。
 前菜のマリネ類はもちろんのこと、燻製なども全部、シェフの手づくり。
 またぜひ、行こうと思っています。
  (左写真)は、田口栄一シェフと。


● 岩崎淑先生 三大祝賀大パーティー
2014年7月21日 ホテルニューオータニ
 ピアニスト、ピアノ教育家として長年活躍されていらした岩崎淑先生が、このほど、ミュージックペンクラブ賞、新日鉄住金音楽賞特別賞、のふたつの大きな賞を受賞され、さらに、喜寿の節目を迎えられたことを祝し、門下の方々が発起人となり、盛大な祝賀レセプションが催されました。
 先生の日頃のご人脈の広さ、ご人徳の深さを反映して、多彩なお顔触れが集まり、心から先生を祝して歓談が弾み、第一線の演奏家の方から若手まで、何組かの演奏も披露されて、素晴らしい時間が流れました。


  左写真:淑先生を囲んで、左からバリトンの河野克典さん、わたくし、淑先生、ピアニストの寺田まりさん。
  中写真:河野克典さん、寺田まりさん、わたくし、後ろは仙川アヴェニューホール館長でピアニスト、作曲家の尾西秀勝さん。
  右写真:帰りに、河野さんのご友人のパティシエのお店、下落合のエーグルドゥースに寄りました。


● 根津 海鮮茶屋 「田すけ」
2014年7月24日
 『宮澤賢治の聴いたクラシック』の陰の編集長、辰野さんのご案内で、根津の海鮮茶屋「田すけ」に初めて足を踏み入れました。
 あちこちの和食のお店で厳しい修業を積まれたマスターが、仕入れから調理、配膳までおひとりで神業の如くにこなしていらっしゃる驚異的なお店です。
 評判の「アナゴのお刺身」を予約しておいてくださり、目の前で、生きのよいアナゴさんに、ごめんなさい、お刺身になっていただきました。白く透明感のある身の薄づくりは、舌先に甘く、適度に弾力があって絶品です(写真左)。
 大きめの卵焼き鍋を用い、魔法のような手際の良さで焼いてくださった「出汁巻卵」もさすがプロのお味(写真右)。そのほか、いろいろいただきながら賢治談義に花が咲きました。


● 映画『パガニーニ 愛と狂気のヴァイオリニスト』
2014年7月29日 日比谷 TOHOシネマズシャンテ
 過去も現在も未来も、ヴァイオリン音楽史上最大の存在をニコロ・パガニーニとすることに異論はないでしょう。ニコロ・パガニーニは1782年10月27日、地中海を臨むイタリア北部の港町ジェノヴァに、港湾労働者の息子として生まれました。
 両親は正式な音楽教育を受けたことはなく、従って楽譜を読むことはできませんでしたが、母親は一度耳にした歌を美しい声で正確に歌うことができ、父親は妻の歌にギターで伴奏をつけることもできれば、ヴァイオリンで甘美な歌を奏でることもできました。そんな両親の間に生まれたニコロは、みよう見真似でヴァイオリンを弾き始め、たちまち腕をあげます。父は息子に期待をかけ、朝から晩まで厳しい練習に駆り立てました。やがて、公開演奏会を開いたニコロは町の話題を独占し、これを機にあちこちで演奏会を重ねて名声を高めていきました。
 マネージャー役の父はもうけを全部自分の懐に入れてしまい、息子にはひたすら練習を強要しました。しかし、父親が強制するまでもなく、息子自身がヴァイオリンに魂を奪われ、この楽器から引き出しうる限りの魅惑的な音色とさまざまな表現、そのための奏法をきわめていったのでした。……
 その後、父親と決別したパガニーニは各地を遍歴しながらその超絶技巧によって名声を高める一方、お酒と女性とギャンブルに溺れ、大切なヴァイオリンを博打のカタにとられてしまったり、愛人に暴力を振るって牢屋にいれられたりと、スキャンダラスな生活を送りました。ビアンキという歌手と一緒に暮らしていた時期にひとり息子のアキレを得ましたが、やがて彼女と別れるとき、溺愛するアキレを手元に置きたいばかりに莫大な手切れ金を彼女に支払っています。かと思えば、彼の演奏のあまりの素晴らしさに感動した見知らぬ老人から、グァルネリ・デル・ジェスの名器を贈られたこともあります。彼はこの楽器を『キャノン砲』と名づけて生涯の愛器としました。
 自由奔放な生活がたたってか、後半生はいくつもの病に苦しめられ、1840年5月27日に彼は満57歳で世を去りました。
 彼の音楽は同時代やその後の時代の音楽家たちに計り知れない影響を与えました。
 たとえば、リストは、20歳のときに彼の演奏に接してピアノのパガニーニとなることを決意し、ヴァイオリンの演奏技巧をピアノの鍵盤に置き換えた『パガニーニ大練習曲』を長年かけて完成させ、ヴァイオリン協奏曲第2番の終楽章をもとにピアノ独奏曲『ラ・カンパネラ』を書きました。
 また、貧しい財布をはたいてパガニーニの演奏会に出かけたシューベルトは、そのアダージョに天使の歌を聴いた、と感極まっています。
 シューマンは彼の奇想曲をもとにピアノの練習曲を書き、ブラームスは変奏曲を、ラフマニノフはピアノとオーケストラの協奏作品を生みました。
 パガニーニの音楽はその超絶技巧のみならず、あちこちに散りばめられた溢れんばかりの歌心のゆえに、こんにちなお多くの人々を魅了してやまないのです。
 さて、そのパガニーニを主人公とした映画を日比谷のシネマズシャンテで鑑賞いたしました。2013年のドイツ映画で、監督・脚本は『不滅の恋〜ベートーヴェン』のバーナード・ローズ、製作総指揮・主演は1981年ドイツ生まれ、現在アメリカで活躍中のヴァイオリニストかつモデルのディヴィット・ギャレット。もちろん、演奏シーンは吹き替えなし、ギャレット自身です。
 ストーリーはまったくのフィクションで登場人物もパガニーニと一瞬だけ登場するその父親、チラホラ出てくる息子のアキレを除けば創作キャラでしたが、そんなことはもうまったくどうでもよいほど、この映画には大きな魅力がありました。
 それは第一に、ディヴィット・ギャレットの天与のキャラクターの魔力です。もうこれはギャレット以外の誰も演じることができないほど、パガニーニの全盛期はかくやと思わせる彼の魔性的な美貌、髪型、挙措動作のすべてがこの映画を成功に導いていました。そして、吹き替えなしの演奏シーンに惜しみなく発揮される彼の超絶テクニックも大きな見せ所。このレベルのテクニックを持つヴァイオリニストは他にもあまたいらっしゃいますが、そのテクニックがいかにもパガニーニ的な風貌、というより実物を上回る美貌と結びついて輝きを放つヴァイオリニストは、世界広しと言えども、ギャレットのみと断言できます。
 第二の成功要因は、パガニーニがたんに超人的テクニックを誇るだけのヴァイオリニストではなく、「歌心」を何よりも重んじる音楽家であったことをこの映画が尊重していて、それをシャーロットという愛らしいイギリス娘に彼が自作を歌ってもらうことによって、彼女の秘められた歌の才能を引き出す場面にみごとに描き出されていることでした。
 シャーロット役は、アンドレア・デックという可憐で演技もうまいソプラノ。彼女も吹き替えなしに歌っていましたが、その歌声の何と無垢で美しいこと!!今も耳に残っています。
 全編の白眉は、まわりの気を揉ませてやっと本人が登場して大喝采を浴びるロンドン・デビュー時、終わり掛けに国王の臨席、というハプニングが起きたとき、すでに最前、技術の限りを尽くしてこれ以上弾くものがないかと思いきや、パガニーニが即興で無伴奏の変奏曲を弾きだす場面です。その曲こそ、今も彼の無伴奏難曲として知られる『ゴッド・セイヴ・ザ・キングによる変奏曲』。つまり、イギリス国家による変奏曲。ここが圧巻です。
     


● 宮沢賢治生誕118年・没後80年記念コンサート
   『イーハトーブの嵐・トキオの風』

2014年8月1日 八重洲ブックセンター本店 8階特設会場

 みなさま、お盆休みはいかがお過ごしでしたでしょうか。

 お休みも明けた今となっては相当な旧聞に属しますが、過日、左のチラシのような賢治関連のイベントに出演いたしました。
たいへん長時間の催しで、『宮澤賢治の聴いたクラシック』添付CD2枚分、全16曲も鑑賞いただくプログラム。
 その中の、ワン・コーナーに出演して、
 同書の編集長・横山英行氏と賢治をめぐる対談を交わし、お買い上げいただいた方対象のサイン会をいたしました。

 下の写真は、同書の装丁画を描いてくださった、田原田鶴子画伯、横山編集長と共に。
 そして帰りは、定番の打ち上げ。
 場所は八重洲地下街の「玉乃光酒蔵」。まるで、ソフトクリームのように、きめ細かい泡が高く上がる不思議な冷酒など、いただきました。
 


● 「アフィニス夏の音楽祭2014 山形」 取材
2014年8月22〜23日
 アフィニス文化財団の主催する「アフィニス夏の音楽祭2014山形」(四方恭子音楽監督)が8月17日から24日にかけて山形市内の5会場で開催されました。
 同音楽祭は今年で通算26回目、これまで複数の開催地を経て近年は広島と山形で交互に開催される形となり、今年は山形での3回目の開催です。
 同音楽祭の最大の特色は、すでにプロとして世に出たオーケストラ・プレイヤーに研鑚の場を提供することを主目的としていることです。
 そのために、各楽器のトップ演奏家を海外から招聘し、会期前半では彼らを講師とするセミナーを開きます。
 このセミナーに全国のオーケストラから選ばれた若手が参加し、講師を交えた編成の室内楽作品に取り組んで、会期後半のコンサートでその成果を披露します。
 今年は日本全国のオーケストラ15団体から27名、フリー2名の29名がセミナーに参加し、四方恭子、ヘンリック・ホッホシルド、川崎洋介(以上Vn)、ポール・ペシュティ(Va)、ヴォルフラム・ケッセル(Vc)、イェルク・リノヴィツキ(Cb)、エマニュエル・アビュール(Ob)、ハンノ・デネヴェーク(Fg)エサ・タパニ(Hr)、フリッツ・ダムロウ(Tp)の10名の精鋭講師から音楽上の貴重なアドバイスを受けました。
 後半はいよいよ成果発表です。まず8月21日の室内楽演奏会〔1〕で、モーツァルト『ピアノ五重奏曲変ホ長調』、ブログ『4つのスケッチ』、R.シュトラウス『メタモルフォーゼン』が演奏されました。
 次いで22日の室内楽演奏会〔2〕で、シュポア『複弦楽四重奏曲第1番』、マルティヌー『九重奏曲第2番』、ブラームス『弦楽六重奏曲第2番』が披露されました。  いかに真摯な研鑚を積んだか、その迫真の演奏が如実に物語っていて、聴いているこちらまで、エネルギーをいただくことができました。

(左写真)
 山縣交響楽団とアフィニス祝祭管弦楽団との合同演奏会には、地元の小学生が合唱で加わりました。

 室内楽演奏会2公演の会場は、国指定重要文化財である旧県庁の議事堂『文翔館』です。
 蒲鉾型のヴォールト天井に白い柱、真紅のビロード貼りの椅子が並ぶ、19世紀ヨーロッパ風の重厚な空間は室内楽演奏会にぴったり。
 山形は駅の東側が旧市街、西側が新市街。音楽祭会場のうち、文翔館、セミナー会場や音楽祭本部のある山形まなび館、宿泊した山形グランド・ホテルなどはすべて東側にあり、最終日のコンサート会場、山形テルサ・テルサホールのみ、西側にあります。
 写真は、山形テレサ、テレサホールのエントランスで、
 アフィニス文化財団専務理事・事務局長の山口学氏(左)、
 山形交響楽協会事務局長の斎藤正志氏(右)と。

 みなさん、山形のサクランボ・カラーのTシャツをお召しです。

 東側の街並みはなかなか雰囲気がよく、グランド・ホテル周辺は「七日町なぬかまち」という由緒ありげな町名。
 その中の一軒、「串幸」という瀟洒な串揚げのお店で、旬のお野菜と海山の幸の串揚げ、山形銘酒などいただきました。


 左写真は富士山ビール。右写真は串幸の銘々膳。次々に運ばれてくる串揚げを好みの調味料でいただきます。

● 「木曽音楽祭」 取材
2014年8月24〜25日
   東京からJR中央本線塩尻経由で約3時間30分、名古屋から1時間25分で長野県木曽町の中心地、木曽福島駅に到着します。毎年8月下旬、人口約1万2000人のこの静かな山間の町に第一線のクラシック演奏家20〜30名が顔を揃え、ここでしか聴けない至高の楽の音を緑の山並に響かせています。
 コンサートの企画制作にはプロの音楽事務所が当たりますが、その他宿泊施設の整備から食事の用意、会場係り、売店販売まですべて、主催の木曽音楽祭実行委員会と、町民のボランティアが担当して、町民一丸となった手づくり音楽祭を繰り広げています。
 1975年に第1回が開かれて、今年で第40回。会場は、かつては木曽福島中学校の体育館でしたが、90年に716席の木曽文化公園文化ホールが水と緑に囲まれた美しい公園の一角に竣工し、現在ではこのホールがメイン会場となっています。
 今年は8月21日の「前夜祭コンサート」、22日〜24日の「フェスティヴァルコンサート」3公演が開かれ、のべ1500人が訪れたそうです。
 そのうちの最終公演を聴きに、東京から車で中央高速伊那インター権兵衛トンネル経由、木曽文化公園に到着、野島稔独奏、山本正治指揮音楽祭メンバー・オーケストラによるベートーヴェンのピアノ協奏曲第2番ほかの名演を聴いてきました。
(左写真) コンサートの幕開けを告げるアルペンホルンの野外演奏
(右写真)カーテンコールで花束を手にする出演者のみなさま


(左写真) 打ち上げパーティーで、野島稔氏、山本正治氏と。
(中写真)ピアニスト、作曲家の寺嶋陸也さんと。寺嶋さんとは、今春、「音楽樹」の岩井合宿でもご一緒させていただきました。
(右写真)渓流をすぐ眼の前に臨む「山水」という日本旅館に宿泊。
     ご主人は、全国にその名の轟く渓流釣りの達人。夕食も川魚の満漢全席。
     写真はほんの朝ご飯ですが、夕食時のイワナ(アマゴ)の活きづくりのアラを使ったアラのお味噌汁、自家製アマゴの姿煮など、ここでしかいただけないご馳走に圧倒されました。


● 読売日本交響楽団 第540回定期演奏会
2014年9月9日
   旧暦なら「重陽の節句」にあたり、僭越ながら「My Birthday」である9月9日、日本を代表する名マエストロのおひとり、下野竜也さんが「9・9」に因んだプログラムを演奏されました。
 ハイドンの交響曲第9番ハ長調と、ブルックナーの交響曲第9番ニ短調です。
 2管の小編成、対向配置のハイドンから、後半は一転、3管、ワーグナー・チューバ入り、通常配置のブルックナー。
 対比も鮮やかながら、ハ⇒ニ、長調⇒短調、どちらも異色の3楽章交響曲、という心憎い組み合わせ。
 とてつもない巨大感にみちたブルックナーの素晴らしいこと!!

 終演後、楽屋にうかがいましたら、前の晩にここで都響の定期を振られたばかりのヤクブ・フルシャさんが下野さんを激励にいらっしゃいました。
 フルシャさんの都響は、マルティヌーの4番と、同じくマルティヌーのチェコ民族詩によるカンタータ『花束』で、これもあまりの面白さに時の経つのが惜しいほどのコンサートでした。
 フルシャさんには、こういうお国ものをこれからも是非、聴かせていただきたいものです。

(左写真)アークカラヤン広場のスペイン坂寄りのあたりから、サントリーホールを背に立ちました。
     萩、桔梗、おみなえし、撫子、野菊など、秋の花々を染めた単衣小紋です。
     30年以上も前に、今は亡き母が縫ってくれたのに、これまで一度も手を通していなかったので、今日しか着るときはないと決心して着ていきました。
(右写真) 本日の帯留め
     これは最近入手した、大きめのスモーキー・トパーズを縦に留めた帯留め。
     秋らしい色合いなので秋の単衣に合わせて、おおいに気に入ったのに、残念、写真がうまく写せませんでした。


● 宮澤賢治作詞作曲『星めぐりの歌』による 変奏四重奏曲・変奏二重奏曲 CDリリース記念演奏会
2014年9月11日 東京オペラシティ 近江楽堂
 宮澤賢治が音楽と深いかかわりを持っていたことは拙著『宮澤賢治の聴いたクラシック』にも書かせていただき、このページでもたびたびご紹介してきましたが、それは、賢治がクラシックSPレコードのわが国初期の愛盤家であって、そこから受け取った霊感を文学作品に反映させた、という角度からでした。
 この日、聴きに出かけたコンサートは、賢治の創作した『星めくりの歌』をテーマとする、変奏四重奏曲と変奏二重奏曲のCDリリース記念演奏会でした。
 『星めぐりの歌』は、賢治が自作童話『双子の星』の中に描いた、星たちが歌を歌い、チュンセ童子とポンセ童子がそれに合わせて笛を吹く場面をみずから歌にした、温かく和みのある歌です。
 そのシンプルな旋律を変奏のテーマにとって、6楽章構成の弦楽四重奏曲、及び5楽章構成のヴァイオリンとチェロの二重奏曲を作曲されたのは、チェリストの田崎瑞博さん。
 弦楽四重奏曲はミュゼットあり、間奏曲あり、アリオーソあり、フーガあり。二重奏曲はバロックの組曲スタイル+アルファ。小さなものを大きなものへと自在に変貌させる田崎さんの無尽蔵の知恵と技術の泉に、ただただ感じ入りました。
 演奏はもちろん、田崎さんがチェリストを務める名門カルテット、古典四重奏団。
 二重奏曲の演奏は、そのファースト・ヴァイオリンの川原千真さんと田崎さんでした。
 実は、このコンサートのエグゼクティヴ・プロデューサーは、賢治ゆかりの大島で特産の椿油を手掛ける株式会社『椿』の日原行隆社長。
 大の賢治ファンで「雨ニモマケズ」を座右の銘とし、アマチュア・ヴァイオリニストでもある日原社長のお骨折りで、素晴らしいコンサートが実現しました。

(左上写真)賢治考案になる、一台で弦楽四重奏の4つの譜面を置ける専用譜面台のレプリカ。
賢治のオリジナルは花巻の賢治記念館にありますが、それを目にされた日原社長が金属加工の職人さんに依頼してつくっていただいた、そっくりさん。コンサートではこれが使用されました。
(右写真)日原行隆社長(中央の左)と、変奏曲の委嘱者でアマチュア・チェリストの松浦章さん。
(左下写真)打ち上げ会場で、古典四重奏団の川原千真さん、花崎淳生さん、三輪真樹さん、田崎端博さん、日原社長と。


● 東京二期会 オペラ『イドメネオ』初日
2014年9月12日 新国立劇場オペラパレス
モーツァルト作曲  ダミアーノ・ミキエレット演出  準・メルクル指揮
 あらゆる要素を、可能な限り、抽象化といってよいほど普遍化した異色のプロダクションによる『イドメネオ』。
 タイトルロールは与儀巧さん、
 権力を手中にしつつも、それゆえの葛藤に苦しむ宿命の王を見事に熱演。
 息子のイダマンテは、山下牧子さん、メゾソプラノが歌う、若き王子です。
 そのイダマンテを一途に愛する、囚われの王女イリアは新垣有希子さん、
   イリアの恋敵エレットラを大隅智佳子さん、大熱演でした。
 権力の象徴は、父から息子に着せ伝える、パリッとしたスーツ。
 海戦の戦死者は、浜に打ち上げられた夥しい古靴。
 読み解く手掛かりがないと、すらりと理解しにくいプロダクションでしたが、
 きわめて、周到緻密に設計された、見応えある公演でした。
 本日の帯留め
  祖母から母を経て受け継いだ、翡翠の帯留め。うまく写せませんでした(涙)が、雰囲気だけ。
  横長い石だったらしく、藤の花房に彫ってあり、中央に18金で三つ葉のクローバー風の葉っぱがあしらってあります。
  昔、祖母が語ったところによれば、父が赤ちゃんだったとき、旅行中に足をばたばたさせて、祖母の帯のあたりを蹴ってしまい、藤の花の翡翠にひびが入ったのだそうで、そこで、かざり職人さんのところへ持っていき、何とかしてほしいと言ったところ、金細工で補強をしてくださったんだとか。
  金の葉っぱのおかげで、かえっておしゃれになりました。
  祖母も、父も、母も、こちら側にはおりませんので、うろ覚えの言い伝えです。もっとよく、話を聴いておけばよかった・・・・。
   


● なかうみ交響楽団 第11回記念演奏会
2014年9月14〜15日 島根県民会館大ホール(松江市)
 合唱団のみならずオーケストラ・メンバーを毎年県民から公募して1992年から手づくり第九演奏会を継続してきた島根県初の県民参加型音楽イベント「島根第九を歌う会」に対して、わたくしが理事・選考委員のひとりをつとめるクラシック音楽興隆会では、2013年に第19回志鳥音楽賞を授与させていただきました。
 その事務局長で、地元のアマチュア・オーケストラ「なかうみ交響楽団」の団長さんでいらっしゃる角久夫さんのお招きで、同交響楽団の10周年記念演奏会を拝聴してきました。
 プログラムは以下のようなものです。
    ベートーヴェン:歌劇『フィデリオ』序曲
    チャイコフスキー:ヴァイオリン協奏曲
    ベートーヴェン:交響曲第3番変ホ長調『英雄』

 指揮は、なかうみ交響楽団創立以来、こんにちまで同団を育ててきた松尾昌美先生。
 音楽美学を専攻されたのち、大阪音大で作曲を、桐朋学園大学で指揮を学ばれ、バイエルン国立歌劇場でオペラの現場体験を積まれた最強のマエストロです。
 お住まいの神戸から片道4〜5時間の高速バスに揺られ、最初の音だし練習時から毎回駆けつけられ、みごとな本番を実現されました。
 今回の話題は、何と言っても、チャイコフスキーのヴァイオリン協奏曲のソリストに、東京藝術大学准教授で紀尾井シンフォニエッタのコンミス、またソリストとして活躍される、玉井菜採さん。
 京都市交響楽団で長年セカンド・ヴァイオリンの首席を務められた母上、玉井洋子さんが、この日は角団長と並んでセカンドの1プルトに坐られ、素敵な母娘共演となりました。
 母上が現役時代には時々あったそうですが、このところはなかったので久しぶりの同じステージ。
 松江市出身で角団長の親友、元読響の古田川達男さん(Vn)、出雲市出身で中部フィルの早瀬美紀さん(Cb)、N響の矢内陽子さん(Cb)の参加も得て、緊張感のあるチャイコフスキー、そして4つの楽章の起承転結の鮮明な『エロイカ』が、島根の蒼穹いっぱいに広がりました。


(写真左上)すらりと背筋の伸びたダンディなマエストロと、打ち上げ会場の前でツーショット。
(写真右上)島根県民会館大ホールのエントランスで。
(写真上中央)左より、角久夫さん、玉井洋子さん、玉井菜採さん、矢内陽子さん。

(写真左)行きの飛行機の中からみえた富士山。
(写真右)松平公の城下町松江は宍道湖畔に開けた美しい水の都です。


● 中央区民カレッジの秋のクラシック連続講座
2014年9月18日
 中央区民カレッジの秋のクラシック連続講座が9月18日からスタートしました。
 会場は、例年と同じく、東京メトロ東銀座駅至近の築地社会教育会館です。
(左写真)会場入り口のポスター
(右写真)築地社会教育会館は東銀座から晴海通りを南進、京橋郵便局を右に折れた次の通りにあります。歌舞伎座にも近い立地なので、帰りに看板だけ眺めました。来月は観たいな。
● 本日の帯留め
 青い縞瑪瑙をスクエア・カットにした帯留め。同系色の3分紐を合わせてあります。亡き母の箪笥から数年前に発見したもので、母の存命中にこの縞瑪瑙はまったく見たことがありませんでした。いつ、どこで、いかなる経緯で手に入れたのか、今となっては謎ですが、3分紐のほうはなんとなく覚えがあるので、きっと縞瑪瑙だけどなたかからかいただいて、手持ちの3分紐を合わせたのかしら、と想像しています。
 帯は白の塩瀬の名古屋帯。前はまだ青みがかった紅葉柄ですので初秋に締めます。お太鼓部分はお能の『紅葉狩り』ですが、前部分の反対側は桜模様なので、右回しに帯を締めると桜が前にきて山田流の名曲『桜狩り』に因んだ柄となり、春帯として使えるよう工夫されています。でも、右回しはやりにくいので一度も桜を出したことはなく、もっぱら『紅葉狩り』の秋帯にしています。
 その紅葉の色合いにこの縞瑪瑙がぴったりかな、と思って合わせました。

 今年の講座カリキュラムは以下のとおりです。
中央区民カレッジ クラシック音楽連続講座 (会場:築地社会教育会館)
平成26年度 後期(9月〜2月) 5回  14:00〜16:00
 木曜日 (隔週) 9/18、10/2、10/16、11/13、11/27

『音楽評論家・萩谷由喜子と行く名曲の旅』クラシック極上温泉
第1回 2時間でわかる、おもしろ音楽史
        〜クイズで試すクラシック検定つき
第2回 大作曲家をめぐる7つのミステリー その1〜その3
        〜モーツァルトの遺体はどこに?他
第3回 大作曲家をめぐる7つのミステリー その4〜その7
        宮澤賢治の聴いたクラシック〜『銀河鉄道の夜』に流れる『新世界交響楽』
第4回 女性作曲家も大活躍
       〜『乙女の祈り』の奇蹟
        日本人初のソナタ作曲家は幸田露伴の妹 他
第5回 ライヴ・コンサートを贅沢に楽しむ!〜コンサートの聴きじょうずを目指して
        ヴァイオリニスト高橋和歌さん、ピアニスト高橋望さんを迎えて

 おかげさまでたくさんの方に受講を希望していただき、会場規模の関係から抽選で70〜80名ほどの方々にいらしていただいております。今回、いらしていただけなかった方々も、次回にご縁がございますことを祈っております。
 写真は第1回、9月18日『2時間でわかるおもしろ音楽史』の講座風景


● サントリーホール オープニングフェスタ2014
2014年9月20日
 シーズン開幕を飾るサントリーホールのガラ・コンサートが『オープニングフェスタ』です。今年もその台本を担当させていただきました。
 司会は昨年に続いて、高嶋政弘さんが引き受けてくださり、格調高く、明晰なお話しぶりでみごと成功に導かれました。
 海上自衛隊東京音楽隊、ジョン・アクセルロッド指揮の東京交響楽団、のふたつのオーケストラが出演、ソリストも、ソプラノの天羽明惠さん、テノールのジョン・健・ヌッツォさん、フルートのディーター・フルーリーさん、オルガンの高橋博子さん、ピアノの金子三勇士さん、ヴァイオリンの南紫音さんと豪華絢爛。4時間近い長丁場となりましたが、おおいに盛り上がりました。


(写真)開演前にエントランスで  金子三勇士さんの楽屋前で


● 本日の帯留め


● ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団コンサート
 ウェルカム・レセプション

2014年9月24日  サントリーホール
    例年より少し早めに、今年もウィーン・フィルが来日しました。
 指揮者は1981年ベネズエラ生まれ、現在ロサンゼルス・フィルとベネズエラ・シモン・ボリバル交響楽団の音楽監督を務めるグスターボ・ドゥダメル。
 9月19日の大阪フェスティバルホール公演に始まり、福岡、郡山、川崎を経て東京サントリーホール3公演の全7公演をすべて、ドゥダメルが振りました。
 わたくしは、東京での初日にあたる9月24日のコンサートを聴きました。
 1曲目は、コンサート・マスターのライナー・キュッヒルさんととソロ・ヴィオラのハインリヒ・コルさんを独奏者とするモーツァルトの『協奏交響曲変ホ長調』K.364。
 ソロの箇所ではぐっとテンポを落とすのがウィーン流なのか、おかげさまで、名手ふたりの妙技を堪能。
 2曲目は、同フィルの第2ヴァイオリン奏者でもある作曲家ルネ・シュタールへの委嘱作品『タイム・リサイクリング』。
 5月にウィーン楽友協会大ホールで初演された新作で、この夜が日本初演。時の流れの循環が4つの楽章を通じて多彩な手法で表現されました。
 ことに終楽章では、コントラバス奏者が楽器を回転させる、楽員が声をあげる、などウィーン・フィルとしては異色ともいえるパフォーマンスが繰り広げられました。
 後半はドヴォルザークの交響曲第8番ト長調。ドゥダメルは暗譜。
 オーケストラから細やかな表情を引き出し、同フィルの弦の厚み、そしてニュアンスのゆたかさと、管のアンサンブルの精緻さを聴き手に強く印象付けました。
 アンコールにヨーゼフ・シュトラウスのポルカ『憂いもなく』。
 終演後のウェルカム・レセプションでは、楽員の方たちと交流の時間が持てました。

   写真は、チェロのヘーデンボルク・直樹さんと。


● ワーグナー『パルジファル』
2014年9月29日  新国立劇場オペラパレス
    飯守泰次郎先生の音楽監督就任第一作!!  この日はドレスリハーサルでしたが、本公演とかわりない迫真のステージを拝見しました。
 本公演は10月14日の最終日に拝見します。

● 本日の帯留め
 お気に入りのヴァイオリンの帯留め。  ですが、またまた、うまく写せません。(涙)
     


● 東京交響楽団 第623回定期演奏会
2014年10月4日  サントリーホール
   このイケメンおふたりをとくとご覧ください。
 いったい、どこの坊ちゃんがただか、おわかりになりますか?
 な、なんと、かのダニエル・バレンボイム マエストロのご子息様たちです。
 おひげの、ダーク・ジャケットの方がご長男で、ポピュラー・ミュージシャン。明るいジャケットの色白の坊ちゃんがご次男のマイケル。
 この日は、ヴァイオリニストのマイケル・バレンボイムさんが、プロコフィエフのヴァイオリン協奏曲第2番を、きりりと弾いてくれました。
 このステージが、ソリストとしてのマイケルの日本デビューです。
 アンコールは、クライスラー『レチタティーボとスケルツオ』。これがまた、耳を惹きつける音でした。
 わたくしは、ご兄弟のお母さま、エレーナさんがヴェンゲーロフさんたちとブラームスのピアノ・トリオ全集を演奏したDVDを愛聴しているので、その話をいたしましたら、とても喜んでくださいました。
 お兄ちゃんがエレーナさん似、マイケルさんがパパ似です。
 指揮は、マイケルと同い年の若手、サントゥ=マティアス・ロウヴァリ。
 この方も、驚くべきパフォーマンス性にみちた指揮者。
 その全身を駆使した躍動的な指揮に、いささかの虚飾性もなく、自分の目指す音楽を本気で伝えているところに、天与の音楽性を感じました。


● 仙台クラシックフェスティヴァル2014
2014年10月3〜5日
     毎年恒例の「せんくら」が3日間にわたって開催されました。 その最終日、10月5日、トーク・イベントとコンサートの2公演に出演させていただきました。
 どちらも、メイン・タイトルは「宮澤賢治の聴いたクラシック」
 仙台の北120キロが賢治の出身地、花巻。そのさらに70キロ北が、彼が学生時代を過ごした盛岡です。そんな関係から、仙台には賢治ファンの方たちがたくさんいらっしゃいます。
 トーク・イベントでは、賢治の生涯をたどりながら、彼がわが国のクラシック・レコード受容初期のトップクラスの愛盤家であったこと、実際にどんなレコードを耳にして、そこから何を感じ、みずからの創作活動にどのように反映させていったかをお話しして、彼の愛聴盤のひとつ、エーリッヒ・クライバー指揮のスメタナ《モルダウ》他を鑑賞いたしました。
 楽楽ホールで開催したライヴ・コンサートでは、エレクトーンの名手、神田将さんに賢治の愛した楽曲、ベートーヴェンの《運命》1楽章と、《田園》1楽章&2楽章を弾いていただき、そのあと、地元のピアニスト松坂優希さんに、《月光ソナタ》第1楽章、シューマン《トロイメライ》リスト《ラ・カンパネッラ》を弾いていただきました。
 そして最後にもう一度、エレクトーンの大名人に出ていただき、賢治作曲の《「星めぐりの歌」》を神田さんの素晴らしい編曲で演奏していただきました。


(左)ステージ裏で、神田さん、松坂さんと。
(中)神田さんとは、昨年の霧島音楽祭でお友だちになりました。
(右)サイン会。 拙著 《 宮澤賢治の愛したクラシック 》 も、ツタヤさんに会場販売していただき、終演後のサイン会で、みなさまとお話ができました。仙台のみなさま、本当にありがとうございました!!


● フレデリック・ショパン物語
2014年10月18日  彩の国さいたま芸術劇場音楽ホール
 彩の国さいたま芸術劇場開館20周年記念事業として、同劇場の音楽ホールで、「中村紘子と萩谷由喜子が語るフレデリック・ショパン物語&中村紘子ショパン・リサイタル」が開催されました。


 前半の「ショパン物語」では、ステージ正面上部の大理石壁面をスクリーンとして、わたくしの作成したショパンの生涯画像約50コマを上映しながらショパンのライフストーリーをたどり、その合間合間に、中村紘子先生の豊富な音楽体験に裏付けられたショパン観を、多彩な角度から語っていただきました。
 ショパンがいかにして、ポーランドの国民的英雄になったか、その歴史的政治的必然とポーランドの人々の涙ぐましい努力のお話は、とりわけ興味深いものがありました。
 後半のショパン・リサイタルでは、「アンダンテ・スピアナートと華麗なる大ポロネーズ」「バラード1番」「葬送ソナタ」のほか、  前半でショパンの悲恋物語としてご紹介した、マリア・ヴォジンスカとのはかない恋の形見「別れのワルツ」も、紘子先生の名演でお聴きいただきました。


● 沖縄オペラ協会公演 ヴェルディ『ドン・カルロ』4幕上演
2014年11月2〜3日  沖縄県浦添市てだこホール
 イタリア・オペラ一筋に歩んできた沖縄オペラ協会(翁長剛会長)が今年はヴェルディ円熟期の一大傑作『ドン・カルロ』4幕版に挑み、浦添市てだこホール(1001席)を会場として、11月2、3日の両公演を大成功裡に終わらせました。
 『ドン・カルロ』は16世紀スペインの史実に政治や宗教、男女の愛を絡ませて、婚約者が父王の妃となってしまった王子の悲劇を描くオペラです。
 演出には二期会や新国立劇場でも活躍中の中村敬一氏が招かれ、登場人物の心情を浮き彫りにしました。
 両公演とも鑑賞させていただきましたが、初日公演でエリザベッタを演じた安座間和美さんの終幕アリアは涙を誘われる熱唱でした。

(左写真)エリザベッタ役の安座間和美さんとロドリーゴ役の翁長剛氏、初日の終演後楽屋で。
(中写真)2日目公演の開演前に昨日のプリマドンナ、安座間和美さんとホール前で。
(右写真)丘の上に建つ「てだこホール」。「てだこ」とは「太陽の子」の意味だそうです。


● 小山実稚恵 トークサロン
2014年11月17日  杉並公会堂
 12月13日に本公演のおこなわれる、小山実稚恵さんプロデュースのコンサートのためのプレ・トークサロンで、トークのお相手を務めさせていただきました。  今回の本公演は、前半が小山さんのソロで、ショパンの「ノクターン7番」と「ソナタ3番」、  後半が、選りすぐりの共演者たちと、シューベルトのピアノ五重奏曲「ます」という贅沢なプログラム。  その聴きどころをお話しし、曲の一部を小山さんに弾いていただいたあと、ご来場の皆さまから質問を受け付けたところ、次第に活発にお手があがり、興味深いご質問が次々と飛び出しました。  振り返ってみますと、毎年この時期、このプレトーク・サロンにご一緒させていたただき、今回は5回目の最終回でした。 感無量ですが、ホールでも、続く企画を考えてくださるそうですので、小山さんファンの皆さま、どうぞお楽しみに!

(左写真)トーク中の小山さんとわたくし。
(その右写真)終演後ステージ上で。
(その右写真)左のおふたりの紳士はホールのプロデューサー、正門さんと館長さん、
     私の右から順に、小山さん秘書の磯上さん、事務所社長の入山さん、小山さんが心から信頼するチューナーの杉浦さん。
(右端の写真)お仕事が忙しかったマネージャーの栗田さんは、あとから別写真に収まってくださいました。


● 中村紘子 デビュー55周年記念リサイタルとレセプション
2014年11月23日  サントリーホール&ANAホテル
55周年記念にふさわしい、堂々たるリサイタルが開かれました。
ベートーヴェンのソナタop.110。シューマン『幻想曲』という大曲2曲が前半に置かれ、
休憩後の後半はシューベルトの即興曲op.90全曲と、ショパンのポロネーズ2曲、ワルツ9番、バラード1番。
なんとヘビーなプログラムでしょう! ことに、後半のシューベルトとショパンに圧倒されました。
終演後、お隣のホテルの一室で、なごやかなパーティーが開かれ、各方面の多彩なお顔ぶれが、心から55周年を祝しました。

(左写真)快進撃中の韓国の若手チョ・ソンジンさんの先生(中央)をご紹介いただきました。
(中写真)デビュー55周年記念の巨大ケーキ。のちほど、お相伴させていたただきました。
(右写真) 終演後の楽屋で。紘子先生が少女時代から習われた寺西昭子先生と。


● 中央区民カレッジ
2014年10月〜11月 築地社会教育会館
   秋の連続クラシック講座を担当させていたただきました。
 今回は5回シリーズ。次のような内容を中央区民の皆さまにお届けいたしました。
 いらしてくださいました皆さま、ありがとうございました!!
『音楽評論家・萩谷由喜子と行く名曲の旅』
第1回 2時間でわかる、おもしろ音楽史
〜クイズで試すクラシック検定つき
第2回 大作曲家をめぐる7つのミステリー
           〜モーツァルトの遺体はどこに?他
第3回 宮澤賢治の聴いたクラシック
           〜『銀河鉄道の夜』に流れる『新世界交響楽』
第4回 女性作曲家も大活躍
           〜『乙女の祈り』の奇蹟
           日本人初のソナタ作曲家は幸田露伴の妹 他
第5回 ライヴ・コンサートを贅沢に楽しむ!
           〜コンサートの聴きじょうずを目指して!

(左写真) 第4回で、幸田姉妹のお話をしているところ。このあと、幸田延のヴァイオリン・ソナタを聴きました。
(中写真) 第5回はライヴ・コンサート。ヴァイオリニストの高橋和歌さんと、ピアニストの高(ハシゴダカ)橋望さんをお迎えしました。
(右写真)控室で高橋和歌さんと。彼女とは岩崎淑先生を通じて知り合い、小平の講座にも出演していただきました。


● 読売日本交響楽団第543回定期公演
2014年12月4日  サントリーホール
            指揮          シルヴァン・カンブルラン
            ピアノ         アンジェラ・ヒューイット
            オンド・マルトノ    シンシア・ミラー
            コンサート・マスター  小森谷巧
 雨模様でしたが、もちろん、躊躇なく出掛け、充実した気分で帰路につきました!!
 これほどの演奏会には滅多に出会えないでしょう! 名曲の名演を聴く幸せをしみじみと噛みしめました。
 前半は、読響から77年生まれの作曲家・酒井健治氏に委嘱した新作の世界初演。
 タイトルは『ブルー・コンチェルト』。
 聴き始めてすぐ、オーケストラの扱い、楽器法、色彩感、モティーフの生かし方などから、この曲は、後半に演奏されるメシアンの大作『トゥーランガリラ交響曲』と対になる作品だと感じました。
 それでいて、作曲者の卓抜な創意が随所にきらめいてオリジナリティーが非常に高く、演奏に至難ではあるけれども、読響の高い能力とアンサンブル特性を精緻に研究して書かれたとみえて、楽員の皆さんが、周到に注意を注ぎながらも嬉々として演奏されていることが伝わってきました。
 これほどの作品を書いてしまわれる若い才能に心から敬意を表したいと思います。
   後半の、メシアン『トゥーランガリア交響曲』は名状しがたい、至高の名演!
 作品そのものも贅沢ですが、当夜の陣容がこれまた第一級のマエストロにソリスト、そして名器揃い。
 何しろ、ヒューイットさんのピアノはファツィオリ。オンド・マルトノのミラーさんも、この曲のために初来日されました。
 シルヴァン・カンブルランさんというマエストロは、桁外れな知性と熱い情熱を兼ね備えた名匠で、メシアンのこの宇宙的広がりと深遠な内容を持つ複雑極まりない難曲を完全に手の裡に入れておられました。
 音色の配合はもとより、そのきめ細かい精緻な融合の技、巧みなアーティキュレーション、テンポ操作から楽節の余韻の処理に至るまで、すべてすべてその掌のうちに収められていて、曲は着々と小気味よく進行するのですが、だからといって、予定調和的なところはいささかもなく、一瞬一瞬が熱く燃えて手に汗を握らせるスリリングさも具えているのです。
 そこが、このマエストロの名匠たるところ。
 もっとも感動したのは、緩徐楽章の神秘的な美しさと、全体を貫く類まれな色彩感でした。
 LED電球を何億個燈しても、夜空の星を全部集めても得られない、カンブルラン光色にうっとりしました。

  (写真) 終演後、バックステージでその感動を伝えさせていただきました。
    撮影してくださったのは、アーティスト写真の専門家、青柳聡氏。


● ベートーヴェンのお誕生日
2014年12月16日
 毎年この日は楽聖のご生誕を祝しつつ、そのエネルギーにあやかり、明日へのよき一歩になるような、ちょっとしたお誕生会を開かせていただいております。
 今年は、宮澤賢治に魅せられたこの顔ぶれで集まり、新たな賢治プロジェクトへの夢を語り合いました。
 会場は、賢治ゆかりの大島で、特産の椿から「生の椿油 ジャポネイラ」他を製品化しているメーカー、「株式会社椿」の東京支社。
 椿尽くしのインテリアに囲まれて、花も実もある賢治談義が続きました。
(左写真)
 一筆書きアートで見事な賢治世界を構築される、高橋美紀画伯、
 賢治の「星めぐりの歌」から、壮大な変奏四重奏曲と変奏二重奏曲を編作されたチェリスト、田崎瑞博氏、
 同曲の古典四重奏団によるコンサートを主催した「株式会社椿」の日原行隆社長、
 「宮澤賢治の聴いたクラシック」の表と裏の両編集長、横山さんと辰野さんコンビ
 田崎さんの2曲の変奏曲の委嘱者にして初演者、松浦章氏。

(右写真)
 椿の会社にうかがうので、椿の訪問着を着用し、椿グッズを持たせていただいて、社長と写真を撮らせていただきました。
 撮影は、高橋美紀画伯。

(左写真)
 会場を移してたのしくお食事会。

(右写真)
 株式会社椿のお玄関ホールには、こんな椿のペストリーが。

 ベートーヴェンさま、と、日原社長に大感謝!!


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